2010年7月20日(火曜日)
★輸送の中継点に必要となる荷役の作業
船舶や航空機、鉄道といった輸送機関は、
国際間も含めた広域の輸送に使われるため、
発着荷主のいる都市と最寄りの鉄道駅や港湾、空港間の輸送のために、
他の輸送機関に荷物を積み替えることになる。
また、発荷主から着荷主まで
“ドア・ツー・ドア”の輸送が可能だといわれる自動車輸送でも、
一部の荷物を除いて、実際に同じトラックで全区間を運ぶわけではない。
通常は、コストも含めた輸送効率の面などから、
都市内の集荷配送は中小型トラック、
都市間の幹線輸送は大型のトラックというふうに使い分けられている。
そこで、輸送機関やトラックを変更し、
集めてきた荷物を方面別にまとめたり、
逆に大量に混載された荷物を仕分けしたりするために、
いったん積み降ろしたり、倉庫に保管するための荷役の作業が必要となる。
このような荷役の作業を担い、
輸送の中継点としての役割を果たしているのが、
駅や港湾、空港に設けられた物流ターミナルである。
荷役は輸送や保管と不可分の面があるため、
人類がモノを運ぶようになった時点から存在し、その歴史は古い。
モノが集散する宿場や港には、古くから荷役を行う人たちが必ず控えており、
その中から港湾運送事業者が生まれた。
陸上の物流が鉄道主体になると、
各駅で荷物を扱う通運会社(フォワーダーの前身)が誕生。
やがて、陸運の中心が自動車に移ると、
都市近郊の高速道路やバイパス沿いにトラックターミナルがつくられ、
陸運の中継点としての役割を果たすようになった。
現在、港湾運送事業者の数は940者弱(2006年度)。
地域性が強く、それぞれが地元の港湾を主体に事業を行っていて
各事業規模はあまり大きくないが、
事業者の営業収入を合計すると1兆円超となる
(2005年度、いずれも国交省調べ)。
一般トラックターミナルについては、
全国に17事業者、23か所(2006年度、国交省調べ)ある。
公共性も高いため官主導でつくられてきた経緯もあり、
自治体と民間の共同出資による第三セクターが多い。
空運の荷役については、輸送機関が飛行機ということで、
荷物自体の大きさや重量が限られているため、
航空機会社やフォワーダーなどが担うことが多く、
専門の荷役事業者が占める割合はあまり大きくない。
さて、小売業・サービス業の商品や原材料の供給などを
裏方として支える物流業界について、
12のテーマに分け14回にわたって紹介してきた。
拙い連載が、「知られざる」パートナーの理解に、
少しでも役立てていただけると幸いです。
最後になりましたが、この場を提供してくださった商人舎さんと、
読者の皆さんに心から感謝申し上げます。
(完)
〈by 二宮 護〉
2010年7月13日(火曜日)
★事業収入で1兆6000億円超の営業用倉庫
物流コストの3割強を占めるのが、保管コスト。
「保管」することにより、生産から消費までの「時間の隔たり」を埋め、
需要に応じたタイミングで供給するための需給調整が行われる。
物流上そうした機能を果たしているのが、倉庫事業だ。
倉庫は、保有者によって営業用倉庫、自家用倉庫など4種類に大別される。
わが国の全保管能力の2割弱程度を担っているのが、営業用倉庫だ。
そして、営業用倉庫は、「倉庫業法」で保管形態ごとに、
普通倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫などに分類されている。
約5300社の倉庫事業者のうち、
普通倉庫の事業者数は4100社あまり(2006年度)。
1965年から40年間を経て3.2倍に増えているが、
所管面(容)積についてはそれ以上に大きく増やしており、
1事業者当りの規模が拡大していることがわかる。
普通倉庫の入庫量と平均月末在庫量は、
2億3600万トンと3600万トン(2006年度)。
その内訳で突出したものはないが、化学工業品や食料工業品、
農水産品、雑工業品など、さまざまな工業製品が在庫として保管されている。
一方、冷蔵倉庫の事業者数は約1200社(2006年度)。
1975年からの30年間で数を少し減らしているが、
所管容積、入庫量、平均月末在庫量は各2倍強となっており、
こちらも1事業者の規模は拡大していることがわかる。
入庫量と平均月末在庫量は、1800万トンと280万トン(2006年度)。
そのうちの大半が食品で、
水産物、畜産物、農産物やそれらの加工品が多い。
倉庫では、保管することに加えて、
大量輸送されてきたモノを、輸・配送するために小分けしたり、
行き先別にまとめるなど輸送調整が行われることも多く、
包装や流通加工などといった、他の物流サービスを提供する
物流拠点としての役割も重要になっている。
国交省による倉庫事業の経営実態調査でも、
はっきりとその傾向がうかがえる。
普通倉庫業の事業別の売上構成を見ると、
普通倉庫事業は18.9%に過ぎず、貨物自動車運送事業15.9%、
港湾運送事業15.5%、利用運送事業13.1%と
輸送や荷役の比率が高まっている。
一方、冷蔵倉庫業では、
冷蔵倉庫事業が19.6%とやはり全体の2割を切り、
