結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年04月25日(木曜日)

川勝平太静岡県知事と蒲島郁夫熊本県知事の「実践的知性」の落差

喉が痛い。
ガラガラ声を通り越して、
かすれ声。

体温は37.9℃。

このところ疲労が溜まっていたのだろう。

それでも1日、活発に動いて、
夕方、大阪から帰浜。

新幹線の窓からは夕焼けが楽しめた。
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富士の姿もくっきり。
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まだ頂のあたりは雪をかぶっている。
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箱根を超えても富士は見える。
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車中では久しぶりに、
何もせずに静養した。

日経新聞「大機小機」
リーダーに必要な「実践的知性」

コラムニストは客人さん。

静岡県の川勝平太知事を、
熊本県の蒲島郁夫知事を比べる。

15年にわたった川勝県政が幕を閉じる。
蒲島知事も16年の県政から去る。

川勝、75歳。
蒲島、77歳。

ほぼ同じ時期の学者出身の知事。

「川勝氏は人気があった。
知事として初挑戦の選挙こそ
辛勝であったが、その後、
3度の選挙ではいずれも圧勝だった」

「人気の背景の一つに学者出身という経歴、
そして数々の著書から推察される
知性や見識に対する評価と期待があった」
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だが15年の県政を見ると、
その期待に見合う成果はなかった。

リニア中央新幹線の2027年開業は延期させ、
富士山の世界文化遺産登録をした。
このくらいしかない。

一方の蒲島知事。
「台湾積体電路製造(TSMC)の工場進出の
受け入れ体制整備に奔走し、
国の川辺川ダム着工にメドをつけ、
県のPRキャラクターくまモンを大成功させた」
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その落差は大きい。

川勝知事の問題点。
「関係者とのコミュニケーションや
それを通じた信頼構築を経ることなく
一人で大きな意思決定を行う傾向があった」

「その結果、川勝氏の意思決定は
関係者の理解を得られないものとなりがちだったが、
固執して不毛な対立が長期化した」

蒲島知事は、
「企業や国と信頼関係の構築に成功して
成果をあげた」

コラムニスト。
「心理学・教育学は、
知能が多面にわたるものであることを指摘している」。

「学者として高い評価を得ていた川勝氏が、
優れた分析的知性や創造的知性を
持っていたことは間違いない」

「一方、新しい状況の中で
適応的に対処する能力である実践的知性、
その重要な一部と考えられる
対人的知性は十分でなかった」

実践的知性。
対人的知性。

これは経営者や経営幹部に必須だ。
いや店長もバイヤーもチーフも、
実践的知性と対人的知性をもたねばならない。

それが知識商人の本来の在り方だ。

蒲島知事は農協の職員から東大教授に就任した。
異色の学者だ。

民間での就労経験、米国での農業研修など、
幅広い経験を有する蒲島知事は、
優れた実践的知性を持つ。

「学者だと言えばありがたがるような人は
分析的知性を過度に重視している」

その通り。

「企業を含む社会のリーダー選出にあたっては、
そうしたバイアスは危険だ」

結論。
「実践的知性の必要性を認識し、
それを見極める力を磨く必要がある」

分析的知性だけではなく、
実践的知性が必須である。

実践の中から知性が磨かれる。
商売の世界でそれを実現するのが、
知識商人である。

今年の商人舎1月号。
[Message of January]
みんなで学べ。

「まなぶ」は「まねぶ」から生まれた。
学ぶことは真似ることから始まる。
創意を尊びつつ良いことは真似よ。

商人は商売と仕事から学ぶ。
会社と上司と仲間から学ぶ。
顧客と取引先と地域から学ぶ。

話を聞いて学ぶ。
本を読んで学ぶ。
体験して学ぶ。

みんなが学ぶ。
しかし優先されるべきは、
個人が学ぶことだ。

個人が人生をかけて学ぶ。
それが組織学習の基礎となる。
個人の学習なしに組織の学習はない。

「みんなで学ぶ」とは、
「チーム学習」とは、
学んだ者同士が対話することだ。

対話を通じて、
ビジョンを共有し、
成果を最大化させることだ。

ポストコロナの2024年。
学習する組織をつくろう。
みんなで学ぼう。

個人が人生をかけて学ぶ。
それが組織学習の力となる。
個人の学習なしに組織の学習はない。
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「商人は商売と仕事から学ぶ。
会社と上司と仲間から学ぶ。
顧客と取引先と地域から学ぶ」

