商人舎

ジャパンショップの衰退を憂う| 小林清泰の環境デザイン研究

小林清泰の環境デザイン研究

ジャパンショップの衰退を憂う

2011年02月21日(月曜日)
カテゴリー:
  • 展示会
  
12:52 PM

2011年3月8日から4日間、東京ビッグサイトで
「JAPAN SHOP 2011」が開催される。
晴海会場から会場を移転した当初は、
ビッグサイト東館の1~6ホールをフルに使い、
ショップ什器から照明にいたるまで、
バラエティに富んだ見本市であった。

それが年々、規模縮小の傾向で、
今年は、とうとう東館の4分の1しか使われなくなってしまった。

20110221_photo1japanshop.jpg

ヨーロッパでは、ショップ業界向けの国際トレードショー
「EuroShop 2011(ユーロショップ)」がもうすぐ開催される。
2月26日~3月2日までの5日間、ドイツ北東の工業地域、
ドュッセルドルフのメッセ会場で大々的に開催される。

ユーロショップの歴史はかなり古い。
「ジャパンショップ」というネーミングはもちろん、
それにならってつけられたはずだ。

ヨーロッパ各地にあるメッセ会場へ行ったことのある方は、
ご存知だと思うが、
会場施設の規模が桁違いである。
驚いた方も多くいるのではないだろうか。

ハノーバーでも、ケルンでも、フランクフルトでも、
ミュンヘンでも、そしてドュッセルドルフでも、
どこの会場であっても、
その規模は、最低でも東京ビッグサイトの10倍以上。
最大のハノーバーメッセ会場にいたっては
敷地面積は30倍はくだらないであろう。

20110221_photo15.jpg

ユーロショップの開催は3年に1回だ。
前回は2008年2月23日からの開催であった。

私がデザインしている店舗は、ほぼ全てがチェーンストアである。
全国展開のコンビニエンスストア、ホームセンター、
そしてスーパーセンターなどで、
それらの店はローコスト設計が大半である。
スーパーマーケットもデザインしているが、
施主の要望もあり、どちらかといえば、
「シンプル・イズ・ベスト」なスタイルの店舗である。

そのため、最近まで情報収集源としての
「ユーロショップ」の存在が、意識から欠如していた。

しかし私のもう1つの仕事である
システム家具開発のために、
この20年間、
ヨーロッパのインテリア系・家具系の展示会へは通いに通った。

その中の1つで、システム収納関連の素材や部品のみを展示する、
業界人しか入場できない
「ZOW」というトレードフェアがある。
専門分野をディープに特化したトレードフェアである。
この年(2008年)は、「ZOW」と「ユーロショップ」の日程が
相前後していたため、思い切って「ユーロショップ」の視察を
スケジュールに組み込んだ。

実はもう1つ「ユーロショップ」を予定に組み込んだ
大きな理由があるのだが、長くなるので次回以降に譲りたい。

ヨーロッパの展示会場、MEESE(メッセ)は
どの都市でも交通アクセスが非常によい。

写真のように市内の地下鉄が、ダイレクトにメッセ会場に入ってくる。

20110221_photo2.jpg

エスカレーターを上れば、そこが入場登録ホールだ。

20110221_photo3.jpg

今年の「ユーロショップ」は、
通路を含まない純粋出展者ブースの面積だけで、
10万7,000㎡だそうだ。
通路はだいたいだが、専有面積と同等とみることができるので、
約21万4,000㎡となる。

面積と会場案内図だけではスケールがわかりにくいが、
図中の一つの建物が、
東京ビッグサイトの東館ぐらいと思っていただれば、
その規模の大きさが少しは想像できるのではないだろうか。

20110221_photo4.jpg

訪問した2008年は、
なんと90カ国、10万4,000人のトレーダーが来場したと、
ニュースで報じられた。

今年のテーマは大きく分けて4分野である。
各会場の出展者と面積は以下の通り。

1.EuroCIS-IT(ビジネスソリューション)
29カ国から334社の出店、1万1,830㎡
チェックアウトソリューション、マーチャンダイジング管理システム、
小売業のセキュリティシステムと在庫管理、
モバイルソリューション等。

