蓋あけし如く極暑の来りけり
〈星野立子(たつこ)〉

「極暑」は「ごくしょ」、「来り」は「きたり」。
朝日新聞「天声人語」が引用した。

星野立子はあの巨匠・高濱虚子の次女で、
昭和59年に没している。

天声人語。
「湯のたぎる大鍋のフタを
開けたような日が続く」
全くその通り。

そして朝日新聞らしい忠告。
「屋外で働く方々はもちろん、
室内で過ごす日でも
熱中症対策をお忘れなく」

店も売場も商売も今、
日本中、「熱中症対策」。

「今夏は太平洋高気圧が優勢で、
しかもより上層でチベット高気圧が
西日本まで張り出している」

「二重の高気圧に覆われ、
例えるなら毛布を2枚、
重ねたような状態だ」

わかりやすい。

しかし、こんな時には、小林一茶。
涼風の曲がりくねって来たりけり

一茶が住むのは裏長屋の奥の奥。
暑い暑い夏の日に、
ふと、涼風を感じる。
こんな奥の裏長屋まで、
涼風は曲がりくねってやってきた。

今日は朝から人間ドック。
毎年、1年に一度、
体の隅々までチェックする。
アメリカから帰って、
やはり体の検査は必須です。
それが元気の源となる。

さて、日経ビジネスオンライン。
「今日の名言」は、
川野 幸夫ヤオコー会長。
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会社も社員も
多少「やせ我慢」をして、
長期的に物事を
考えるべきだ。

4月、5月、そして6月。
日本の小売業全体に、
深刻な「客数減」の潮流が訪れた。

だから「やせ我慢」が必要。
そして「長期的」にものを見て、
「長期的」に考える。

「当社では上司の第一の仕事は
部下の教育であると
明確に位置付けている。
部署の業績を上げるよりも
後進を育てる方が
大切であるということだ」

業績を上げるのは短期的、
部下を育てるのは長期的。

どちらも自分自身でやらねばいけない。

第一の仕事が「長期的」なもので、
もちろん「短期的」な業績を上げることを、
ないがしろにしているのではない。

部下を育てつつ、業績を上げる。
客数減の大波の中でこそ、
部下と問題を共有しつつ、
その解決策を模索し、
そのプロセスで部下を育てる。

ヤオコーはこんな時こそ、
いい教育の瞬間であるととらえている。

さて、日経新聞電子版の記事。
「セブン、幻の100円ビール」

ちょっと見過ごしにできない記述がある。

セブン‐イレブンは、
一昨日の17日から、
店頭の専用サーバーで、
生ビールを提供する予定だった。

セブンの100円いれたてコーヒーは、
コンビニ業界はもとより、
コーヒーショップ業界を、
ひっくり返すほどの実績をつくった。

それを生ビールで展開しようという構想。
名称は「ちょい〈生〉」

昨2017年から、
キリンビールと組んで、
「一番搾り」の生ビールを、
100円コーヒーのように売ろうと準備していた。

Sサイズが100円、Mサイズが190円と、
安価に抑える戦略だった。

実施したら、
良い悪いは別にすれば、
またまた大いに売れたに違いない。

しかし事前に交流サイトで、
情報が拡散してしまった。
それが中止の意思決定につながった。

最大の理由は、
負のイメージが広がることにあった。
例えば飲酒運転を助長することへの危惧。

さらにもう一つの理由は、
SNSの情報拡散で顧客が押し寄せて、
十分な供給が難しくなること。

経営陣は素早かったというか、
臆病だったというか、
妥当だったというか。
「マイナスイメージや
事故などのリスクを勘案し、
中止を指示した」

「今回は延期ではなく中止。
供給体制の問題だけが理由ではないので、
再開は難しいだろう」

少なくともキリンは、
大きなチャンスを逸した。

しかしこの生ビール販売。
すでに他のコンビニチェーンは、
店頭にビールサーバーを設置して、
テスト販売を始めている。

ビールメーカーの側も、
アサヒビールは2016年から実験開始。
日経によるとJR系の「ニューデイズ」は、
約50店で生ビールを提供している。

当のキリンもミニストップで、
ビールサーバーでの販売をしている。

用意周到なセブ‐イレブンは、
1週間あたり10~20の売場テストを実施。
3週間程度実験してから導入する。

この問題の根底にあるのは第1に、
コンビニエンスストアの社会的機能だ。

かつてアメリカのコンビニは、
うち揃って経営破たんに追い込まれた。
セブン-イレブンのサウスランド社は、
1991年に倒産している。
ローソンもサークルKも。
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その最大の理由は、米国コンビニが、
ビールとタバコの店になってしまったからだ。

一般の顧客から敬遠された。
とくに女性や未成年の若者や子どもたちは、
コンビニから去っていった。

「ちょい〈生〉」はそれへの挑戦だった。

今回のアメリカ研修では、
ウェグマンズで夕食を食べた。
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おいしい家庭の味の惣菜デリを、
素敵なイートインコーナーでいただいた。
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ただし、着席して食べることができる場でも、
酒を飲むのは禁止されていた。
ウェグマンズの見識である。

アメリカのドラッグストアのうち、
CVSヘルスは2014年に、
タバコとタバコ関連商品を、
全面的に売場から撤去した。

全米の州知事たちはこの英断に拍手喝采。

そしてCVSヘルスは、
全米トップのドラッグストアの地位を確保する。
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果たして今回、
セブン-イレブンに、
そんな議論があったのか。

第2の問題は、
SNSによる情報の拡散である。

実験と称して一部店舗で展開する。
しかしそれは一部であっても、
多くの顧客の目にさらされ、
インパクトのある内容であればあるほど、
TwitterやFacebook、lineで拡散する。

このことは周知徹底して、
テスト販売をする必要がある。

それも第1の問題を徹底議論して、
信念をもって実行せねばなるまい。

第3の問題は、
セブン-イレブン固有のものだ。

日経の記事にある。
「今回の取り組みは
現場レベルのテストという段階で、
経営陣にも報告していなかった」

語ったのは「セブン幹部」。

経営陣に報告していなかったというのは、
かつてのセブン‐イレブンでは考えられない。
鈴木敏文会長の時代ならば、
烈火のごとく叱責されただろう。
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その前に鈴木さんの責任において、
やるかやらないかを決断し、
それこそ徹底していたはずだ。

セブン-イレブンのマネジメントに異変はないか。

では鈴木さんなら「ちょい〈生〉」を、
どう判断しただろうか。

それはわからない。
ご本人に聞いてみたいところだ。

しかしヤオコーの川野さんの言葉を思えば、
「多少のやせ我慢」をして、
長期的な視野に立てば、
結論は明らかだろう。

〈結城義晴〉

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