結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月31日(月曜日)

商人舎第10回記念USA研修会、ワシントンD.C.で経営戦略コース・商品戦略コース合流!

Everybody! Good Monday!
[vol44]

2011年第44週。
10月最終日が今日で、
今日はハロウィンで、
明日から11月第1週に入る。
20111031181859.jpg[マーケット・ストリート]
アメリカでは、
いま、ハロウィン・イベントの真っ最中。
20111031182043.jpg[HEB]

それでいて、11月第4木曜日、今年は24日の、
サンクスギビングデーの休暇を視野に入れつつ、
さらにその1カ月後のクリスマス商戦を見通す。
20111031182901.jpg[ターゲット]

アメリカでは秋の大プロモーションが、
3段階で用意されている。

私は日本でも、この3段階は、
大いに使えると思う。

①10月31日のハロウィン。
②11月23日の勤労感謝の日。
③12月25日のクリスマス。

さて、今、私はワシントン。
そう、アメリカ合衆国の首都。
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商人舎第10回記念USA研修会は、
順調に進んでいて、
経営戦略specialコースは、
ダラスで巨大チェーンの最も激しい競争状況を学び、
ワシントンにやって来た。

ダラスでは、
ウォルマート・スーパーセンターの実験店プラノ店、
さらにスーパーセンターのエコストアHE型最新店、
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そしてネーバーフッド・マーケットを巡った。
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このタイプは、順次、ウォルマート・マーケットと名を変えていく。

さらにウォルマートのライバル・ターゲット、
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ウォルマートのサムズ・クラブのライバル・コストコ。
どちらもがっぷり四つに組んで、
覇を競っている。

前者はハイパーマーケット(総合スーパー)での競争、
後者はメンバーシップ・ホールセール・クラブでの競合。

ダラス・プラノ地区のこの凌ぎあいは、
私たちの定点観測の対象。

しかもウォルマートではインタビューをくり返し、
逐次、改善改革の進展の様子を知ることができる。
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ターゲットとコストコは、
「自らの強み」を活かして、
ウォルマートに堂々と立ち向かっている。

それがとてもいい。

だからウォルマートにもイノベーションの気概があふれてくる。

その後、クローガー・シグニチャーと、
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セーフウェイ傘下のトムサム・ニューライフスタイルストア。
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アメリカ二大ナショナル・スーパーマーケットチェーン。

そして話題の中心・ホールフーズ。
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もう108店になったスプラウツ・ファーマーズマーケット。
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この地のローカルチェーン・ユナイテッドのマーケット・ストリート。
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ホスピタリティを最大の特徴に、
名だたる競合店たちのなかで、
ポジショニングを築こうとしている。

そしてテキサスに侵入し、
荒らしまわっているハードディスカウンター・アルディ。
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もちろんHEBのフード&ドラッグとセントラルマーケットは、
初日に訪問して、元気づけられた。

ここには、大河ドラマのような、
役者勢揃いの競争があって、
私の解説の見せ所、聞かせどころ。

圧倒的に時間が足りない。

ダラスでは二度のセミナーを用意した。
二度目はメリッサ・フレミングさんと共演
フレミングさんは元HEB上級副社長で、
対ウォルマート作戦とプライベートブランド構築の立役者。
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良いレクチャーだったし、
私の見解と一致。

当然のことだ。
毎年会って、講義を聴き、情報を交換しているのだから。

昨日、ダラスを後に、ワシントンD.C.へ。
朝5時半、暗いうちにホテルを出発。

ダラス・フォートワース空港で、朝日を拝む。
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ニュースでは、ニューヨークには雪が降ったとか。

窓から見える風景にも、雪が混じっている。
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それが緑に変わって、
ワシントンD.C.に到着。
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空港には模型飛行機。
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休む間もなく、
目指すはウェグマンズ
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この店、素晴らしい。
一同、息を飲む。

ウェグマンズは2010年度年商55億9900万ドル。
100円換算で5599億円。
日本のスーパーマーケット第1位のライフコーポレーションよりも、
アークス&ユニバース連合軍よりも規模は大きい。
店数は76店舗。

1店平均、なんと7367万ドル(73億6700万円)。

その原動力は、第1に人。
ホスピタリティあふれ、イノベーションに燃える人財集団

第2は、店と商品。
ミールソリューションの最高峰
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ウェグマンズが1986年に始めた「プリペアードフード」と、
1990年にスタートさせたフードサービス部門が、
世界のスーパーマーケットに進化を促した。

そして第3が、コンシステント・ロープライス
ウォルマート対策のエブリデーロープライス。

この店はきっと、年商100億円くらいは目指していると思う。

ウェグマンズを後に、
ブルームへ。
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アメリカのスーパーマーケット業界第5位は、
ベルギー資本のデレーズ・アメリカ。
その中核はフードライオン。
10%台の低経費体質で1990年代後半に注目された、
あのフードライオン。

2004年に開発されたのが、このブルーム。
買い物簡便性を志向したアップスケールタイプ。
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しかしこの地では、完璧な負け組。

ウェグマンズのあとで訪れたので、
その客数の違いに、一同、唖然。

決定的に欠けているのは、
フード&ドラッグではないこと。
だから隣にCVSファーマシーがはいっている。
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これは完全な時代遅れ。

三番目は、このエリアナンバーワン占拠率のジャイアントフード
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40%を超えるシェアで、
地域第1位の企業

この会社は1998年にオランダのアホールドに買収され、
現在、アホールドUSA傘下。

アホールドUSAは全米第4位のスーパーマーケット企業で、
デレーズ・アメリカのひとつ上。

アメリカのスーパーマーケット業界は、
第4位と第5位が外資ということになる。

そのジャイアントフードだが、
よく健闘している。
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しかし店づくり、品ぞろえなど、
20世紀型のコンベンショナル・スーパーマーケットそのもの。

時代遅れ。

店舗奥主通路のサービス・デリと調剤部門が核だが、
青果、精肉、鮮魚など、ひどく弱い。
結局、ラガードの顧客がグロサリーを買いに来る店となっている。

ラガードとは伝統顧客とでも訳したらいいか、
保守的で、意地っ張りの顧客のこと。

最後に、ハリスティーター
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205店舗で年商40億ドル(4000億円)クラスのローカルチェーン。
ただしノースカロライナに本社を持つラディック社の傘下にある。
アメリカのローカルチェーンは何らかの形で、
別資本のもとであることが多い。