食品事業(食品加工・販売)が54.1%、
利用運送事業が10.6%となっている(いずれも2007年度)。
さらに、倉庫部門の収支を保管・荷役別に見ると、
普通倉庫業の1社平均の経常収益は、保管部分が8億9860万円、
荷役部分が6億4760万円。
冷蔵倉庫業では、同じく9億2080万円と5億1690万円と、
荷役部分のウエートもかなり高い。
倉庫業界全体は、営業収入で1兆6000億円超、
従業員数で10万名という規模となっている。
なお、近年、自家用か営業用かにかかわらず、
いわゆる物流センターや配送センターと呼ばれる
物流拠点をもつ企業も増えている。
倉庫とは単なるネーミングの違いというケースもあるが、
一般的に、倉庫は比較的長期の保管を行うもの、
物流センターや配送センターは、近々に出荷する在庫を留め置いて
流通加工などを行うものということができるだろう。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年7月6日(火曜日)
★国際輸送で存在感を高める航空輸送
貨物輸送において、スピードと確実性に優れているのが航空輸送だ。
航空機の大型化や増便などで輸送量を増やしてはいるが、
いかんせん他の輸送機関に比べて1回当りの輸送量が少なく、
量的な面で存在感を示すにはむずかしい面がある。
航空機による国内の貨物輸送量は、
2007年度で114万6000トン、11億4600万トンキロ。
輸送機関別の分担率は、それぞれ0.02%と0.2%であった。
だが、平均輸送距離は1045.5キロと、他の国内輸送機関より断然長い。
鉄道や内航海運の2倍以上、自動車と比較すると14.5倍である。
高コストながら、小さくて軽いものであれば遠距離を短時日で輸送でき、
輸送事業の一部のニーズに応える役割を担っているのだ。
一方、国際空運の輸送量は、07年度が315万2140トンであった
(うち輸出が160万6150トン、輸入が154万5990トン)。
このうちのわが国の空運事業者分が137万6070トン、
トンキロベースでは85億186万トンキロとなっている
(定期分で、超過手荷物分および郵便物を除く)。
その方面別の内訳は、アジア、米大陸、中国がそれぞれ20%を超え、
欧州が10%台で続いている。
大きく伸びているのは中国、韓国で、その他アジア、欧州方面では微増、
台湾、米大陸、太平洋、オセアニアは減少している。
航空輸送の大きな特徴は、小さく軽く貴重なものを運ぶのが得意なこと。
そこで、重量ベースではなく金額ベースで国際貨物輸送の状況を見ると、
1980年の船舶輸送と航空輸送の分担率は、91.4%対8.6%だったが、
徐々に分担率の差を縮めて、2006年には72%対28%で分け合うまでに
航空輸送が存在感を増している。
国際貨物の総輸送量のうち、航空機による割合を「航空化率」というが、
輸入ではダイヤモンド、貴石、航空機、半導体等電子部品、
航空機用内燃機関は、いずれも航空化率が96%を超えている。
また輸出では、真珠、半導体等電子部品、映像機器、科学光学機器、
医薬品などの航空化率が60%以上となっている(06年度。金額ベース)。
このように、国際航空輸送はここ20~30年で大きく勢力を拡大している。
その理由には、上記のように半導体等電子部品といった、
小さく軽量で高額な貨物の輸送が増えていることが一つ。
加えて「クーリエ」や「S/P(スモール・パッケージ)」と呼ばれる、
企業間中心の国際宅配便サービス(契約書や商品サンプルなどを運ぶ)で、
航空輸送が広く使われるようになったことなどがあり、
今後の拡大も大いに期待されている。
空運市場には、貨物輸送専門の航空会社だけでなく、
旅客輸送を兼業する航空会社やフォワーダー(本連載の7回目参照)、
「インテグレーター」と呼ばれる外国資本の巨大な総合物流会社
(UPSやフェデックス等)などが参入している。
日本では、フォワーダー以外の70数社の空運事業者のうち、
貨物の輸送実績のある定期航空輸送事業者は20社あり、
その営業収入の合計は3971億円(06年度)である。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年6月29日(火曜日)
★国内対象の内航海運、海外貿易の外航海運
船舶を使った輸送事業が、いわゆる海運事業。
その海運のうち、国内を対象とするのが内航海運だ。
2007年度の輸送量は4億970万トン、トンキロでは2030億トンキロ。
輸送機関別の分担率でいうとトンで7.6%、トンキロでは34.9%と、
国内輸送の中核的な存在となっている。
戦後にわが国が物流量を増やしていく際に、
輸送量があまり増えずに分担率を下げ続ける鉄道に代わって、
増加分を自動車とともに吸収してきたのが内航海運である。
自動車輸送のような機動性や利便性はなくても、
長距離・大量輸送にはきわめて適した輸送モードとして、
自動車輸送を補完する形で存在意義を維持してきた。
現在でも輸送距離別の分担率では、
輸送距離を伸ばすほどにその存在感を増し、
500キロ以上ではほぼ自動車と互角、
750キロ以上になると自動車と逆転して最も分担率が高い。