これが実践的知性である。

実践しつつ考える。
考えては実践する。
そしてまた考える。

限りなくそれを繰り返す。
そこから実践的知性が生まれる。

学歴は全く関係ない。
大学教授であったことも、
実務家としては全く関係ない。

川勝平太と蒲島郁夫。
皮肉な取り合わせで、
同時期に知事を務めた。

そして実践的知性の重要性を教えてくれた。

〈結城義晴〉

2024年04月24日(水曜日)

万代知識商人大学第9期の開講式と第一講座、全身全霊

珍しく、昨夜、熱が出た。
私はその対処法をもっている。

それをやった。

朝には熱は下がった。

軽く朝食をとって薬を飲み、
タクシーに乗り込んだ。

万代知識商人大学第9期が始まった。

例年3月開講の万代カレッジ。
今年はひと月遅れて、
4月に開講。

4月はミッションマネジメント、
5月はヒューマンリソースマネジメント、
7月はフィナンシャルマネジメント、
10月はオペレーションマネジメント、
11月はマーケティングマネジメントと、
ストラテジックマネジメントを、
2日間かけて学ぶ。

そして来年1月の論文発表・修了講義。
6回、7日間で実施される。

その間の9月には、
商人舎ミドルマネジメント研修会に、
全員が参加して、
万代知識商人大学の復習をしつつ、
他社の同志たちと交流する。

よくできたカリキュラムだ。

9期生たちは1年かけて、
マネジメントの体系とその基礎を学ぶ。
仕事はできる者ばかり。
3000人の中から選抜された32人だ。

Managementの「Manage」とは、
馬を御するときの手綱の取り方、といった意味だ。
昔、渥美俊一先生は、
みんなで丸太を漕いで、
どこかへ向かうこと、
という説明をした。

安土敏こと、荒井伸也さんは、
Managementとは、
「段取り組みのことだ」と、
簡潔に説明した。

いずれも正しい。

そのマネジメントは多様化してきた。
なんにでもマネジメントをつけるきらいがある。

しかしその中で大きな枠組みをすると、
6つのマネジメントになる。

それが万代知識商人大学のカリキュラムとなっている。

講義会場は万代本社に隣接する、
万代会議棟の大ホール。

朝9時に開講式がスタート。

開会のあいさつは和久正樹取締役。
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物事を斜めから見ずに、まっすぐに見よう。
知識を学んで商売の楽しさを知ろう。IMG_4971

和久さんは丁寧な言葉で、
9期生たちに期待の言葉を贈った。

次は結城義晴。
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私が最初に受講生たちに贈る言葉は、
「ビッグシンカー」。
Big Thinker。

世界で初めて企業内大学をつくったのが、
ゼネラルエレクトリック社だ。
1956年のことである。

通称「クロントンビル」。

そのクロントンビルのたった一つの考え方が、
「Big Thinker」である。

大きなモノの見方、考え方。

日本語にすると、
「着眼大局、着手小局」。IMG_4980

物事を大きく捉えて考える。
そして実践にあたっては、
小さく着手する。

開講挨拶のあとは、辞令交付。
阿部秀行社長が一人ひとりに辞令を言い渡す。
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32名が次々に辞令を受け取る。
会社の正式な業務として学ぶからだ。
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今日はコーポレート部門の取締役たちが出席。
管掌部門のミッションを説明しながら、
受講生へ期待の言葉をかける。

山口茂樹取締役。
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情報システムと物流管掌。

谷内(やち)毅取締役。
経営企画管掌。
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頓宮博取締役。
IR/広報管掌。
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河野竜一取締役。
人事管掌。
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これから1年にわたって、
役員たちが自ら講義する。
これが企業内大学のメリットである。

教えられる者は、
自分たちの実務に即して講義が受けられる。

講師たちは大学で講義するために、
自分の管掌を再整理して、
イノベーションにつなげる。

生徒も教師も、
共に学んで成長することができる。

外部の講師は結城義晴だけだ。

9期生たちは真剣に聴講する。
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そのあとはミッションマネジメント講義。
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昼食休憩をはさんで、
4時間30分。
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午前中に2時間、
午後に2時間半。