インディペンデントとして、
自己資本で経営を続けることが難しいからだし、
安定した資本のもとで、
存分にス―パーマーケットを展開したほうが、
安全でもある。

このハリスティーターは、
21世紀アップスケール型に変身している。
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部門ごとに「マーケット」と称してショップ形式をとり、
顧客囲い込み戦略を展開している。

そのため小型店、旧型店を次々に閉鎖し、
企業全体のイノベーションを志向中。

結局、ワシントン郊外のこのエリアは、
ウェグマンズとハリスティーターの21世紀タイプと、
フードライオン、ジャイアントフードの20世紀型との闘いの構図になっていて、
勝者は明らか。

図らずも、20世紀型はヨーロッパ資本の外資企業ということになる。

とてもいい学習素材が提供された1日となった。

一方、30日11時30分に成田から出発した
商品戦略MDコース
の面々。
11時間30分の長旅を終え、
元気にダラス・フォートワース空港に到着。
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㈱廣甚の若い2人はもちろん、
㈱今治デーパートの佐伯誉さんも笑顔。

ダラスからは国内線に乗り換えワシントンD.C.へ。
その合間にダラスの空気を吸い込む。
㈱サンエーの皆さんと中込美津子さん(左)。
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こちらのコーディネーターは林廣美先生
先生をかこんで、記念撮影。
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ワシントンD.C.には午後3時過ぎに到着。
早速向かったのは、こちらもウェグマンズ。
その最新店。
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ワシントンD.C.から北東に30分ほど行ったショッピングセンター立地の店。

周辺にはコストコ、JCペニーなど多くのナショナルチェーンが出店し、
まだまだ開発途上の商業エリアだ。
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売り場のいたるところに、
コンシステント・ロープライスやセール品のPOPが張り出されている。
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新店だけに、価格訴求は一段と強い。
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ウェグマンズの前で再び記念撮影。
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林先生の車中解説を聞きながら、再び市内へ。
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二番目の視察はハリスティーター
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この店の周辺には若い共働き世帯が多く、都市型の店。
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2階がス―パーマーケット、
1階にファーマシーの変則的都市型店舗。
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この時点で宵闇が迫り、体感温度もぐっと下がってきた。
今日の視察はこの2店舗で終了し、宿泊ホテルへ。
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ホテルでSPコース、MDコースが合流。
そして、シーフード&ステーキレストランのピア・セブンへ移動。
ステーキ・ディナー・コースを食しながらの
楽しい合同懇親会

乾杯の発声は㈱マルトの安島浩社長
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明日からの研修の充実を祈念し、声高らかにカンパイ!
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参加企業の紹介と、
参加目的などを語ってもらいながら、
それぞれに懇親。
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朝早いSPコース参加者も、長時間フライトのMDコースも、
疲れているはずだが、楽しんでくれた。
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もちろん先生方も、みんなの話を真剣に聞き入った。
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お酒が入り、リラックスしてきた。
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最後はゲスト講師陣からのメッセージ。

初めに大久保恒夫さん
㈱セブン&アイフードシステムズ社長。
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大久保さんの話は、熱かった。
自身の経歴を振り返りながら、
最後は小売商業の地位を上げるために、
皆で頑張ろうと締めくくった。
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そして林廣美先生。
日本フードサービス専門学院学院長。
もちろん日本の惣菜マーチャンダイジング指導の第一人者。
スーパーマーケットの惣菜の現場で起こっている問題に触れ
明日から何を学ぶべきかを語った。
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ちょっと長かった。
酒を飲みながら、大事な講義を聴いた気分。
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そして現地コーディネーターの浅野秀二先生
商人舎サイトで連載中の『ジョージ君、アメリカに行く』が絶好調。
「健康になるとセクシーになる」
この話の続きは車中でもっと、語ってもらおう。
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最後に私からも一言。
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「ポジショにング競争の時代。
それはレース型競争ではない。
コンテスト型競争だ」

ホテルに戻って、
㈱むすんでひらいて社長の原田政照さん、林先生、浅野先生と。
原田さんは商人舎ツアー2度目の参加。
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明日からは全員そろって、ワシントンD.C.へ。
ゲスト講師の講義も楽しみだ。

気合は十分。
体力は気力でカバー。

では今週も、
Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

2011年10月30日(日曜日)

ジジとおとうさんのシゴト[2011日曜版vol44]

おとうさんは、
いません。
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おとうさんというのは、
ユウキヨシハルさんのこと。
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ナリタ空港。
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アメリカのダラスに向かった。
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ナリタで講義。
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80分ほど。
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それからのりこんで、
11時間。
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今年、6回目になります。
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ついたらバスのなかで、
すぐに講義。
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それでもたのしそうです。
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ボクはジジ。20111030181243.jpg

うちでまってます。
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おとうさんは、ランチ。
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それからインタビュー。
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いつも、楽しそうです。
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そして写真。
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またインタビュー。
写真。
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ここでもうれしそう。
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そしてみんなで写真。
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握手。
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これもおとうさんのシゴトのひとつなんです。
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講師のメリッサ・フレミングさん。
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とてもいいおはなしだった。
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ドラッカー先生が言っています。
「自分の目で見、耳で聞く」
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それが大切なこと。

おとうさんのシゴトは、
それです。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2011年10月29日(土曜日)

寒い寒いダラスの初日はHEBセントラルマーケットとフード&ドラッグ橋頭堡店舗でローカルチェーンの日

ダラスは寒い。

驚くべきこと。

今年の夏は、干ばつで、
リック・ペリー知事が、
州民にこういったほどだった。
「3日間、雨乞いをしましょう」

それがハロウィンの前だというのに、この寒さ。

環境異変が起こっているのか。
それでも元気に視察を進める。

成田を発ったのが、金曜日の午後2時。
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アメリカン航空の成田・ダラス便は、2時間も遅れた。
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それでも安全な方がいい。
文句を言う者はいない。
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ダラス・フォートワース空港で、
浅野秀二先生と落ち合って