わが国では古くから船舶輸送が行われてきたが、
近代になって沿岸部に多くの臨海工業地帯ができると、原材料を運び込み、
できあがった製品を消費地などへ運び出す役割を、中心になって担った。
それは現在にも続き、セメントや石油製品、鉄鋼を中心とした金属など、
いわゆる産業基礎物資の8割(トンキロベース)を運ぶとともに、
自動車や電気などの工業製品、
食料品や日用品といった生活物資などの輸送も手がける。
一方、海運事業のうち、海外との輸送を行うのが外航海運である。
日本は食料やエネルギー、工業原料といった資源に乏しく、
それらを海外から受け入れることで成り立っている。
さらに、輸入したエネルギーや原材料をもとに、
進んだ技術でつくり出した工業製品などを海外に輸出して外貨を獲得し、
世界有数の経済大国と呼ばれるまでになった。
貿易はわが国の死命を制するライフラインの役割を果たしており、
それを支える国際貨物輸送で非常に大きなウエートを占めているのが
外航海運だといえよう。
2007年のわが国の海上貿易(船舶による輸送)量と貿易額は、
9億6406万トンと107兆5541億円。
内訳は輸出が1億5022万トン(55兆2984億円)、
輸入が8億1384万トン(52兆2557億円)となっている。
品目別に見ると、輸出では機械類や乗用自動車、鉄鋼、電気製品など、
輸入では原油、石炭、鉄鉱石、
LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、
トウモロコシや大豆、小麦といった穀物類などが多い。
地域別には、輸出全体の約7割が対アジア、次いで北米が1割弱、
残りが欧州、大洋州(オセアニア)、中東、中南米、アフリカと続く。
輸入では大洋州と中東がともに3割弱、アジアが2割5分近くで続き、
残りを北米、中南米、少し差があいて欧州、アフリカが分け合っている。
実は、外国から日本の港へ運ばれてきた物資や製品、
あるいは日本から輸出されるさまざまな貨物など、
外航海運の扱う荷物の6割弱を内航海運が日本各地の港へと運んでおり、
これは世界にもあまり例のないことだと言われている。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年6月22日(火曜日)
★鉄道輸送の多くを占めるのはJR貨物
各輸送機関にはそれぞれ特徴があり、その特徴に応じた役割を果たしている。
同じ陸運でも、自動車と鉄道では次のような特徴の違いがある。
自動車輸送は、そこに道路がある限りドア・ツー・ドアで、
積替えなしに素早く運ぶことができる。
そのため、積荷に間違いが生じにくく、荷傷みが少ないこと、
そして、発着時間を指定する自由度が高いなどが利点。
ただし、運べる重量が1台で15トン程度と限られており、
比較的少量の貨物を近距離運ぶのに利用される。
また、道路の混雑具合によって輸送時間に差が出ること、
CO2(二炭化酸素)の排出量が多く、振動や交通渋滞の原因になるなど、
環境への負荷が大きいという欠点もある。
一方、鉄道による貨物輸送は、主流のコンテナ輸送の場合、
貨物列車一編成で大型トラックの50~65台分がカバーできるなど、
大量の貨物を一度に長距離運ぶことが可能だ。
また、道路のような渋滞はないため、輸送時間が正確に予測でき、
CO2排出量も少なく環境に優しい輸送機関だといえる。
反面で、発着地でトラックとの積替えが必要なことや、
専用線が少なく旅客線を借用するため、運行本数が少ないなどの問題がある。
鉄道輸送は、第二次大戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、
わが国の国内貨物輸送の主役の座を占めていた。
だが、1970年前後をピークに輸送量を減少させるとともに、
輸送機関ごとの分担率もどんどん下げてきた。
2007年度では、5085万トン、233億3400万トンキロを運ぶが、
国内貨物輸送量のそれぞれ0.9%と4.0%の分担率になっている。
ただし、環境負荷の少ない輸送機関を使おうという
「モーダルシフト」の動きが追い風になって、復権の兆しが指摘されている。
鉄道輸送の形態には、
「コンテナ扱い」と「車扱い(しゃあつかい)」の2種類がある。
「車扱い」とは、通常の貨車や石油などを運ぶタンク車などを
1車単位で貸し切って輸送する形態。
「コンテナ扱い」は、貨物をコンテナという容器に混載して、
容器ごと貨車に載せて輸送する形態のこと。
以前は車扱いが鉄道輸送の主力として、
「4セ」と呼ばれる石油、セメント、石灰石、石炭を中心に
素材型の貨物を大量に運んでいた。
ところが、産業構造が変化して素材型の産業が海外へ移転し、
対象となる貨物量が激減してしまったうえに、
残った分も自動車輸送に取って代わられた面がある。
それに対して1959年から始まったコンテナ扱いは、
貨物の小ロット化に対応できることと、
自動車と共同して発荷主と着荷主の間を一貫輸送することが可能で、
自動車輸送と共存しながらその地歩を築いてきた。
その結果、定時制が重視される各種工業品の調達や出荷、