まずマネジメント体系の説明から入る。

ピーター・ドラッカーは語っている。
「鋸(のこ)や金槌、あるいはペンチしか
持たない者は、大工は出来ない。
それらの道具を一揃えにしたとき、
初めて大工道具を手にしたということが出来る。
それが、私が『現代の経営』で行ったことだ。
私はマネジメントを体系として
まとめたのだった」

万代カレッジ生には、
スーパーマーケットにおける
優秀な大工になってほしい。

それはマネジメント体系の完全な理解から始まる。

講義は倉本長治の商売十訓、
ピーター・ドラッカーが重視する3つの概念、
商業の基幹産業化と知識商人の役割。

さらに午後からスライドを使って
「商売の使命と万代の使命」。IMG_5025

何とか気力で持たせていたが、
午後になって体力が限界にきた。

だから着座での講義となった。

「ミッションマネジメント」の意味を説明してから、
具体的にその事例を解説した。

ウォルマート創業者サム・ウォルトンの10ルール。
イオンの理念、ベニマル商法十二章。

最後にチェーンストアのガイダンス。
万代も160店を超えるチェーンストアである。
だからそのコンセプトはミッションと深くかかわっている。

ゴドフリー・レブハーのチェーンストアの定義、
さらに自著『チェーンストアー産業ビジョン』。IMG_5027
5時間にわたる講義で、最後は声が枯れた。
しかし万代カレッジ第1回講義は無事に終了。

講義が終わると、
阿部社長が受講生に訓示する。
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30分ほどの短い時間だが、
これが実にいい。

商売の在り方、マネジメントの在り方を、
経験を交えて話す。

仕事や商売の半分はゲームだと考えてみてほしい。
ゲームをクリアするのは楽しい。
仕事は楽しい。

クリアする方法を一所懸命に考えて、
いいやり方が見つかったら、
夜も寝ていられない。

商売の半分はそんなゲームだ。
楽しめ。

しかも毎日毎日結果が出る。
こんな楽しいことして、
そのうえ給料までもらえる。

万代のチーフの仕事は、
楽しいものだ。
楽しまなければいけない。

若いチーフたちに向けて、
本当に腹に落ちる話ばかりだ。
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和久さんもお疲れさま。
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万代知識商人大学第9期、
開講式とミッションマネジメント。

何とかやり遂げた。

体はくたくた、声は完全に涸れた。
熱も出てきた。

それでも講義となると、
全身全霊を傾ける。
手は抜けない。

ご清聴を感謝する。

〈結城義晴〉

2024年04月23日(火曜日)

ドンキ&ユニーの「合併効果」と万代知識商人大学前夜祭

月刊商人舎4月号の「店舗研究特集」
MEGAドンキ成増店
これは魔境のポジショニング戦略だ!
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お陰様で大好評の特集となった。

最大級の自転車売場。
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「野菜は鮮度」のパネルが効いている。202404_donki_2F-3

精肉売場は担当者の名前を付けて、
「お肉の山さん」202404_donki_2F-8

そしてこの迫力。
決して上品とは言えないが、
若者には響くのだろう。202404_donki_3F-1 (1)

写真は100枚を超える。
ドン・キホーテの売場が網羅されている。

必携の一冊だ。

日経新聞「検証M&A」
「ドンキ流」経営、シナジー100億円

PPIHがユニーを買収して5年が経過した。

2017年11月に買収総額約2400億円で、
㈱ユニーの株式の40%を取得、
19年1月には残りの60%を取得して、
完全子会社とした。

PPIHの財務指標は、
ユニー買収後の約5年で改善した。

1店あたりの営業利益は1億4600万円。
約2割増えた。

固定資産回転率は2.12回、
0.2回転良化した。

総資産利益率(ROA)は、
23年6月期に7.1%。
5年前から0.7ポイント高まった。

イオンは1.7%。
セブン&アイは4.8%。

そのPPIHをユニーが下支えする。
驚くべきことだ。

17年2月期の最終損益は565億円の赤字だった。

それをPPIHは短期間で立て直した。
23年6月期のユニー単体のROAは6.9%。
凄い。

1店あたりの営業利益は約2億1400万円。
これはほぼ倍増。

売上高営業利益率は3.6ポイント上昇。

PPIHの改善策は2つ。
第1にユニーの店舗を「仕分け」した。
一部は「MEGAドン・キホーテ」に転換。
「アピタ」「ピアゴ」など総合スーパーは、
60店減の131店とした。

