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小林清泰の環境デザイン研究

小林清泰の環境デザイン研究

店舗で使えるレベルのLED照明が登場―明るさと演色性能の競争へ

2011年03月22日(火曜日)
カテゴリー:
  • 展示会
  
11:16 AM
前回話した「JAPAN SHOP」併設展で、
通称ILF、国際照明機器展「ライティングフェア」が3月8日から11日まで、
ビッグサイト西館1階全フロアで開催された。
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2年ごとの開催で、「LED NEXT STAGE」展と交互に隔年開催されている。
2年前の「ライティングフェア」では60%がLED光源での試作器レベル、
30%が従来の蛍光灯光源、
10%がEEFL(ラップトップコンピュタのバックライトに使われている)の照明用転用等の光源であった。
照明の発展は光源の発展である。
照明の世界は、新しい光源が登場すると、大きくデザインや機能が様変わりする。
予想はしていたが、今年の「ライティングフェア」会場は
メーカーの大小を問わず「LED光源の照明」で埋め尽くされていた。
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ここからやや専門的であるが、
店舗計画にとって大事な部分の、そのポイントを述べたい。
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この照明は明るいとか、暗いということは、
その照明(光源)が発する光の量で決まる。
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現在ほとんどのお店で使われている蛍光灯は、
Hfタイプという高効率蛍光灯で、
1ワット当りで100ルーメン(光の束、量の単位)の光を出す。
今までのLED光源は、
実は1ワット当りで70ルーメン程度しか光を出せなかった。
しかしLED光源は蛍光灯よりも光源面積か小さいので、
そこからでる光を人は眩しく感じて、
LEDは明るいと勘違いしている人が多い。
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そして昨年後半ぐらいから、
1ワット当りで100ルーメン以上を出すLED光源が開発され、
試作レベルで市場に出回りはじめた。
そのため、やっと蛍光灯を凌駕して、
店舗でも使えるLED照明が、本格的に発売され始めた。
それを一堂に会したのが今回の「ライティングフェア」である。
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クリスマスのイルミネーションに代表される光源が直接目に入る演出照明と、
店舗に配置され商品を明るく美しく照らすための照明とは、
全く光の質に求められる性能が違う。
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ものを照らし、照らされたものを買い求めるための店舗照明には、
商品カラーやテクスチャーを忠実にお客さまに感じていただかなければならない。
店舗用照明の光にはもう一つ大事な、押さえなければいけない性能基準がある。
それは演色性能である。
日本ではJISで、Raという単位で表されている。
光源に照らされたものの「色の再現性」の性能
と考えていただければわかりやすい。
JISを厳密に説明すると、以下の説明と少し違う部分もあるし、
長くなるので、ここでは省略するが、
要は、スポットライトや天井のベースライトの光が
どれだけ太陽光(自然光)に近いかを数値に表したものである。
dsc02350-1.jpg
Raが100であれば自然光とほぼ同等の演色性能を持つと考えればよい。
演色性能が悪いと苺の色や野菜の色がくすんで、美味しそうに見えないのである。
さきほど述べた高効率蛍光灯Hfタイプでは、
演色性能を表す数値「Ra」が84だ。
ほとんどのコンビニエンスストアはこの光源を採用しているので、
色の再現性能はあの光レベルと思って、イメージの参考にしていただければよい。
店舗でよくスポットに使われているハロゲンランプはRaが100である。
もうすぐ生産中止になる白熱電球もRaが100である。
注意していただきたいのは、
ハロゲンランプや白熱電球の光の色は、いわゆる電球色なので、
その暖かい色がRaの数値が高いということではないといことである。
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一見温かい光の色でも、Ra値の低いものもあるし、
白い光でもRa値の高いものもある。
光の色合いは、また別の単位をつかう色温度で表わされる。
誤解のないように。
LED光源もRa値で95以上のものが出始めているものの、
光源の色と蛍光材の関係で、高演色LEDはまだそれほど明るく出来ていない。
今回の展示会での各メーカーの主力製品は、Ra値が85前後で平均していた。
これからの開発競争には明るさに加えて、演色性能も加わってくる。
スーパーマーケットを始め、店舗を企画する側にとって、
やっと安心して採用できるものが出始めた。
ここから余談。
私は「ライティングフェア」へ11日の最終日に出かけた。
一通り回って、そろそろ東館の「JAPAN SHOP」へ回ろうかと思っているとき、
あの地震がきた。
2通路ほど後ろで大きな音がした。
揺れがひとしきり収まった後、行ってみると、
天井から下がっている防煙たれ壁の一部が落下し、床に飛び散っていた。
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展示会はすぐ中止決定となり、JR国際展示場駅に向かう。
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駅員から都内鉄道全線が送電ストップと聞き、徒歩帰社を決める。
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「ゆりかもめ」線下の道から
晴海道り、銀座、神谷町、古川橋、目黒駅、目黒道り経由で
午後9:00過ぎに無事帰社した。
所用約5時間半であった。
この間、各通りとも人が多く行き交い、みんないたって冷静で、
多少の愚痴をいいながらも、同僚たちと帰宅を急いでいた。
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私もハーフマラソンの距離前後を歩いたことになる。
思ったよりも歩けたことの自信!とは裏腹に、
翌火曜日ぐらいまで脚全体が重かった。
日頃の運動不足を強く反省することになった。
<By 小林清泰>
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ジャパンショップの衰退を憂う