比較的大ロットの貨物輸送、宅配便貨物の幹線・長距離輸送、
農産品や引越し荷物などに多用されるようになった。
コンテナ自体も大型化される一方で、換気のできるもの、
低温輸送のできるもの、あるいは液体用、粉粒体用のコンテナなど、
さまざまな用途に応じられるように多様化している。
その鉄道輸送を支えるのが、
1987年の分割民営化によって旧国鉄の貨物輸送部門を引き継ぎ、
営業路線の大半をJR旅客会社各社から借り受けて全国展開する
日本貨物鉄道(JR貨物)である。
同社は鉄道輸送全体の輸送量のうちの71%
(トンキロでは同社の平均輸送距離が長いために99%)を占める。
JR貨物以外の事業者には、
同社の関連会社である臨海鉄道会社が10社と、
民間の鉄道会社(貨物専門、旅客事業との兼営の双方がある)が加わる。
ただし、いずれも地方での短距離運行のため、
業界全体の営業収入である1345億円のうち94%、1270億円は、
唯一全国展開しているJR貨物による(2006年3月期)。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年6月15日(火曜日)
★各事業者はきわめて零細性が強い
わが国の国内輸送の大半は陸運によるが、
なかでも輸送重量(トン数)で9割超(トンキロでは6割超)の分担率と、
圧倒的な存在感を示しているのが、トラックなどの自動車輸送だ。
この背景には、モータリゼーションの進展に加えて、
国土面積が狭い上に、都市部に人口が集中するわが国にあって、
自動車輸送はドア・ツー・ドアで小回りが利くなど、
機動性と利便性の高い点が歓迎されたことが大きい。
さらには、多品種少量生産・販売の体制が進み、
製販業者が原材料や部品、商品の在庫をできるだけ圧縮し、
必要なモノを必要なときに必要なだけ入手する
小ロットのジャスト・イン・タイム物流が求められ、
それに応えられる形態ゆえに伸びたという面も見逃せない。
現在では、生産活動や消費生活などに関わる広範な荷物を扱っており、
その内訳は、いわゆる緑ナンバーの「営業用」自動車では、
砂利や石材、木材、廃棄物などの「建設関連貨物」が35%、
機械や金属、石油製品などの「生産関連貨物」が34%、
食料工業品、日用品、農水産品など「消費関連貨物」が31%。
一方、白ナンバーの「自家用」自動車のほうは、
65%が「建設関連貨物」とやや偏った構成で、
残りの21%が「生産関連貨物」、14%が「消費関連貨物」となっている
(いずれも2006年度、全日本トラック協会調べ)。
自動車輸送事業は、次のように分類される。
◎一般貨物自動車運送事業
1台のトラックに単独の荷主の荷物を積んで輸送する事業。
霊柩(れいきゅう)運送事業や引っ越し事業なども含まれる。
◎特別積合せ貨物運送事業
不特定多数の荷主の荷物を混載し、
定時にターミナルと呼ばれる物流施設間を結んで輸送する事業で、
「特積み」と略称されている。宅配便事業も含まれる。
◎特定貨物自動車運送事業
継続的に1企業など特定の荷主の荷物に限定して輸送する事業。
◎貨物軽自動車運送事業
軽自動車を使ったトラック輸送事業。
「軽貨物」として黒ナンバーで営業。バイク便などが含まれる。
国交省の資料によると、
これらの自動車輸送事業者の総数は、個人事業主も含んで6万3122者。
そのうち91・4%の5万7672者が「一般」事業者で、
残りが「特積み」292者(0.5%)、「特定」761者(1.2%)、
「霊柩」4397者(7.0%)という構成(いずれも08年3月末現在)。
なお、「軽貨物」は別統計だが、
同時期で15万7258者が存在している。
「軽貨物」を除いた6万3000余の総事業者の従業員数は、
07年3月末現在で132万人、うち運転者数が約92万人。
保有車両数は、08年3月末現在で特積みトラックが1万6000台、
「一般」「霊柩」「特定」を合わせた地場トラックが111万6000台で、
これ以外に自家用トラックが588万台ほど使われている。
事業者の規模では、
「一般」の99.9%、「特積み」でも90%弱は中小企業と、
きわめて零細性の強い業界である。
従業員数では10人以下が47%、30人以下で82%、100人以下で89%。
車両数は10両以下が55%、30台以下で87%、100台以下で93%。
資本金では300万円までが19%、1000万円までで63%、
3000万円までで87%が含まれている(08年3月末現在)。
自動車輸送事業の営業収入は、07年3月期でおよそ14兆3000億円。
低下傾向からいったん持ち直したが、環境問題などで逆風も受ける。
さらに、08年秋からの世界的な不況の影響で、
輸送量とともに落ち込んでいたが、ようやく反転の兆しが見えてきたようだ。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年6月8日(火曜日)
★鉄道に代わり自動車が国内輸送の主役に
前回に紹介したように物流、なかでも輸送の仕事は、
トラックなどの自動車、鉄道、船舶、航空機といった輸送機関が担っている。
ではそれぞれの輸送機関は、どの程度の勢力を占めているのだろうか?
