結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2023年12月04日(月曜日)

小松左京「大阪万博奮闘記」の「手段と目的」

Everybody! Good Monday!
[2023vol㊾]

2023年第49週。
12月第1週。

いよいよ年末商戦です。

商人舎流通スーパーニュース。
ヤオコーnews|
2024年もSCを除く全店で1月1日~3日に店休日

ヤオコーが来年の三が日、
臨時休業すると発表した。

社員や従業員が年始を、
家族と過ごしたり、
規制したりできるようにするためだ。

近年はそんなチェーンストアが増えている。
万代はずっと三が日休業だし、
ロピアは4日まで営業を休む。

もちろん正月元旦に営業するイオンなどもあっていい。

それぞれの企業の理念に沿って、
それぞれに営業するのがいい。

みんなで足並みをそろえる必要はない。

しかしヤオコーはそれを、
12月1日に発表した。
いいタイミングだ。

今日は1日、月刊商人舎12月号の執筆と入稿。

午前中に来客。
小阪裕介さん。
ご存知、レジェンド小阪。
㈱JTB大阪第三事業部営業第四課長。
商人舎担当責任者。
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今年もお世話になりました。
来年もよろしく。

今週の私のスケジュール。
月曜は雑誌の記事執筆と入稿。
火曜はその責了。

きっぱりと終わらせます。

そして水曜には和歌山に出張。
店舗視察をして、
木曜は講演。

金曜は横浜商人舎オフィスで、
林博美先生と懇談。

今週も慌ただしい。
師走です。

朝日新聞「天声人語」
SF作家の小松左京。
1964年、学者ら7人で万博の研究会を発足。

『大阪万博奮闘記』に、
その奮闘ぶりがつづられている。
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そして1970年の大阪万博のテーマを決めた。
それは「人類の進歩と調和」

そして主張した。
「万博は手段であり、
目的ではない」

目的は「人類全体のよりよい明日を見出すこと、
(略)苦しみのすくない世界をつくりあげて行くこと」

コラムが問題にするのは、
開幕まで500日を切った25年の大阪・関西万博。

「聞こえてくるのは理念ではなく、
弁明や責任逃れの言葉、
経済効果の皮算用ばかりだ」

それもそうだが、
ハッとさせられることがある。

私たちの店は、
手段であって、
目的ではない。

私たちの雑誌も、
手段であって、
目的ではない。

最後は万博と同じだ。
「人類の進歩と調和」

そして顧客のための、
ちいさな喜び、
ささやかな幸せ、
あすへの希望。

この目的を見失ってはいけない。

弁明や責任逃れ。
経済効果の皮算用。

もちろん経済効果の議論は必須だ。
それは目的のために必須なのだ。

年末商戦の中でも、
よくよく考えておかねばならない。

それは手段であって、
目的ではない。

では、みなさん、今週も、
目的のために、
手段を使おう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2023年12月03日(日曜日)

植木等の「ウンジャラゲ」と「商売繁盛の1週間」

日曜日になると、
口をついて出てくる。

植木等の「ウンジャラゲ」

月曜日はウンジャラゲ
火曜日はハンジャラゲ
水曜日はスイスイスイ
木曜日はモーリモリ
金曜日はキンキラキン
土曜日はギンギラギンの
ギンギラギンの
ギンギラギンのギン
日曜日はランラランラ ランラン

この歌は植木等ショーで、
紹介された。

クレージーキャッツの植木と、
作曲家の宮川泰が、
即興のようにして作った歌だ。

私はそのテレビ番組を生で見た。
1968年の7月から12月まで。
高校生だった。

半年で終わった番組だったが、
音楽性と思想性の高い内容だった。

今、YouTubeで一部を見ることができる。
(クリックしてみてください↓)c3bd7bf02c8fcc5df07deb5f12121c4a

月曜日は休み明けで、
ウンジャラゲの気分。

火曜日はそのウンジャラゲが、
半分になってハンジャラゲ。

水曜日は仕事に慣れてきて、
スイスイスイ。

木曜日は週末に向かって、
モーリモリ。

金曜日は明日から半ドンと休みで、
キンキラキン。
(当時、土曜日は半日だけ働いた。
学校も半日の授業だった)

