2009年6月19日(金曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[最終回]「イチニッパを売り込め」 

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  10時36分36秒

大久保社長

成城石井の場合は、とにかく売れる商品を売り込もうと。
それが荒利が低い、価格勝負の商品じゃ、しようがない。

私が社長として成城石井に来て2週間ぐらいのときに、
出した指示があります。
各部門ごとに、売上ランクが上位で、荒利率が平均以上の商品を
10個リストアップしろと。

さらに成城石井として自信のある、差別化された商品、
売り込めば、売れそうな商品をリストアップしてくれと指示しました。
こういう商品は、だいたい荒利率が高い。
これが6アイテム。

★1部門16アイテム、8部門128アイテムを売り込め!

大久保社長

10と6で、1部門16アイテム。
8部門あるんで、掛け算すると128なんですね。
「イチニッパ」って社内用語ですけど、
「イチニッパを売り込め」と。
128アイテムを売り込めということです。

2月の中旬に、128アイテムのリストアップがでてきました。
それらの1月の売上構成比を調べてみると、
だいたい6.5%ぐらいだったんですね。
まぁ、売上上位のアイテムばかりではないですから。

じゃ、3月からこれらを売り込む
「イチニッパ売り込み」っていう指示を出しました。
ただし、値段は下げないで売り込めと。
私は内心、きちんと売り込めば、
数量で3倍ぐらいはいくかなと思って指示を出しているわけです。

本部から指示をだして、マネジメントレベルを上げて、
店の徹底度を上げて、全店で売り込みました。

そうしたらね、
3月には売上構成比が10%ぐらいに上がったんですね。
「おぉ、上がるじゃないか」と。

そうすると、荒利率が高い商品ばかりですから、
全体の荒利も上がってくるわけですね。

「あぁ、社長の言うとおりだ」と、どんどん、どんどん、
みんながやる気になっていったわけですよ。
やれば褒められるし、表彰されるし。

結城

表彰もしているんですね。

大久保社長

はい、表彰もやってます。

私はよく売場を見に行くんですが、
最初の頃は「ちょっと並んできたな」といった感じだったのが、
最近では、
「こんなに並べているのか」って驚くぐらいに、
売り込んでいるんです。
値段を下げないで売り込んでいたら、
12月には、売上構成比が25%を超えてきました。
ものすごいことが現場で起こっていると思いますね。

結城
すごいですね。128で売上げ構成比が25%ですか。

大久保社長
そうです。イチニッパで25%ぐらい。

★世界へ行って、当てがなくても歩いてこい

大久保社長

売り込み商品はほかに、「今月の1品」があります。
今月の1品は8アイテムですね。1部門1個。
もう一つは「私の1品」。
これは売場の人が自分で売り込みたい商品を決める。
売場の人も参加しようということです。

だいたい今月の1品8アイテムで3%の売上構成比が目標。
これもすごいですよ、8アイテムだけで3%ですからね。

同時に、成城石井らしい商品、
それもオリジナルの商品を開発していこうよと。

成城石井オリジナルは結構多いのかなと思っっていたら、
そうでもなかったんですね。
聞いたら
「10%ぐらいですかね」という返事でした。
「それじゃダメだよね」と。
成城石井らしい商品を、
やっぱりオリジナルで開発していこうという方針で、
バイヤーの数を増やしました。

バイヤーのいわゆる「行動基準」も、
「座ってたらダメだ」
「世界へ行って、当てがなくても歩いてこい」
「日本全国探し回ってきて、そういう商品を探してこようよ」と。

その結果、今、続々と開発されてきている。

オリジナルの開発商品を「イチニッパ」にすると
エライ売れるんですよ。
売場の人は売る気になっているし、
商品部は良い商品を探してきたから売れるぞって。

必死になってバイヤーが探してきた商品は、
良い商品なんですよね、
それを売場で「売り込む」と、
25%までぐーと上がってくる。

既存店の売上げも2年前に比べて105%ぐらい、いっている。
結果として荒利率が3ポイント上がってきました。

結城

非常にシンプルだけれども、それを着実に実行されたし、
その実感が得られたというのが、とてもいいですね。

大久保社長

そうですね。
これまでの私のいろんな経験を基に、
「成城石井はこうやったらいいんじゃないかな」と
最初から思ったことを、すぐに手を打った。
そして着任した2月から業績が上向いているんですね。
そして、ずっと上がってきています。

コスト削減ていうのは、一回ちょっと上がるんですが、
その後、その効果はすぐに萎んでしまうんですよね。

それに比べて、お客様のニーズに合った売場を作っていくことは、
イトーヨーカ堂の業革のときにも思いましたが、
ずっと売上げは上がるんですよね。
業革でも、250億の経常利益が1000億になるのに
10年ぐらい、ずっと上がっていったんですね。
経費削減では絶対ならないですね。
成城石井も経費削減ではなくて、
お客様のニーズにいかにあった売場にするのか。
値段を下げないでも売り込める商品を開発して、いかに売り込むのか。
それが大切だと思いますね。

★5つの方法を徹底すれば値段を下げずに3倍売れる

大久保社長

値段を下げないで売り込むとということで、
ひとつ面白い話あります。

私は、5つの方法があると言っているんですね。
先ず1つが「優位置陳列」。
お客様は計画購買じゃなくて非計画購買。
お店に来て見て買う比率が80%ぐらいあると言われているように、
ほとんどお客様がそうです。
だからお客様が多く通るところ、
よく目が届くところは、優位置なんですね。
後は目立ちやすいようにフェースを広げる。
フェースを広げてお客さんにこんな商品あるのかと見てもらう。

それから「豊富感」というのが必要なので、在庫を多く持つ。
わっと積み上げる。

そして、商品のよさをアピールする「POP」をつける。
「こんな良さがあるんです」と。

もう一つは、「接客」をする。
声を掛ける。
「お客様これおいしいです。私も好きです」みたい声掛けが、すごく効くんです。

こういうのをすることによって、
値段を下げないでも私の経験で言うと、
3倍売れます。

そうすると荒利の高い商品が3倍売れたら、
当然、荒利は上がってくる。

実際に成城石井で今やっていることは、支持をいただいているんでね。
お客様が満足され、売上げも上がって、荒利も上がる。
私はやっぱり正しいやり方なんじゃないかなと思っていますね。