わが国の国内輸送に限ると、
1年間に運ばれる荷物は、約54億トンといわれる(2007年、平成19年度)。
そのうちの49億トンは、トラックなど自動車輸送によるもので、
分担率でいうと、全体の9割超を自動車輸送に依存している。
自動車輸送に次いでは、
大きく差が開いて内航海運の4.1億トン(分担率7.6%)、
さらに差が開いて鉄道輸送の5100万トン(同0.9%)、
そして航空輸送の115万トン(同0.02%)が続く。
一方、輸送量を示すには、重量(トン)だけでなく、
「重量×輸送距離」の「輸送トンキロ」という指標がある。
つまり、「どれだけの量」を運んだかだけでなく、
それらを「どれだけの距離」運んだかも加味することで、
各輸送機関の本当の実力を示そうというものだ。
これでいうと、全体の年間輸送量は5800億トンキロ。
自動車輸送はそのうちの3550億トンキロ、分担率で6割超を占める。
次いで内航海運が2030億トンキロ(分担率34.9%)、
そして鉄道輸送230億トンキロ(同4.0%)、
航空輸送12億トンキロ(同0.2%)と続き、
分担率の順番は変わらないが、その割合は重量だけの場合とは異なり、
自動車以外の輸送機関も意外と健闘していることがわかる。
ちなみに輸送機関ごとの平均輸送距離は、
自動車に比べると鉄道が6.4倍、内航海運が6.9倍、
航空にいたっては14.5倍だ(いずれも2007年度)。
輸送量については、第二次大戦から5年後の1950(昭和25)年には、
重量で4億9000万トンと現在の11分の1の規模だった。
それが10年後には15億2500万トンと3倍強に増え、
高度経済成長時代を経て、60億トン近い現水準に拡大した後、
バブル経済でピーク(約68億トン)を迎えてから、緩やかに減少している。
もちろん多少のデコボコはあるものの、
輸送量の推移は、面白いほどにわが国の経済の実体を反映しており、
物流はまさに「経済動向を映す鏡のようなもの」だということがよくわかる。
1950年と2007年について、各輸送機関の分担率の推移を見ると、
目につくのは、鉄道輸送の退潮と、その反対に自動車輸送の躍進ぶりである。
鉄道が重量で26.9%から0.9%へ、
トンキロでも50.3%から4.0%へと分担率を落とす一方で、
自動車は重量で63.1%から91.4%へ、
トンキロでも8.7%から60.9%へと分担率を上げている。
このように、国内の貨物輸送の主役の座は、相変わらず陸運業界が占める。
ただしその中心は、高速道路網の整備などと軌を一にして、
1960年代から急速に進んだモータリゼーションなどの影響で、
鉄道輸送から自動車輸送へと移っているのである。
次回は、そうした主役交代の背景などについて、見ていくことにする。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年6月1日(火曜日)
★輸送事業を担うキャリアーとフォワーダー
物流の仕事には、よく知られている輸送や保管に加えて、
荷役(にやく)、包装、流通加工、情報管理などがあることは、
すでに紹介したとおりである。
では、こうした仕事のそれぞれを、
どんな事業者たちが、どんなふうに担っているのだろうか。
今回はまず、物流コストの約6割を占める輸送の仕事を担うプレイヤーに
スポットをあてることにしよう。
貨物輸送の仕事というのは、
トラックなどの自動車、貨車などの鉄道、
貨物船やフェリーなどの船舶、航空機といった輸送機関を使い、
モノを移動させることである。
そこで輸送事業は主として、
これら輸送機関を自社で保有する各事業者によって行われている。
こうした事業者たちは、
輸送機関そのものを示すキャリアー(運ぶもの)という言葉から、
「キャリアー」(輸送事業者)と呼ばれる。
だが、鉄道、船舶、航空機などのように、
駅や港湾、空港にしか発着できない輸送機関では、
発荷主や着荷主などへ直接集荷配送することができない。
そこで、自社の別部門や関連会社、他の事業者に依頼して、
部分的にトラック輸送を行うといったことが日常的に行われる。
あるいは、トラック輸送事業者が納期によって、
一部で鉄道や船舶、航空機といった他の輸送機関を使うようなケースもある。
このように、自社の輸送機関ではなく他社保有のものを活用した輸送事業を、
「利用運送事業」(フォワーディング事業)と呼ぶ。
大手の輸送事業者の中には、「陸運事業者」でありながら、
事業内容に「船舶輸送」や「航空輸送」などを加え、
複数の輸送機関を使って事業を展開したり、
「鉄道利用運送」「船舶利用運送」などを事業内容に含めて、
キャリアーながらフォワーディング業務にも手を染めているところが多い。
輸送事業に限らないのだが、
大手の物流事業者の大半は複数の業務を兼業しており、
物流の中の一部の業務だけを提供する事業者というのは、
中小規模に多い傾向がある。
フォワード事業に特化している事業者たちは、
キャリアーと対比して「フォワーダー」と呼ばれている。
フォワーダーは、キャリアーである事業者から貨物スペースを買い取り、
不特定多数の荷主から荷物を預かって混載して輸送するので、
貨物取り扱い業者とか貨物混載業者などとも称され、
特に空運業界の航空フォワーダーがよく知られている。
さて、自動車輸送と鉄道輸送は「陸運」、船舶輸送は「海運」、
航空輸送は「空運」と言い換えることができる。
さらに海運は、国内の「内航海運」と国外の「外航海運」に、
空運も国内と国際に分かれる。
このように輸送の仕事は
四つの輸送機関による陸・海・空の各輸送事業者(キャリアー)と、
利用運送事業を行う事業者(フォワーダー)たちが関わって行われている。
次回からは、輸送機関ごとに
物流市場に占める地位などについて見ていくことにする。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年5月25日(火曜日)
★自社物流分21兆円が加わり44兆5000億円程度
前回は、わが国の物流業界の市場規模を、