第2にドンキ流の経営ノウハウを注入した。
1万9000人のパート・アルバイト従業員に権限を与え、
仕入れから棚割り、値付け、
在庫管理まで責任を持たせた。
店員同士で競わせ、
現場のコスト管理の意識を高めた。

本部が主導する一部のセールはやめ、
店舗ごとの独自セールを増やした。
光熱費の使用量も店舗ごとの管理にした。

中央集権の古典的なチェーンストア方式をやめた。

その結果、シナジー効果が出た。
たとえばユニーがもっていた、
生鮮食品と惣菜の調達網がドンキ全体に貢献した。

吉田直樹社長。
「相乗効果は年間で100億円になる。
営業利益への貢献も200億円以上になった」

合併効果の好事例である。
PPIHの経営を前向きにとらえる必要がある。

さて今日は新幹線で新大阪へ。

乗り込むとすぐに、
アメリカ研修会ベーシックコースの
テキストの総仕上げ。
それが終わると原稿執筆。

あっという間に新大阪。

新大阪は小雨模様。

タクシーを飛ばして新今里へ。
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明日は万代知識商人大学9期の開講式と講義。
通称「万代カレッジ」。

毎年30名から32名が受講する。
250名を超える万代の次期幹部候補生たちが、
学んだことになる。

9期生は32名。明日がその初日。

講義の前夜は、
万代幹部の皆さんとの会食が恒例になっている。

今夜はひさびさに、
新今里にある「万代倶楽部」

万代のグループ会社の料亭。

先付けの5種盛りから始まって、
刺身、てんぷら、ステーキ、たけのこご飯、
そしてデザートのフルコース。
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おいしい食事とビールとワイン。

何よりトップとの情報交換が有意義だった。
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私の隣は阿部秀行社長。
後ろは左から、
加藤健副社長、河野竜一取締役、和久正樹取締役。

定宿のシェラトン都ホテル。
送ってくれた阿部社長とツーショット。
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9期も全力を挙げて、
知識商人の養成にあたる。

私のライフワークである。
よろしく。

〈結城義晴〉

2024年04月23日(火曜日)

街のパン屋は減り続けるけれど……パティシエは人気だ。

Everyone, Good Monday!
[2024vol⑰]

2024年第17週。
4月第4週。

来週からゴールデンウィーク。

4月29日の昭和の日が月曜で、
三連休スタートだが、
そのあとは3日間平日。

それから、
5月3日憲法記念日、
5月4日みどりの日、
5月5日こどもの日、
5月6日振替休日で、
4連休。

飛び石連休が懐かしい。

4月30日と5月1日、2日に休暇を取る人は、
最長10連休となる。

小売業、サービス業は、
後半が書き入れ時だ。

月刊商人舎編集部は、
この3日間が最終入稿と責了の日々。

原稿を「書き上げ時」である。

自分で自分に座布団一枚。

今日は午前中に新横浜の労災病院。

午後は東京駅。
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丸の内北口の駅舎はシックだ。IMG_3755 (002)4

大手町の新緑が目にまぶしい。
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都会的なビルディングの中に、
緑が配置されていて、
気分がいい。
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歩きながら思い出すのは、
「人生劇場」二番の前口上。

「滔々たる荒川のほとり、
万緑の河畔あくまで緑。
その緑の中に
一点紅を点ずる者あり。
その名をお袖といふ」

大手町プレイス内科で、
毎月の血液検査・尿検査と診察。IMG_3749 (002)4
中性脂肪の値が少し高かった。
あとはすべて良好。

横浜に戻って、商人舎オフィス裏の遊歩道。 IMG_3758 (002)4

こちらも新緑が心を和ませてくれる。
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万緑の中や吾子の歯生え初むる
〈中村草田男〉

草田男は高濱虚子の弟子で、
「ホトトギス」の中心俳人。

万緑と吾子の歯。
この新鮮な取り合わせがとてもいい。

会社に戻ってからは、
原稿の手直しをして入稿。

みんなで夜食を食べて、
「書き上げ時」。

頑張ります。

いい雑誌をつくります。

新聞の朝刊の短いエッセイ。
たいてい看板コラムだ。

全国紙と地方紙の2紙で、
「パン屋さん」の話題が重なった。

一つは毎日新聞一面コラム、
「余録」

「オランダ人常食に
パンというものを食するよし。
何をもて作れるものにや」
「小麦の粉に甘酒を入れ、
練り合わせて蒸焼にしたるもの也」
江戸時代の蘭学者・大槻玄沢(おおつきげんたく)
その「パン問答」

