結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月01日(火曜日)

3月の商人舎標語「自分の強みを活かせ」とナゲット・マーケットの「強み=芸術性&ホスピタリティ」

サンフランシスコでは、
3月1日に入ってまだ5時間程度。
午前5時前。

しかし日本では、
3月1日が終わろうとしている。

その3月の商人舎標語。
「自分の強みを活かせ」

アメリカに来ていると、
ことさら、そう思う。

ピーター・ドラッカー先生の持論だが、
これだけ自分の強みを知り、
強みを主張するアメリカ人に対して、
ドラッカー先生はさらに言う。
「自分の強みを知れ、強みを活かせ」

ドラッカー先生は、
オーストリア生まれのユダヤ系アメリカ人。

私にもオーストリア人の友人が一人いる。
パリ国際食品見本市のシアルドール審査委員仲間の一人。
彼は強い個性をもっていた。
頑として曲げないところがあった。

ドラッカー先生ご自身、
「強みを知り、強みを活かす」ことによって、
生き抜き、成果を上げてきたから、
こう諭すのだと思うが、
奥ゆかしい日本人に対しては、
どれだけ強調しても足りることはない。

だから新年度が始まるときの標語。
「自分の強みを活かせ」

あなたの強みは、何ですか?
即座に答えることができますか?

あなたの店の強みは何ですか?
それをお客様に伝えていますか?伝わっていますか?

あなたの会社の強みは何ですか?
会社全体でそれを意識していますか?

弱みを直そうとするより、
強みを活かし、強みを伸ばす。

どんな人にも、
強みがあり、
弱みがある。

強みがなくて、
弱みしかない人はいない。
強みばかりで、
弱みのない人もいない。

自分よりも、他人のほうが、
強みが多くて、弱みが少ないように、
見えるかもしれないが・・・。

しかし自分でそう思っている者こそ、
自分を強調し過ぎるきらいもあるから、
人間はおもしろい。
「マエデビッチ・ジマンスキー」
ロシア人ではない。

主張は、謙虚でもいい。

自分の強みを知る者は、
謙虚なモノの見方、考え方を知っている。
自信があるからだ。
本来、「強みを知る」ことの意味は、
この謙虚さを生み出すところにある。

「自分の強みを活かせ」
今月の標語。

よろしく。

さて3月。
プロモーションの山は二つ。
3月3日(木曜日)の桃の節句。
3月21日(月曜日)の春分の日。

春分の日は三連休の最後の日。

ひな祭りの桃の節句は、祭日ではない。
桃の花が咲くころ。

桃の花は、啓蟄の頃に咲く、とされる。
今年の啓蟄は3月6日。

毎年、梅の花、桜の花はよく見るが、
生の桃の花には意外なことに、
お目にかかることがほとんどない。

それでも桃の節句。

女の子のお祭り。
例えばスーパーマーケットの場合、
主要顧客は主婦。

ターゲットはそのままひな祭りの主役。
だからこそ効果は高い。

商品にも特徴がある。

第1に、ちらし寿司。
『クックパッド』では、
「えりほのちらし寿司」が、
真っ先にヒットする。
第2に、はまぐりの吸い物。
昔の女の子の「貝合わせ」という遊びに、
はまぐりの貝殻が使われる。
トランプの「神経衰弱」のようなもので、
一対になっている貝以外には合わない。

このはまぐりの吸い物には、
「一人の男と生涯連れ添う」という願いが込められている。

考えてみると恐ろしい願いだが、
ひな祭りの必需品。

第3は、赤・白・緑三色の菱餅。
赤は、厄祓いと解毒作用があるクチナシで色づけされ、
健康を意味する。
白は、菱の実を入れ、清らかさを表す。
緑は、増血効果がある蓬(よもぎ)を入れ、若草を表わす。
春らしい三食だが、
イタリア国旗が赤・白・緑。
何の関係もないが。

第4は、雛あられ。

そして第5に白酒。神様に捧げるおみき。

ひな祭りの桃の節句は、
子どもの日の端午の節句より派手で華やか。
根底には「春の喜び」がある。
目いっぱい盛り上げて、
顧客とともに春の訪れを、愛でたい。

さてアメリカ報告。
今日は、ナゲット・マーケット。
今回のアメリカ視察の目的のひとつ。

カリフォルニア州サクラメント市に本拠を置く小売企業。
スーパーマーケットのナゲット・マーケットを9店、
ディスカウント型のスーパーウェアハウスストア「フード4レス」を3店舗展開し、
2009年度年商2億8800万ドル。

サクラメントに10店舗を展開し、
4.4%のシェアを有する。

その独特の店づくりとホスピタリティは、
規模は小さいながらも全米小売業界で知らぬ者がいない。
2月25日に最後に訪れたデイビス店。
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夕闇が迫っていたが、
素晴らしい青果部門がまず、
我々を迎えてくれた。
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鮮度が良くて、プレゼンテーションも素晴らしい。
その上、「安さ」を打ち出す。