物流事業者の売上高(営業収入)などから見てみた。
しかし、物流事業は専門事業者にアウトソーシングされるばかりでなく、
荷主自身が倉庫やトラックを持ち、
「自社物流」で行われるケースも決して少なくない。
とくに、一般的な消費財などのように、
輸配送や保管等に極端な専門性を必要としない商品では、
製造業者や流通業者による自社物流が、かなり日常的に行われている。
たとえば、わが国の緑ナンバーの営業用トラックと
白ナンバーの自家用トラックを比べると、
車両数では1対5.2と自家用が圧倒している。
ただし、輸送量(重量=トン)を比較すると1対0.67、
重量に輸送距離を掛けたトンキロでは1対0.14と、
営業用がメインとなっている(06年度、国交省『自動車輸送統計年報』)。
そこで今回は、物流コストという観点から、
物流業界のみならず、物流事業全体の市場規模を確認してみよう。
日本ロジスティクスシステム協会の『物流コスト調査報告』によると、
わが国の経済全体に占める物流コスト(マクロ物流コスト)の総額は
44兆5000億円(06年度概算)で、GDP(国内総生産)に対する割合は8.7%。
物流コストのうち28兆3000億円(63.6%)が輸送コスト、
14兆4000億円(32.4%)が保管コスト、
1兆8000億円(4.0%)が管理コストという内訳だ。
単純な比較はできないものの、
国交省の各種統計では、物流業界の市場規模が約23兆5000億円だったから、
44兆5000億円から23兆5000億円を引いた21兆円あまりが、
荷主の自社物流コストだということになる。
ちなみに、同調査では
アメリカの05年度のマクロ物流コストは1兆3060億ドルで、
同じくGDPに対する割合は9.3%。
物流コストのうち8090億ドル(61.9%)が輸送コスト、
4470億ドル(34.2%)が保管コスト、
500億ドル(3.8%)が管理コストとしている。
また、この調査では、産業ごとの売上高に占める物流コストの割合と、
さらに物流コストの内訳を「自家物流費」「支払物流費(対子会社支払分)」
「支払物流費(対専業者支払分他)」に分けて示している。
これによると、08年度の売上高に占める物流コストの割合は、
全業種では4.87%、製造業が4.78%で、
卸売業が5.06%、小売業が4.84%となっている。
消費材関連でとくに物流コスト比率が高いのは、
小売業のうちの「通販」12.90%、「コンビニ」6.63%、
製造業の「食品(要冷)」10.38%など。
他に製造業では「食品(常温)」「石鹸・洗剤・塗料」が、
卸売業では「日用雑貨系」「繊維衣料品系」「食品飲料系」、
小売業では「生協」などが、それぞれの産業平均より高い比率だ。
一方、「総合商社」「百貨店」などの物流コスト比率は
あまり高くないという結果になっている。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年5月18日(火曜日)
★おおむね20兆円超の規模と見られる
現在の物流事業者は、
輸送や保管といった関連する各種事業を、総合的に行う方向にある。
だが元々は、事業ごとに業界を形成して現在に至っているために、
それらを「物流業界」としてひと括りに捉えるのは、ややむずかしい。
一つの手掛かりとして、総務省の『日本標準産業分類』には、
「大分類H 運輸業、郵便業」というのがある。
そして、財務省のシンクタンクである財務総合政策研究所によると、
この標準産業分類による「運輸業」の業界規模(平成19年度)は、
事業者8万2100社、売上高67兆3600億円 従業員316万人だとしている。
ただしこの中には、モノを運ぶ貨物部門だけでなく、
ヒトを運ぶ旅客部門が含まれている。
しかも鉄道会社などには、本業の「運輸」部門よりも、
「流通」や「不動産」部門などのウエートが高いところが多く、
その分によって水増しされた数字になっている。
一方、国交省が事業ごとに行った調査報告がある。
それぞれ、トラック輸送業13兆円、外航海運業4兆7000億円、
倉庫業1兆6000億円、港湾運送業1兆1700億円、
内航海運9000億円、航空利用運送事業8000億円などとあり、
これらを単純に積み上げると、
事業者約7万5000社、売上高約23兆5000億円、従業員約150万人となる。
調査期間や調査方法が異なるために、あくまで参考数字だが、
これが「物流業界」の業界規模をある程度示している。。
参考までに他の民間調査機関の調査を見てみても、
業界全体の市場規模を20兆円弱としており、
国交省の統計をまとめた概数とも近い数字になっている。
ちなみに、国交省の推計による物流業界の業界規模を、
他産業と比べてみよう。
約7万5000社という「事業者数」は、
建設業や卸売業、小売業の30万〜40万社よりは、かなり少ない。
だが、製造業の各産業(数千社からせいぜい5万社)に比べると、かなり多い。
これは、トラック事業者のように零細事業者が多いことが影響している。
「従業員数」は約150万人だが、
製造業の各産業は一部を除いて数十万人から100万人超なので、
事業者数ほどの差はない。
これも、物流業界に零細事業者が多いことの一つの証明だといえる。
ちなみに、建設業、卸売業、小売業の従業員数は、
350万〜500万人超となっている。
約23兆5000億円の物流産業の「売上高」は、
百数十兆円から400兆円を超す建設業、卸売業、小売業には遠く及ばないが、
金属製品製造業とほぼ同規模、
21兆円超の石油製品・石炭製品製造業や鉄鋼業とも近い規模だ。
物流業界としての業界規模はこの程度だが、
物流事業の事業規模はこんなものではない。
その理由は次回に。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年5月11日(火曜日)
★より総合化と情報化が進んだ進化形
物流の話題でよく耳にする「ロジスティクス」や「SCM」。