すぐにHEBセントラルマーケットへ
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テキサス州サンアントニオに本社を置くHEBは、
ローカル・スーパーマーケットチェーンにして、
テキサス州最大の非上場企業。

つまりインディペンデント・カンパニー。
これが大事なところ。
2011年全米チェーンストア・ランキング27位。
スーパーマーケット企業では全米6位。
2011年度の売上160億9100万ドル
100円換算で1兆6091億円。
前年比13.9%と絶好調だ。

HEBは3つの戦略フォーマットを展開する。
①EDLPの主力フォーマットであるフード&ドラッグ、
②非食品をプラスしたコンボ型のHEBプラス、
そして、③アップスケール・タイプの大商圏型セントラル・マーケット。

セントラル・マーケットは、
ワンウェイコントロール方式を採用している。。
お客をまんべんなく回遊させる売り場には、
フレッシュな生鮮、
豊富なプリペアード・フード&デリ、
世界中から集められたチーズとワイン・リカー、
スペシャルティなグロサリー商品などが、
これでもかと並ぶ。

屋内外に、カフェスペースが設けられており、
週末には地元演奏家のライブミュージックなども行われる。

われわれも着いてすぐに、屋外カフェで昼食。
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それから屋外インタビュー。
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実に丁寧に答えてくれた。
この店は8番目のアップスケール店舗。
店舗面積6万平方フィート(約1700坪)。

来年には3万平方フィートの実験店を出すそうだ。

そのあと店内ツアー。
部門ごと、カテゴリーごとに、
整理された解説を受けた。

試食のお奨めも受けた。
昼食後だったが、断らずに全部いただいた。
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そして写真。
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全員写真も。
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疲れは見えないほど、気力充実。
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次に向かったのが、HEBフード&ドラッグ
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オースティン、サンアントニオで5割を超えるシェアを持つHEB。
アップスケールタイプのセントラルマーケットを、
ダラスに出していたが、いよいよ本命フォーマットを出店させた。

ウォルマートの牙城にして、
クローガーのドミナントエリア。
ここに撃って出るHEB。

今度は攻める側に回った。

その橋頭堡がこの店
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大繁盛。
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まず生鮮がいい。
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バナナの売り方も丁寧。
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すぐに食べられるバナナと、
少しおいて熟させるバナナ。
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それをきちんと教えている。

SUSHIYAのコーナー。
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フィッシュマーケットとミートマーケット。
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奥主通路。
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そして今やウォルマート以上のパワーを持つ
アイランド販促。
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ファーマシーも地域からの信頼が厚い。
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エブリデーロープライスを展開しながら、
クーポンを積極的に活用。
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これがウォルマートにない販促。
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インストアクーポン。
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そして地域コミュニティとの密着。
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1カ月間のコミュニティ内のスケジュールを張り出している。
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今日の視察は、HEBの日。
ローカルチェーンの日。
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HEBの橋頭保店舗が成功しているのを確認して、
私はうれしかった。

アメリカでも、
ローカルチェーンが隆々としている。

それをこの目で見て、この耳で聞いて、
自ら体験できたからだ。
(続きます)

<結城義晴>

2011年10月28日(金曜日)

円高メリットを活かし、ドラッカー「ポストモダンの七つの作法」に則ってアメリカに学ぶ旅に出発

いま、成田空港。
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第10回商人舎USA研修会の結団式とセミナー

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10時半集合で、1時半まで、
講義や打ち合わせ、顔合わせ。
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昨日27日のニューヨーク外国為替市場、
円相場が一時1ドル75円67銭まで上昇、
史上最高値を更新

このところ、アメリカを訪れるたびに、
円が高くなる。

円高に関して、ふたつ。
第1は、日本経済の空洞化の問題
円高は輸出産業にとって、
決定的な痛手となる。

黙っていても、
自分たちがつくって、売る商品が高くなる。

コストを抑えるといっても限界がある。
だから必然的に海外に工場をつくったり、
拠点を移したり。

その分、国内の工場が縮小され、
場合によっては閉鎖される。
それを「空洞化」と称する。

しかし、この「空洞化」、
指をくわえて見ているわけにはいかない。
何らかの産業で「空洞」を埋めなければならない。

私はその役目が、
小売流通業・サービス業にあると思う。

3年前の2008年4月17日、
商人舎発足の会の記念講演の私のタイトルは、
「小売サービス業が日本を救う」
まったく、その通りになってきた。

空洞化を補い、日本経済を救うのは、
小売り流通業・サービス業である。

それが実現されたなら、
日本は住みやすい国となる。
観光にふさわしい国となる。
そのうえで、新しいテクノロジー産業が構築される。

その原動力となるのが、
小売サービス業である。

円高に関する第2のこと。
それは高くなった円のメリットを活かすこと
私は日本人の海外体験に向けるのが一つの方法だと思う。

日本人が日本人としての強みを自覚し、活かしつつ、
本当の国際人になる経験、体験を積まねばならない。
そのチャンスが、今だ。

小売流通・サービス業は欧米に学んできた。
我々は今こそ、欧米を、アジアを、体験すべきだ。

「もうアメリカに学ぶものはない」
10年も前からそんな声が、
小売業・消費産業の、それも識者のなかから、
ちらほらと聞こえ始めた。

私も直接、そんな発言を、
耳にしたことがある。

しかし聞いてみるとその人は、
もう10年もアメリカを訪れたことがなかった。

ピーター・ドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」。
その第一にあるのが、
「聞く、そして見る」

ドラッカーは、〈イノベーションの原理〉を五つあげている。
第一は、機会を徹底して分析する。
第二は、自分の目と耳で確認する。
第三は、焦点を絞り、単純なものにする。
第四は、小さくスタートする。
第五は、最初からトップの座をねらう。

自分の目で見る、自分の耳で聞く。
それがイノベーションの基本態度である。

円高の今、多くの幹部・社員が、
自分の目で見、自分の耳で聞き、
自分で体験することができる。

「ポスト・モダンの七つの作法」の第二。
「分かったものを使う」
ドラッカーの言葉を使えば、
「既に起こった未来」
それを学ぶ。

例えばアメリカにも、
団塊の世代がある。

「団塊」とは呼ばず、
「ベビーブーマー」というけれど。

これは日本よりちょっと早い。
第二次世界大戦が終結して、
戦地から大量の兵士が戻ってきた。
そして、子づくりに励んだ。
母国が戦場とならなかった戦勝国のアメリカの方が、
イギリス、フランス、そしてドイツ、イタリアよりも、早かった。
もちろん日本よりも早かった。