土曜日はもう、
ギンギラギンのギンギラギンの、
ギンギラギン。

日曜日はランラ ランラ ランラン♫

これで1週間。

しかしこのウンジャラゲ、
「商売繁盛の1週間」に、
置き換えることができる。

月曜日は日曜日のあとの、
ウンジャラゲの商売。

火曜日はさらに、
ハンジャラゲの商売。

だからイオンは、
火曜日を盛り上げようと、
「火曜市」を開催する。

万代は毎週火曜日に、
「大均一祭」を展開する。

ハンジャラゲの商売を、
盛り返そうとする。

水曜日はスイスイスイの商売。
スイスイとこなしていこう。

木曜日はモーリモリの商売。
週末に向かって元気が出てくる。

金曜日はキンキラキン。
Black Fridayも金曜日だ。

土曜日はギンギラギンのギンギラギンの、
ギンギラギンの商売。

商売繁盛、ありがたい。

そして日曜日は、
ランラ ランラ ランの商売。

これで1週間。

このウンジャラゲを、
4回やると1カ月、
13回繰り返すと、
四半期になる。

52回展開すると、
1年になる。

その1年の締めくくりが12月だ。

ウンジャラゲから、
ランラランラランで、
やり抜こう。

朝日新聞「折々のことば」
第2928回。

内容のある抽象的な観念は、
抽象的と感じない。
(岡潔)

「人間の思考は、
内容のない観念だけを相手にしていると
いずれ破産する」

江戸時代の関孝和と並んで、
日本史上最高の数学者と言われる。
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世界は「わかりきったことほどわからない」し、
人も「大きな心配ほど心配しない」もの。

「その限界を越えたければ、
逆に手許(てもと)にある
個人の問題を離れてはいけない」

商売は典型的な、
手許にある問題だ。

「実際、自己の問題を
個性的に究めたものほど
人も”共感がもちやすい”」

小林秀雄との対談『人間の建設』から。
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文系的頭脳の歴史的天才、小林秀雄。
理系的頭脳の歴史的天才、岡潔。

一つ違い。

その雑談。

本の宣伝文句。
「日本史上最も知的な雑談」

小林秀雄は1902~1983。
東京生れ。
東京帝国大学仏文科。
日本の文芸評論を確立した。

岡潔は1901~1978。
大阪市生まれ。
京都帝国大学物理学科と数学科。
「多変数解析関数論」の難題を解いて、
世界的な数学者と認識されている。

二人の雑談の中の、
岡潔の言葉。

植木のウンジャラゲは、
抽象的だ。

しかし内容があれば、
イメージが広がって、
抽象的とは感じられない。

今日も明日も、明後日も、
ウンジャラゲから、
ランラランラランで、
1週間。

それが商売の本質でもある。

〈結城義晴〉

2023年12月02日(土曜日)

ハラリの「Humility」(謙虚さ)と政治資金party券の「Rollback?」

7日間の戦闘休止。

束の間の平穏は去った。

イスラエル軍が、
パレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開した。

すぐに196人の人々が死んだ。

この地ではなんと命が軽いのだろう。
これが2023年12月2日の世界の現実である。

深い悲しみしかない。

ユヴァル・ノア・ハラリ。
1976年、イスラエル・ハイファ生まれの、
歴史学者、哲学者。
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私より二周りも若い学者だが、
尊敬している。

『21lessons』では、
イスラエルの首相を評価した。
「シリアの内戦に巻き込まれなかったこと」は、
「ネタニヤフの最大の政治的業績だろう」

「イスラエルは、
あれほどの軍事力を持ち、
政治家は好戦的な発言をしているが、
戦争から得るものなどほとんどないことを、
承知している」

しかしそのネタニヤフが今、
一方的な戦争をしている。

ハラリ。
「悲しいかな、二十一世紀には、
戦争がそんな企てであり続けたとしても、
平和の絶対的な保証にはならない」

「人間の愚かさは、けっして
過小評価するべきではない」

「人間は個人のレベルでも集団のレベルでも、
自滅的なことをやりがちだから」

対処策は見つからないが、
少しだけヒントがある。

「人間の愚かさの
治療薬となりうるものの一つが
謙虚さだろう」

国家、宗教、文化。
もう少し現実的で、
控えめになってもらう必要がある。
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Humilityが謙虚さだ。

