【最終回】 スーパーマーケットのマーケティング Vol.41

2011年8月5日(金曜日)
カテゴリー:

スーパーマーケットの未来

 14時53分56秒

41. スーパーマーケットの未来

 実務家は具体化思考をするので、学者のような完全主義に陥らないで済む。計算書をつくる際にも、必ずしも理論的にはベストで仕上げなくても、自社としては、これで良いと思えば、そこで見切り発車をする。発車した後、節目節目で修正、調整を行いながら業績を残している。具体化思考の賜物である。

 実在の組織は、具体化思考によって、知識を蓄積し、知恵を出し合って、組織の知恵を生み出す修練を積み重ねてきた。結果として組織規模も大きくなり、質的にも成熟してきた。多くの組織は、今後も発展し続ける自信を高めている。反面、このままで良いのかという危機意識をもっている。危機意識があったからこそ、市場、社会の変化に対応し、自社の政策を改革してきたのである。また、今後も改革し得るのである。これが組織の具体化思考の知恵である。

 今後予測される組織の危機の1つに、派閥問題がある。これからは業界の再編成が進むであろう。その過程で、企業の統合、合併も多くなるだろう。企業の合併は、企業のもつ特性を組み合わせて、より強い企業体質をつくるために行うのである。しかし、その目論見は、上手くいくとは限らない。2つの組織文化を組み合わせるとカルチャーギャップが不協和音を鳴らす。

 合併をしないでも、企業が拡大すると、社長派と専務派、または財務畑と営業畑というような派閥が自然にできあがり、不協和音を奏でるようになる。これらの不協和音は、業績が上がれば、予算達成度が安定すれば、自然に解消する。逆に予算コントロールができなくなると、不協和音は多く、かつ大きくなる。

 組織文化、企業イメージ、経営業績の3者はスパイラルに上昇もすれば、下降もする。上昇を続けるには、時間もエネルギーも必要だが、下降しだすと加速され、なすすべがなくなる。常に上昇を続ける努力が肝要である。また3者のいずれかに陰りが表われたら、遅くならないうちに対策を打ち出すことを心がけねばなるまい。

 組織には、以上2つの問題解決の知恵が育っているはずである。万一、不足していたらこれを補充する知恵を出せばよい。知識商人とは、こんな知恵を出せる商人である。自分の不得意な領域のスキルが必要な場合には、仲間から助けてもらえる知恵を、仲間から協力を求められたら、自分の役割をただちに決められる知恵をもちあわせている人材である。

 現代化が進む、我が国の小売産業では、すぐれた知識商人が無数といえるほど大勢育っている。これらの人材が必ずや、今後企業に表われる数々の難問を、具体化思考による組織の知恵を使って切り開いてくれよう。明るいスーパーマーケットの未来が見えてくる。

 グローバリゼーション、多面化の問題も、考えてはみたい気もするが、あまり長くなりすぎるので、今回は割愛することにする。

 今後は、明るいスーパーマーケットの未来を夢見ながら、安んじて、釣り三昧と洒落こむこととする。

 ただ、脳の活性化のために、時々は書きたいとも思っている。

(了)

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.40

2011年7月13日(水曜日)
カテゴリー:

組織の変容

 15時15分00秒

40. 組織の試行錯誤とそのメリット

● 試行錯誤による私自身の変化

 私は、試行錯誤を続けているうちに、私自身が変わりだしているのではないかと思い始めた。一口でいえば、脳が活性を取り戻しているような気がした。テレビで、スポーツを見ても、ドラマを見ても、ニュースを見ても、みんな面白くなかったのである。どの番組も試行錯誤を繰り返している。スポーツの選手も、コーチも、監督も、アナウンサーも、全て試行錯誤を続けている。

 サッカーのアジアカップでは、毎試合苦戦をしながら何とか勝ち残り、最後に優勝を勝ち取った。勝つことはもちろん、うれしかった。しかし、それと同じぐらいに、プレーぶりを見ているのが楽しかった。ゴールキーパーがレッドカードで退場させられた後、1点のビハインドを、1人欠いたままで、逆転したときには本当に感激した。キーパーが退場させられた時、これまでだったら、がっかりしてスイッチを切りたくなるような場面で、何とかしてくれ、何とかしてくれるだろうという気持ちで、ゲームを見続けた。苦渋にゆがんだ監督の顔が映像に浮かんだ。