その団塊の世代がまた30年後に、
ベビー・ブーマー世代をつくった。
これもアメリカが日本より数年、早かった。

アメリカの近代小売業は1850年代にスタートした。
1858年 ジョン・ワナメーカー、ペンシルバニアで最初の百貨店を開店。
1859年 ザ・グレイト・アメリカン・ティ・カンパニーが食品店を創業。
1879年 フランク・ウールワースが非食品のバラエティストアを発明。
1886年 リチャード・ウォーレン・シアーズ通信販売業スタート。
アメリカ小売業の近代はもう、
150年もの歴史を刻んで、
幾多のイノベーションの歴史を重ねてきた。

アメリカには消費の先行性とともに、
小売りシステムの先進性があるのだ。

その「既に起こった未来」を見る、聞く。
「分かったもの」を使う。
ドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」。
第四は「欠けたものを探す」

日本に欠けたもの、それがアメリカにある。
探し物のすべてではないが、
アメリカには確かに、それがある。

さらにドラッカーの言葉。
「企業の目的と使命を定義する場合、
出発点は一つしかない。
顧客である。

顧客によって事業は定義される。
顧客を満足させることこそ、
企業の使命であり目的である」

それでいてドラッカーは、こうも言う。
「もっとも重要な情報は、顧客(カスタマー)ではなく、
非顧客(ノンカスタマー)についてのものである」

自分の目で見、自分の耳で聞くとき、
大切なのが、三つの目。
「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

「虫の目」とは、現場を見る力。
細部まで丁寧に「見極める能力」。
これを支えるのが、専門性と現場主義。

「鳥の目」は、大局を見る力。
全体像を俯瞰しながら、「見渡す能力」。
これを支えるのが、情報量と知識。

「魚の目」は、流れを見る力。
時間の経過の中で、現在と未来を「見通す能力」。
これを支えるのは、経験と見識。

そして、「四つ目の目」は、
謙虚で、真摯で、真っ正直な「心の目」である。

アメリカ小売業の競争は、
試験管の中の現象である。
ビーカーやシャーレの中の変化である。
純粋に市場原理に基づいたコンペティションが展開される。

日本やヨーロッパと比べて、
はるかに規制が少ないからだ。

しかしここに
「客観化・普遍化・理論化」の確かさが生まれる。

アメリカ小売流通業から学ぶのは、
この客観性、普遍性、理論性である。

もちろん日本に持ち帰って、
この客観的で普遍的なセオリーや経験則を、
日本独自のイノベーションに役立てたい。

ただしここでもドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」の第三、
「基本と原則を補助線として使え」

イノベーションに必須の要件は、
堺屋太一言うところの「本気のプロデューサー」の存在である。
それは、「自ら、変わる」ことのできる人財である。

アメリカ消費産業に触発され、
アメリカ小売業に感動することによって、
人は、自ら、変わる。

商人舎研修の狙いは、ここにある。

昨夜は、商人舎チーフ・コーディネーターの鈴木敏と打ち合わせ。20111028081846.jpg

朝には、ゲスト講師の大久保恒夫さんと合流。
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㈱マルト社長の安島浩さんも、
いわきからタクシーで合流。
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まったく偶然のことながら、
月刊『マーチャンダイジング』主幹の日野真克さんとも遭遇。
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なにかが起こりそうな今回のツアー。
まずは第1陣「経営戦略」スペシャル・コース出発。
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2日遅れで、
商品戦略マーチャンダイジング・コースの第2陣が出発。
ワシントンで合流。

今年第6回目にして、
2011年最後のアメリカレポート。

極力、2012年の動向にアンテナを張りつつ、
お届けしようと思う。

乞う、ご期待。

<結城義晴>

2011年10月27日(木曜日)

作家・北杜夫「マンボウ」の死とセルコチェーン設立50周年記念の平富郎「競争こそ企業と経営を磨く砥石」

昨日のこのブログで、
「北風小僧の三太郎」がやって来たと書いたら、
それは「木枯らし1号」だった。

いよいよ、晩秋。

二十四節気の霜降(そうこう)が、
今年は今週月曜日の24日で、
立冬(りっとう)は2週間後の11月8日。

読んで字のごとく、
霜が降りて、
冬が立つ。

1年を24に割るのだから、
ほぼ半月。

霜降は「楓や蔦が紅葉し始めるころ」とされ、
さらに霜降から立冬までの間に吹く寒い北風を、
「木枯らし」と呼ぶ。

私は今日、
成田空港に入り、
明日出発。

今年、6度目の渡米。
9月28日にダラス、サンフランシスコを訪れ、
帰国してから5日おいて、
10月9日から、ケルン、パリだった。

今回はその後、時差が直らず、
体調は悪くはないが、
良くもない。

気を付けるといっても、
睡眠をとることしか手立てがない。
しかしまとまって眠る時間もないし、
時差ぼけで眠れない。

食欲は旺盛で、
気力も充実しているから、
睡眠不足は、
細切れの眠りで補う。

今回帰国したら、
まとめて眠り続けるとしよう。

そんなことを考えつつ、
いま、定宿の成田エクセルホテル東急に入った。

さて、北杜夫さんが亡くなった。
驚いたことに、
4大新聞の朝刊一面コラムすべてが、
北杜夫さんの逝去を取り上げた。

朝日新聞の『天声人語』
「小学生のころ、こんな俳句を作ったそうだ。
〈コオロギがコロコロと鳴く秋の夜〉。
大歌人だった父は面白半分に
それを見たが何も言わなかった、
とご本人は回想していた」

「かつて雑誌に『私の作品など茂吉の一首にも及ばない』と語っていた。
2年前にお会いしたときに問うと、
やはり頷(うなず)いておられた。
〈父より大馬鹿者と来書ありさもあらばあれ常のごとくに布団にもぐる〉は
若き北さんの一首。
天上で、大いなる父君と再会を果たしているころか」