2011年02月21日(月曜日)
カテゴリー:
  • 展示会
  
12:52 PM

2011年3月8日から4日間、東京ビッグサイトで
「JAPAN SHOP 2011」が開催される。
晴海会場から会場を移転した当初は、
ビッグサイト東館の1~6ホールをフルに使い、
ショップ什器から照明にいたるまで、
バラエティに富んだ見本市であった。

それが年々、規模縮小の傾向で、
今年は、とうとう東館の4分の1しか使われなくなってしまった。

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ヨーロッパでは、ショップ業界向けの国際トレードショー
「EuroShop 2011(ユーロショップ)」がもうすぐ開催される。
2月26日~3月2日までの5日間、ドイツ北東の工業地域、
ドュッセルドルフのメッセ会場で大々的に開催される。

ユーロショップの歴史はかなり古い。
「ジャパンショップ」というネーミングはもちろん、
それにならってつけられたはずだ。

ヨーロッパ各地にあるメッセ会場へ行ったことのある方は、
ご存知だと思うが、
会場施設の規模が桁違いである。
驚いた方も多くいるのではないだろうか。

ハノーバーでも、ケルンでも、フランクフルトでも、
ミュンヘンでも、そしてドュッセルドルフでも、
どこの会場であっても、
その規模は、最低でも東京ビッグサイトの10倍以上。
最大のハノーバーメッセ会場にいたっては
敷地面積は30倍はくだらないであろう。

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ユーロショップの開催は3年に1回だ。
前回は2008年2月23日からの開催であった。

私がデザインしている店舗は、ほぼ全てがチェーンストアである。
全国展開のコンビニエンスストア、ホームセンター、
そしてスーパーセンターなどで、
それらの店はローコスト設計が大半である。
スーパーマーケットもデザインしているが、
施主の要望もあり、どちらかといえば、
「シンプル・イズ・ベスト」なスタイルの店舗である。

そのため、最近まで情報収集源としての
「ユーロショップ」の存在が、意識から欠如していた。

しかし私のもう1つの仕事である
システム家具開発のために、
この20年間、
ヨーロッパのインテリア系・家具系の展示会へは通いに通った。

その中の1つで、システム収納関連の素材や部品のみを展示する、
業界人しか入場できない
「ZOW」というトレードフェアがある。
専門分野をディープに特化したトレードフェアである。
この年(2008年)は、「ZOW」と「ユーロショップ」の日程が
相前後していたため、思い切って「ユーロショップ」の視察を
スケジュールに組み込んだ。