You are not the center of the world.
「あなたは世界の中心なんかじゃない」

ネタニヤフこそ、
それを知らねばならない。

プーチンも習も。
ゼレンスキーも。

もちろんバイデンもトランプも。

私もあなたも。

一方、日本の政界。

自民党の最大派閥安倍派。
年1回、政治資金パーティーを開催。
この際、所属議員には、
パーティー券の販売ノルマが課された。

そしてノルマを超えて販売した分は、
議員にキックバックしていた。

まだ、あくまでも疑いの段階。
東京地検特捜部が強気の捜査をしている。

政治資金規正法に抵触する。

安倍派の政治資金パーティー収入は、
2018~22年の4年間で合計約6億6000万円。
しかし収支報告書にキックバック分が、
記載されていない。

政党助成金を与えられた上に、
まだこんな姑息なことをやっている。

世界のウォルマートは、
エブリデーロープライスを展開する。
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毎日、特売価格で販売して、
1シーズンの間、長ければ1年間、
売価を変えない。
つまり価格を固定する。

しかしこれだけでは販売に変化が乏しい。

だから「ロールバック」をする。
エブリデーロープライスから、
さらにディスカウントする。
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写真の右の青いPOPがEveryday Low Price 。
左の赤いPOPがRollback。

その原資は、
計画以上に販売した商品の、
ベンダーと店の利益を充当して生み出す。

当初の期間契約において、
販売数量や販売金額を決めておく。
それを超えて販売すると、
その超えた分はキックバックされる。

ウォルマートは、
そのキックバック分を、
「ロールバック」と呼んで、
顧客に還元する。
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それがエブリデーロープライスの売場に、
さらにエキサイティングを生み出す。

カスタマーたちは、
躍り上がって喜ぶ。

自民党の政治資金パーティーは、
ウォルマートの売場ではない。

財界から無理やり金を集める場だ。

そのノルマや計画を超えた分は、
キックバックされて、
議員の懐に収まる。

故安倍晋三派閥会長は、
これらによって多数の議員を派閥に集めた。
そして最大派閥になった。

ウォルマートのロールバックは、
余分に買っていただいたら、
それは顧客に還元される。

安倍派のキックバック分は、
どこに還元されるのかわからない。

議員の懐から先のことは、
誰にもわからない。

だからRollbackじゃない。
収支報告書にも載らない。

ここには謙虚さはない。
Humilityはない。

You are not the center of the world.
「あなたは世界の中心なんかじゃない」

〈結城義晴〉

2023年12月01日(金曜日)

倍賞千恵子の「トレードオン」と師走は「M&Aの季節」

今日から師走。

新型コロナウイルス感染症が、
第5類に分類移行したのが今年5月8日。

このときにコロナ禍が明けて、
ポストコロナ時代になったと考えていいだろう。

それから7カ月が経過して12月。
やっと正常な年末商戦となる。

しかし元には戻らない。

この12月をどう生きればいいか。

日経新聞「私の履歴書」は今日から、
倍賞千恵子。

女優、そして歌手。
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「二兎を追うものは一兎をも得ず」

倍賞千恵子は語り始める。
「諺とは裏腹に私は、
“歌”と”映画”を追いかけてきた」

両利きのトレードオン。

ご存じ、「寅さん」の妹役さくら。

「(寅さんの)関係者は私にとって
家族同然の大切な人たち。
渥美清さんをはじめ多くが
天国にすでに旅立ってしまった。
家族が少なくなるのは本当に寂しいこと」

そこで考える。
「死ぬって何なんだろう?」

「何年か前、答えが知りたくて、
知り合いの住職に質問してみたことがある」

「すると”死ぬとは、即ち生きることです”
と言われてハッとした」

(そうか。死ぬとは、
死ぬまで生きることなんだ。
死があるからこそ生がある。
生と死は密接につながっている……)

「ならば最期まで精いっぱい
生きればいいじゃない」

「そう考えたら肩の力がスッと抜け、
何だか穏やかな気持ちになった」

これが今年の12月の生き方だ。

朝日新聞「折々のことば」
哲学者の鷲田誠一さんが毎日、
いい言葉を教えてくれる。
今日はその第2926回。

細かいところから始めるのが、
アイロンがけのコツ。
(友人)