 苦渋の中にも、何とかなる、何とかするという期待と、自信が読み取れる、素晴らしい顔であった。1点取り返した時、逆転した時にも、監督が映し出された。順次、監督の顔は自信にみなぎり、喜びにおおわれるように変わっていった。表情の変化がおもしろかった。これを映し出すカメラワークも面白かった。

 私の試行錯誤は、高齢化に伴いしぼんでいた脳に活性をもたらした。少し活性を取り戻した脳で、組織の試行錯誤を見直してみた。見直しに当たっては、少し工夫をした。

 これまでは、組織で試行錯誤を進める難しさに焦点を当て、その克服の仕方を考えていたが、これからは、組織の試行錯誤のメリットを考えることにしよう、そう思った。(こんな知恵がどこからわいてきたのかは分からない。脳の活性化の賜物であろう)

 組織のメリットを考えだしたら、すぐに、いくつものメリットが浮かび上がった。効果が大きい、時間が短くて済む、力強い、などなどである。組織で問題解決を続けてきたからこそ、今日のスーパーマーケット各社が存在しているのだ。50年前の食品スーパーと、今日のスーパーマーケットではどこが違う、なぜ違うのだと問われて、ただちに、的確に答えられる人はほとんどいないだろう。それほど、素晴らしい変化を遂げてきた。

●2つの側面から見たスーパーマーケットの変化

 この素晴らしさを、次の2つの側面から掘り下げてみよう。

 その1つは、知識と知恵の側面である。
知識は、個人とは比較にならないほど、組織には50年の間に豊富に蓄えられている。また知恵の出し方も、組織だからこそ巧みになっている。各人が持ち寄る知恵を調整し、組織の知恵とする方策も、組織が自然に身につけている。だからこそ、今日の企業組織ができ上がっているのである。

 現在の企業システムは、これからの難題を乗り越えるための基礎である。この基礎を修正、調整すれば難関は克服できる。そして組織はより成熟する。ただ、企業によっては、修正、調整するためのコンセプショナル・スキルが不足しているかもしれない。コンセプショナル・スキル不足の企業は、その補充策を考えればよい。

 そのくらいの知恵は出せる基礎はできているはずである。後は自信をもって実行するのみ。「案ずるより、産むが易し」である。

 2つ目の側面は、具体化と抽象化という思考法の側面である。
結論から先に述べると、実在の企業が当面する問題と、社内で計画をつくり実施すれば、学者や研究者が計画をつくり、企業が計画を検討してから実施するより、はるかに大きな実績を、はるかに短い時間で上げられるということである。

 実務家は日ごろから、現にある組織の中で、具体的な目標を設定し、その目標に向かって具体的な行動計画を作成し、実践している。つまり、思考法は具体化である。学者、研究者の思考方向は抽象化である。研究目的も抽象的にしか表現できないことが多く、目標足りえない。社会事象の研究者はしばしば具体的方向の思考も交えるが、思考の主流は抽象化の方向である。

 実務家も時には抽象化思考をする。年度末の統括的レビューを行う時などが好例であろう。

 コンセプショナル・スキルが必要なことを痛感する時がある。コンセプショナル・スキルの優れた人材は通常、スタッフなどと呼ばれる職位に配属されている。スタッフたちも常に抽象化思考をしているわけではない。逆に、具体化思考が主流で、主流の流れをよりよくするために、必要に応じ抽象化思考を取り入れるのである。

 主流をせき止めたり、逆流させようとするスタッフは、社内評論家として排斥される。

 以上が、実務の思考パターンのあらましである。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.39

2011年7月7日(木曜日)
カテゴリー:

筆者からのメッセージ

 14時02分35秒

39. 「ときどきエッセイ」の執筆を振り返る

● なぜ「ときどきエッセイ」を書き始めたのか

 ここまで「マス・カスタマイゼーション」というコンセプトに基づく、「おいしさに焦点をおいた新戦略の仕方」を概説してきた。

 なお、拙稿の前半には、「マス・カスタマイゼーション」が生まれるまでの蓋然性を概説するために、相当量の紙数(時間も)を費やした。後半にも、組織の知恵とか組織のリーダーシップなどの解説に必要以上の紙数を費やし、読んでいる人は、拙稿の論旨に戸惑うことも少なくなかったであろう。

 実は私自身、長々と書き続けている間に、論旨が分からなくなって困却したことが多々あった。筆者が、論旨が分からなくなった論述を、読者が読んで戸惑うのは当然すぎるくらい当然である。大変なご迷惑をかけたことを、心からお詫びする次第である。

