結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年11月25日(金曜日)

[2011帰国後の米欧報告記②]英国テスコの米国版超小型店フレッシュ&イージー・エクスプレスの巻

今日の横浜は快晴。

11月下旬だというのに、
晴れやかな日が続く。

その横浜を後に、
大阪に向かう。

最近、私自身は気分爽快。
申し訳ないくらい。

4大新聞の一面コラムすべてで、
「談志が死んだ」を取り上げた。
どこかがこの回文を使うかと思ったが、
不謹慎だとの批判を恐れたか、
どこも「ダンシガシンダ」とは書かなかった。

ちなみに『談志が死んだ』は、
2003年12月に講談社から単行本として発刊されている。

それにしても一面コラム。
志の輔、談春、志らくなどなど、
弟子たちを養成したという評価をしているが、
談志自身そんなことは二の次だったと思う。

「勝手にしな!」
あの世があるなら、
そう言い放っているに違いない。

私は、談志、志ん朝、枝雀の次は、
まだ出てきていないと感じている。

こういった名人たちは、
団子状態で登場してくるのかもしれない。
団子状態で凡人が出てくるのが常だが。

さみしいことだ。
ほんとうに。

さてクリスマスまで1カ月に迫った。
私も今年、やり残したことをやり遂げねばならない。

その一つが、このブログでの、
アメリカ・ヨーロッパ報告のつづき。

今年は2月の終わりから3月にかけて、
サクラメントとサンフランシスコを訪れた。

その後、3月11日の東日本大震災
私は今でも、東北関東大震災と呼んだ方がいいと考えている。

震災のあと、5月の下旬に、
商人舎ベーシック・チーム90人とラスベガスに居座り、
そのまま次のチームを迎えて、
ラスベガスからサンフランシスコ・サクラメント。

6月はダラス、サンフランシスコ。

7月はコーネル大学ジャパンの卒業研修で、
ニューヨーク州のイサカとマンハッタン。

9月下旬から、再びダラスとサンフランシスコ。

10月中旬は、ドイツ・ケルンとフランス・パリ。

そして10月下旬に、
商人舎スペシャル編&マーチャンダイジング編で、
ダラス、ワシントンDC、ニューヨーク、
ロサンゼルス。

あ~あ、思い出しても、
疲れる。

その最後の10月のレポートが、
完結していない。

これからクリスマスまで、
[2011帰国後の米欧報告記]と題して、
とびとび連載でお届けしよう。

それが私からの皆さんへのクリスマス・プレゼント。

その第2回目となるが、今日は、
フレッシュ&イージー・エクスプレスの巻

私たちがロサンゼルス滞在中の11月2日、
ラシエネガにオープンした超小型店。
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〝Fresh&Easy Express″
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テスコがイギリスからアメリカに進出を遂げたのは、
2007年11月。
店名は「フレッシュ&イージー・ネイバーフッドマーケット」

私はちょうど㈱商業界の社長を辞したばかりで、
この時も西海岸に滞在中だった。

テスコのアメリカ進出とは妙に縁がある。

11月8日にロサンゼルスで5店舗がオープン。

私はノブ・ミゾグチさんとともに、
翌日の11月9日に3店舗を視察した。

この時、ロサンゼルス・タイムズのビジネス欄は、
「ラルフとトレーダージョーをブレンドした店」
と紹介した。

私はそれに反論。
「いや、アルディとトレーダージョーを
足して2で割った店だ」

トレーダージョーもアルディも1万スクエアフィート。約280坪。
そして品揃え限定型。いわゆるリミテッド・アソートメント。
そのうえプライベートブランド主力のフォーマット。

アルディはノンフリルの店で、
ウォルマートをしのぐハード・ディスカウンター。
レーダージョーは安全・安心、健康、環境のマーチャンダイジングを志向し、
さらにホスピタリティあふれる店になっている。