さらに、ホスピタリティ。
店を出たところで、
高齢のご婦人客に出会った。
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「どこから来たの?」
「日本ですよ」

高校生のアルバイトの女の子が、
杖をついたご婦人客に付き添って、カートを押していく。
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そして車のトランクにショッピングバッグを丁寧にしまいこんだ。
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女の子はご婦人と、ずっと話している。
まるで本当のおばあさんと孫のよう。
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これがナゲット・マーケットのホスピタリティ。

店や売場の素晴らしさは、ナゲットの特長。
価格の安さも、ナゲットの武器。
それ以上にホスピタリティがナゲットの生命線。

9店舗あるナゲット・マーケットの中で、
「エル・ドラド店」を紹介しよう。
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2008年オープンの最新店。
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ナゲット・マーケットは、
すべての店が1店1店、
違った顔をもつ。
ファサードも異なる。
ロゴのナゲットとは「金塊」の意味。
このエル・ドラドからは砂金が出た。
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ファサードはヨーロッパの街のよう。
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店内は芸術品のようだ。
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とりわけて入り口正面の青果部門。
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このアートのような野菜売場から、
顧客は丁寧に、丁寧に、
芸術作品からピースを抜きとるように、
商品を買ってゆく。
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天井には採光システムが導入されている。
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青果部門サイドの果物。
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青果売場のサイド。
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店に入るとすぐ左手に花売場。
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フローラルのインショップ。
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その後ろにコスメティクスの売場。
ここが素晴らしい。
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真ん中に石造りの什器。
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石鹸のプレゼンテーションも美しい。
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壁面のコスメティクス。
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青果部門からリカー部門への導入スペースに、
島陳列。
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店舗左手はワイン売場へと続く。
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店舗左翼壁面は、ワインボトルでデコレーションされている。
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ワイン、シャンパン、ビール、ハードリカー。
フルラインの展開がなされる。
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日本のコンビニのように冷蔵ケースでビールやワインが売られている。
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グレードの高いワインは特設什器に陳列。
品揃えの幅は広い。
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冷凍食品売場のリーチインケース。
ウェット・ルックの床。
すなわち濡れたように見える床の輝き。
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奥主通路沿いのエンド陳列。
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ボリューム感いっぱいの大量陳列。
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「STOP」はナゲット・マーケットの「特売」。
エンドが高々と積まれ、
真ん中に「STOP」のPOP。
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青果部門の裏側の菓子売場。
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コーヒーのプレゼンテーションにも、
目を引く仕掛けがある。
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加工食品のゴンドラ・アイルは長い。
手前は波型什器で変化をつける。
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ただしナゲットの政策はナショナル・ブランドの安売り。
競合店がプライベートブランドに特長ある商品を揃えてくると、
ナゲットの特性は消されてしまう。
それが問題。

ナゲットにも積極的なプライベートブランド開発の季節がやってきそうだ。
乳製品から、店舗右手のフードサービス部門へ。
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店舗右翼は「フードサービス」コーナー。
つまり惣菜デリの対面売場が連なる。
まず、寿司売場から。
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中央にセルフサービスのサラダバー、スープバー、
大皿デリ売場のアイランドがあって、
壁面は対面売場。
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惣菜デリの味の面で、
ナゲットには今一歩上のレベルが要求されている。
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惣菜デリの向かい側にある簡便商品売場。
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エル・ドラド店を訪れる日本人は少ない。
しかし、ここにはナゲット・マーケットにしかないものが満ち溢れている。

壁に掲げられたミッション・ステートメント。
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そしてナゲット・マーケットの象徴。
羽根の生えた豚。
不可能を可能にする意味が込められている。
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店舗背後には新興住宅が並ぶ。
典型的なサバブ立地。
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その中にナゲット・マーケットを核店にしたショッピングセンターが、
ヨーロッパの都市のように展開されている。

この光景そのものが、
芸術品のようだ。

店や売場の芸術性は、ナゲットの特長。
価格の安さも、ナゲットの武器。
ホスピタリティもナゲットの生命線。

そしてこれらの総合力こそが、
「ナゲット・マーケットの強み」なのである。

<結城義晴>


2 件のコメント

  • 結城先生、いつも素晴らしいブログをありがとうございます。
    すごく勉強になります。

    「自分の強みを活かせ。」

    この言葉にはとても勇気づけられます。

    日本人の特性なのかもしれないのですが、ともすれば自分の出来ないことや足りない部分にばかり目がいってしまい、

    いつのまにか自信までをも失ってしまっているという事が多くあるように感じています。

    「自分の強みを活かせ。」

    このシンプルな言葉に、特にローカルなマーケットが求める答えが隠されているようにも思います。

    ステキな言葉をありがとうございます。

  • 杉浦大西洋さま、久しぶりです。
    ご投稿ありがとう。

    「自分の強みを活かせ」
    私自身を力づけてくれる言葉でもあります。
    そして何にでも関心と興味を持って、
    拡散していこうとする私を戒めてくれる言葉でもあります。

    この言葉の前で私は、
    謙虚さと同時に確信をもって、
    毎日を生きることができます。

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