結城
お客様も喜んでいる。
成城石井という会社には元々そういうもんがあったんですよね。
これは見逃せないことですね。

大久保社長

成城石井はマネジメントレベルも元々高かったし、
商品の開発調達力も、
たとえば他にはない商品を調達する力は
飛びぬけて、ずば抜けて、あったと思います。

ただ、店の人たちが、売り込むっていうのは少し足りなかった。
でもマネジメントレベルが高かったので、
指示を出したら、すぐぱっと動きましたからね。
成果が上がったので、
どんどんどんどんそれをやるようになった。
非常に潜在的な能力は高い会社だったわけですね。

それと、私は、ディスカウントがあまり好きではなかったので、
商品のよさをアピールして売り込むという、
今までの経験が生かせたのかなと思います。

結城

非常にマッチした感じですね。
社長に就任されて、幸せな日々ですね。

大久保社長

物凄い楽しいですね(笑)。
だからね、こんなに楽しい仕事はないなと思いながらやっているんです。

★日本の食文化を代表する成城石井へ

結城

成城石井が80周年を超えて、100周年に向かう。

大久保社長

これだけ今、調子が良いので、
もっともっと飛躍的に発展させたいと思っています。

やっぱり日本の中で、
日本のお客様に本当に喜んでいただけるお店を
作りたいなと思っているわけです。

それは価格ではないと。

日本で今、売上げも大きくて利益も上がっている業態は、
コンビニエンスストアですよね。
売上げの上位10社の中で4社も入る。
こんな国はどこにもない。
コンビニエンスストアが安いのかというと安くはない。
やっぱり便利だし、店内はきれいだし、
新商品もどんどん入って楽しいから、
支持されているということだと思います。

食品スーパーマーケットに対するお客様のニーズは、
ディスカウントだけかというと、そうじゃないと思うんですよね。
美味しさ、こだわり、安心安全といったようなニーズがある。

これから高齢化になってくると、
「おいしいものをちょっとだけ食べたい」。
あるいは若い人でも、
食にこだわりたいという人が増えていると思います。

ですから、とにかくおいしい、安心安全、こだわった商品を、
成城石井ではより多くのお客様に買って食べていただく。
そんな日本を代表するスーパーマーケットになりたいと、
社員にはよく言っています。

もちろん、代表するっていうのは、
「規模が大きいっていうことじゃないよ」、
「日本文化だよ」と。

日本はこだわるっていう文化があるんです。
そのこだわる文化を、
一番表している小売業は成城石井だねといわれたい。
こだわっていけば、その結果として成長できるはずだと思っています。
だからますます商品開発力を強化し、
それを売り込む力をさらに強化し、
成長させていきたいと思っています。

そのため、今一番力を入れているのは人材教育です。
ものすごく力を入れています。
こんなに人材教育に力入れている会社ないんじゃないかなって
驚かれるぐらいやろうと思って、今、やっています。

<中略>

やっぱり、私は会社の成長は人が成長するしかないと。
人の成長で初めて会社は成長する、
店を作って成長するんじゃないと思っていますので、
本気になって人を育成しています。

今は、景気悪いですけれど、うちは調子がいいので、
むしろ差をつけるチャンスかなと思っています。
ですから、今は足元、基盤づくりだと思います。
調子がいいから店舗を出すんじゃなくて、
先ず人を育成する。
そして人が成長する。
それによって、会社を成長させていきたいと思っています。


㈱成城石井の大久保恒夫社長との対談は
知識商人 VOL.7 
「夢を叶えた経営改革」に収録され、好評発売中です!


2009年6月11日(木曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第6回]1%の売り込み商品 

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  17時55分00秒


大久保社長の巻が事務局の都合で、一時中断しておりました。読者の皆様にお詫びいたします。
再び再開です。
対談は九州のドラッグイレブンの再建へと続き、同社で改革の肝は、マネジメントレベルを上げるためのコミュニケーション改革だったという話が、大久保社長から具体的に語られました。
そして、いよいよメインテーマ、成城石井での現在進行形の取り組みが語られます。<事務局>

大久保社長
成城石井の社長のお話をいただいたとき、
前から良い会社、可能性のある会社と思っていましたので、
ぜひ、やらせてもらおうと思いました。

結城
本当に、売場や商品がもともと、良い会社ですよね。
それで成城石井にやってきたと。

★価格でとったお客は、価格で取られる

大久保社長

成城石井は経営危機ということではなかったんですが、
やっぱりちょっと業績は翳っていましたね。
それから、成城石井らしさというのがなくなってきているのかなと。
他にはない良い商品がどんどん仕入れられていて、
店頭で売り込まれているというのが、
成城石井の良さだったと思うんですが、

何だかみていると停滞している感じだったんですね。
他がどんどん成城石井をベンチマークして追いかけてきて、
成城石井みたいな店がどんどん作られて、
差別化が少なくなってきていたんじゃないかなと思いますね。

結城
そうですね。典型がクイーンズ伊勢丹だとかね。
キャッチアップする側が、どんどん追いついてきたという感じですかね。
最初に成城石井ではどのようなことをやったのでしょうか。

大久保社長
まず最初に私が思ったことは、「価格勝負じゃないですね」と。
私は、日本は価格以外のニーズが非常に強い国だと思っています。
食品ですから、こだわった安心安全の商品で差別化していけば、
売上げを上げられるだろうと思いました。

今までディスカウントで売上げが上がったという経験が、私自身あんまりない。
だから方法論でいうとディスカウントというのは、非常に難しいと思っているんですね。
確かに価格訴求は、短期的に売上げが上がります。
短期的、表面的には、価格を下げるという手はあるんですが、
価格を下げて取ったお客様は、価格で取られてしまう。
値段を下げても、ずっと同じ値段であれば、
インパクトが少なくなって、だんだんお客様が買わなくなってしまう。
そうすると客単価が下がってしまう。
安いからといって2倍食べたりしないでしょ。
そうすると長期的には売上げが落ちてしまいます。