両者はドイツのアルブレヒト・ファミリー傘下の兄弟企業。

テスコのフレッシュ&イージーは、
両社の「良いとこどり」を狙ったものだった。

この時の店舗面積はいずれも、
ちょうど1万スクエアフィート(約280坪)。
品揃えは、3500SKUのリミテッドアソートメント型。
このあたりアルディ、トレーダージョーと同じ。

当初のプライベートブランド(PB)比率は、商品構成の5割。
初年度に91億ドル(9100億円)の初期投資でスタートし、
最新決算の2010年度は164店舗で
年商4億9500万ドル(495億円)

まだまだ大きな赤字。

しかし米国CEOティム・メイスンは、
「400店体制になれば損益分岐点をクリアできる」と発言。

テスコは、イギリス第1位の小売業にしてスーパーマーケット企業。
年商675億7300万ポンド(1ポンド120円で8兆1087億円)、5380店。

本国では、マーケットシェア30%の圧倒的支持をもつ。
その理由のひとつはマルチ・フォーマット戦略

テスコはイギリス本国で主に4つのフォーマットを展開している。
第一に最大のフォーマットがテスコ・エクストラ
これはハイパーマーケット(いわゆる総合スーパー)で、
平均6625㎡(2000坪)、212店。

第二がテスコ・スーパーストアで、
これが標準的なスーパーマーケット。
2780㎡(842坪)で470店。

第三がテスコ・メトロで、1081㎡(326坪)、186店。

そして第四にテスコ・エクスプレス
205㎡(62坪)で1285店。

米国のフレッシュ&イージーは、
英国におけるテスコ・メトロのサイズで、
しかもニューコンセプトが取り込まれていた。

そのメトロ規模の米国フレッシュ&イージーに今回、
エクスプレスを加えて、ダブル・フォーマット戦略となった。

そのフレッシュ&イージー・エクスプレス。
店舗面積は3000スクエアフィート(約85坪)。
2500SKU。

コンビニエンスストア型のスーパーレット(ミニスーパー)。
面積を3分の1に小型化し、品揃えを7割程度に絞り込んだ。

店舗の外側はガラス張りで見通せる。
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店外入り口のところにカート置場。
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チェックアウトは、ネイバーフッドマーケット同様にセルフレジ。
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店舗入り口から右手に青果部門がある。
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クレート陳列で、これは標準店と同じ。
日本のコンビニよりも断然品ぞろえは豊富。
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右手はパック野菜などが並ぶ。
単身者向けの品ぞろえというよりも、
オールラウンドなアソートメントで、
スーパーマーケットの代位機能を果たす。
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青果部門からリーチインケースの精肉部門へ。
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このリーチインケースが、いい。
可視率が高くて、もちろん省エネでもある。
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肉は必需アイテムが品揃えされて、
しかも鮮度が良い。
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そのつき当たり奥壁面が
「Authentic Italian」をコンセプトにしたインストアベーカリー売場。
小型店でも1日3回、インストアでパンを焼く。
右手にジャム類の関連販売。
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その左手には、パッケージド・ベーカリー。
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反対側から見たところ。その奥が駐車場になる。
フレッシュ&イージー・カラーのグリーンの什器が目立つ。
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そして奥壁面はデアリー(乳製品)売場につづく。
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ヨーグルトなどのデザート製品、卵、果汁飲料が並ぶ。
冷蔵リーチインケースの中に絞り込まれた品揃えが、
それでも主力商品は多フェーシングで陳列されていて、
見やすくて買いやすい。
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奥壁面からさらに壁面にそって続く冷蔵ケース。
牛乳コーナーからアイスクリームコーナーへ。
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これはコンビニコンセプトだが、
冷蔵販売するビールやワインの酒コーナー。
1本売りから箱売りまで充実している。
オランダビールを集めた「ダッチコーナー」など輸入ビールも豊富。
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その冷蔵ケースに続いて冷凍ケース。
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冷凍ケースでは冷凍食品、アイスクリーム、氷が売られている。
日本のコンビニよりも圧倒的にスーパーマーケットの品ぞろえ。
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レンジ対応の簡便ミール商品「eat well」 。
これもプライベートブランド。
フレッシュ&イージーはミールソリューション・アイテムの開発を、
活発に展開している。
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オーブンで焼くだけのぺペロニ。
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手羽など冷凍生肉も扱っている。