 しかし困却を繰り返すうちに、雑文を書き始めた動機をはっきり思いだした。その動機とは、引退時に残っていた思い、ばらばらな知識を整理することであった。マネジメントのコンセプト、理論、エピソードは、長い間に、不勉強な私でも相当、頭の中に溜まっていた。私なりに整理はしていたつもりでも、整理が不十分なので、それが、もやもやした思いとなっていたのである。

 結城さんから、雑文(ときどきエッセイ)の申し出があった時、死ぬまでには整理したいと思っていたので、良い機会とばかりに申し出を受け入れた。

 整理枠組みも考えずに書き始めた。枠組みは、書いているうちに決まってくるであろう、くらいに考えて書いていた。そのうちに、「このパートは、元クライアントAにはこのように、Bにはこのように話せばよかったな」というような気持ちがわいてきて、それなりに叙述法を少しずつ変えた。

 書き進むうちに、私の知らない読者、実務家、研究者の思惑も気になりだした。そして最後には、この拙稿は、私のもやもやを整理するために書いているのだから、読者の思惑は気にしない方がよい、と考えられるようになった。その時には、まとめ方の枠組みもおおよそ出来上がっていた。いずれ再整理したくなるという予感もあった。再整理に当たっては、読者から見て分かりやすさを主眼に、なるべくコンパクトにまとめよう。そしてコンパクトにまとめれば、私自身も、よりすっきりした感じがつかめるはず、という思いも浮かび上がっていた。

● 執筆の楽しさ

 一方、執筆を進めるうちに、いろいろな面白さ、楽しさを味わうことができた。

 一番面白かったことは、マーケティングの叙述の中で、スーパーマーケットのマーケティングとは食生活の向上に貢献すること(これは20年来言い続けてきた)と書きながら、日本の普通の家庭の食生活はおろか、私自身の家庭の食生活、子供の好みすら知らないことを発見したことであった。

 一瞬、頭が真っ白になるような驚きであった。筆が先に進まないどころか、何を考えているのか、何も考えていないのかも分からなくなってしまっていた。

 少し落ち着いてくると、面白くなり、おかしくなっていた。こんなことも知らなかったのか。知らないことにも気づいていなかったのか、というような心理である。なにしろ、面白くもあり、おかしくもあり、楽しくなっていた。

 このような楽しさは、書いているうちにたびたび経験した。執筆を続けていなければ味わえない楽しさである、その1つが、組織の知恵であった。

 難しさを乗り越えるための知恵を考えているうちに、ひょっと、「組織の知恵」という言葉が浮かんだ。個人の知恵と組織の知恵ではどこか違うんだろうと考えているうちに、私なりの組織の知恵のコンセプトが回りだしていた。コンセプトのまわりだす過程は本当に面白かった。

 こんな楽しさを継続的に味わうチャンスを与えてくれた結城さんに改めて、感謝の意を表したい。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.38

2011年7月1日(金曜日)
カテゴリー:

リーダーシップ

 15時33分43秒

38. リーダーシップ論

● リーダーの3つのスキル

 起死回生策は成功することは少ないが、成功することもある。優れたリーダーに恵まれれば、成功する。成功に導いたリーダーは、中興の祖などと呼ばれ、企業内外の人々から敬愛を受ける。ジャーナリズムはその人柄を称賛する。研究者はリーダーシップ論として理論化する。研究者は、中興の祖だけではなく創業者、部門リーダーなども研究対象に入れて、リーダーシップ論をまとめている。これらのリーダーシップ論は、ほとんど個人の資質を分析したものである。

 ところで、これ以外のリーダーシップ論もあるので紹介してみたい。

 他のリーダーシップ論とは、個人の資質の分析ではなく、うまくいっている組織の状態の分析から進められる。うまくいっている組織には、リーダーシップがあるとみて。そこにはどんな機能が働いているかを分析する。結論として、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプショナル・スキルの3つのスキルがうまくコンバインして機能しているとき、リーダーシップがあると評価する。

 テクニカルスキルとは、スーパーマーケットの場合なら、商売の能力、マーチャンダイジングの能力のことである。

 ヒューマンスキルとは、人間関係をまとめる能力である。

 コンセプショナル・スキルを、私は、企画分析力と訳している。

 以上、3つの能力を1人で兼ね備えている人物は、稀有である。したがってリーダーシップを1人の人間の人柄、能力的資質分析をするだけでは、経営には不十分だとする説である。