どちらも物流の進化形であり、管理対象を拡げたものだと考えるとわかりやすい。
物流自体、1950年代までのわが国では存在しなかった概念だ。
それまでは、物流を構成する六つの活動は、輸送は輸送、保管は保管というように、
それぞれ単独のサービスとして提供されていたのである。
それが、朝鮮戦争特需などによって「大量生産・大量消費」の時代に突入。
さらにアメリカ発の「流通革命」の影響で、日本でもチェーンストアが多数生まれ、
「多品種大量輸送」が求められるようになった。
多品種大量輸送を実現するには、単純に輸配送に注力しただけではムダが多い。
在庫の調整や荷役、流通加工など周辺業務との連携が不可欠。
そこで、こうしたサービスを統合的に管理しようとして誕生したのが、
「物流」の概念というわけだ。
物流業者側も、それぞれの活動を専門に請け負うだけでなく、
輸送会社が事業の中に保管活動を加えたり、倉庫会社が流通加工活動を行うなど、
仕事の垣根をまたぐような動きが拡大した。
80年代半ばには市場の成熟化が始まり、時代は「量から質へ」と転換する。
その結果、モノづくりや流通も「多品種少量」が主流になると、
輸配送も効率の悪い多頻度小口が増えざるを得なかった。
そのために増大した物流コストを問題視して、新たに導入されたのが、
「(ビジネス・)ロジスティクス」の考え方である。
企業が行う原材料の調達から販売までのモノの流れと、
それにまつわる物流全般を管理する、
いわば、自社の「企業内物流の最適化」を目的としたものだった。
さらにバブルとその崩壊を経た90年代の半ば、
物流の効率化やローコスト化に対する要請がより厳しくなるなかで、
トヨタの「かんばん方式」を手本に米国企業が発案した
「SCM」の手法が脚光を浴びるようになった。
SCMは「サプライチェーン・マネジメント」の言葉どおり、
原材料などを供給するサプライヤーや販売先の流通・販売業者などまでを、
サプライチェーンという商品供給の一つの過程と見なし、
その全課程を一気通貫して最も効率的に管理しようとするものだ。
企業内部にとどまらず、他企業まで巻き込んでムダを省く
「企業間全体の最適化」を目指して、大手家電などを中心に導入されている。
こんなふうに段階的に進化してきた物流だが、さらに将来は、
モノの供給で終わらずに、使用・消費されたモノの回収、そして再資源化する
「循環型ロジスティクス」が注目されている。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年4月27日(火曜日)
★「輸送」「保管」だけが物流の活動ではない
生産と消費の分業化によって、三つの“隔たり”が生じた。
この隔たりを埋め、経済活動をスムーズに行うための役割が「流通」。
「物流」はその一部として、「輸送」と「保管」の機能を果たしている。
ここまでは前回の内容。
では、物流とは具体的にどんな仕事なのか。
すぐに思い起こすのは、トラックや船による輸送活動だろう。
街を歩けば、頻繁に宅配便会社やコンビニのトラックなどを目にするので、
そう思うのも当然かもしれない。
だが、輸送活動はあくまで物流の表舞台。
実は私たちの目には触れないその裏で、重要な活動が行われている。
それが、保管、荷役(にやく)、包装、流通加工、情報管理などの活動だ。
輸送を含めたこれらの六つの活動が、
相互に密接に関連しながら存在していて、
物流の仕事を構成している。
それぞれの活動の内容を、簡単に紹介しておこう。
◎輸送
トラック、鉄道、船、飛行機といった輸送機関を使い、
モノを移動させること。
厳密には、地域間で長距離大量の移動を行うことを「輸送」、
近距離で小口の移動を「配送」、
工場や物流センター内の狭い範囲内での移動を「運搬」という。
◎保管
運んだモノをいったん留め置くこと。
これにより、需要に応じたタイミングで供給するための「需給調整」、
大量輸送されてきたモノを、輸・配送するために小分けしたり、
行き先別にまとめたりするなどの「輸送調整」、
包装や流通加工などの活動を提供するための「物流拠点」
という三つの大切な役割を果たしている。
◎荷役
モノを輸送したり保管したりする際に、
輸送機関から積み降ろしたり、倉庫に出し入れしたりすること。
◎包装
輸送や保管をするにあたって、
そのモノの価値や状態を保護したり、向上させたりするために、
適切な容器に入れたり包んだりすること。
◎流通加工
生産者や流通の川上から送られてきたモノを、
川下の業者や消費者が便利なように加工すること。
たとえば、メーカーから大きな箱に大量に詰めて送られてきた商品を、
小売店頭で扱いやすい小さな化粧箱に詰め替えたり、
値札をつけたり、キズがないか検査したりするなど。
商品を組み立てて、半完成品や完成品に仕上げるようなことも含まれる。
◎情報管理
以上のような諸々の活動をより合理的、効率的に行えるように、
運ぶべきモノがどこにどんな状態であるかといった情報を、
コンピュータや通信回線を使って管理すること。
ここで重要なのは、
近代的な真の物流業者たちは、過去の単なる“運送屋”からの脱皮を目指して、
輸送活動だけでなく、その他の活動に力を入れてきたという事実だ
たとえば、宅配便分野でヤマト運輸が急成長した主要な理由として、
優れた情報管理システムの構築があったように。
小売業・サービス業サイドも、パートナーとしての物流業者を選ぶ際には、
そうした総合力で判断する時代になっていることを、知っておかなければならない。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年4月20日(火曜日)
★小売業や物流業は生産と消費の架け橋
今回は、物流の「機能」について紹介する。
「機能」というとややカタい感じを受けるかもしれないが、
物流が私たちに「何をしてくれているか」という本源的なことであり、
ぜひ押さえておいてほしいテーマの一つだといえる。
まず、少しだけ私たちの歴史を振り返ってほしい。
完全自給自足を実現できなかった人類は、物々交換の体制を経て、