結城

競争相手も黙っていない。価格には価格で対抗してきますね。

★定番商品で固定客を増やす

大久保社長

売上げを上げる方法というのは、固定客を増やす。
値段じゃない魅力で、定番商品を買ってもらう。
これしかないだろうというのが私の結論なんですね。

例えば醤油の濃い口を1L158円でディスカウントしたとする。
固定客の方が、安いから買いましたという場合、
どういう購買行動が起こっているかを考えてみると、
まだ買わなくても良かったけど、安かったから買いましたという、
いわば先買いが起こっているだけです。
あるいは、本当は丸大豆のおいしい醤油の方が良かったけれど、
安かったから、今回はこっちでいいやと思って買いましたという、
商品スイッチが起こっているだけです。
安く買った醤油だから2倍かけようという人はいないので、
単価が落ちている分、消費量は変わらないので売上げは落ちます。

マーケット自体が、今後、どんどん縮小していくと思っているので、
ディスカウントは非常に厳しいと思いますね。
ただし、ディスカウントニーズが強いのは確かです。
その体力消耗戦に打ち勝てば、
巨大な企業が何社か、生き残るかもしれません。

しかし、成城石井は違います。
固定客に定番商品を買ってもらう、
だから成城石井のファンを増やしたいと。
ファンを増やすにはどうしたらいいかといえば、
私が今までずっとやってきて、至っている結論が、
基本の徹底です。

挨拶をしっかりすること。
クリンリネスを徹底すること。
品切れを削減すること。

これらを地道にきっちりやれば、ファンは増える、固定客は増える。
これが私の信念なんです。
科学的根拠はあんまりないんですけれども(笑)。

★挨拶を徹底したら接客に対する苦情が減った

大久保社長

面白いのは、挨拶を徹底すると、苦情が減ります。

これはドラッグイレブンのときもそうだったんです。
挨拶を徹底したら、総務部長が私のところにきて
「社長、最近苦情が減っているんです。半端じゃないんです。半分になりました」
やっぱりお客さんはちゃんと見ているんだと思いましたね。

今、経営判断する上で、成城石井では
苦情やお褒めを物すごく気にしているんです。

挨拶を徹底してて、毎月モニター調査やっていて、
点数をつけているんですが、
かなり飛躍的に点数が上がってきているわけですね。
点数上がってきているから良くなってきているな。
で、苦情が減ってきているかなと。

残念ながら、今、食品の安心安全に対するお客様の関心が高くて、
クレーム自体は、実は増えているわけですよね。
食品に対して、ちょっと味がおかしいんじゃないかとか、
これ大丈夫みたいなのがあるんです。

そこで苦情を、商品苦情と、接客苦情、
つまり商品クレームと接客クレームに分けて調べてみようって分けたら、
接客クレームは減っていたんです。

それと、もう一つはお褒め。お褒めが増えているんです。
1.5倍ぐらいになりましたね。
来店客100万人当たりを指数にしているんです。
こうした基本をきちんと徹底することが、
お客様の支持をいただくこと、固定客化に絶対繋がっていると思ってやっています。

結城
その通りですね。
僕も客数主義というのを掲げています。
客数、レジを通過する客数がバロメーターだと。
売上げではなくてね。
その客数を増やす方向性は、固定客の来店頻度を、買上頻度を増やすという、
これが一番原点だと考えているんですね。
それと同じでしょうかね。

★★1%のSランク商品を徹底して売り込む

大久保社長
そうです。
それともう一つは、やっぱり価格が安いからで買うのではなくて
本当にこの商品いいわねと思って買ってもらう、
そういう売場にしようと思っているんですね。

さっき、固定客に定番商品を提供するという話をしましたけれども、
売り込み商品というのを明確に決めて、それをきっちり売り込もうと。

これも今までの経験ですが、ABC分析ってありますよね。
売上上位3分の1の商品で75%ぐらいの売上げを上げるという。
あの分析だと、なかなか手にならないんですね。具体的な手に。

私はAをさらに3分の1に設定しまして、
つまり3分の1の3分の1だから、大体、上位10%でしょうね。
10%の商品で、40%から50%の売上構成比があります。
だからそれらをSランク商品として、Sランク商品を売り込めといっているんです。
Sランク商品は品切れさせるなと。

こういう手を打っているんですが、
それでもまだ、商品の固有名詞にならないですね。
「売り込み商品」にするにはまだ遠いんですよ。
その10%の中を、さらに10%、これは1%ですよね。
全体の1%の商品でどのぐらい売れるかというと、
大体15から20%の売上げがあります。

ドラッグイレブンもそうでしたが、
お店に1万5000ぐらい商品が並んでいるんですね。
成城石井も大体1万5000ぐらいなんです。
1%というと150ですから、150は覚えられます。
ドラッグイレブンのときに私、
全部覚えろと社員に言って、全部書かせたんですよ。
それぐらいなら、覚えられる範囲なんです。

それを売り込んで、売上げが上がれば、数字が簡単に弾ける。
例えば20%の売上構成比があって、これがもし10%売上が伸びたら
2ポイント上がりますから、既存店の100が102になると言うことなんですね。

結城
すごいことですね。

続きます。

2009年5月20日(水曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第5回] 豊富な品揃えの誤解

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  15時44分40秒

<中略>ユニクロの改革から、話は無印良品のコンサルティング時代のエピソードに及びます。
当時、無印良品は売場を拡大し、商品開発を増やしていましたが、
前年比売上高、既存店前年比売上高ともに90%という厳しい状況にありました。(事務局)

大久保社長
無印良品は当時、300坪だとか400坪だとか大きい店を作っていって、
その売場拡大に合わせて商品開発をものすごくやっていったんですね。
そして、300坪の店に合わせて開発した商品を、100坪の店にも並べていた。
新商品だから売れるんじゃないかと思ったわけです。

そこで、どういうことが起こったかというと、
売れ筋商品のスペースを縮めていって、
そのスペースに開発した商品を並べていったんですね。

結城
なるほど。

大久保社長
それで私が「売上落ちたでしょ」っていったら
「そうなんです」と。
売れ筋商品で大半の売上げを稼いでいたのが、そのスペースを縮めていった。
だから売上げも落ちますし、下手すると品切れしちゃう。
新しく開発した商品はそんなに売れないので、
品揃えの数を増やせば増やすほど、売上げは減るもんなんですね。
売れ筋の売込みが弱くなってしまうから。