● 3つのスキルの役割分担

 初期のスーパーマーケットでは、社長がテクニカルスキルに優れていれば、それなりに業績を伸ばすことができた。成長期の初めのころは、社長がお父さん役、テクニカルスキル、専務がお母さん役、ヒューマンスキルに優れていれば、順調に規模拡大が続けられた。しかし、成熟期にいたっては、コンセプショナル・スキルの達人を欠いては、前進はかなわなくなっている。

 なお、上記の3スキルは、それぞれ、重複の人材で分担しても差し支えない。テクニカルスキルは、立地・店舗開発戦略とマーチャンダイジング戦略、店内業務、ヒューマンスキルは人事と教育、コンセプショナル・スキルは営業企画、財務、電算システム、etc、etc。

 リーダーシップは、複数の人間の持てる能力を組み合わせ、結合することによって確立し、強化される。いわば、組織のリーダーシップということであろう。中興の祖は、組織のリーダーシップをつくり上げるための人事の名手であったともみられよう。

 さて、3つのスキルを、どの場面でどのように組み合わせるかは組織の知恵比べ。知識商人の腕の見せ所である。各人がよく考えて知恵を出し合い、話し合いを重ねるうちに、自ら組織の適切な知恵が生み出される。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.37

2011年6月24日(金曜日)
カテゴリー:

利益の概念

 15時55分14秒

37. 新プロセスモデルの妥当性

● 見切り発車の1年後

 次は妥当性の検証である。

 見切り発車後、1年もたてば、組織は、新戦略に基づく改革の仕事に慣れてくる。当初の戸惑いは暫時、薄れている。業績が5%も上がっていれば、この路線でいいんだというような機運が生まれていよう。逆に5%も下がっていれば、大幅な見直しが必要だとする者、路線そのものが誤りだとする者、路線は正しいがやり方に徹底が欠けていたという者など、いろいろな評価が入り乱れるであろう。10%もダウンしていると、全体で失敗を認め消沈することになる。

 これが組織による妥当性の検証である。

 この頃には、あいまいさを残しながら、共有化されたトータルイメージも明確化が進み、検証の議論もより具体的になっている。

 そこで、指摘したい最も重要なポイントは、1年目に業績が悪化しても、前年を下回らないようにすることである。前向きの評価を行うためである。その後の議論が、前向きに進められ、より具体的に、より効率的な議論、討論になるからである。しかも結論をまとめるための時間も大幅に短縮することができる。

 さて、初年に前向きな検証を行えるような業績をつくるためには、月次、半年目のフィードバックの精度を高めねばならない。

 つまり、部門別、店別の予算達成のための調整を積み重ねなければならない。今日、成長期を乗り越えたスーパーマーケットは、高次な予算コントロールシステムをつくり上げ、運営している。

 このシステムをさらに高次化すれば、年次予算の達成率は高くなる。したがって、月次予算をコントロールするための課題を順次、的確に把握して問題を解決する知恵を出さねばならない。

 知恵を出せるような、知恵をつくらねばならない。

● 財務上の利益の概念

 業績は通常、経常利益で評価される。経常利益が高ければ、再投資して、拡大再生産を行い、利益をさらに大きくするというのが、古典的経済学の考え方であった。

 実際には、獲得した利益を再投資するだけでなく、銀行から借り入れしたり、増資をして、利益の数十倍、数百倍もの再投資を行っている。借り入れ、増資をしやすくするためには、経常利益が安定、上昇していることが肝要なのである。

 以上は財務上の利益の概念である。財務上の概念とは、キャッシュフローを中核に広げられ、まとめられた概念であるということだ。

●組織のゆとり

 利益には、別の側面からみた重要な概念がある。そのひとつが組織のゆとりである。

 目標利益が実現していると、組織全体が、次のステップを打ち出すに当たって、意欲的な議論が展開されるようになる。

 逆に赤字に転落すると、まずは赤字を解消しようと、議論が赤字解消策に集中する。この議論の中には、責任の追及が必ず表われる。追求される側は、言い訳、すり替えの発言をする。追求する側は、言い訳は聞きたくない、すり替えはやめろと、ますます責め立てる。よしんば、責められる側が非を認めて謝罪しても、誤って済む問題ではない、早く対策を立てて直ちに実行しろと責め立てられる。両者の溝はますます深くなる。なかなか赤字解消策も決められなくなっていく。議論が泥沼に落ち込んでいく。