必要なモノを経済活動によってまかなう社会をつくり上げたのはご存じのとおり。
その際、生産者と消費者に分業化することで、
そこに、①所有権、②距離、③時間という三つの隔たりが生まれた。
つまり、モノをつくる人と使う人、モノをつくる場所と使う場所、
そしてモノをつくったときと使うときのタイミング、
それぞれにズレが生じたのである。
そこで、これらのズレを埋め、
生産と消費をスムースに行うために登場したのが「流通」の機能だ。
なかでも「所有権の隔たり」には、
消費者と生産者や製造者との間に流通業者(卸売業や小売業など)が介在し、
取引(価格を決め、売買をして所有権を移転すること)を繰り返すという
「商的流通」(商流)という機能が隔たりを埋めた。
一方「距離の隔たり」には、生産地から消費地へ運ぶ「輸送」の機能が、
「時間の隔たり」には、生産されてから消費されるまで「保管」する機能が、
それぞれの隔たりを埋めた。
この「輸送」と「保管」の機能を担ったのが、
「物的流通(physical distribution)」(物流)の活動である。
このように、そもそも小売業と物流業は、お互いに協力しながら、
それぞれ流通の機能の一部を果たす“お隣さん”として生まれたことがわかる。
現在では、消費者に対してさまざまな商品を販売する小売業と、
それらの商品を着実に小売店頭に供給する物流業との協力関係は、
より広範で緊密なものになっているといえる。
まず、こうした協力関係は国内だけにとどまらなくなっている。
エネルギーの96%、食料の60%、基幹産業の原材料の90%は
国境を超えて運ばれてくるという統計もあるが、
小売業が海外に商品を求めることが増えているからだ。
さらにSPA(製造小売業)や大手小売業のPBなど、小売業の海外生産の進展や、
フードサービスが食材を海外に求めるなど、
経済のグローバル化が拡大していることも大きい。
こうして、小売業・サービス業と物流業界の協力関係は、
国内の、しかも流通段階の「販売物流」にとどまらず、
生産に先立って必要となる原材料や部品などを調達する「調達物流」、
生産現場において部品や製品を保管・管理する「生産物流」など、
さまざまな場面でより緊密に行われるようになっているのである。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
2010年4月13日(火曜日)
★目立たず常に仕事をし続ける縁の下の力持ち
近年「物流」といわれて、「なんのことかわからない」という人は
さすがに少なくなっているように思う。
小売業・サービス業に属して、日々、商品を仕入れたり発送したりしている人なら、
なおさらそうだろう。
それでも、物流の仕事に対する関心は、まだまだ低いと言わざるを得ない。
一般消費者であれば、食品はじめ日常生活に必要な品々などについて、
小売店頭に並んでいるのを見て、はじめてそれらを意識する。
だが、商品がどうやってそこに並んだかには無頓着で、
生産者や製造者に思いは至っても、物流業者の存在まで想像する人は少ない。
当然のことだが、物流がきちんと機能しなければ、
必要な人に必要なモノが、必要なときに必要なだけ供給されることはない。
そうやって社会や産業が物流に支えられていることは、
地震でライフラインに支障が出るなど、非常事態にならないと実感されにくいのだ。
スーパーマーケットは、生存のための配給基地となった。
コンビニは、余震の続く闇のなかの灯台に変わった。
フードサービスは、温かい食べ物の炊き出し係に徹した。
メーカーや問屋は、補給部隊の役を担った。
これは、商人舎代表の結城義晴さんが著書『メッセージ』(商業界刊)に、
「阪神大震災」のときの商業者の対応について書いた一節だ。
この後、「商業という仕事を貫いた同志たちを誇りにしよう」と、
風化させてはいけない「思い」について言及する、力強いメッセージになっている。
しかし、商業者向けの言葉だからだろうが、
ここでも数々の必需品を実際に被災地に届ける役割を担った人たち(物流業者)
の存在にまでは、残念ながら触れられていない。
このように、物流活動というのは、重要なのに地味で目立たず、
ふだんは問題なく行われているのが当然視される、そんな宿命をもった仕事なのだ。
まさに、「縁の下の力持ち」を地で行くと言ってよい。
大切なのは、ここにきて「物流」が単純に「モノを運ぶ仕事」ではなくなり、
SCM(サプライチェーン・マネジメント)といった形で、
原材料の供給業者から顧客まで含めた一気通貫で、
効率的に管理していこうという時代になりつつあることだ。
そうなると、小売業・サービス業にとって物流業者は、
一方的にコストダウンを押し付けるような相手ではなく、
「Win-Win」の関係で、同じ目的のために協調しながら
仕事をしていくパートナーになっていくことになる。
相互に理解を深めることは、もう避けられない状況にある。
そこで、そんな「知られざる」パートナーを理解する助けとして、
物流業界の基礎知識について、連載で紹介していこうと思う。
少しでもお役に立てれば幸いである。
(続きます)
<by 二宮 護>
【事務局からのご案内】
本ブログは、『物流業界大研究』の新刊発刊を記念して、
二宮護氏に短期集中連載を依頼したことにより、実現しました。
これから毎週火曜日に、12回にわたってブログをアップします。
<連載の予定>
01 「物流業界」は貴重なパートナー
02 物流は流通機能の一部を担う
03 物流を構成する六つの要素
04 物流とロジスティクス、SCMはどこが違う
05 物流業界の業界規模ってどのくらい?
06 自社物流も含めた「物流」の市場規模
07 物流活動を支える各プレイヤーたち
08 輸送事業の中心を占める陸運業界
09 貿易や産業基盤輸送を担う海運業界
10 高付加価値商品の輸送に長じる空運業界
11 保管や流通加工などを行う倉庫業界
12 荷役を担う港湾運送やターミナル業界
是非、ご愛読ください!