商人舎

「物流業界」の基礎知識

「物流業界」の基礎知識

vol. 02 物流は流通機能の一部を担う

2010年04月20日(火曜日)
カテゴリー:
  • 物流業界
  
11:41 AM

★小売業や物流業は生産と消費の架け橋

今回は、物流の「機能」について紹介する。

「機能」というとややカタい感じを受けるかもしれないが、
物流が私たちに「何をしてくれているか」という本源的なことであり、
ぜひ押さえておいてほしいテーマの一つだといえる。

まず、少しだけ私たちの歴史を振り返ってほしい。
完全自給自足を実現できなかった人類は、物々交換の体制を経て、
必要なモノを経済活動によってまかなう社会をつくり上げたのはご存じのとおり。

その際、生産者と消費者に分業化することで、
そこに、①所有権、②距離、③時間という三つの隔たりが生まれた。
つまり、モノをつくる人と使う人、モノをつくる場所と使う場所、
そしてモノをつくったときと使うときのタイミング、
それぞれにズレが生じたのである。

そこで、これらのズレを埋め、
生産と消費をスムースに行うために登場したのが「流通」の機能だ。

なかでも「所有権の隔たり」には、
消費者と生産者や製造者との間に流通業者(卸売業や小売業など)が介在し、
取引(価格を決め、売買をして所有権を移転すること)を繰り返すという
「商的流通」(商流)という機能が隔たりを埋めた。

一方「距離の隔たり」には、生産地から消費地へ運ぶ「輸送」の機能が、
「時間の隔たり」には、生産されてから消費されるまで「保管」する機能が、
それぞれの隔たりを埋めた。
この「輸送」と「保管」の機能を担ったのが、
「物的流通(physical distribution)」(物流)の活動である。

このように、そもそも小売業と物流業は、お互いに協力しながら、
それぞれ流通の機能の一部を果たす“お隣さん”として生まれたことがわかる。
現在では、消費者に対してさまざまな商品を販売する小売業と、
それらの商品を着実に小売店頭に供給する物流業との協力関係は、
より広範で緊密なものになっているといえる。

まず、こうした協力関係は国内だけにとどまらなくなっている。
エネルギーの96%、食料の60%、基幹産業の原材料の90%は
国境を超えて運ばれてくるという統計もあるが、
小売業が海外に商品を求めることが増えているからだ。
さらにSPA(製造小売業)や大手小売業のPBなど、小売業の海外生産の進展や、
フードサービスが食材を海外に求めるなど、
経済のグローバル化が拡大していることも大きい。

こうして、小売業・サービス業と物流業界の協力関係は、
国内の、しかも流通段階の「販売物流」にとどまらず、
生産に先立って必要となる原材料や部品などを調達する「調達物流」、
生産現場において部品や製品を保管・管理する「生産物流」など、
さまざまな場面でより緊密に行われるようになっているのである。

(続きます)

〈by 二宮 護〉

コメント (0)

vol.01 「物流業界」は貴重なパートナー

2010年04月13日(火曜日)
カテゴリー:
  • 物流業界
  
2:14 PM

★目立たず常に仕事をし続ける縁の下の力持ち

近年「物流」といわれて、「なんのことかわからない」という人は
さすがに少なくなっているように思う。
小売業・サービス業に属して、日々、商品を仕入れたり発送したりしている人なら、
なおさらそうだろう。

それでも、物流の仕事に対する関心は、まだまだ低いと言わざるを得ない。
一般消費者であれば、食品はじめ日常生活に必要な品々などについて、
小売店頭に並んでいるのを見て、はじめてそれらを意識する。
だが、商品がどうやってそこに並んだかには無頓着で、
生産者や製造者に思いは至っても、物流業者の存在まで想像する人は少ない。

当然のことだが、物流がきちんと機能しなければ、
必要な人に必要なモノが、必要なときに必要なだけ供給されることはない。
そうやって社会や産業が物流に支えられていることは、
地震でライフラインに支障が出るなど、非常事態にならないと実感されにくいのだ。

スーパーマーケットは、生存のための配給基地となった。
コンビニは、余震の続く闇のなかの灯台に変わった。
フードサービスは、温かい食べ物の炊き出し係に徹した。
メーカーや問屋は、補給部隊の役を担った。