 利益が安定していれば、不毛な議論に費やすエネルギーも、時間も不要になる。前向きの課題を意欲的に話し合い、組織全体が前進する。

 赤字決算が続いている企業では、起死回生のための経営計画をつくり、全従業員が一致団結して実施しなければならない。このような場合、「背水の陣を敷く」という。しかし現実には、一致団結できないばかりではなく、計画すらまとまらないことが多い。経営は背水の陣を敷かねばならないほど追い込められてはならないのである。

 ドラッカーを始め、多くの学者、実務家が、利益を最終目標にしてはならないと説いている。私もこれらの説には賛成である。しかし、私は、ここで、「利益は、ゆとりをもって経営を進めるための絶対必要条件である」と言い返してみたい。

 知識商人は、利益について、どこまでもストイックでなければならない。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.36

2011年6月13日(月曜日)
カテゴリー:

新プロセスモデル

 16時07分33秒

36. 新プロセスモデルの商品吟味

● 商品吟味への疑問

 さて、前述の1番目のお店の商品吟味の仕方が分からないと訝ったのは、安心安全のための商品吟味から一歩抜けだし、他の目的も取り込まれているようだが、その新しい目的が分からないということである。

 この店では、陳列商品には必ず品名カードがついている。生鮮食品の品名カードにはほとんど産地が表示されている。産地表示があるので、商品吟味が進んでいることをうなずかせる。

 ある日、ジャガイモが3アイテム陳列されていた。2アイテムは北海道産、残りの1アイテムは中国産であった。北海道産はメークインと男爵であった。ただし、品名カードには品種の表示はなく、「じゃがいも」と、同じ表示であった。

 そこで、私には新しい疑問が浮かび上がった。
最初の疑問は、なぜ産地表示をするようになったのだろうか、ということだ。その答えは安心安全のためであったと思われる。中国産の冷凍ギョーザがトラブルを起こした頃から、外国産と国内産を区別するため、国内産には、内地産と表示する店が増えたことを思い出した。

 その後、外国産には国名を、内地産には県名、地方名を表示するようになった。内地産なら安心だというメッセージを送ることから始まり、産地名が表示された商品なら安心できるというように変わったのであろう。

 次の疑問は、なぜ中国産は1アイテムで、北海道産は2アイテムなのだろうかということである。この疑問に対する常識的な答えは、中国産は安いからと、メークインと男爵の品質の違いがあるということは、すでに市場で定着しているから、ということになろう。

 なお、このお店の、その日の品揃えは、大根と長ネギは国産品それぞれ1アイテム、玉ネギは中国産1アイテムだけであった。またブドウは2アイテム、隣にメロンが1アイテム陳列されていた。大根、長ネギ、玉ネギは冬の必需品であるが、ブドウやメロンは季節外れの商品である。そんなことを考え合わせると、このスーパーマーケットでは、品揃え商品カードのコンセプトを見直さなくなっているなと思うにいたった。

 叙述が長くなり過ぎたが、以上が、フィードバックが新しい修正、調整課題を生み出すまでの推移を、私の体験に基づいて書き綴ったものである。

 現実の組織におけるフィードバックは、この叙述よりはるかに広範囲の要因の複雑な絡み合いを整理しながら修正、調整課題を設定し、前進を続けている。一人でやれば数カ月もかかることが、組織で取り組めば、数日で処理できる。現に処理している。

 組織能力の優劣は、フィードバック機能の効率に決定的な差異をもたらす。またフィードバック機能の効率化は、組織能力向上の最重要支柱でもある。
これからの企業間競争の知恵比べは、組織能力向上のための知恵比べと要約することができよう。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.35

2011年6月2日(木曜日)
カテゴリー:

新プロセスモデル

 11時17分49秒

35. 新プロセスモデルのフィードバック

●見切り発車後の中間チェック

 試行錯誤的問題解決のむずかしさを乗り越えるための知恵の出し方を、事前準備→見切り発車→フィードバックの繰り返し→目的実現の4ステップに分け、第2ステップの見切り発車まで検討してきた。次は第3ステップの諸課題の掘り下げである。

 すでに見てきたように、フィードバックの目的は一口にまとめれば、あいまいさを残したまま見切り発車した計画の妥当性を検証すること、および、あいまいさを順次より明確化することである。