結城
それはね、鈴木さんも「絞り込み」とさんざん言われたし、
昭和51年にヨークマートが勝田台というところで第一号店を作ったんですけれども、
イトーヨーカ堂の食品と雑貨の部分だけで新しいフォーマットを作ろうというときに、
イトーヨーカ堂の大きな食料品売場のコンパクト版を450坪に込めて同じ現象が起こったんですね。

★「絞り込み」とは「売れ筋の拡大」

大久保社長
そうですね。「絞り込み」も、当時有名になって、
ヨーカ堂が「絞り込み」やって、うまくいったというので、
「アイテムの削減だ」って他社もやりだしていました。
私はそうした売場を見に行って「全然違うな」って思ったんですね。

ヨーカ堂は「絞り込み」っていうよりも、
「売れ筋の拡大」をやっていたんですね。

売れ筋商品をもっと売り込む必要があるから、
その売り込みたい商品のフェースをもっと広げる。
フェースを広げるとどうしても棚から落っこっちゃう商品が出ますが、
それはそれでしょうがないので、それはカットしましょうと。
だから結果としてアイテム数は減ります。
じゃあ、売場ではどうなっているかというと、
売れ筋商品が、きちんと売り込まれている売場になっているわけです。

ところが他店にいきますと、一列にフェースを拡大して絞り込んでいるだけなんですね。
現場では、「作業効率が上がりました」という。
でも「売れ筋商品の売り込みじゃない売場になってて、
これだったら売上げが落ちるな」と思いました。
そうしたら「全然売上げは上がりません」というような話も聞く。
「同じように見えていても全然違うな」と思いました。

結城
最初の大久保さんが言われた「現場が大事だ」ということと、
「お客様が大事だ」という、このお客様を忘れて、
ただ、絞り込みという形を取ったらダメだということですよね。

★アイテム数が少なくても品揃えが豊富な店

大久保社長
それからヨーカ堂でも、ずっとデータ見ていると、
本当に一部の商品で、大変な売上げを稼いでいる。
だから、それらの商品をいかに売り込むかが、
お客様のニーズへの対応なんです。
アイテム数を増やしていろんな商品を置くことじゃなくて、
より多くのお客様に支持されている、満足されている商品を
よりアピールして売り込んでいくか。
それこそがお客様のニーズへの対応だと私は思います。

結城
その通りですね。

大久保社長
アイテム数と品揃えで、こういう話もありました。
ユニクロがある時期、GAPに比べて品揃えが悪いといわれていた。
その時に、アイテム数を調べてたらユニクロの方が多かったんです。
その後、ユニクロが売れ筋商品を拡大していって、アイテム数が減った。
アイテム数が減ったにもかかわらず、お客様からは品揃えが良くなったという声をいただいた。
「あぁ、お客様は自分がほしい商品が売り込まれていると、
これもほしい、あれもほしいと思い、品揃えが豊富な店、よい店だ」って評価するんだと、
その時、改めて思いましたね。

結城
それはある種、商業小売業の真理ですよね。
アイテム数は少ないんだけれども、品揃えが豊富だとお客様には受け止められると。
これは正しく真理ですね。

大久保社長
私はよく言うんですが、
お客様はカウンターを持ってアイテム数カウントして調べて、
こちらの店の方がアイテム数が多いから品揃えが豊富だということではまったくない。
お客様は、この店、買いたいものがあるかないかで、
品揃えが豊富か、豊富じゃないかって思っていると。
だから結局は、お客様なんだと。
お客様がどんな気持ちになるかがすべてで、
売るほうの立場の考え方とは全然違うんだと。
よく言いましたね。

2009年4月24日(金曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第4回 小売業ほど面白い仕事はない]

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  11時46分45秒

< 中略>二人の対談は、リテイルサイエンス時代のコンサルティングの話で盛り上がっていきます。
大久保社長はユニクロ、良品計画などの経営改革に携わりましたが、
中でも、ユニクロの柳井正社長との出会いに大きな刺激を受けたようです。< 事務局>

大久保社長
柳井さんが全社員を前にして、
「大久保さんを副社長だと思って、大久保さんの指示には全部、従ってください」
みたいなことをおっしゃるので「これは、すごい経営者だな」と思いましたね。

私も、何とかしたいという気持ちがあって、一生懸命やったところ、
指示に対するスピード感と徹底力が全然違うんですね、ユニクロは。
もともと、そういう力のある会社なんです。

「こういう問題があるからこうするんだ」と私がお話しして、翌週行くと、
「今、体制作ってますから」とか「こんなことをこうやって体制つくってやります」というのが普通ですが、
ユニクロの場合は、「もうやりました」「こんな結果出てます」
という話がどんどん出てきて、ものすごい勢いで経営改革が進みましたね。

★経営のスピードを変えるウイークリー・マネジメント

結城
いわゆるウィークリーマネジメントですよね。
月曜日の朝8時から開催して火曜日までやって、そして問題解決をして、
そして翌週、また月曜日、火曜日と、
あくなきウィークリー・マネジメントをやっているんですよね。
ユニクロのあれはすごい。

大久保社長
その時に明確に意思決定がされるんですね。
前週までの一週間が勝負なので、こんな結果が出ていると。
じゃあ、今週どういう手を打つのかっていうのが経営会議で決められて、
午後にある営業会議で具体的な指示事項になっていく。
これはものすごいと思いますね。

私が今、成城石井でやっているウィークリーでの営業会議は、
その柳井さんのやり方が非常に参考になっていて、
むしろ、そのままやっている部分も、結構ありますね。

月曜日に営業会議をやって経営として決めたら、
それを営業にすぐブレイクダウンする。
店にどうやって連絡するのか、
主事指示みたいなのを出して、
主事指示を出しただけじゃダメなんで、
スーパーバイザー的な人が店に行って、
店の人と話をして、具体的に誰が、いつやるのかっていうのを決めて、
水木あたりで実行し、土日に勝負がついている。
だから、月曜日にまた経営会議をやって、経営としての経営判断をする。

結城
サム・ウォルトンも、金、土会議をやったんですね。
ウォルマートがかなり大きくなってからも、
ジェット機で飛んで、月火水木と店に行って、
そして木曜日の晩に帰ってきて、金土に同じような会議をして、
そして指示を出して、日曜からまた木曜日までやる。
このサイクルをサムウォルトンが作って、
それが今でもウォルマートの原動力になってます。