読売新聞の『編集手帳』

「〈恋人よ/この世に物理学とかいふものがあることは/
海のやうにも空のやうにも悲しいことだ…〉
◆物理の答案用紙に書かれた詩は以下のようにつづく。
〈僕等には/クーロンの法則だけがあれば澤山(たくさん)だ/
二人の愛は/距離の二乗に反比例する/
恋人よ/僕等はぴつたりと抱き合はう〉
『斎藤宗吉』と名前の欄にあった。
旧制松本高校に在学していた頃の北杜夫さんである。
作家は処女作に向かって成熟していく――」

日経新聞の『春秋』
「重厚な大河小説から、ユーモアの効いた中間小説、ファンタジー、童話まで。
北さんが紡ぎ出した世界は多彩だった。
なかでも広く親しまれたのは
『どくとるマンボウ』の名前を冠したエッセーだろう。
軽妙洒脱(しゃだつ)の文章は、
厳格な印象の鴎外や茂吉とは対照的で、
日本の文学をずいぶん豊かにしたような気がする」

残念ながら『春秋』が一番つまらない。

私は今回は毎日の『余禄』に軍配を上げたい。
「北杜夫さんは子供時代、
雑誌の『少年倶楽部』や日記帳を入れていた押し入れに、
ちゃぶ台と懐中電灯を持ち込んでよく籠もった」

「父の斎藤茂吉にこんな歌がある。
『押入れにひそむこの子よ父われの悪しきところのみ受継ぎけらし』」

「『そう』の時は夜、明かりをつけた家を開け放ち、
集まる虫に網を振り回した北さんだ。
捕った虫は親しい昆虫収集家に贈った。
その収集家が沖縄県の新種の甲虫に北さんの名前をつけたと
報じられたのはつい先月である。
家人には大迷惑の虫捕りも、報われたようだ
▲学名ユーマラデラ・キタモリオイ、
和名マンボウビロウドコガネ。
この世の仕事を成し遂げ、
押し入れの中の夢見る少年は今
コガネムシとなって飛び立った」

これだけ看板コラムに取り上げられる理由は、
コラムニストがみな、
「マンボウ」世代に属するからだろう。

マンボウ世代だけれど、
マンボウ精神を受け継ぎつつ、
物書きを続けるのは難しい。

続けているのが、
毎日の『余禄』コラムニストということになるか。

そのことが面白い。

実は私も「マンボウ世代」。
若いころ、北杜夫ファンだった。

『幽霊―或る幼年と青春の物語』1960年。
『どくとるマンボウ航海記』1960年。
『夜と霧の隅で』1960年。
この時、杜夫33歳。
輝いていた。

『遥かな国遠い国』1961年。
『どくとるマンボウ昆虫記』1961年。
『南太平洋ひるね旅』1962年。
『船乗りクプクプの冒険』1962年。
私は夢中で読んだ。

『楡家の人びと』1964年。
『どくとるマンボウ青春記』1968年。
大河小説は重厚だった。

それからちょっと、マンボウから離れた。
そして1993年、『どくとるマンボウ医局記』。
このあたりで、「あれっ」と思った記憶がある。

つまらなく感じられた。

私が変わったのか、老いたのか。
北杜夫が変わったのか、尽きたのか。
時代が変わったのか。
バブル崩壊のあとだった。

作家は処女作が一番いい。
そんな説がある。

ある意味で、賛成。
しかしその輝いていたころの価値が、
損じられることは断じてない。

以って自戒とすべし。

享年84。
ご冥福を祈りたい。

合掌。

昨日は、協同組合セルコチェーン
設立50周年記念大会。

場所は新横浜国際ホテル。
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1962年(昭和37年)5月に事業協同組合となり、
今年5月に50周年を迎えた。
中小規模のスーパーマーケット56社が主宰。
いわゆる小売主宰ボランタリーチェーンとして、50年。
加盟歴30年以上の企業は、15社に上る。

高度成長期の1970年代には、各地に地域本部を設け、
2000年代にはプライベートブランドを開発・展開。
2010年代に入り、「セルコライブネット」システムを開始。
これは売場のライブ映像を店舗に配信するサービス。

情報、知恵、ノウハウを共有する着実な活動を行ってきた。

もちろん、低成長時代に入った1990年代には、
中小スーパーマーケットの集まりだけに、
チェーン運営には会計的に厳しい面もあった。

「皆、手弁当で勉強をした」

当時の会長の平富郎理事相談役(㈱エコス会長)は振り返る。

現在は、加盟企業組織の協同組合セルコチェーンと、
本部機能の㈱日本セルコとの二本柱で、
ローカルスーパーマーケット56社476店の活動を支える。

震災のため、延期となっていた記念式典を、
昨日、やっと迎えた。

行政、加盟店、お取引先など、
関係者がお祝いに駆けつけ、会場は満席。
はじめにセルコチェーンの佐伯行彦理事長が開会のあいさつ。
㈱さえきホールディングス社長。
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続いて経済産業省中小企業庁の岡本勇二さん、
㈱ライフコーポレーション会長兼CEOの清水信次さん、
㈱商工組合中央金庫東京支店長の中川祐一さん、
三菱食品㈱会長の中野勘治さんが来賓祝辞。

「メガバンクの誕生のように、
消費者にとって大きなことはいいことばかりではない。
地域社会に貢献しよう、
その職責を果たそうとしているセルコチェーンは大事」と清水さん。
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三井食品の中野さん。
「イギリスのジャーナリスト、ビル・エモットは、
『製造業偏重だった社会から今までの軸を変える必要がある。
日本の長期資産を生かすべきだ』と語る。
日本は知力、助け合い、ふれあいという資産を持っている。
ライフラインサービスをに担う食品産業こそ、これからの軸になる」
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その後、「50年のあゆみ」のDVD放映、
功労者、永年加盟組合員、永年賛助会員などの表彰などがあり、
㈱与野フードセンター社長の井原實副理事長が謝辞を述べ、
第一部の式典をしめくくった。
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私も機関誌『セルコ・レポート』にもう20年近く、
隔月連載エッセーを書き続けている。
タイトルは『スーパーマーケットへの進言』。
私の窓口はずっと取締役管理部長の小野寺義夫さん。
編集は㈱タンクの石田京さん。
お二人とも表彰された。

