スーパーマーケットのマーケティング Vol.30

2011年4月7日(木曜日)

カテゴリー: 試行錯誤的問題解決  10時05分43秒

30.試行錯誤的問題解決

■トータルイメージの共有化

 さて、話を「おいしさに焦点をおいた、ライフスタイル商品開発」の試行錯誤的アプローチに戻す。関西スーパーマーケットのケーススタディに学ぶように、手順としてまず大事なことはトータルイメージを共有化することである。次いで、目標決定を行い、逐次目標内容を具象化した表現に直しながら、実施に移すということである。

 関西スーパーマーケットのケースとここで論ずる課題の違いは次の2つである。

 第1はトータルイメージのつくり方の違いである。
関西スーパーマーケットでは、ハワイ研修でトータルイメージの共有化をはかったが、今回のプロジェクトでは参考とすべき既存モデルが全くない。トータルイメージの共有化の段階でも両者は異なる方法を取らざるを得ないのである。

 第2は目標設定の仕方の違いである。
関西スーパーマーケットのプロジェクトは業務システムの開発であるのに対し、今回のプロジェクトは戦略の転換である。業務システムの開発、改善では、最終プロセスのあるべき姿を描き出し、目標とする。このプロジェクトでは、品揃えを変えること、作業的に言い直せば、最適と思われる品揃表を作成することが目標となる。これは現状営業プロセスモデルの最初のプロセスである。

■試行錯誤的問題解決のまとめ

 このシステムでは、目標を達成するためには品揃えの逐次改善のためのフィードバックシステム、なかんずく、コンピュータによるデータシステム、より具体的には、単品管理データシステムの改善が必要になってくるであろう。

 以上いろいろ述べてきたことを要約すると下記の通りになる。
1. 問題解決を意識的・意図的に行うと状況、課題のタイプによる解決プログラムの違いを分類できるようになる。
2. 分類してプログラム案を提出すると、トータルイメージの共有化の方法が見つけやすくなり、共有化の速度、精度が高まる。また、目標設定の方法も向上する。
3. 操作的な目標設定すると、運営のためのトータルプログラムの整合性が高まり、フィードバックを繰り返すたびに目標の特定化・重点化が進む。
4. 目標の特定化・重点化が進む中で関係者全員(店舗のパートさんやアルバイトまで)役割意識が高まり、協業度も向上する。

 さらにこの要約を一口にまとめると、組織の成熟度が高まるということになる。

続きます

スーパーマーケットのマーケティング Vol.29

2011年4月5日(火曜日)

カテゴリー: 試行錯誤的問題解決  11時48分43秒

29.関西スーパーの「試行錯誤的問題解決」

■天才のひらめき

 ここで試行錯誤の行為を分析してみよう。
生鮮売場の画期的改革時の行為の分析である。

 関西スーパーでは、ダイエーなどGMSの出店など、相次ぐ競合店の出現により、業績が伸び悩みだした頃、当時の北野社長は打開策を模索するため、アメリカのスーパーマーケットの視察に出かけた。その際、青果売場の良い香りをかいで「これだ」とひらめいたものがあったという。私は後にこの経緯を聞いた時、「天才のひらめき」だと思った。

 「これだ」は「生鮮強化、そのための鮮度管理」というコンセプトとなり、社員達に伝えられた。社員達は恐らく、「では何をしろと言うのか」と訝ったであろう。北野社長は言葉で説明するばかりでなく、幹部社員を研修のためにハワイのスーパーマーケットへ派遣した。研修は1回だけではなく、数回繰り返された。北野社長自身も研修に参加して、夜間はその日の研修内容を話し合った。研修とは言っても、講師がいたわけではない。毎日の仕事ぶりを一日中観察し、時には作業の実習を体験させてもらい、分からないことは質問して答えてもらい、自分主体の研修をしたのである。

 自分の目で活動の実態から学ぶことにより「生鮮強化」とは何をすることかがはっきりしだした。研修を繰り返すことにより、イメージは広がり、かつ深められた。話し合ったことにより、活動のプロセスはより明確になり、プロセスごとのキーポイントもはっきりするようになった。

 北野社長自身も自らが学んだ。話し合いの中で学んだことも多かったはずである。そして何より大事なことはトップと幹部社員の間でこれからやるべきことについてのトータルイメージが共有化できたことである。共有イメージの有無はシステムの設計・実施・修正すべての段階で精度に決定的な影響をもたらす。

■鮮度管理のトータルイメージ

 関西スーパーマーケットはプロセスモデルの最終プロセス陳列状態のあるべき姿についてイメージがほぼ一致していた。順次このイメージを言葉で表現していったのであるが、その1つ。
「陳列してある商品の鮮度は、すべて一定水準以上でなくてはならない。」

 この表現1つで売場イメージは客観化される。同時に一定水準とは何か、という疑問が浮かぶ。肉なら変色度、魚ならドリップの有無、青果ではみずみずしさ(乾燥度と変色度)で水準を決めることができる。目で見た水準より客観するために、商品化した日から何日以内の商品に限定する、日付管理。2つの基準の併用法は?というようにイメージは順次具体的な課題となって展開される。

 また、基準内のみの商品を陳列するためには前プロセスの品出しの仕方、さらに前プロセスの商品づくり、さらに保管のプロセス1つ1つ。そして基準を超えた商品の処理法、ロスの防止策、というように設計は進んでいく。

続きます

スーパーマーケットのマーケティング Vol.28

2011年3月31日(木曜日)

カテゴリー: 試行錯誤的問題解決  10時44分42秒

28.新戦略を開始する時のむずかしさ

■品揃えを決めるむずかしさ

新戦略をスタートさせる時、最初に戸惑うのは商品部のバイヤー達であろう。新戦略のコンセプトが解り、自分の役割をも納得したとしても、役割を果たすための具体的な行動を明確に把握し、それをやらなければならない。

 バイヤーの役割の1つは、品揃えを決めることである。コモディティ商品の他にライフスタイルも加える。そこまでは分かった。コモディティ商品の品揃えの方法も理解している。しかし、味に焦点をおいたライフスタイル商品の品揃えとはどんな品揃えなのだろうか。

 これまでは分からないことは、解決のヒントを得るため、他店見学に行った。時にはアメリカの視察旅行に参加した。しかし、今回はそんな方法では解決できそうもない。

 そんな戸惑いであろう。

■「問題解決」とは

 結論から先に言えば、戸惑いの正体は試行錯誤的問題解決に不馴れなことである。

 不馴れと言ったが、正確には意識的にしなかったと言い直すべきであろう。スーパーマーケットはさまざまな試行錯誤を積み重ねて今日の企業システムを築き上げてきた。今にして思えば、試行錯誤をしているという自覚なしに、試行錯誤を続けてきたのかもしれない。

 一般に問題解決とは、「目標を決定し、目標達成の手段を選択し、手段を行使して、目標を実現すること」と定義されている。

 また、目標到達のための基準から逸脱した行為を基準内に修復することを問題解決と呼ぶこともある。

 日本では、日常は後者の定義による用語使用のケースが多い。しかし、経営トータルを論ずる場合は、先に述べた定義による用語使用が多くなる。

 さて、前者のケースでは、目標も手段も明確になっていれば、問題解決は比較的容易である。とはいえ、経営目標(例えば年間利益目標)を達成することは、決してやさしいこととは言えない。理由は手段が多すぎる上に、絡み合っていて、それらをすべてクリアすることはむずかしいからである。

 まして、目標は示されても手段がすべて分からない場合、問題解決は更にむずかしくなる。こんなむずかしさを試行錯誤的に解決し続けてきたと言えよう。

続きます