それを学んだのが江川英龍(えがわひでたつ)
伊豆韮山の代官で軍学者。
1842年4月12日に初めて、
兵糧用パンを焼き上げた。

そこから毎月12日が、
「パンの日」となった。

以来180年余り。

日本人の主食の世帯当たり年間消費額。
コメは約2万円。
パンは約3万2000円。

へえ~っと、驚く。

だが昨年度のパン屋の倒産は、
過去最多を記録した。

小麦価格の高騰が痛い。
燃料費も上がった。
経営環境が悪化。

もともと業種店は減り続けている。

小学校の女の子が、
大人になったらなりたい仕事。
パン屋さんと花屋さん。

スーパーマーケットやコンビニ、
ドラッグストアまでが、
パンを目玉に使う。

街のパン屋さんは減っていく。

もう一つは山陽新聞、
「滴一滴」

東京都内に、夕方になると店を開く、
ちょっと変わったパン店がある。
「夜のパン屋さん」

売っているのは、主に街のパン屋で
その日売れ残った商品。

スタッフたちが街を回って集めてくる。

日が暮れたオフィス街の路地の一角。
テーブルにあんパンやクリームパン、
マフィンといった多彩な品々が並ぶ。

スタッフの中には雇い止めなどで職を失い、
困窮した経験がある人も多い。

こちらはパンを焼かない、つくらない。
けれど食品ロスを減らすし、
雇用を増やす。

2021年度の国内食品ロスは523万トンに上る。
国民1人が毎日、おにぎり一つを捨てている計算。

料理研究家・枝元なほみさん。
「夜のパン屋さん」を立ち上げた。
「都合よく捨てられるのは
パンも人も同じです」

私もパン屋さんの一員だ。
工場でつくるパン屋の社外取締役。

それでも小学生の女の子たちが、
大人になったらなりたい職業に、
かつてはパン屋と花屋があった。

第一生命のアンケート調査。
第35回「大人になったらなりたいもの」
最新の2024年3月発表では、
今も第1位はパティシエだ。
洋菓子職人。

第2位は会社員となっているが。

私は「ベーカリー」の商品は、
パンとケーキとクッキーだと言い続けている。
これはひとくくりのカテゴリーだから、
パティシエの仕事も含んでいる。

この仕事に、人気がないはずはない。

それに街のパン屋さんは減って、
夜のパン屋さんなどできているけれど、
スーパーマーケットのパン売場は人気がある。

関西では「明日のパン」は、
なくてはならない家庭の必需品だ。

お母ちゃんがお父ちゃんに言う。
「明日のパン、買うてきて!」

それが多くの家で交わされる会話である。

新聞2紙が言うほど、
パンは落ち込んではいない。

「明日のパン」も欠かせないけれど、
スーパーマーケットで、
女の子たちが憧れるような、
パン売場ができないものか。

女の子たちがうっとりするような、
ブーランジェ(パン職人)やパティシエが、
仕事をしているところを見せられないか。

それをいつも思う。

では、みなさん、今週も。
ゴールデンウィークに向けて、
かっこいい仕事ぶりを見せたい。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2024年04月21日(日曜日)

イオンのパートタイマー40万人の「中核業務」と「業俳と遊俳」

日経新聞日曜版の一面記事。
「イオン、パートも中核業務」

イオンは日本国内に、
40万人の非正規社員を雇用する。
国内最大のパートタイマー数である。

店舗の販売部門に、
AIの業務システムを導入している。
たとえば「AIワーク」は、
ワークスケジューリングを自動化したシステムだ。

4月末からすべてのパートタイマーを対象に、
AI活用の研修を施したうえで、
従業員の勤務計画や商品の発注、
さらに販売計画づくりなど、
店舗の中核業務を担えるようにする。

つまり正社員の仕事を移管する。

とくに販売計画は現在、正社員が担っている。
売上げや仕入れに直結する中核業務だ。

AIを使うとその作成時間は8分の1となる。
飛躍的に負荷が軽くなるため、
正社員の業務の一部を移管することができる。

月刊商人舎2022年11月号の記事。
イオンリテール「データドリブン改革」物語
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当時の天池志光ストアオペレーション部長に、
存分に語ってもらった。
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40万人のパートタイマーの人たちが活躍して、
中核の業務を担うようになる。