「アイロンの当て方については
角度や重心など教わってきたが、
中でもしっくりきたのがこれだ」と、
鷲田さんの友人。

「広い面からかけると細部にしわが寄る」

「同じように社会の矛盾や確執も
つねにマイノリティへの
しわ寄せとして現れる限り、
世界の隅で勝算の不確かな闘いを
続ける人々に心を寄せたい」

「アイロンは強権を連想させるので
例としてはよくないけれど、
と声を細めて」

細かいところから始めるのが、
仕事と商売のコツ。

12月はこれでいこう。

さて商人舎流通スーパーニュース。

イオンnews|
いなげやのTOBを終了、11/29付けで連結子会社化

イオンがいなげやの株式公開買い付けを完了した。
10月10日から11月29日まで。

イオンはいなげや株の51%を保有して、
連結子会社にした。

関東地方には、
U.S.M.Hがある。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス。
マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の、
ホールディングカンパニー。

ここにいなげやも加わっていく。
2023年2月・3月期決算では、
U.S.M.Hが8787億円、いなげやが2485億円、
単純合計で9572億円のチェーンとなる。
店舗数は決算時点で805店。

マルエツ、カスミ、いなげや。
私は46年も付き合っている。
感慨深い。

一方、
トライアルnews|
旧さとちょうを「トライアル」に初転換/12/1改装オープン

トライアルホールディングスは9月に、
青森の㈱佐藤長から18店舗を譲受した。
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佐藤長は6月26日に、
青森地方裁判所へ民事再生手続きを申請していた。

そのスーパーマーケット「さとちょう」を、
「トライアルスマートむつ新町店」として、
リニューアルオープンした。

同社はスーパーセンターを中心に4つのフォーマットを展開する。

その一つが
「smart(スマート)」のフォーマットだ。

スマートは小型のスーパーマーケットで、売場面積約1000㎡、約1万から2万アイテムを扱う。

イオンといなげやは、
公開買い付けによる子会社化だった。

トライアルと佐藤長は、
一部事業を承継する事業譲渡契約。

12月に入ったのに、
いや12月に入ったから、
こういったM&Aのケースも増える。

さらに、
セブン&アイnews|
オーストラリア「7-Eleven」の運営企業を買収

セブン&アイホールディングスの世界戦略。
オーストラリアの7-Elevenを買収する。
これまではエリアフランチャイズで展開していた。
運営主体は、
Convenience Group Holdings Pty Ltd。
その全株式を17億豪ドル(約1700億円)で買い取る。

オーストラリア最大のコンビニチェーンで、
751店舗を運営。

オーストラリアは2060年代半ばまで、
年平均人口成長率1.4%。

これはセブン&アイにとって、
じつにいいM&Aだ。

拍手拍手。

12月はM&Aの季節でもある。
商人の本籍地と現住所を忘れずに。

最期まで精いっぱい
生きればいい。

そして、
細かいところから始める。

12月もそれが仕事と商売のコツである。

〈結城義晴〉

2023年11月30日(木曜日)

「西向く侍」最後の日の黒田東彦「私の履歴書」評

2023年11月最後の日。

西向く侍。
にしむくさむらい。
「さむらい」は「士」と書いて、
形は「十と一」である。
だから「二四六九、十一」

「小の月」の覚え方。
物心ついたころ、
母から教わったと思う。

侍の11月は30日しかない。

大の月は31日ある。

明日から大の月の師走。

今日はずっと横浜商人舎オフィス。
今日は来客を迎えつつ、
月刊商人舎11月号の入稿の日。

午前中に田中食品㈱のお二人。
社長の田中孝幸さん(中)と、
営業部顧問の加藤盛芳さん。
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広島に本社を置く、
伝統の「ふりかけ」メーカー。

商人舎15周年セミナーにも参加してくれた。

次から次から手品のように、
様々なふりかけのアイテムを披露してくれた。

私はを紹介した。
つまり常時、情報を得ることが大事だ。

それから様々なアドバイスをした。
デュアルブランド戦略も簡単に説明したし、
営業拡大の方向性も教授した。

あまりこういったことはやらないのだが、
いい人をご紹介します。

田中さん、38歳。
いい青年社長です。
期待しましょう。

午後一番でお二人が登場。

まず前田仁さん。
㈱万代の総務部付け部長で、
万代ドライデイリー会事務局長。
今年もお世話になりました。IMG_95323

それから小阪裕介さん。
㈱JTB大阪第三事業部営業第四課長。
商人舎担当責任者。
小阪さんにもお世話になりました。IMG_95343
今年もありがとうございました。
来年も頑張ろう。