第二部は場所を移して、記念講演。
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基調講演は佐伯理事長。
「50年目の節目に これからのセルコチェーン」

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「1兆円グループをめざし、
仲間企業との絆を深め、強い商品づくり・店づくりを推進したい」。
講演というよりも、代表としての強い意思表明だった。

記念講演は平理事相談役。
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これが、とてもよかった。

「歴史を見ても、日本人は、
とことん追い込まれると強い。

劣悪な環境、過激な競争の中からこそ卓越した人が出る。
東北から、次の世代を担う大政治家、すぐれた経済人が誕生する」

「スーパー成長の絶対条件は、
人口増、インフレ、物不足だった。

1990年をピークに、今は真逆。それが時代背景」

「イオンはヨーカ堂にMDでは勝てないと、
坪100円の郊外の土地を買って出店した。
それが、モータリゼーションの波に乗り、成功した。
負けたことが、勝ちの要因に変わる」

「時代は止まっていない。
いま勝っている要因が、
将来負けの要因になるかもしれない。

だから、時代を見失わないよう。
トップの責任は重大だ」

「トップがまじめに頑張ればいいとだけ思っていては、
従業員がかわいそうだ。
時代の変革の時こそ、一番得意なものを捨て、
チャレンジしなければなければならない」

「スーパーマーケットに天才はいらない。
努力だけが必要。
社長は仕事量を減らすな。
寝る間を惜しんで学ぶことが大事」

「競争こそ、企業と経営を磨く砥石と思え」

「お客や取引先に迷惑をかけないで、
リスクの伴う改革をしよう。
究極のローコスト経営をせよ」

60分の講演時間。
70歳から健康のために夫婦で始めたゴルフにまで話が及び、
後半は「平ワールド」全開。

私は昨年夏、富士登山をご一緒した。
富士で、平さんの魂に触れた。

そして、第三部の祝賀パーティへ突入。
再び佐伯理事長。
「我々は戦う集団になる」
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来賓の方々のあいさつ。
農林水産省食糧産業局食品小売サービス課の池渕雅和課長。
「ライブネットなど前向きな姿勢がセルコチェーンの原動力」
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一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会会長の小川修司さん。
「バイタルマジョリティこそ中小企業である」
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日本スーパーマーケット会長、㈱ヤオコー会長の川野幸夫さん。
「製配販、力を合わせてサプライチェーンを築きましょう」
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ヤオコーは一時期、セルコ・チェーンの優等生だった。

国分㈱会長兼社長の國分勘兵衛さん。
「スーパーマーケットのボランタリーチェーンは、
食のライフラインを維持するもの」
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田中茂治㈱日本アクセス社長。
「個の力には限界があるが、
セルコの横の協業、製配販の縦の協業で成長しよう」
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伊藤忠食品㈱濱口泰三社長。
「世代、時代は変わっても、
お店の役割は変わらない」

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三井食品㈱長原光男社長。
「震災で消費者は地縁の大切さ、地域スーパーの役割を実感した」
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セルコチェーン大会では、
いつも卸売業のトップ全員が祝辞を述べるのが恒例。

この日のパーティでは組合員の紹介があった。
地区別に企業のトップが壇上にあがった。
北海道・東北地区。
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企業数の多い関東・甲信越地区は2回に分かれて登壇。
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北陸・関西地区。
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四国・中国地区。
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いよいよ、お祝いの鏡開き。
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そして乾杯!
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この後は、動きもままならないほど人、人、人が入り乱れて、
懇親に次ぐ懇親。

㈱たいらやの村上篤三郎社長と㈱寺岡精工㈱の寺岡和治社長。
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㈱サンシャインチェーン本部の川崎博道社長(右)、
営業取締役の新井明さん(左)、
三洋電機販売㈱顧問の大崎公司さん。

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新井さんは、2年連続で来年2月のアメリカ視察に参加してくれる。
楽しみだ。

大橋幸多さん(左から2人目)と三井食品㈱の皆さん。
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商人舎ファミリーの皆さん、
コーネル・ジャパンの皆さんも、
多数参加していた。

そして平理事相談役と佐伯理事長。

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50周年、本当におめでとうございました。

「競争こそ、企業と経営を磨く砥石と思え」

私はこの言葉が一番好きだ。
平富郎が最も輝いていたときの言葉。

それは今、後継者たちに、
受け継がれている。

おめでとう。
ありがとう。

<結城義晴>

2011年10月26日(水曜日)

『日経MJ』小売りトップたちの下期消費の見方とコーネル大学ジャーマン名誉教授の「ポジショニングのすすめ」

横浜も東京も、今日は、
最高気温が20度をきって19度。

クールビズの続きで、
スーツにノーネクタイで家を出たが
北風小僧の寒太郎まで吹いているので、
ちょっと肌寒い。

そこで鞄の中からネクタイを取り出して、
駅の待合室で鏡に向かって、締めた。

少し暖かくなった。

そんな季節の変わり目です。

かつて「日経流通新聞」と称していた『日経MJ』。
MJは「マーケティング・ジャーナル」の頭文字。

その日経MJ 、このところ、とてもいい。
デスクが、いいのでしょう。

今日の一面左肩に「小売りトップの見方」
今年下期の消費と営業に対するそれぞれの見方・考え方。
「業種によって温度差がある」

イオン社長の岡田元也さん。
「下期も上期同様、業績好調は続く」

セブン&アイ・ホールディングス社長
村田紀敏さん。

「新しいもの、新たな提案をすれば消費は動く」

ファミリーマート社長の上田準二さん。
「消費者は無駄な出費は控えている。
ただし、低価格品のみを買うことには飽きており、
週何回かは付加価値の高い商品を買う」

高島屋社長の鈴木弘治さん。
「下期の百貨店業界の売上高は
前年同期比2%ほどのマイナスと見ている。
楽観できる状況ではなく、
今後も回復基調で上向くとは考えていない」