これからのオペレーションの方向性を示している。

さて、日経新聞の文化欄。
結構充実している。
「現代の詩人の名句」
詩人の高橋順子さんが書く。

金子兜太は俳人たちを分類した。
「彼は業俳(ぎょうはい)
「彼は遊俳(ゆうはい)
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業俳は専門俳人。
主宰誌をもったり選句をしたりして、
作句を生業(なりわい)にしている人。

遊俳は楽しみで俳句を作っている人。

現代詩の詩人たちに「遊俳」が多い。

たとえば辻征夫(つじゆきお)『貨物船句集』より。
満月や大人になってもついてくる

「いまでもそのへんの路地に、
ぼおっと月を見上げている辻が立ち止まっていて、
ぶつかってしまいそうだ」

もう一句。自由律。

雪降りつもる電話魔は寝ている

三好達治の「雪」。
「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ」

あれを前提にした句。

抒情的な雪が降っているとき、
電話魔は寝ている。

面白い。

詩人・山本楡美子(ゆみこ)の遺句集『楡の花』
夕焼けや家族の名前を書いてみる

高橋評。
「夕焼けは家族と取り合わせると、
なつかしい絵本の味わいである。
しかし家族の名前を書けと
いわれないのに書いている、
これは尋常ではない。
手元にあかあかと
悲痛な夕焼けのかげがさしている。
別れを意識しているのである」

詩人・那珂太郎の遺句集『空寂(くうじゃく)』から。

白障子あくれば虚空に通ふらし

「現実と紙一重のところに
“無”をのぞきこむ瞬間は、
短い俳句のかたちでこそ
印象がより鮮明になるようだ」

作者も俳句のつもりだが、
けれどもこの透徹した美しいイメージは、
謎をはらむゆえに現代詩でもある。

現代詩人の遊俳がつくった俳句。
実に面白い。

同じようにパートタイマーの人たちは、
日本では主婦のプロであることが多い。

その遊俳たちがつくった販売計画。
業務計画や発注計画。

面白いかもしれない。
いや、面白いに違いない。

業俳の句とは違っている。
そこがいいことも多い。

業俳と遊俳。

故金子兜太先生、さすが。

〈結城義晴〉

2024年04月20日(土曜日)

合併における「求心力の自力本願型と遠心力の他力本願型」

結城義晴の毎日更新宣言ブログに、
毎日投稿してくださる。

吉本一夫さん。

USMHにいなげやが加わるブログに対して、
コメントしてくれた。

「求心力で成長する自力本願型と、
遠心力で成長する他力活用型。
その違いがどこで生まれるのか不思議です」

「ビジョン実現のためにどちらが
より確度が高いかという単に選択肢の問題なのか、
或いは創業時からのDNAの問題なのか。
そこがよくわかっていないと、
M&Aの失敗につながる気がしています」