柳井さんも同じですね。
サイクルを作って、それを年間52回続けていく。
52回すると、全く次元の違う会社になっている。
その経営のスピード感ですね。
鈴木敏文さんも業革で毎週のようにやっていたわけですね。

大久保社長
毎週、毎週。
ですから、先ほど話した津田沼店の鮮魚売場の
刺身の鮮度をいかに良くするのかっていう課題を毎週、毎週やっていました。
どんどん手を売って、その結果が出てきて、
それに対してどうするかを決めて、またやるっていう。
この繰り返しなんですね。

結城
その週の頭に意思決定をするというころですね。
そして具体策を作って、それを展開する。
やってみて次の週にもう一回意思決定し、検証する。
良ければどんどんやる。
悪ければすぐやめて、変える。
そういうことだったんですね。

★柳井正社長の「失敗したら学べるじゃないか」

大久保社長
そうですね。
もうひとつ、柳井さんを、私、すごいなと思ったのは、
「失敗していい」、むしろ「思い切って失敗しろ」「やれ」という。
とにかく「考えてたってしょうがない」と。

「やったら結果が出るんだから、結果を見て、
すぐまた次の手を打てば、失敗したっていいんだ」と言っていた。
「失敗したら学べるからいいじゃないか」と。
中途半端な失敗をして、学ばないぐらいだったら、
思い切ってやって失敗したら、勉強になるからよい

次にそれを活かせばいいじゃないかと。

本当に言ってましたからね、経営者が。
あれはすごい。
柳井さんに学んだところがたくさんありますね。

結城
そこは柳井さんのすごさですよね。
ともすると、権威が強くなると、失敗は許さないというような空気になる。
それでは、チャレンジ精神というか、チャレンジする部分をなくしてしまう。

大久保社長
私は、小売業はやっぱり「柔らかい」と思うんですね。
いろいろなことをやって失敗しても、怪我が浅い。
すぐ修正できる。
だから、思い切って売ってみて、売れなかったら、
それを半額にして、売り切ろうとすれば、売り切れちゃう。
そして、また次の商品を売ればいいじゃないかというような、
そういう柔らかさが小売業だと思います。

小売業のそういう良いところが、私は好きなんです。
どんどんやったらすぐ結果が出て、結果がだめだったらすぐ変えればいい。
その柔らかさ、身軽さというか、スピード感がある。
小売業のその良さを、うまく生かしたほうがいいと思いますね。

結城
その通りですね。

大久保社長
どんどんやって、結果が出たほうが、
考えているよりはるかに早く、正確にわかります。

考えて、分析しても、わからないものはわかんない。
躊躇して、いろいろと判断に迷っているぐらいだったら、
思い切ってこっちだと思ったことをやってみて、結果を見て
それでよかったのか、悪かったかを判断する方が、
ずっと正確にわかると思いますね。

結城
メーカーのように、新製品を出して失敗したら取り返しつかないっていうのと、違いますよね。
非常に野放図だけど、それがフレキシブルだという、
そういう要素はありますね。

★小売業は頭脳労働だからこそ面白い

大久保社長
私は小売業のそういうところって、すごい好きなんですね。
だからいろいろとアイデアを出せるし、そのアイデアも実行しやすい。
ダメだったらやめればいいと。
いろんなことを考えて、いろいろと手を打って、
しかも結果がすぐ出ます。
結果がでて、そうしたら、また次の施策もどんどんできる。

小売業は、本当に仕事としては
こんなに面白いものはないと思うんですよ。

それを考えもしないで、ただ作業だけをしていたら、
こんなに辛いものはないと思いますね。
労働環境は辛いし、肉体労働だしみたいなね。
本当は、小売業は頭脳労働というか、
その楽しさがすごくある職場だと思っています。
ぜひそれを皆さん、活かしてほしいと思いますね。

結城
この対談のタイトルは「知識商人」。
僕は、「ナレッジマーチャント」ともいっているんですが、
小売業で働く人たちは、頭脳労働者であると。
ドラッカーは「ブレインズとハンズ」という。
つまり「脳と手」の両方を使うのが知識労働者で、
21世紀の働く人たちのあるべき姿だっていうんです。
それを最も体験しているのは、僕は小売業や商人だと思うんですね。
ブレインズとハンズを使って。
手で商品を並べたり、商品を使ったりしながら、同時に頭を使う。

セブン-イレブンのパートタイマーやアルバイトさんの「分散発注」だって、
並べつつ、自分で売場を作って、
そこで発注という意思を込めて商売しているわけです。
それを見ても、知識商人、ナレッジマーチャントであるという認識を、
僕は持っているんです。

大久保社長
それから、小売業はものすごく自由になるところがあると思いますね。
メーカーだったら自社の商品だけを売り込めになってしまいますが、
小売業だったらいろんなところから商品を集めて、並べて売れますし、
場合によっては、並んでない商品を自分で仕入れてもいい。
そして、何を売るのか、どう売るのかっていう自由がありますよね。
私、お店にいたとき、ものすごく楽しかったです。
今でも本当は店長やりたいんです(笑)。
店長ほど面白いものはないと思うんです。

もっといえば、売場はすごい
「緩い(ゆるい)」
んですよね、きっちり決まってないので。

特にエンドとか、平台とか、あんなスペースだったら
ちょっと寄せれば隙間がいくらでも空きますので、
そこに自分がこれなら売れるかなと思った商品を思い切って発注して積んで、
例えば、お客さんに「この商品はこんないいところあるんですよ」っていって
売ったときの面白さはないわけです。

小売業は、そういう意味では、いろいろ考えることが自由にできるし、
行動もすぐできる。自分自身でいくらでもできますよね。

裁量権がものすごく大きいわけですね。

自分で発注して、自分でスペース空けて並べれば、
自分のやろうとしたことが実現できる。
その結果がまたすぐ出てきて、それに対して、また次の手が打てる。
そういう意味では、こんな楽しいものはないんじゃないかと思っている。

だけど売場に行くと、本当につまんない顔して働いている人が、
結構多いんですね。
これは残念だと思っているので、
ぜひ面白いと思う人が一杯いる小売業をつくりたいと思っています。