実はもう1つ「ユーロショップ」を予定に組み込んだ
大きな理由があるのだが、長くなるので次回以降に譲りたい。

ヨーロッパの展示会場、MEESE(メッセ)は
どの都市でも交通アクセスが非常によい。

写真のように市内の地下鉄が、ダイレクトにメッセ会場に入ってくる。

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エスカレーターを上れば、そこが入場登録ホールだ。

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今年の「ユーロショップ」は、
通路を含まない純粋出展者ブースの面積だけで、
10万7,000㎡だそうだ。
通路はだいたいだが、専有面積と同等とみることができるので、
約21万4,000㎡となる。

面積と会場案内図だけではスケールがわかりにくいが、
図中の一つの建物が、
東京ビッグサイトの東館ぐらいと思っていただれば、
その規模の大きさが少しは想像できるのではないだろうか。

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訪問した2008年は、
なんと90カ国、10万4,000人のトレーダーが来場したと、
ニュースで報じられた。

今年のテーマは大きく分けて4分野である。
各会場の出展者と面積は以下の通り。

1.EuroCIS-IT(ビジネスソリューション)
29カ国から334社の出店、1万1,830㎡
チェックアウトソリューション、マーチャンダイジング管理システム、
小売業のセキュリティシステムと在庫管理、
モバイルソリューション等。

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2.EuroConcept
42カ国から769社、6万1,121㎡
店舗設計、店舗設備・備品、建築&ショップ・デザイン、
照明、清掃冷凍装置(空調を含む)等。
デザイナーズビレッジ2011という、
店舗デザイナーのプレゼンテーションの場がもうけられている。
(日本ではこれがない)

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3.EuroExpo
30カ国から255社、1万1,811㎡
エキスポマーケティングとして
トレードショーブース用のスペースフレームを中心に、
コミュニケーションデザイン、
イベント技術、ライブ通信、機器スタンド等。

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4.EuroSales
38カ国から537社、2万2,109㎡
ビジュアルマーチャンダイジング(最新のマネキン等)、
屋外広告と照明、 POSメディア等の販売促進系。

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以上に加えて、リテールデザイン会議やユーロショップPOP会議など、
さまざまなカンファレンスが企画されている。

各展示会場で行われるパフォーマンスやディスプレイはすばらしい。

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全身イヴ・クライン・ブルーの二人は本物の人である。

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ジャパンショップでも、ユーロショップのように、
セキュリティーショーやリテールテックJAPANが同時開催されている。
しかし、私の問題意識は、ここからだ。

私は、店舗イメージを総合的にデザインすることに携わっている。
その視点からの問題提起かもしれない。

ユーロショップは、
店舗を構成する全ての要素を「ユーロショップ」で括り、
来場者に対し、
店舗業界を1つの産業としてプレゼンテーションしている
。
ここへ行けば、ほぼ全てを一度で把握することができるし、
業界の推移もトレンドもしっかり感じとれる。

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なぜ日本の展示会はジャパンショップのように、
業界ごとの細切れでのゾーン出展なのだろう。
出展する各業界とも、
“リテール”という共通の業界で
生きさせてもらっているはずではないのか。

なぜ、関連業界が横断的になって、
リテール業界活性化のためにひとつにならないのだろうか。

監督官庁による縦割り行政からなのか、
出展企業が、
店舗設備導入を検討する担当者の利便性を重視したためなのか、
主催者の企画の方向性なのか。

ジャパンショップは顧客目線からの企画とは感じられない。

外部からではあるが、リテール業界の一部を担うものとして
トレードショーのあり方を見つめ直さなければならないと、強く思う。

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<By 小林清泰>

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コミュニティーとの一体感を目指した「サインタワー」

2011年01月11日(火曜日)
カテゴリー:
  • ショッピングセンター
  
12:53 PM

アメリカのショッピングセンターデザインが、新しい価値の方向性を示し始めた。
この数年、アメリカ視察で一番強く感じるのは、大型ショッピングセンター開発が
進んで出店地域の町並みを造り上げている点である。