一方、ファーストリテイリング会長兼社長
柳井正さん。

「秋冬からの方が経済環境は厳しくなる。
景気が悪くても成長していかないといけない」

最後にライフコーポレーション会長
清水信次さん。

「上期は東日本大震災の特需を除いても、
健闘したが、下期は厳しい」

総合スーパーやコンビニの経営者は下期も好調が続くとみる。
百貨店、ファッションのトップは厳しいと考える。

日経リサーチが集計を担当した日経DIの10月調査は、
「消費、緩やかに回復」
日経MJ の三面。

一方、世界のトレンドを言い当てるのは、
ポール・グルーグマン教授。
「世界は50%以上の確率で、
景気後退に陥る」

それよりも気になるのは、
日本能率協会総合研究所の調査。
「買い物場所の使い分け調査2011」
そのものずばりのタイトルの調査だが、
それでもネーミングには一工夫ほしいところ。
これも日経MJの二面を占める。

関東・東海・関西の男女2000人以上から回答を得た。
年齢は15歳から69歳。

「買い物したいスーパー」を問う。
2009年お調査で一番多かったのが、
「商品が安い」だった。

ところが今回の2011年調査では、
「品ぞろえが多い」が一番で74%。
「商品が安い」は二番手。

逆転現象が起こった。

ついで「商品が新鮮」
ここまで回答の70%台。

それから60%台に、
「品質が良い」「安心・安全」が来る。

東日本大震災を体験して、
日本人の購買に影響が出た。

それはリーマンショックの世界的金融危機の影響から、
次の段階に移ったことを意味する。

先週の金曜日21日に行われたコーネル大学セミナー。
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名誉教授のジン・ジャーマン先生の講義は、
「食品小売業のトレンド」。
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その結論は、「ポジショニング」の勧めだった。
私が最近言い続けていることとシンクロしていた。

まず、全ての業態が食品購買客を狙っている。
米国スーパーマーケットの来店頻度は週2.5回、
対してスーパーセンターやドラッグストアは月に1回。

ウォルグリーンはシカゴの10店舗で生鮮を品揃え、
2011年末までに400店に拡大する。
CVSファーマシーは生鮮食品を都市部の1400店に導入。
これは全体の20%に相当する。

ウォルマートの対極にあるターゲットは、
2012年末までに1300店舗で生鮮食品売り場を取り入れる。

食品を扱って、既存店売上高が6%改善。

さらにアリス・コム、アマゾン・コムなどネット通販で、
食品販売が増えている。

つまりは多くのチャネルで、
生鮮やデリを扱う。
購買頻度アップを狙う。

日本もまったく同じ。

ドラッグストア、ホームセンター、
家電・カメラ量販店、ディスカウントストア。

そのうえで、ソーシャルネットワークによって、
「価格の透明性」が飛躍的に高まった。

比較しやすい環境を手にした消費者と、
価格比較される食品リテイラー。

だからアメリカでは、
価格競争力のある企業の躍進が続く。

ウォルマート、アルディ、ウィンコ・フーズ。
ダラージェネラル、セーブアロット、ファミリーダラー。

一方、ホールフーズウェグマンズのようなスペシャリストが、
立脚点を鮮明にして、「凛」としてマーケットに立つ。

コモディティ・ディスカウンター。
サービス&クォリティ・スーパーマーケット。
その間に、コンベンショナル型のスーパーマーケットが、
サンドイッチ状態。

彼らは従来から、
豊富な品ぞろえと鮮度・品質で対抗してきた。
しかしアメリカではこれが、
「コストの増加」を引き起こす原因となっている。

顧客が求めるのは、
(1)より安い価格
(2)より高い付加価値
(3)より速い対応

日本の「買い物場所の使い分け調査2011」は、
このジャーマン教授の指摘とは異なる。

しかし私はアメリカのポジショニング競争を、
日本の人々も知っておかねばならないと考える。

ジャーマン先生は言う。
「自身の正しいポジショニングが不可欠だ」

私はこれを「ポジショニング競争」と名付ける。
これは「コンテスト型競争」であって、
「レース型競争」ではない。

価格志向の企業群の中からも、
「レース型競争」から抜け出している者が出ている。

ここに気付かねばならない。

さて昨日25日は、
虎ノ門の日本チェーンストア協会の会議室をお借りして、
商業経営問題研究会(通称:RMLC)の10月例会。
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商業経営問題研究会とは。
通称「RMLC」〈Retail Management Learning Circle〉。
小売業、流通業、商業に関して、
客観的・多角的・実務的な側面から研究し続けている会議体。
2003年、杉山昭次郎を中核として「杉山ゼミ」が発足し、
その後、故磯見精祐が座長となって「RMLC」へと発展。
2007年、磯見逝去の後、座長を結城義晴が引き継ぎ、
高木和成が代表世話人として今日に至る。
毎月、20日前後に4時間に及ぶ月例研究会を開催し、
鋭い切り口で問題提起し、問題解決への提案を続けている。

事務局は㈱商人舎内info@shoninsha.co.jp
<『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』(東洋経済新報社刊)より>

代表世話人の高木和成さん。
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現在、RMLCには20名ほどの会員が参加している。
毎月、10数名が集まっては、
そのときどきの小売流通業のテーマに関して、
ゲスト講師を招いたり、各自が研究や考察を発表したり。
そのあとで、ディスカッションする。
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昨日は、は9月に行った栃木県宇都宮市・真岡市の店舗視察について、
山口紀生さんと小林清泰さんがそれぞれの視点で分析報告。
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そのあと、和田光誉さんが、テスコ日本撤退を受けて、
外資小売業の現状と、その課題をレポートしてくれた。
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午後1時半に始まり、終わるのは5時。
休憩はわずかに10分。

次から次に質問や意見が飛び交う。
㈱セイミヤの加藤勝正社長も、
潮来から駆けつける。
いつも真剣な議論が交わされる。
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この商業経営問題研究会名で初めて出版されたのが、
『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』
会員にとって、ひとつの成果物。

これからも、研究し、議論し
問題解決の道筋を提起する。
そんな活動を続けることで、
第二弾、第三弾の単行本を発刊したいものだ。

それはおそらく「ポジショニング競争への解」を、
もたらしてくれるものとなるだろう。

<結城義晴>

2011年10月25日(火曜日)

フェラガモの〝フェンス”とオーケーの「オネストカード」はドラッカーに通じる

昨日の続きで、
日本チェーンストア協会の9月の販売概況。
会員企業60社、8021店だが、
総合スーパー企業9社の売上げが、
全体の約5割を占める。
だからこれは9月の総合スーパーの趨勢とみてよい。