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壁面の最後は常温で販売する箱売りのビールや水。
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その横には、カフェ・コーナー。
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ホットとアイスのディスペンサーが置かれ、
右横にあるセルフ・レジで、すぐに購入できる。
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冷凍・冷蔵ケースの対面はクッキー・チョコ類の品ぞろえ。
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そのゴンドラエンドには、チョコバーやガムなどの菓子。
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そしてセルフレジがならぶ。
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セルフレジの裏側は雑誌コーナーと切り花コーナー。
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その前にある湾曲した冷蔵ケースが目を引く。
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カット野菜や成形ハンバーグが品ぞろえされた「Fresh Deals」エンド。
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そして入り口付近にデリ・コーナー。
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電子レンジ対応の豊富なプリペアードフードは、
十分にメインディッシュになる。
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パスタ、ピザメニューも充実している。
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1人用で約5ドル、ファミリー容量で15ドルの価格帯商品。
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ゴンドラアイルはシリアル、調味料、飲料など。
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青果コーナーの裏は、スナック売場。
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雑貨類も必需品に絞り込まれている。
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小型店ながらペットフードも品揃えは必需品を欠かしていない。
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カフェコーナーからみるレジ。
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レジは対面配置で5台。
もちろん、セルフチェックアウトのため、
後方にスタッフが1人ついている。
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米国フレッシュ&イージーの品揃えの絞り込みには、
英国での4ケタを超える経験が生かされている。

だから、店内で買物しても、実になめらかに回遊できるし、
不便を感じさせない。

写真を見ていただくだけでも、
この店がコンビニではなく、
立派なスーパーマーケットであることを理解いただけるだろう。
それに重要なことは、
フレッシュ&イージーのレギュラー店とエクスプレスに、
「商品とサービスの統一」が図られていること。

これは相乗効果を生み出す。

この「統一感」に関しては、本国のテスコは、
エクストラからスーパーストア、メトロ、エクスプレスまで、一貫している。

アメリカにはコンビニはあっても、
ほとんどがガソリンスタンド併設型。
日本のコンビニのような、優れて便利な業態は、
アメリカ消費社会には存在しない。

この空白マーケットをフレッシュ&イージー・エクスプレスは狙っている。

このエクスプレスの登場によって、
テスコが日本から撤退する理由も明らかとなる。

いつも言うが、
日本は異常ともいえるコンビニ発達消費社会

これは東京大学の松原源一郎教授が指摘している。

だから、テスコ・ジャパンの小型店やエクスプレスは、
長くて立派なコンビニ・チェーンの行列の一番後ろに並ばざるを得ず、
短期間ではうまくいく目途が立たなかった。

これに対して、アメリカ小売業界は、
コンビニを発祥させたという歴史を持ちながら、
そのイノベーションはストップした。

ここに本国のイギリスで大成功しているコンビニ機能を併せ持つ小型スーパーマーケットを、
しかもダブル・フォーマットでもってくるというのが、
テスコの最初からの戦略だったわけだ。

アメリカでもマルチ・フォーマット戦略を採用し始めたテスコ。
日本からはいち早く撤退を決めたが、
かの地では「成功するまでやる」に違いない。
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「成功するまでやめない」とはいっても、
当面はフレッシュ&イージー・エクスプレスの今後にかかっている。

ウォルマートは、小型店実験の「マーケット・サイド」を閉じ、
「ウォルマート・エクスプレス」というバナーの実験店を出した。
これも簡便ニーズ対応型小型フォーマットである。

ウォルマート・エクスプレスにフレッシュ&イージー・エクスプレス。
アメリカはいま「エクスプレス」ばやりで、忙しいことだ。

<結城義晴>


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