国土が大きいアメリカでは、商業施設の出店は
地域のディベロッパーが土地を確保し、流通業を誘致する。

ショッピングセンターの外観デザインコード(建物の高さや材質、カラー等)を用意し、
ディベロッパー側が出店者の様々な要望を受け入れながら建てていくケースが多い。

ディベロッパーの手腕は、良質な街並みを作り、
そこに相応しい人々にたくさん住んでもらって、地域の価値を上げていくこと。
言ってみれば流通業にとって一番大切なお客様を、購買力を、
間接的にではあるが流通業に提供していくのだ。

**********************************************************
[進化したサインタワー]

TARGETやLowe’sのデザインは単なるサインのベースという
従来のやり方自体から脱して、ショッピングセンター建築と
サインタワーのイメージを合わせて、
ショッピングセンターとしての一体感を強く表現し、
使われている素材感等でこのショッピングセンターのグレードを表している。
今まではあまりみられなかった新しい手法である。
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特にLowe’sサインタワーの背景をみると、
ショッピングセンターの家並とデザインモチーフが同一であることが分かる。

110111_lowes.jpg

従来のローコスト型サインタワーデザインはこのようなものがある。
H・E・B
110111_heb.jpg

アルディ(ALDI)
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**********************************************************

日本ではナショナルチェーンといわれる大手流通業は、
自前のスタッフによる情報網で土地情報を得て、自ら開発を行い、
ショッピングセンターを建てる。
中小流通業でも土地開発部隊を持ち、
土地情報を自前であげられる組織力を持つ企業もあるが、割合は少ない。

そのため、大手ゼネコンやハウスメーカー系が物件を持ち込んで、
建物(店舗)を入札ではなく半ば「特命」で受注している現状がある。
いわゆる、持ちつ持たれつの関係である。

しかしこれからは、小売業側が自分達にとって都合の良い施設(店)を
作ればそれで良いという時代はそろそろ終わりにしたい。
それでないと地域住民からの支持が得られなくなるし、
競合で意識の高い相手に負けてしまうことになる。

ただでさえ狭い国土の中、成熟し、あらゆる「物」が飽和に近い今の日本社会で、
今もこれからも「物」を継続販売していこうという流通業は、
ますます進む成熟化社会を担ってゆく地域住民から、
新しい価値観を持つ施設(ショッピングセンター)が求められてくる。

今回取り上げたサインタワーは、これからの日本の商業施設が
取り組んでいくべき方向性を示していて、その象徴といえる。

新しい価値観は、流通業の出店は「街造りの重要な拠点を担う」という視点、
言い換えれば「コミュニティー形成への積極的な参加視点」である。

しかし日本では、街は国や地方自治体がつくるものという意識が濃い。
流通業側もゼネコン側も「街造り」という意識がほとんどない。
言い換えれば、考えもしないと言えるかもしれない。

出店地域のポピュレーションがあまり変化しない、出来上がった市場へ
オーバーストアであっても店を出し、競合に打ち勝つことが命題だから、
多くを望めないことも理解している。

しかし、このTARGETやLowe’sといった、アンカーテナントの
サインタワーデザインをもつショッピングセンターから、
流通業が町並み造り市場の形成に向かって、
積極的に参加している姿勢を強く感じた。

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<By 小林清泰>

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小林清泰プロフィール

アーキテクチュアルデザイナー/プロダクトデザイナー
株式会社 ケノス 代表取締役

一級建築士、商業施設士。チェーンストアデザイン及びコンサルタント (チェーンストア基本デザイン 及び店舗標準化、店舗マニュアル作成)

実績:ホームセンター「カインズホーム」、CVSチェーン「セーブオン」。2008年度環境省「省エネ照明デザインモデル事業」に「店内照明全てがLED照明のコンビニ」で応募し採択される。
http://shoene-shomei.jp/h20/model/report_7.html

空間構成システム、LED照明器具等プロダクトデザイン。グッドデザイン賞受賞歴 2005年度「LAWSONカウンターシステム」、2006年度アルミスペース フレーム「ZSTEM+LED照明」、2009年度「LEDベース照明」
http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35555

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