素晴らしいご指摘。

「求心力の自力本願型と
遠心力の他力本願型」

M&Aは経営者の意思決定によって実行される。
したがってトップマネジメントが、
もともと独立独歩型なのか、
仲間とともに歩む共同型なのか。
それが基調になる。

しかし業界や業態の競争環境が、
影響を与えている場合も多い。

小売業は有店舗事業です。
有店舗事業は一に立地、二に立地、
三四がなくて五に立地などと言われる。

つまり立地争いとなる。
先にいい立地を抑えられたら、
あとから出て行っても商売はしにくい。

それから商勢圏も早い者勝ちです。
あるエリアにドミナントを築いてしまえば、
あとからそれを食い破るには、
大変なエネルギーが必要となる。

そこですでにある店、
すでにあるドミナントを、
買収、あるいは経営統合することになる。

小売業のM&Aの特徴。

チェーンストアとなった小売業は、
経営統合こそ成長の早道なのだ。

日経新聞の今月の「私の履歴書」は、
日本製鉄名誉会長の三村明夫さん。

製鉄業でも八幡製鉄と富士製鉄が、
1970年に合併して新日本製鉄となり、
さらに2012年に住友金属工業と統合して、
日本製鉄が生まれる。

店舗事業でなくとも、
企業の巨大化と競争状況によって、
M&Aは起きてくる。

こちらは産業の中で、
トップか、2位、3位かが、
営業上も経営上も意味を持つことが根拠となる。

私の言う寡占や鼎占、複占。

都市銀行はメガバンク三行となり、
製鉄は日本製鉄、JFEHD、神戸製鋼所、
そのあとを日立のプロテリアルが追う。

食品では食肉製造業が、
日本ハム、伊藤ハム米久HDが2強で、
そのあとにプリマハム 、スターゼンが続く。

ビール業界はずっと、
アサヒ、キリン、サッポロとサントリーの寡占だ。

産業が成熟してくると、
規模のメリットが追求されて、
どうしても上位集中となる。

日経新聞の「イブニングスクープ」
「セブン、本部主導で値引き推奨」
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セブン-イレブン・ジャパンが、
5月から「値引き」を始める。

かつての鉄則が変わっていく。

システムによって商品の販売期限を店に知らせる。
仕様を統一した値引きシールを用意して、
本部主導で値引きを推奨する。

対象商品はおにぎりやサンドイッチ、弁当など。
約300品となる。

廃棄する数時間前に値下げシールを貼る。
ネーミングは「エコだ値」。
20円、30円、50円、100円の4種類の値引き。
パーセントではない。

各店の手書きするタイプも用意する。

値引きは最終的には加盟店の判断になる。

昨2023年に実験をした。
直営とフランチャイズチェーンの約220店。

店舗の廃棄額は1割程度減り、
店舗の1日当たり売上高は増えた。

現在は廃棄商品の原価の15%は本部負担だ。
廃棄が減れば本部の収益も底上げされる。
もちろん加盟店の利益も上がる。

セブンはながらく「値引き」や「見切り」を、
禁止してきた。

しかし現状は、
全体の約3割が恒常的に値引きする。

公正取引委員会が2020年に見解を示した。
本部による加盟店の値引き制限が、
独占禁止法違反に当たる可能性がある。

それが大きく変わって、
セブンは本部推奨となる。

他はまだ加盟店の判断で行う。

コンビニ産業も典型的な鼎占である。
セブン、ファミリーマート、ローソン。

そしてファミリーマートとローソンは、
積極合併の他力本願型で、
国内セブンは自力本願型だ。

『岡田卓也の十章』という本。
私が商業界社長を辞するときに、
残してきた本だ。
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その第六章のタイトルは、
「企業の成長は合併の歴史である」

この章の最後の言葉。
「絶えず、社内に危機感を持たせ、
絶えず革新していかなければ、
企業は三十年たつと必ずおかしくなる」

「だから、わたしは、そうなる前に、
会社に大きな改革を促すために、
『変化』を選択してきた」

岡田卓也の経営の神髄。
合併は社内に変化を強要するものだ。

これは単純な他力本願の合併とは異なる。

他と力を合わせるときに、
その化学反応を変化の原動力にする。

商人の本籍地と現住所。
ビジネスマンの本籍地と現住所。
社会人の本籍地と現住所。

一定の規模を超えた店舗小売業の場合、
この本籍地と現住所の概念は、
不可欠のものとなってきた。

新入社員がすぐに辞めてしまう場合は、
本当の意味の本籍地にはならない。

それは残念なことだ。

〈結城義晴〉

2024年04月19日(金曜日)

USMHにいなげやが参画して1兆円を目指す時の「気概」

1年で一番快適な4月の一日のはずが、
風が強く吹いた。

そのうえ、
黄砂が東日本や関東を覆った。

午前中は新横浜へ。
横浜労災病院。
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午後、商人舎オフィスに出社。

商人舎流通SuperNews。

U.S.M.Hnews|
11/30付でいなげやと経営統合/関東SM1兆円構想に前進

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱。
略称U.S.M.H。

㈱マルエツ、㈱カスミ、マックスバリュ関東㈱。
そのホールディングカンパニー。
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ここに㈱いなげやが加わった。

