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スーパーマーケットのマーケティング Vol.22| 杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットのマーケティング Vol.22

2011年02月01日(火曜日)
カテゴリー:
  • マス・カスタマイゼーション
  
3:33 PM

22.  マス・カスタマイゼーションのシナジー

 カスタマイゼーション(固定客づくり)とマス・マーチャンダイジングを両立させると言うよりは、マス・マーチャンダイジングとシナジー(相乗効果)を狙うのが、マス・カスタマイゼーションなのである。

 マス・カスタマイゼーションのシナジーを狙うに当たって、次の3つの重要領域の課題を少し掘り下げて考えてみたい。

■重要課題その1:マス追求

 まずは、マス追求の課題である。

 マス追求は、半世紀の間に飛躍的に進展したとはいえ、アメリカと比べ、期間は半分以下と短く、まだし残している課題が少なくない。
農産物もアメリカでは世界一を誇る大農法の最先端技術を駆使して生産している。こうして生産される原材料の加工段階では、スーパーマーケットが主導するバーティカル・インテグレーションによるプライベートブランドを開発し、ロープライス戦略の効果を上げてきた。
酪農品、ソフトドリンクなどのコストダウンのためには、牧場、農場を自営していることもある。さらに、グローバリゼーションが進んできた今日、途上国に資本を投入して、ロープライス商品を開発している。

 これに引き換え、日本の農業は農民保護政策のため、改革が大変遅れている。
農産物の輸入関税の撤廃はアメリカをはじめとする多くの友好諸国からも求められている。
グローバルな圧力が強まっている今日、また深刻な財源不足を乗り越えるためにも、農政は変わらざるを得なくなっている。

 農業の改革は食生活に大きな変革をもたらす。マス・マーチャンダイジングもまた、新たな段階を迎えることは、ほど遠くはあるまい。

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 この拙稿は、脱近代、ポスト・マスセールの必然性、マス・カスタマイゼーションの有効性を述べるためのものである。ポストを論ずるにしては、マスをたびたび取り上げ過ぎているので、書いている本人も、くどくどしさにうんざりする。しかし、同じ思いを繰り返すのも、マス追求が生み出した、コモディティ商品という品揃えの概念はマスカスタマイゼーションの基調となっている。この基調、つまりマスと固定客づくりとの関係を、角度を変えて説明したかったからである。くどくどしくなったのは、畢竟、私の文章力が稚拙なためであり、ご寛容をお願いする次第である。

 さて拙稿の中で、私がマス・マーチャンダイジングのまとめとして強調したいことは、マス・カスタマイゼーションの成功をはかるためには、コモディティ商品のマーチャンダイジングのすべてのサービスレベル(品揃え、商品づくり、陳列、プライシング、etc…)を競争企業の平均水準以上に保つための改善が不可欠ということである。

■重要課題その2:カスタマイゼーション

 二番目は、カスタマイゼーション問題である。チェーンストアが出現する前は、商店はお得意様を増やすために、さまざまな工夫を凝らした。御用聞きを回らせたり、おまけをつけたりして、お店に好意を持ち、利用頻度を高める努力を続けた。江戸時代の武士、明治に入っては公務員などからは、商人がお店に対し、好意をもってもらうための努力が卑屈に思えたのであろう。商人、とりわけ、小売商人の社会的地位は士農工商の順位にみられるように低いものであった。

 このような偏見は、仕事(事業)の使命、すなわち、社会的機能の重要性を的確に認識できなかった時代の中で出来上がった。

 人物の評価は、その人の内的欲求の充足度、すなわち、自己実現度と社会に対する貢献度を勘案して行うべきであるが、それらの分析のできない人、ないしは面倒くさい時には、かっこいいの一言で済ませる。

 極言になるが、小売商に対する偏見は、かっこよさで誤魔化そうとする人間の習性の中で生まれたものである。

 さて、ここで重視すべきことは、小売商、ここではスーパーマーケット企業が自らの事業の使命を的確に、操作的(具体的に何をすればよいかを分かりやすくするため)に確認し直すことである。

 スーパーマーケットの使命は、食生活の向上に貢献することである。

 その使命を今日的には、食生活のどの側面に焦点を合わせ、どんな手法を使えば、貢献度を最大にすることができるかを操作的に確認し直す要がある。

続きます

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