結城
さっきの柳井さんにしろ、伊藤さんにしろ、
やっぱり自分の仕事を楽しんでいて、自分の仕事が大好きなんですね。

続きます

2009年4月22日(水曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第3回 子供のころからの夢は会社の社長]

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  11時47分10秒

結城
ヨーカ堂で学ばれたことは、やっぱり、
その後ずっと繋がってきていると言うのは、
当然のことでしょうけれども、
すごい価値の高い事だったんですね。

大久保社長
そうですね。その時、私は非常に若かったですし、
店に2年いて、いきなり経営戦略を担当する部署で、
経営改革の経験をするということは、
普通はありえないことじゃないかなと思っていますので、
非常に恵まれた、幸運なことであったと思っています。

結城
最初は必ず、誰でも現場を経験しなければならないわけですが、
比較的若いときに、意思決定の中枢のところに入るっていうのは、
非常にラッキーなことなんですね。

★小売業には、若い人が活かされるチャンスがある

結城
例えば、この対談にも登場していただいた
小浜裕正さんという今のカスミの社長は、
ダイエーに入られて、現場を少し経験して、
当時はダイエーにも、人材があまりいなかったので、
いきなり中枢に入って、商品管理のある種のルールを作るということをされた。
若い頃にかなり重要な仕事をいきなりさせられる
という経験を積まれているわけですが、
それは非常に小浜さんによかったようで、
それから何十年も経つ今でも、その話をされる。
大久保さんにとっては、この業革のスタッフになったというのは
同じような意味合いがありますね。

大久保社長
そうですね。幸運もあるんですけれども、
やっぱり小売業というのは、
そういうチャンスが多い業界なんじゃないかなと思います。
ですから、ものすごく大企業で、人材が豊富で、
組織がきちんとできてる会社ではありえないようなことが、
小売業では、若い人にどんどんチャンスが与えられる。
そういう機会の多い会社だと思いますね。

結城
その意味では、
規模の小さいローカルチェーンといわれるような企業でも
若い人たちには、大きなチャンスがあるということになりますね。

大久保社長
そうですね。ぜひ、それを活かしてほしいと思いますね。

結城
その後、コンサルティングの会社のリテイルサイエンスを設立されるわけですが、
その経緯をお聞かせください。

大久保社長
もともと私は、社長をやりたかったんですね。
子供の頃から、ずっと社長をやりたいという夢がありまして、
非常に幼稚な夢ですけれども(笑)、
ヨーカ堂で十年経った時点で、
やっぱり自分の会社を作りたいなと思ったんですね。

結城
なるほど。

★自分に実力があればリスクは低い

大久保社長
それともう一つ、ちょっと違う話なんですけれども。
会社で非常に認められていましたから、そこを辞めるって言った時にですね、
いろんな人から、親からも「お前頭おかしいんじゃないのか」と。
「こんなに認められて何を考えてるんだと」言われたんです。

けれども、その時、私が思っていたのは、
やっぱり、リスクが高いのは自分に実力が無いからだと。
たまたま今、認められているだけなんじゃないかと。
だから、たまたまある会社の、たまたまある部署に認められているだけで、
それは何かの拍子で変わるかもしれないと。
それはリスクが高い。

じゃあリスクが一番低いのは何かっていうと、
自分に実力があることだと考えたわけです。
実力さえあれば、どんな時代が来て、どんな会社でも、
仕事はちゃんとできるだろうと思ったんですね。

ヨーカ堂しか知らない、それから業革しか知らない。
これでは、まだまだ不十分だなと思って、もっといろんな勉強もしたい、
そのようにも思いました。

結城
すごい考えですね。

大久保社長
それを伊藤さんに言いましたら「そうか」と、
「それなら勉強して来い」と言っていただいたんです。

だったら自分の会社を作ろう。
会社を作れば、いろんな経験もするだろうし、苦労もするかもしれない。
けれども、自分自身が成長できると。

そしていざ、会社を作ろうと思ったんですが、何もないんですね、私ね(笑)。
お金もないし、親が何かやっているわけでもないので。

じゃあ、何ができるかっていえば、
紙と鉛筆で、コンサルティングはできるんじゃないかと。
経営戦略はやってましたし、
ヨーカ堂というのは、ある程度、進んだ会社だと思っていましたし、
その経験を活かして、
他の会社をコンサルティングできるんじゃないかと思ったわけです。

だけど、お客さんもいないし、コンサルティングのやり方も知らない。
じゃあ先に、外資系のコンサルティング会社に行って、
コンサルティングの勉強をしましょうと。
そして、入ってみると、ああいう会社には、もの凄い優秀な方がいっぱいいる。
MBAとってきてみたいな、もの凄く勉強されてきた人たちです。

けれども、私は経営戦略をやっていましたので、
実感として、彼らにはあんまり負けないなという気持りはあったんですね。
経営戦略は、ある程度知識もあるから、これはいけそうかなと思いました。

大久保社長
一方で、お客さんをどうやって見つけたらいいのか、わからない。
そのとき、流通経済研究所っていう、
学習院の田島義博さんがつくられた非常に優秀な研究所ですが、
そこから研究員やらないかというお声をかけていただいた。
メーカーが結構入られていて、小売企業も入っていた。
そこでコンサルティングをやってもいいし、原稿書いてもいいし、講演してもいい。
それを全部、自分の収入にしてもいいというような話をいただきました。

良いチャンスだからと行ったら、
いきなり、いろんな会社から、
コンサルティングしてほしいという話をいただいた。
夜とか、土日使ってやっていたんですけれども、
とてもやりきれないので、それなら独立しようかということで、
リテイルサイエンスを設立しました。

★売場の人が元気に働くだけで、売上げは上がる

結城
リテイルサイエンスという名前は、どう考えたんでしょうか。

大久保社長
その当時、小売業は、勘と経験と度胸だといわれていた。
そうじゃなくて、例えばデータもそうですが、
もうちょっと、科学的に問題点をきちんと分析していって、
そういう視点から流通業、小売業を見て、
それを改善していく、会社を直していくということが大事だと思ったわけです。
そういう風にしたいなという思いから、会社の名前もそうしました。