株式交換契約を締結して、
U.S.M.Hが株式交換完全親会社となり、
いなげやを株式交換完全子会社とした。

もちろんイオン㈱傘下の、
関東スーパーマーケット連合。

U.S.M.Hニュース
23年度営業収益7067億円0.3%減・経常利益6.0%増

営業収益は7067億円、
前期比0.3%減。

営業利益が69億円、
8.2%増。

一方、3月期決算のいなげやは、
第3四半期の通期予想で、
営業収益2590億円(前期比4.2%増)、
営業利益24億円(同26.3%増)。

単純合算すると、
年商9657億円、営業利益93億円。

両社は2023 年4月25 日付けで、
「関東における1兆円のSM構想」を掲げて、
経営統合に向けた基本合意書を締結した。

2024年度はその構想が実現する。

イオンが2023年10月に公開買付けを実施して、
2023年11月30 日時点で、
いなげやの株式の51.0%を保有した。

株式交換契約は、
U.S.M.Hといなげや、両社の定時株主総会で承認され、
株式交換の効力発生は11月30日の予定。
11月28日にいなげやは上場廃止となる。

昨年の日本スーパーマーケットランキング

①ライフコーポレーション:296店舗 7654億円
②西友:326店 7209億円
③USMH:529店 7087億円
④アークス:373店 5662億円
⑤ヤオコー:199店 5645億円

USMHはいなげやの参画によって、
第1位に躍り出る。

私には感慨深い。

1877年に商業界に入社して、
首都圏のスーパーマーケットを取材し始めた。

西友は総合スーパー主体のチェーンストア、
東急ストアも総合スーパーの「とうきゅう」と、
スーパーマーケット業態の東急ストア。

だからSM専業チェーンは、
マルエツ、いなげや、プリマート、
サミットストア、とりせん、カスミなどなど。

マルエツは高橋八太郎さんが陣頭指揮を執り、
いなげやは三代目社長の猿渡清司さんが、
社長就任したばかりだった。

マルエツは1978年にプリマートを併合し、
2014年にはカスミとともにUSMHをつくり、
このたび、いなげやまで傘下に入った。

その背景にイオンがある。

残ったのがサミットととりせん。
オール日本スーパーマーケット協会の同志企業。

ベルクやマミーマート、エコスなどは、
当時はまだまだ目立たなかった。

ヤオコーやオーケーはむしろ後発のチェーンだ。

そしてロピアはもっともっと後から出てきた企業だ。

関東・首都圏も栄枯盛衰は激しい。

そのなかでUSMHが、
首都圏のチェーンが合同して、
日本で一番規模の大きなスーパーマーケットとなる。

ただし、企業の成長には、
2つのパターンがある。

第1は企業統合による拡大、
第2は自前出店による拡大。

アメリカでは前者の代表がクローガー、
後者はウォルマートである。

USMHとアークスがクローガー型、
ライフ、ヤオコーがウォルマート型。

いなげやは経営が停滞していた。
しかしイオンが株式の大半をもち、
USMHに参画すると決まってから、
不思議なことに成績が上がってきた。

後れを取ってはならない、といった意識が、
全社に浸透しているのだろうか。

コロナ禍明けという環境も、
最近のいなげやに追い風となっている。

それでもいなげやの頑張りは目立つ。

私がいつも言うけれど、
「商人の本籍地と現住所」を忘れずに、
いなげやらしさを追究してもらいたいものだ。

日経新聞「大機小機」
「ドラッカー氏の扉たたいた経営者」

70年前の1954年、ニューヨーク。
ピーター・ドラッカーを、
ソニーグループの創業者・盛田昭夫氏が訪ねた。
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まだ30歳代の盛田氏との最初の出会いを、
ドラッカー自身が後に明かしている。

盛田氏がドラッカーに語ったのは「ビジョン」だ。

トランジスタの可能性、
日本社会がコミュニケーションを求めていること、
グローバルな資金調達など。

「正直にいって、
『ずいぶんと野心的なことを言うなあ』
くらいにしか思っていなかった」

ドラッカーは振り返っている。

54年はドラッカーの代表的著書『現代の経営』が
刊行された年にあたる。
(日本版は56年刊行)
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「ビジョンを掲げ、
懸命に知見を築いていく中で
盛田氏は第一線の経営学者の
オフィスの扉をたたいた」

コラムニスト。
「体当たりで新市場に挑む盛田氏のような風景は
今も世界中で起きているに違いない。
次世代の主役を狙う企業は胎動している」

いなげやにもUSMHにも、
それ以外の企業にも、
「体当たりで新市場に挑む」気概が必要だ。

その時期だと思う。

〈結城義晴〉

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