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スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.30| 杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.30

2009年11月24日(火曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
11:58 AM

第30回グローバリゼーション-効率的・試行錯誤的アプローチ

■トライ・アンド・エラー

グローバリゼーションに対する心構えの第2課題は、試行錯誤的にアプローチすべき課題を、効率よく処理するシステムを開発定着させることである。

テレビでも、毎日のように世界の家庭料理が紹介されている。また、我が国の新旧の郷土料理も紹介されている。これらの番組ではレシピの中で新旧の食材、調味料などを紹介している。
さらに環境保全、資源保護にからんで、新しい食材生産方法が進んでいることも報道されている。
農薬を使わないで、トマトやレタスを生産するため、特殊なビニールシートを開発し、数階建ての工場を建てて、水耕栽培を始めた企業があるという。
また、クロマグロの資源保護のため、輸出入を禁止するための国際条約の論議が盛んな中で、大手水産会社が魚肉ソーセージ製造の技術を活かし、クロマグロの養殖用ソーセージ状の餌の開発に成功し、本格的に事業を開始した。近い将来、国内需要を上回る生産が可能になるため、輸出先の国を探しているという。

このような状況のもとで、新しい食材、新しい商品が次々に市場に登場している。一口にまとめて言い直せば、「食生活が変化し続けている」ということになる。
スーパーマーケットの使命のモットーはこのような変化の中で、食の向上により大きな貢献をすることである。

ところで、食の向上とは何か。
そのコンセプトはまだ確立していない。食生活がどう営まれているかが理論的に解明されていないからである。
消費者は王様である。我々日本人は、昨今の世界的不況の中でも、ごく一部の気の毒な人達を除き、飽食の世の中で、気まぐれな食生活を楽しんでいる。勝手なご託宣を唱えている。もっと美味しいものを食べたい。もっと安い方がよい。後片づけは面倒だ。などなど。
一昔前のコマーシャルが思い出される。「亭主元気で留守がいい。」こんな主婦は一体どんな夕食を子供と食べていたのだろう。

食生活の実態を具体的に論理的解明することは難しい。家計簿調査は長年続けられているはいるが、スーパーマーケットが必要とする調査データとしては不充分すぎる。
目標も手段も特定化することのできない条件のもとで、手探りで問題解決を図ろうとするアプローチの方法をトライ・アンド・エラー(試行錯誤)という。
スーパーマーケットの経営(スーパーマーケット以外の経営でも同じことなのだが)はもともと、トライ・アンド・エラーを続ける社会機関なのである。

現在、アメリカのメジャーリーグで大活躍を続けている、イチロー選手が「バッティングはどうすればよいという答えはない。だから終わりはないのだ」と述べ、「工夫をし続ける」理由を説明している。工夫を効率的に続けるシステムが、効率的試行錯誤システムである。

■実売して検証

市場に登場してくる新しい食材、新商品を商圏内居住者の食生活向上のために、なるべく早く提供するのがスーパーマーケットの役割である。
しかし、新しく登場してくる商品は取り扱うべきか否かを選別しなければならない。
選別の基準は、食生活の向上であるが、手続的としては最終的に、お客様が受け入れてくれるかどうか、平たく言い直せば、売れるかどうかということである。

ところで、ここまで食材と商品を並べて記述してきたが、私がここで食材と呼んできたのは、生鮮食品の商品化前の素材のことである。例えば、牛肉は食材であり、パックされ、「アメリカ産 サーロイン」というラベルを貼付したものが商品である。同様に、前述の養殖クロマグロは新食材であり、切身やサシミに調理して、パックし、定められたラベルプライスカードを貼り終えて、商品となる。

ここで、ごく最近の私の小さな経験をひとつ。家内は高齢化して買い物に出ても、重いものを持ち帰るのが難儀になり、通販も一部利用している。
2~3日前にその通販でもやしを購入し、野菜の炒め物とラーメンに入れて食べた。
日頃、食べ続けているもやしと一味違って美味しかったので、「これは何だ」と尋ねた。家内は発注のためのカタログを出して、「緑豆もやしって言うんだって。使っている豆が違うのかしら。スーパーでも扱えばいいのに」と言った。私も全く同感であった。ちなみに1パック200グラム入、72円の商品だという。
我々は高齢化し、食も細くなっているので、この程度の価格ゾーンの商品なら、高い安いにはあまりこだわらない。美味しいと思えば、それだけ豊かさを感じる。
しかし、食べざかりの子供を2~3人かかえた若夫婦の世帯では?もやしが好きでない人はどう受け取るか。

これは食生活の豊かさの受け止め方の違いを確かめながら品揃えの改善を進めるのが、試行錯誤的アプローチである。そのアプローチの効率を高めるためのプログラムの概要とスピードアップのための組織文化については、5月11日、5月18日のこのブログで述べているので、重複を避けさせていただく。

続きます

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