さて日経新聞最終面、
「私の履歴書」

今月は黒田東彦氏。
前日本銀行総裁。
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今年の4月8日に退任して、
まだ7カ月しか経過していない。

11月1日から書き始めて、
今日最終話。

政財界や金融関係でかなり話題になった。
「1年早かった」などとコメントが出ている。

日経新聞は大いに話題をとって、
多くの人に読まれただろう。

しかし後任の植田和男現総裁は、
四苦八苦している。

黒田時代のツケが回ってきている。
それは明らかだ。

ありきたりな言い方だが、
ドル高円安はさらに進み、
物価高は国民生活をひどく圧迫している。

1年くらいは沈黙を守ってほしかった。
それが後任者に対する礼節だと思う。

この「私の履歴書」は、
著者が自分で書く場合と、
日経の記者が代筆する場合がある。

どちらかは、たいていわかる。

黒田さんの場合は、
自分で書いていた。

そして驚くほど、
客観的な表現に徹していた。

自分の手で、これだけ冷静に書くのだから、
今、出ても差し支えはないだろう。

そんなやや尊大な印象があった。

ただし冷静さに徹したから、
面白味は全然、なかった。

ずっと読んでいたが、
つまらなかった。

この連載は基本的に自慢話である。
しかしその自慢話が、
盛大に展開されるから面白いし、
勉強になることも多い。

黒田東彦編はそれが抑制されていたから、
つまらない自慢話になった。

もっと時間をおいてから、
思う存分、自慢話に徹すればよかったのに。

しかし1カ月の一番最後の箇所だけ紹介しよう。

「最後に、若者や後世代の人に
伝えたいことがある」

「経済は生き物であり、絶え間なく変化する。
さらに、数年に1回ほどは
予想しなかったショックにも見舞われる」

「その際にはどうするか」

「極力早く事態を把握するとともに、
内外の過去の事例に学び、
思い切った対応策を素早く決断して
実行する必要がある」

ねっ。
面白味のない文章でしょう?

「リスクを恐れて優柔不断であることは、
事態を悪化させるばかりである」

これも、どこかで聞いたことがあるフレーズだ。

――しかし思い切った対応策を実行しても、
結果は最悪になることがある。
優柔不断でなくとも、
劣悪な状況が生まれてしまうことがある。

だから人生、面白い――。

こんな一言でもあれば、
違っていたのに。

――しかし今、
日本はそんな状況だ。

〈結城義晴〉

2023年11月29日(水曜日)

大阪万博の入場料の「考察」とFSSFの地方創生の「意義」

2025年国際博覧会。
会期は2025年4月13日~10月13日。

開幕まで500日となった明日。
11月30日。

前売り券が販売される。

開幕後2週間使える「開幕券」は4000円。
開幕後3カ月使える「前期券」は5000円。

ちゃんと開催できるか否かの論議は、
くすぶっている。

しかしそれはさておいて、
商売を考える立場から見ると、
売れる値段かどうかは気になる。

開幕後の1日券は7500円だ。
これ自体がリーズナブルか、
はたまた高いか。
あなたはどう思いますか?

東京ディズニーランドは、
1dayチケット・パポートが今、7500円。
これに合わせた節がある。

それだけの価値があるか。

1970年の大阪万博は、
大人の入場料金が800円だった。
私は高校3年生で、
青年(15歳~22歳)の600円で入った。
入場者数が6422万人だった。
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当時のサラリーマンの平均年収は、
87万1900円だった。

万博入場料は年収の0.09%という計算になる。

一方、2021年の平均年収は約457万円だから、
7500円は年収の0.16%。

ん~、入場料そのものも、
55年が経過して約10倍になったが、
平均年収から見ると、
今の入場料はちょっと割高感がある。

あの頃は高度成長期で、
賃金も所得倍増計画で年々上がっていた。
だからちょっと高めの設定は克服された。

消費者物価を比較すると、
2022年は1970年の約3.2倍である。
物価は驚くほど上がっていない。

だから当時の入場料をスライドさせると、
800円×3.2=2560円の計算が成り立つ。

これを考えると、
今回はさらに割高の印象を受ける。

前売りの「前期券」の5000円当たりが妥当か。
チェーンストア並みに4980円なんて、
いかが?