 妥当性の検証、あいまいさの明確化の過程で修正・調整ポイントがクローズアップしてくる。クローズアップした修正・調整課題は、次の計画の改善項目として反映される。

●近所のスーパーマーケットでの実例(その1)

 あいまいさの明確化と改善項目のクローズアップにこんな関係があることを私自身が体験した。拙稿を記述しだしてから、散歩を兼ねて家の近くのスーパーマーケット2店で買い物をした。

 1店では、数ヶ月前に青果売場に地元野菜コーナーを新設していた。新設当初は、改善を進めているなとは思ったが、何のための改善なのかは深く考えなかった。拙稿を書き出して、「おいしさに焦点をおいた改善」を意識しだしてから、このコーナーに差し掛かった時、ふと、おいしさとコーナーの関わりに何があるのかと考えた。とりたての野菜は鮮度がよい。鮮度の良い商品は味がよい。だからとりたての地元野菜のコーナーを設置した。この程度の理由づけはすぐできた。

 しかし、コーナーを見ても、商品はちっともおいしそうに見えない。陳列が乱れ過ぎていて、品切れしたアイテムもあるからである。どうやらこのコーナーは契約農家が朝一回、商品を納入、陳列して、あとのフォロー作業はほとんどしないのではないかと想像された。これでは逆効果になる。これがその時の結論であった。

続けて、こんなことも考えた。例えば、トウモロコシなら畑で完熟したものを朝のうちに収穫し、その日のうちに食べれば、市場経由のトウモロコシにはない、おいしさを味わえる。完熟のおいしさである。「完熟」は野菜や果物のおいしさの1つの側面である。

 山梨の釣りの帰り、地元の路面販売所で完熟した桃を土産に買って帰りたくなるような心理が分かったような気がした。

●近所のスーパーマーケットでの実例(その2)

 もう1店の方では、次のようなことがあった。

 このスーパーマーケットの鮮度管理の業務システムを作り上げて以来、地に足の着いた改革を着実に積み重ねている。いつ行っても売場が乱れているようなことはない。従業員はいつもにこやかにきびきび働いている。レジで待たされ過ぎたり、不愉快な思いをさせられたこともない。私の好きなスーパーマーケットの1つである。

 1~2か月前、このスーパーマーケットに行った時、商品の吟味が行き届きだしたのに気がついた。陳列されている商品はすべてよく吟味されていることが分かった。百貨店に勝るとも劣ることのない吟味ぶりである。

もっとも百貨店のような高級品、高額品は省かれているが。スーパーマーケットのコンセプトに基づいた品揃えの商品吟味であろう。

デコポンは大きく色つやもよく、おいしそうに見える。トマトも、刺身も、ステーキもみんなおいしそうである。立派である。

●シアーズローバックの商品吟味

 少し横道をそれるが、シアーズローバックの商品は吟味が行き届いていたという。

 吟味法として注目すべき点は、商品の耐久性に主眼をおいたことである。試験室ですべての商品の耐久性をチェックした。チェックの方法は、商品にショックを与えて、いつまで壊れないかを確認した。その確認の方法が徹底していた。壊れるまでショックを与え続け、所要時間確認し、品揃えに入れる可否を判断したのである。

 シアーズがこのような吟味を行うルーツは、カタログ販売にあったという。カタログ販売では、お客はカタログを見て商品を選び、メールオーダーして代金を払う。購入した商品が、例えばラジオがすぐに壊れたり、セーターが破れたり、変色したりしてもクレームのしようがない。テキサスのお客がシカゴの本社に商品交換や代金返済を要求することは、事実上できない。一度こんな目に遭わされたお客は二度と、カタログ販売の商品は買わなくなる。

 こんなわけで、シアーズでは品質(耐久性)に焦点をあて、GMSにおいても、十全に行うようになったという。

●信頼のおける商品管理

 アメリカのGMSとスーパーマーケットでは、取扱商品が全く違う。GMSの取扱商品はソフトグッズ(衣料品)とハードグッズ(家具など)であり、スーパーマーケットは食品である。

 食品では耐久性は鮮度ではかられる。鮮度の客観的表示法は賞味期限である。生鮮食品は商品づくりした日の日付で表示されている。

 かくしてスーパーマーケットは品質吟味のために賞味期限、日付管理の技法システムを作り上げた。

前記、私の挙げた2番目の店では、賞味期限、日付管理の技法は高次に定着している。

 鮮度管理の目的は、安心・安全である。安心安全面では、このお店は全く信頼がおける。だから好きなのである。

続きます

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