結城
ユニクロから出た澤田貴司さんが「キアコン」という会社を作った。

大久保社長
はい、はい。「気合と根性」ですね。

結城
その正反対の考え方ということでしょうか。

大久保社長
そうですね。
ただ私は、気合と根性、それも正しいと思っています。
だからそういうものと、科学的な考え方を
いかに組み合わせていくのかということだと思いますね。
どっちかじゃないと思うんですよ。

結城
気合と根性はなければね。

大久保社長

やっぱり、売場の人が元気で働くだけで、売上げっていうのは変わるものです。
それは、非常に重要なことだと思いますね。

続きます

2009年4月16日(木曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第2回 イトーヨーカ堂の業革から学んだこと]

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  14時17分28秒

結城
イトーヨーカ堂の業革で学んだことを、最初にお話しください。

大久保社長
一番大きいと言いますか、私が、ずっと基本的に思っていることは、
やっぱり現場が大事だということ。
そしてお客様志向。
お客様にいかに満足していただくかということだけなんです。

これはもう伊藤さんが常におっしゃられてましたので、
身に沁みてますね。
伊藤さんがイトーヨーカ堂を作って、鈴木さんが業革をやられて、
会社を改革されたんですけれども、
私は鈴木さんの考え方の基本的な部分に、
伊藤さんの考え方はあると思っています。
現場志向とか、お客様志向というものの延長線上に、
業革があったと思っています。

結城
僕もそう思いますね。
基本の徹底と変化への対応、これがスローガンですが。
それは、もう伊藤さんと鈴木さんが、
正しく一体となっているということですね。

具体的には施策とかそういったことで、
この業革から学ぶことは、どんなことがあったんでしょうか。

大久保社長
そうですね。
その業革っていうのは、いわゆる経営改革なんですけれども、
実際に中で話し合われていたことは、ものすごく具体的だったんですね。

★業革はお客さまに満足していただくための流通構造改革

大久保社長

例えば、津田沼店の鮮魚売場の刺身の鮮度をいかに良くして、
お客様に満足していただくのかといったテーマで、
その品揃えから生産、売込みまで話し合うわけです。
それぞれどのようにしたら、
お客さんに喜んでいただいて
売上が上がり、ロスが減り、利益が上がるのかをやっていくんですね。

ただ、それをするためには、すごく幅広い改革が必要になります。
どうやって仕入れるかとか、
どうやって解凍するかとか、
どうやってそれを切って盛り付けるかとかですね。
売場で何を売るのかを考えて、どうやって売り込むかとか。

いろんな部署に関係する仕事があるし、
大きな取引先を含む改革をしなくてはいけない問題もある。
そのために現場、部署をどうするのか、
さらには流通プロセス全体も考えて実現するにはどうしていくのかと。
こういうようなことをやっていました。

お客様のために何をどうするのかと言うことを考えて、
それを流通構造全体の中でどうやって実現していくのか。
それからイトーヨーカ堂という組織の中で、
どうやって実現していくか。

広く、長く、深く、そういうようなことを考えて、
実現していったというのが業革なんです。
それはある意味、
お客様に満足をしていただくための流通構造改革だったと思っています。

この業革の経験は非常に役に立っていますし、
これまでもこれからも、私がいろんなことをやったり、
思考したりするときの原点になっている考え方です。

結城
業革の時には、セブンイレブンの考え方が、
かなり中心になっていたという認識が普通ですけれども。

大久保社長
考え方の中心というか、原点は同じです。
セブンと同じような基本的な考え方が、イトーヨーカ堂にもあった。
セブンイレブンの原点を、イトーヨーカ堂っていう会社の中に
どうやって活かしていくかということだったんだと思います。
ただ、イトーヨーカ堂の業績が急激に、
1000億の経常利益が上がるところまで良くなったということです。

けれども、私がかかわった、
ユニクロや無印やドラッグイレブン、成城石井は、
それぞれ業態も違うし、扱っている商品も違いますが、
基本的に考えていることはほとんど同じです。原点は同じなんです。
商品が違って業態が違ったりするけれども、
それにあわせて、同じようにどうしていくのかということだけです。

結城
その意味ではイトーヨーカ堂の業革は、この時代の最先端でしたね。

大久保社長
そうですね。流通構造の改革だったと思いますね。
当時、鈴木さんが需要と供給のバランスみたいなことを
良くおっしゃっていた。

高度成長期は供給を需要が上回っていたから、
とにかく大量生産をして、商品を大量販売する仕組みが必要だったと。
そこそこ品質の商品でよかったし、値段が安ければ、ものすごく支持された。

そうした時代から、供給が需要を上回るようになった時代、
お客さんが本当にほしいものしか買わなくなってきた時代になってきたら、
小売業はどうあるべきかと。
メーカーが作った商品を、ただ売りさばくだけの小売業じゃいけないんだ、
といっていました。

結城
鈴木さんは売り手市場から買い手市場という言葉を使っていた。

大久保社長
お客さんに一番近い立場の小売業が、
お客様のニーズを一番見つけやすいのでだから、どうやって見つけていくのか。
それをメーカーや産地と一体となりながら生産してもらい、
売り込んでいって、売り切っていくのかっていう流通構造に変えて行きましょう。
そういうことだったんですね。

セブンイレブンでもそうでしたし、
イトーヨーカ堂でもそういうことをやった。
その考え方を今でも正しいと思っていますでの、
私はいつも、その考え方で小売りを改革しています。

結城
大久保さんが今、強調されている、
生産を含めた流通構造の改革だという、
この視点はとても重要ですね。

★小売業がリーダシップを持ち、価値を生みだす

大久保社長
そうですね。
むしろ小売業が主導権を持つべきなんだ、小売業が価値を生むんだと。
だから利益も上がるんだという考え方なんですね。

ですから、メーカーがチャネル構造の中の主導権を持って、
メーカーが価値を生んで、
小売業がそれをただ売っているというだけでは
小売業の価値が少ない、だから利益が少ないと。
これを変えなくちゃいけないんだという基本的な考え方は、
私は、あったと思います。


結城
それは、例えば後でまた話題にしますけれども、
現在のようにプライベートブランドのある種のブームが起こったときに、
一方で、メーカーの技術や商品開発の力が強いという意見もある。
一方で、小売業のバイイングパワーが
プライベートブランドを作らせているという意見もある。