さて500日前の前売り券は売れるか。

その前売りの目標は、
約1400万枚。

2005年の愛知万博は、
800万枚が前売りではけた。
それを7割超上回る計画だ。

来場者数全体の目標は、
約2820万人。

愛知博の来場者数は2200万人だったから、
関西と中京のマーケットサイズを比べると、
控え目な設定か。
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その半分近くを前売りでさばきたい。
獲らぬ狸の皮算用だ。

しかし関西の経済界が、
1400万枚のうちの約700万枚分をさばく予定だ。

関西経済連合会の松本正義会長。
住友電気工業会長。
「関西の主要企業における購入の内諾は、
約300万枚に達した」

関西財界挙げての購入となる。

残りの前売り券の約700万枚は、
自治体や一般人に購入してもらわねばならない。

会場建設費は最大で2350億円。
まだ増えるかもしれない。
当初計画から8割以上の膨張。

これとは別に政府の「日本館」には、
800億円を超える国費が充てられる。

国民は厳しく見ている。

今日は午後から、
日本食糧新聞社。

東京・新富町に本社が移転した。

フードストアソリューションズフェア2023は、
9月6日・7日に開催された。
略称FSSF。

その結果報告会。

東京本社には、
杉田尚日本食糧新聞社社長と、
千野和利離島振興地方創生協会理事長。
そしてアドバイザーの結城義晴。
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運営委員の皆さんは、
オンラインでご参集。

副主催企業のトップの皆さん。IMG_95153

杉田社長のご挨拶のあと、
共催の千野さんが力強く、
運営ビジョンを語った。IMG_95173

もちろん元阪急オアシス社長・会長。
千野さんがFSSFの推進役を果たしている。
私はそう思っている。

千野さんの関西や西日本の、
離島振興と地方創生にかける意気込みは、
舌を巻くばかりだ。

大阪で開催されるFSSFにも、
その熱意が込められている。IMG_95183

私は担当するセミナー企画の報告をした。
それからFSSFに対する私の期待を語った。

大きな展示会のセミナーは、
聴講してくれる人たちに役立つだけではない。
セミナーの講師の顔ぶれやテーマ設定が、
展示会のビジョンや先進性を表現することになる。IMG_95193

事務局からの説明のあとで、
運営委員の皆さんが、
意見を言ってくれた。

みんな的確で、いい発言だった。

万代の阿部秀行社長は、
手厳しい指摘をしてくれた。
それは阿部さんらしくて、
とてもよかった。

こういった率直で的を射た意見が、
共同作業で大きな仕事をするときには必須だ。

ライフコーポレーションの並木利昭さんは、
最後にFSSFの評価を、
全体をまとめる形で発言してくれた。

これは暖かい意見だった。

感謝したい。
ありがとうございました。

後半は千野さんが、
ふたたび熱い思いを語り、
私もフランスのシアルのことなどを交えて、
これから伸びていくだろう、
FSSFの在り方を述べた。
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2025年の大阪万博の年に、
大阪開催のFSSFも、
大きく飛躍しなければならないと思う。

西日本の経済振興や地方創生に、
必ず貢献できる食品展示会である。

すべてが終わってから、
三人で写真。
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来年もよろしくお願いします。
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東京一極集中の日本が、
地方の時代へと転換する、
その架け橋の一翼を、
このFSSFが担うのだと思う。

〈結城義晴〉

2023年11月28日(火曜日)

ヤオコー松戸上本郷店開業と伊藤園陳列コンテスト審査会

ヤオコー松戸上本郷店。
本日オープン。yaoko_01

商人舎流通スーパーニュース。
(商人舎らしい正確な報道を続けます。
ブックマークやお気に入りに追加してください)