これは、商人舎代表の結城義晴さんが著書『メッセージ』(商業界刊)に、
「阪神大震災」のときの商業者の対応について書いた一節だ。

この後、「商業という仕事を貫いた同志たちを誇りにしよう」と、
風化させてはいけない「思い」について言及する、力強いメッセージになっている。
しかし、商業者向けの言葉だからだろうが、
ここでも数々の必需品を実際に被災地に届ける役割を担った人たち(物流業者)
の存在にまでは、残念ながら触れられていない。

このように、物流活動というのは、重要なのに地味で目立たず、
ふだんは問題なく行われているのが当然視される、そんな宿命をもった仕事なのだ。
まさに、「縁の下の力持ち」を地で行くと言ってよい。

大切なのは、ここにきて「物流」が単純に「モノを運ぶ仕事」ではなくなり、
SCM(サプライチェーン・マネジメント)といった形で、
原材料の供給業者から顧客まで含めた一気通貫で、
効率的に管理していこうという時代になりつつあることだ。

そうなると、小売業・サービス業にとって物流業者は、
一方的にコストダウンを押し付けるような相手ではなく、
「Win-Win」の関係で、同じ目的のために協調しながら
仕事をしていくパートナーになっていくことになる。
相互に理解を深めることは、もう避けられない状況にある。

そこで、そんな「知られざる」パートナーを理解する助けとして、
物流業界の基礎知識について、連載で紹介していこうと思う。
少しでもお役に立てれば幸いである。

(続きます)

<by  二宮 護>
 
 
 
【事務局からのご案内】

本ブログは、『物流業界大研究』の新刊発刊を記念して、
二宮護氏に短期集中連載を依頼したことにより、実現しました。
これから毎週火曜日に、12回にわたってブログをアップします。

<連載の予定>
01 「物流業界」は貴重なパートナー
02 物流は流通機能の一部を担う
03 物流を構成する六つの要素
04 物流とロジスティクス、SCMはどこが違う
05 物流業界の業界規模ってどのくらい?
06 自社物流も含めた「物流」の市場規模
07 物流活動を支える各プレイヤーたち
08 輸送事業の中心を占める陸運業界
09 貿易や産業基盤輸送を担う海運業界
10 高付加価値商品の輸送に長じる空運業界
11 保管や流通加工などを行う倉庫業界
12 荷役を担う港湾運送やターミナル業界

是非、ご愛読ください!



コメント (0)
<次のページ
商人舎サイトマップ お問い合わせ
二宮護プロフィール

1953年秋田市生まれ。
1978年に早稲田大学商学部を卒業しビジネス系出版社に入社。
月刊の経営情報誌の記者として取材執筆活動を行う。その後、書籍の編集に携わり、書籍編集長、ムック編集長を歴任し、2000年に独立。現在はフリーで書籍の企画・制作のかたわら経営誌等で執筆を続けている。執筆を担当した書籍も『JR・私鉄・運輸』(産学社・産業と会社研究シリーズ)など多数。
最新刊は『物流業界大研究』(産学社刊)

最新刊
二宮護の最新書籍
好評発売中!!
カレンダー
2015年4月
月 火 水 木 金 土 日
« 7月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • 倉庫業界 (2)
  • 物流業界 (6)
  • 運輸業界 (7)
最新記事
  • 2010年07月20日(火曜日)
    vol. 12 荷役を担う港湾運送やターミナル業界
  • 2010年07月13日(火曜日)
    vol. 11 保管や流通加工などを行う倉庫業界
  • 2010年07月06日(火曜日)
    vol. 10 高付加価値商品の輸送に長じる空運業界
  • 2010年06月29日(火曜日)
    vol. 09 貿易や産業基盤輸送を担う海運業界
  • 2010年06月22日(火曜日)
    vol. 08-3 大量の貨物を長距離運ぶ鉄道輸送業界
最新コメント
  • 2012年06月28日(木曜日)
    Mac :vol. 06 自社物流も含めた「物流」の市...にコメントしました
  • 2012年04月12日(木曜日)
    Trad :vol. 04 物流とロジスティクス、SCMは...にコメントしました
  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.