けれども、小売業の利益率はいまだ高くない。

したがって、プライベートブランドと称するか、プライベートレーベルと称するか、
成城石井のようにオリジナルブランドと称するかは別にして、
やはり、小売業が商品開発のある種の主導権を持って進めていくのは
重要であるということなんですよね。

大久保社長
そうですね。
小売業はお客様に一番近いので、
リーダーシップは持つべきだと、私はそう思います。
鈴木さんもそう思って大改革をしたと思いますけれども。

じゃあメーカーは単なる小売業の言うがままに、ただ生産するだけなのかというと、
それも違うんじゃないかなと思っているわけですね。
メーカーの技術開発力、生産に対する知識、それはやっぱり勝てないものがある。
ですから、それをいかに、みんなが活かしながら、
お客様のニーズに合ったものをどうやって見つけて、
生産して物流して、在庫して、
最も効率的な流通構造にして販売していくのか、
そういうことが重要なことだと思います。

                      <続きます>

************************************************


知識商人 VOL.7 
「夢を叶えた経営改革」
(株)成城石井 大久保恒明 氏
好評発売中!

2009年4月13日(月曜日)

第2弾/大久保恒夫の巻[第1回 小売業が大好き]

カテゴリー: 成城石井 大久保恒夫社長の巻  20時53分45秒

「結城義晴の知識商人対談」の第2弾は、
株式会社成城石井の大久保恒夫社長との知識商人対談のエッセンスをご紹介します。
場所は、商人舎から徒歩2分の成城石井本社会議室。
論理的な大久保社長と結城義晴の話題は次から次へと尽きず、
予定の時間は越え2時間近くにも及びました。
二人の表情もあわせてご紹介します。 <事務局>
********************************************************************

結城
毎月お届けしますCDオーディオセミナー第7回目、今日のゲストは、
成城石井の社長の大久保恒夫さんです。
宜しくお願い致します。

大久保さんの成城石井の本社は、神奈川県横浜市西区北幸2丁目の9、
商人舎が1丁目の15ですから、隣近所というか隣組みたいなものです。
その本社に訪れました。
今日は、もう長いおつきあいの大久保さんから、
とっておきのいいお話を聞こうと思っています。

最初に大久保さんから、簡単な自己紹介をお願いします。

大久保社長
成城石井の大久保です。宜しくお願いいたします。

私は、今までいろいろなことをやってきました。

まず最初に、10年間イトーヨーカ堂にいまして、
主に、イトーヨーカ堂グループ全体の経営戦略を担当する部署に8年間在籍し、
伊藤雅俊会長、鈴木敏文社長の直属のスタッフをやっていました。
これがたいへん、勉強になっていて、私の今の基盤になっています。

その後、株式会社リテイルサイエンスという会社を起こしました。
今も私が社長をやっているんですけれども、
ここで、小売業のコンサルティングをずいぶん、たくさんやらせていただきました。

成功事例として、結構有名になったのが、
ユニクロのコンサルティングと無印のコンサルティングです。

その後、投資ファンドみたいのが結構出てきて、
業績が悪化した企業を企業再生するということが、
盛んに行われるようになりました。

そうしたファンドと一緒に、
九州のドラッグイレブンというドラッグストアの
企業再生を、社長としてやらせていただきました。

そして、今の成城石井。
こちらもファンドの方と一緒になりながら、
成城石井の場合は経営危機という感じではないんですけれども、
さらに業績をアップさせるということをめざして、
今、社長としてがんばっています。

★小売業一筋、小売業大好き

結城
というと学校を出られて、イトーヨーカ堂に入られて、
もう小売り一筋と言うことになるんでしょうか?

大久保社長
そうですね。私、小売り大好きなんで(笑)。
小売りはとても面白いと思いますね。

結城
最初にイトーヨーカ堂に入る動機というか、
きっかけは、なんだったのでしょうか。

大久保社長
私は学生時代あまり勉強をしてなかったもので、
社会に入ってから勉強しようという動機からだったですね。

結城
それは僕も全く同じです(笑)。

大久保社長
きれい事で失礼に聞こえるかもしれませんが、
ちょっと仕事がきついぐらいの会社がいいかな、
自分の能力が発揮できるような、
貢献できそうな会社がいいかな、というのが先にありました。

小売業の企業は、当時だいぶ伸びてきていて、
これからも成長しそうかなと思いましたし、
一方で、まだまだ人材が十分じゃないような状況ではないだろうかとも考えました。
だったら、その中で自分自身が頑張れば、
会社に貢献できるのではないかなと思って、イトーヨーカ堂に入りました。

結城
何年入社だったんですか?

大久保社長
昭和54年ですね。

結城
54年ですか。
僕が商業界に入ったのが52年ですから、
ほぼ同じ頃にこの業界に入ったということですね。
その後、イトーヨーカ堂本社は、麻布台(港区)に移転しましたね。

大久保社長
そうですね、私が行った時は一番町(千代田区)で、
そこで1年くらいやった後、芝公園(港区)ですね。
商業界のすぐお隣さんのところへ。
あそこにずっと通っていました。

結城
そうですか。と言うことは、
大久保さんとそばで、
相当長いこと同じ空気を吸っていたということですね。

大久保社長
そうですね。

★イトーヨーカ堂業革会議の議事録を起こす

結城
商業界時代と今、西区北幸で同じ空気を吸っているということですね。

そのヨーカ堂時代に、「業革」といわれる、
ヨーカ堂の革命的な、まぁ、日本の小売業の歴史に残るような、
そういう活動が展開されていたわけですけれども、
大久保さんはその真っただ中にいらしたと。

大久保社長
そうですね。
業革の開始当時、どうやってやるのかっていうあたりから、
一緒になって考えてましたね。

実際に、事務局をやっていましたので、
そうした会議に出て、それを全部録音し、
私が議事録をつくっていました。
何回も何回もテープを聴いてましたから、
もう、その考え方が頭の中に染み込むほどに

そういうことをずっとやってました。

結城
その後、コンサルティング会社を行ったり、
ドラッグイレブンや成城石井を改革しようというときに、
やっぱり業革の考え方がベースにあると。

大久保社長
ベースにありますね。これは間違いないですね。

結城
血となり肉となっていると。

大久保社長
ええ。
いつもやっぱり、そこから発想の原点といいますか、
そういう感じだと思いますね。

<続きます>