ヤオコーnews|
557坪・年商25億円のヤオコー松戸上本郷店11/28オープン

山本恭広商人舎編集長が取材に行った。

千葉県松戸市。
JR上野東京ライン-常磐線北松戸駅、
新京成線上本郷駅または松戸新田駅、
それぞれ1キロ以内。

北松戸からタクシーで10分。

市民病院の跡地に、
松戸上本郷ショッピングセンターが新設された。

ヤオコーが核店舗で、
マツモトキヨシ、セリアなどが出店。

店舗レイアウトは、
青果と惣菜を両翼に配置した。
ヤオコーの標準型レイアウトだ。

その売場先頭の青果売場。yaoko_03

オープン前から長い行列ができた。yaoko_04

反時計回りのレイアウトだが、
第一主通路に青果、精肉、鮮魚の三部門が集約された。yaoko_05

最も力を入れたのが精肉売場。
黒毛和牛を部位別に品揃えした。yaoko_06

冷凍肉、冷凍魚介は、
第一主通路に面したリーチインで訴求する。yaoko_07

加工肉は日配部門に括られて、
生鮮売場と対極の第三主通路側に、
ゾーニングされた。yaoko_08

オープン後1時間以上経っても、
顧客の列は続いた。yaoko_09
売場面積557坪、年商予定25億円。
実に効率のいい店だ。

この店舗には、
ある画期的な試みが込められた。
それは月刊商人舎12月号で、
謎解きしよう。

競合はサミット松戸新田店。
2007年にオープン。
summit01
商業施設グリーンマークシティーは、
サミットが開発した。
スーパーマーケットのサミットストア、
衣料品のコルモピアが入居している。

今年11月1日にリニューアルオープンして、
ヤオコーの出店を迎える。summit02

この北松戸は今、
必須の視察エリアだ。

今日は、
伊藤園陳列コンテスト審査。

東京の清水橋。
伊藤園本社。
IMG_94883

審査員は6人。
全員そろってスタート。 IMG_03033

「お~いお茶」秋の陳列コンテスト。
店舗賞は大型コースと小型コース。

そのうえに伊藤園のキャンペーンが加わった。
「お茶で日本を美しく。」
日本各地の環境保全-整備活動を支援する活動。
「お茶で日本を」が伊藤園らしくてとてもいい。
そして「美しく」は陳列コンテストにもぴったりだ。

すでに全国から優れた作品が選ばれていて、
その中から優秀賞と最優秀賞を選考する。
IMG_03143

今回も力作が集められたが、
結構、すんなり決まった。

最後に意見が分かれた場合には、
全員で議論して決める。
IMG_03223

店舗賞の選考が終わったら、
今度は企業賞。

全国から選ばれた企業の作品を比べて、
決まりました。

お楽しみに。
IMG_03273

最後に審査員がそれぞれ講評をして終わる。

日本の小売業のプレゼンテーションは、
アメリカに追い付いてきたと思う。
ヤオコーやサミットの写真を見てほしい。

かつては全然、歯が立たなかった。
格段の真価を見せている。
この陳列コンテストも貢献している。

そして恒例の写真撮影。
食品商業誌上に掲載される公式写真。
IMG_03343
右側が伊藤園のトップの皆さん。
中央から本庄大介社長、周介副社長、
そして神谷茂専務。
左側の私の隣に、
松井康彦商人舎特別プロデューサー、
三浦慶太食品商業新編集長。

その後、スタッフ全員で記念写真。IMG_03383
審査委員会が終わると、
伊藤園のお茶をいただきながら、
いつものように情報交換と懇親。

商人舎11月号が話題になって、
オーケー銀座店とウェグマンズNYCに関して、
私からいろいろ解説した。

後列左が小林哲也販売促進部部長。
『チェーンストア』を持ってくれている。
IMG_03423
朝日新聞一面の「折々のことば」
昨日の第2922回。

A person’s back tells me more than the front.
(ソール・ライター)

Saul Leiter。
1923年~2013年。
アメリカの写真家-画家。

「人の背中は
正面より多くのものを

私に語ってくれる」

『ソール・ライターのすべて』から。
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企画-佐藤正子、編集-鎌田恵理子、幻冬舎刊。

「背中は自分では見ることができず、
無防備に晒(さら)されるほかないもの」

「でも正面の顔だってじつは同じだ」

「顔はよりによって
自分だけが見ることができない。
そんな顔から他人は情報をたっぷり得る。
なかなかに怖いこと」

商品にも「顔」がある。
「フェース」と言う。

そのフェースを顧客に見せることが、
陳列技術の基本中の基本だ。

顧客は商品の顔から、
情報をたっぷり得る。

しかし顧客は商品や売場の背中からも、
情報をたっぷり得ている。

なかなかに怖いことだ。

〈結城義晴〉

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