総販売額は9870億円、
前年同月比プラス0.6%増。

コンビニがマイナス4.0%、
食品スーパーマーケットがマイナス2.0%、
百貨店がマイナス2.4%だったから、
総合スーパーのプラスは、
たとえ0.6%であっても、
大健闘。

大部門別にみると、
食料品6404億円、プラス0.5%、
衣料品903億円、プラス3.1%、
住関品1936億円、マイナス0.8%、
サービス32億円、マイナス9.1%、
その他594億円、プラス3.4%。

衣料品が好調だった。

それでも、9月は、
月初と中旬の2度の大型台風の影響を受けて客足が減り、
昨年の記録的残暑への反動もあって、
わずか1%未満の売上げとなった。

それにしても、コンビニやスーパーマーケットまで、
マイナストレンドにあるのに、
よくぞ総合スーパーが、
プラスの数値をたたき出したものだ。

健闘をたたえたい。

さて第13回「世界経営者会議」。
日本経済新聞社主催。

この中で、サルヴァトーレ・フェラガモ会長の話がいい。
フェルッチオ・フェラガモ氏。
日経の編集委員・田中陽さんが、
インタビューでまとめた。
田中さんは流通や小売りの専門家。

フェラガモは1927年の創業以来、
「家族経営」に徹している。
いわゆるインディペンデント・カンパニー。
その「優位性」はコーネル大学ビル・ドレイク教授が指摘している。

「『船頭多くして船山に登る』となってしまわないように、
(一族から)1世代に3人だけが入社するというルールを作った」
家族経営・同族経営だが、
1世代に3人だけ、会社経営に携わることができる。

「入社要件の1つは言語、大学卒業、
そして最も重要なのは経験」
「語学力」が、最初に出た要件。
そして「大学卒業」。
現在は、修士課程くらい修めないといけない。

「フェラガモ・グループと縁のない会社で
3年間働くことだ」
さらに「3年間、他人の飯を食って来い」ということ。

田中さんの質問がいい。
「フェラガモにとって、『いい商品』とはどのような商品か」

答えは「高品質」や「こだわり」かと思いきや、
そうではない。
「量産品でもラグジュアリーでも、
目標を達成すれば成功だ」
フェラガモにして、
「量産品」と「ラグジュアリー」の、
プロダクト・ミックスを重視していることがわかる。
私の持論。

「経営利益は、
『コモディティとノンコモディティ』の、
『プロフィット・ミックス』によって生み出される」

その目標を掲げ、
目標を達成すれば、
すべて成功と評価する。ただし、
「我々は生活必需品を売っているわけではない」
フェラガモの製品に対して、
「喜びを感じうる要素、崇拝できる要素」
を、盛り込んでいる。

そのためにフェラガモには、
「クオリティーや職人技がある」
その意味は、
「何百回見ても、その仕事に
感情と情熱がこもっていることがわかる」

「この情熱が重要な成功の一因」と自ら分析する。

そして重要な組織の考え方。
「創造力を発揮してもらうため、
周りには“フェンス”を設けている」

フェンスとは「原則や価値観」。
それを厳然と決めておいて、
「それに合致すれば自由に作っていい」

ピーター・ドラッカーの
「ポスト・モダンの七つの作法」
その三は「基本と原則を補助線として使う」
フェラガモの〝フェンス”の概念は、
これに近い。

すると、「知識も技術も包含した革新が生まれる」
すると「ナレッジ」と「イノベーション」が創出される。
フェラガモさん、ドラッカーを学んでいる。

いいインタビューだった。

もうひとつ田中陽さんのインタビュー。
昨日の日経MJ「売り手の考え」から。
オーケー社長・飯田勧さん。
タイトルは「売り物は『誠実』」

オーケーと飯田さんは、
「消費者に目に見える形で
誠実さを表している」

それがこの会社、
この店の「最大の『売り』だ.

その代表的な手法が、「オネスト(正直)カード」
「カードの会員数は250万人強」

飯田さんは説明する。
「生鮮食品の状態など正しい情報を
お客さんにわかりやすく説明しないと、
理解していただけないからです」
食品スーパーマーケットの基本中の基本。

「お客さまを決して裏切らないことの表れです。
奇をてらったものではなく、
きわめて単純なことですよ」

とりわけて生鮮食品は難しい。
「仮に天候不順で入荷量が少ない生鮮食品を売ろうとした場合、
品薄だと商品の価格は高くなりがちです。
でも品質は良くないものもあります」
スーパーマーケットはこれで悩み続けた。

「何も説明もせずにお客さんが買ってしまうと、
『あそこの野菜はよくない』ということが
頭に残ってしまいます」

「ですから『買っちゃ駄目ですよ』と
説明しないといけません」

ところがなかなかそうはいかない。
「少し気がゆるむとどうしても表示に、
『買ってください』というような内容のことを
書いてしまいがちです」

「それでは駄目なのです」

「『買ってくれるな』と言わなきゃ、
値打ちがありません」

飯田さんの経験法則。
「売り上げを取りに行くと
ケガの方が大きくなります」

荒井伸也先生はこれをゴルフにたとえて、
「ヘッドアップ」と呼ぶ。

座布団三枚!

オーケーは非上場のインディペンデント・カンパニーだ。
「ですが経営指標は細かく公開しています。
2011年3月期の単独の経常利益率は5.6%です」

そのうえで、公開企業のごとく、行動している。
「オーケーの株式を新たに発行して、
お客さまに持っていただいています。
おととしは1株3530円で47万株を発行して
半日で売り切れてしまいました」

顧客参加型企業経営
である。

「非上場なので株価は
経常利益から算出した税引き後利益の
17倍にしています」

日経新聞の資料。
オーケーの2011年3月期の単独売上高は
前の期比7%増の2297億円、
経常利益は15%増の130億円。

経常利益は7期連続の増益。

オーケーの特徴は、
これまたドラッカー言うところの「インテグリティ」(真摯さ)。

フェラガモの「ナレッジとイノベーション」、
オーケーの「インテグリティ」。

インディペンデント・カンパニーの優位性は、
この2社によって証明されている。

今日は田中陽さんの「追っかけ」のようになってしまった。
心より感謝。

<結城義晴>

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