20110221_photo10.jpg

2.EuroConcept
42カ国から769社、6万1,121㎡
店舗設計、店舗設備・備品、建築&ショップ・デザイン、
照明、清掃冷凍装置(空調を含む)等。
デザイナーズビレッジ2011という、
店舗デザイナーのプレゼンテーションの場がもうけられている。
(日本ではこれがない)

20110221_photo11.jpg

3.EuroExpo
30カ国から255社、1万1,811㎡
エキスポマーケティングとして
トレードショーブース用のスペースフレームを中心に、
コミュニケーションデザイン、
イベント技術、ライブ通信、機器スタンド等。

20110221_photo14.jpg

4.EuroSales
38カ国から537社、2万2,109㎡
ビジュアルマーチャンダイジング(最新のマネキン等)、
屋外広告と照明、 POSメディア等の販売促進系。

20110221_photo5.jpg

20110221_photo6.jpg

20110221_photo7.jpg

以上に加えて、リテールデザイン会議やユーロショップPOP会議など、
さまざまなカンファレンスが企画されている。

各展示会場で行われるパフォーマンスやディスプレイはすばらしい。

20110221_photo8.jpg

全身イヴ・クライン・ブルーの二人は本物の人である。

20110221_photo9.jpg

ジャパンショップでも、ユーロショップのように、
セキュリティーショーやリテールテックJAPANが同時開催されている。
しかし、私の問題意識は、ここからだ。

私は、店舗イメージを総合的にデザインすることに携わっている。
その視点からの問題提起かもしれない。

ユーロショップは、
店舗を構成する全ての要素を「ユーロショップ」で括り、
来場者に対し、
店舗業界を1つの産業としてプレゼンテーションしている
。
ここへ行けば、ほぼ全てを一度で把握することができるし、
業界の推移もトレンドもしっかり感じとれる。

20110221_photo12.jpg

なぜ日本の展示会はジャパンショップのように、
業界ごとの細切れでのゾーン出展なのだろう。
出展する各業界とも、
“リテール”という共通の業界で
生きさせてもらっているはずではないのか。

なぜ、関連業界が横断的になって、
リテール業界活性化のためにひとつにならないのだろうか。

監督官庁による縦割り行政からなのか、
出展企業が、
店舗設備導入を検討する担当者の利便性を重視したためなのか、
主催者の企画の方向性なのか。

ジャパンショップは顧客目線からの企画とは感じられない。

外部からではあるが、リテール業界の一部を担うものとして
トレードショーのあり方を見つめ直さなければならないと、強く思う。

20110221_photo13.jpg

<By 小林清泰>

« コミュニティーとの一体感を目指した「サインタワー」 | 店舗で使えるレベルのLED照明が登場―明るさと演色性能の競争へ »
商人舎サイトマップ お問い合わせ
小林清泰プロフィール

アーキテクチュアルデザイナー/プロダクトデザイナー
株式会社 ケノス 代表取締役

一級建築士、商業施設士。チェーンストアデザイン及びコンサルタント (チェーンストア基本デザイン 及び店舗標準化、店舗マニュアル作成)

実績:ホームセンター「カインズホーム」、CVSチェーン「セーブオン」。2008年度環境省「省エネ照明デザインモデル事業」に「店内照明全てがLED照明のコンビニ」で応募し採択される。
http://shoene-shomei.jp/h20/model/report_7.html

空間構成システム、LED照明器具等プロダクトデザイン。グッドデザイン賞受賞歴 2005年度「LAWSONカウンターシステム」、2006年度アルミスペース フレーム「ZSTEM+LED照明」、2009年度「LEDベース照明」
http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35555

カレンダー
2011年2月
月 火 水 木 金 土 日
« 1月   3月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • ショッピングセンター (1)
  • ロゴマーク (1)
  • 展示会 (2)
  • 照明 (1)
最新記事
  • 2011年03月22日(火曜日)
    店舗で使えるレベルのLED照明が登場―明るさと演色性能の競争へ
  • 2011年02月21日(月曜日)
    ジャパンショップの衰退を憂う
  • 2011年01月11日(火曜日)
    コミュニティーとの一体感を目指した「サインタワー」
  • 2010年07月20日(火曜日)
    WAL MARTロゴマーク変更の意味
  • 2010年05月07日(金曜日)
    第1回 世界最大の国際照明展「Light+Building」 を訪れて
最新コメント
    コメントはありません。
  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.