クオリティー オブ ライフ
最近、日本の朝ドラ“だんだん”にはまっています。
うちは日本のNHKの番組が衛生でみられるサービスをとっているので、米国に住んでいても日本の話題には一応ついていくことが出来ます。
このドラマは双子で有名な三倉マナ・カナのダブル主演で、京都と島根県松江で繰り広げられるお話ですが、番組が始まった最初の頃は余り面白くなくて真剣に見ていませんでした。
しかし中盤から話の展開が良くなり、いよいよ残すところ数週間になって、主役の祖母が入院するあたりから、どんどんその内容に引き込まれています。
特に先日放送されたある場面の台詞に感動しました。
入院した祖母が第3期のすい臓癌であることが判明し、本人への告知無しに行われる抗がん治療の副作用に訳も分からず苦しみ、治療を拒む祖母にたいして、とうとう告知を行うシーンでした。告知を受けた祖母はそこにいた医師にこう問いました。
「先生、その抗がん治療とやらが、効かなんだら私はあとどれくらい生きられますか?」
「そんなことは誰にもわかりません。それは神様が決めることです。」と答える医師。
「そうですねえ。私の病気の事を教えてもろうて、本当にだんだん(ありがとう)」
私はこのやりとりを聞いていて、“ドラマの台詞とはいえ、この先生はなんと素晴らしい答えをするのだろうか”と感心しました。
私も7年前に同じような質問を医師に問うたことがあります。しかしその際に帰ってきた答えは“2年“という命の期限でした。もちろん医師はあくまでも様々なデータから得た予測のみを伝えており、必ずしも助からない訳ではないという補足の言葉をつけるのですが、患者にとっては、その命の期限のみが大きくのしかかります。
命の期限を伝えられる事は、ある意味で告知よりも残酷な事です。
ですから、この「そんなことは誰にもわからない。それは神様が決めること。」という言葉は患者の立場を考えた、希望のある言葉だなと思いました。
最近の、米国における癌医療でよく耳にするのが“QUALITY OF LIFE“という言葉です。
これは直訳すると“生き方の質”ですが、もっとつきつめると、闘病患者の生き方に対する尊厳という意味があります。
自らの経験と、今までここで知り合った患者達を見続けてきた私は、これまで何度もこの“QUALITY OF LIFE”について考える機会がありました。
米国でベストセラーとなった『癒す心、治る力』の著者であり、統合医療(西洋医学と東洋医学のコラボレーションで患者に心身相互に効果的治療を施す)の先駆者的存在である、医師のアンドルー・ワイル博士は、医師が患者に対する心のケアの重要性を訴え続け、アリゾナ州大学医学部に心理学クラスの受講を取り入れた方です。
私が博士の本と出合ったのは、自らの命の期限を聞かされた翌日でした。
著書の中にある博士の言葉は私を勇気づけ、まさしく、癒す心無くして、病が治る事はないのだと悟る事ができました。
私は5歳で母を亡くしています。
若い母の命を奪ったのは癌でした。
そして、6歳に幼子を持つ私が、同じ病の宣告を受けた時、死にたくないとか、助かりたいとか、そういう思いではなく
“生きなくてはいけない。この子には私と同じ思いをさせない。”と心からの強い思いでした。
私が今ここにいるのは現代医学の力のみならず、生きるという意志の力も大きな要因となっています。
そして、その両方を支えてくれたのは“QUALITY OF LIFE”に重点をおいた、米国の統合医療でした。専門の医師の元、私は3時間にも及びコンサルテーションを受け、不安や恐れを吐き出し、全てを納得して抗がん治療を受けることにしました。
そして同時に、漢方や針、食事指導、心理セラピーなどを受け、おかげで副作用もほとんど無く効果的な治療を終え、今日に至っています。
この経験は、その後の私の人生を大きく変化させました。
現在はオーガニックを主体としたホリスティックスキンケアを実践するエステシャンとして、それからオーガニックなどの健康な食生活や正しいサプリメント摂取等のヘルス&ウエルネスを、特に専門とする通訳とした仕事に就いています。日本の健康メディア誌で4年にも及ぶ記事の連載を続けていられるのも、この経験から得た知識が大きく影響しています。
今現在、私は幸いにも元気にしておりますが、この7年間、私は同じ病によって大事な戦友を数人失いました。彼女たちは皆、私の母と同様に若くして、子供や配偶者を残して、最後まで生きる希望を失わずに戦った人たちです。
今回“QUALITY OF LIFE”について語る上で、ある2人の戦友について話したいと思います。
Cさんは、私と20年以上家族ぐるみ付き合いをしてきた友人で、非常に進行の早い子宮癌にかかり、告知の3ヶ月後には骨盤などへも転移し、歩く事も出来ない状態になりました。
その状態の際に、医師から、余命2ヶ月という宣告を受けましたが、すさまじい闘病の末、一時退院まで回復し、実際なくなられたのはそれから1年後でした。
アイリーンという女性は、末期の再発性乳癌でした。再発後から亡くなるまで、僅か半年しか生きる事は出来ませんでしたが、彼女は自らを奮いたたせるべく、亡くなる数週間前までおシャレをしてサロンに通い、ネイルやフェイシャルを受け、きれいにお化粧をして、最後まで堂々と美しく命を全うされました。
私は先のCさんのお見舞いをするつもりでしたが、当日、彼女からキャンセルを受けました。後で彼女のご主人から、病気の副作用から容貌が変わってしまい、人と合うことを避けたいと本人が願ったのだと聞かされました。Cさんから受け取った丁寧なお詫びの手紙には、“元気になって、また一緒に食事に行きたいです。”とありました。
しかし、それが叶う事はありませんでした。
先日、日本のチャンネルで、ヨーロッパの癌病棟で行われているエステとメークアップのサービスについてのドキュメント番組を見る機会がありました。
抗がん治療や放射線治療による副作用が原因の、肌のくすみや荒れを、軽減し、それらを補うお化粧を施す事で、患者たちの“QUALITY OF LIFE”を高めるために行われているサービスを取り上げていました。
そこに出演していた患者達の中には末期の人も多くいましたが、美しく変身した彼女らは、皆はじけるばかりの笑顔で、生き生きとしていました。
そしてこのサービスを行うようになってから、患者の治癒率や存命率に上昇が見られるそうです。患者たちの思いを受け止め、そしてそれに向き合う専門エステシャンの方が、辛い事もあるが、自分は素晴らしい仕事をしていると答えられていたのが、印象的で感動しました。
人の命を救うのは最新医療ばかりではないのです。
生きる希望を与えることも、時には特効薬となるのです。
今年、カリフォルニア州、オレンジ市で開催された全米最大の自然食とサプリメントの展示会である『ナチュラルプロダクトエキスポ』のパーソナルケアセクションで、いくつかの社が、肌が超過敏になっている癌患者や糖尿患者のために、化粧品のラインを、多くの自然化粧品にまじっ、紹介・展示しているのを見かけました。それらは利益の追求よりも、必要性を感じて開発された商品たちです。
“QUALITY OF LIFE”の意識は美容の世界にも浸透しようとしています。
五十嵐ゆうこ





