商人舎

杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.4

2009年03月02日(月曜日)
カテゴリー:
  • 週間販促計画に見る効率的な組織の運用
  
11:12 AM

第4回 週間販促計画にみる効率的な組織運用Ⅱ

ラインアップと売価が書き込まれたチラシ(案)は、週間販促会議に提示される。
この会議には、本部側から販促部、商品部のマネージャー、店舗側からは、店舗運営部長、スーパーバイザー代表及び、店長代表などが出席する。
この会議では、出席者は再び、自分が責任を負う予算の見地から発言し、調整の上、販促計画は決定される。
調整に当たっては、商品部から、店舗側に対し、必要に応じて、エンド陳列、試食販売、調理法のパンフレット配布などの販売技法についての意見が述べられる。
販促部からは、お客の最近のライフスタイル性向などについて述べられるであろう。
優れた組織計画のもとでは、さらに整正が行われる。
ラインアップで示される配促アイテムの数量は、店舗の部門チーフが商品部に連絡する。商品部ではそれらを集計し、バイヤーが納入業者に発注する。
チーフはアイテムの数量を、店内販促会議で、店長と協議の上、決める。
数量決定に際しては、販売方法の工夫が議論される。
また、バイヤーは、発注量が足りない場合、店舗に増量を要求し、ここでも、必要な調整が行われる。

以上のように、販促計画は、2月余りの時間をかけ、いくつものプロセスで練りあげられて、実施されるので成果が上る。
これも組織力の成果である。

■レビューによる改善課題の発見とそのみ重ねの重要さ

しかし、組織計画には、さらなる成果が期待できることを指摘しておきたい。
その期待とは、レビューがしやすく、効果的に行えるということである。

いかによく練られた計画でも、もともと極めて不確実の高い小売業の営業成果は、常に目標達成が続くものではない。全社的にも、部内別にも、特に店別部内別には目標対実績の間には差異が発生する。
差異にはプラス差異、マイナス差異があり差引0(ゼロ)に近くなることもある。
こんなケースで、マアマアだったと安心するのが最悪である。改善が全く進まないからである。
レビューに当たっては差異を確認し、差異の発生した原因を究明し、必要な改善課題を発見することが最終目標となる。

プロセスモデルが精緻であると、問題の所在を客観的に討議しやすくなる。
逆の場合には、問題の所在がわかりにくいので、いきなり、いわゆる、犯人探しを始め、「誰が悪い」となり、多くの場合、「他部門、ないしは、他人が悪い」と決めつけたがる。
犯人探しはお互いに、攻撃、言い訳、すり替えの繰り返しの不毛の議論に終止し、信頼関係を破壊する。

具体的な改善課題の解決を組み重ねるうちに、個人の能力開発(OJT)が進み、組織的には弾力性、協調性が高まる。言い換えれば、信頼関係が高まるので、より風通しのよい、コミュニケーションが行われるようになる。
組織能力の判断基準に、課題に対する意思統一の程度、協業度、目標達成意欲の3つをあげる説があるが、その基盤には、課題発見のしやすい精緻なプロセスモデルが繰り返しあることが前提となる。

■■岡田、オシム両監督のチームづくり

余談にかわるが、昨年から、サッカーや野球のテレビ放送で、試合後の監督やプレーヤーとのインタビューで、「新しい課題が見つかったか」と聞く場面が増えている。
また、先日もサッカーの日本代表の岡田監督が、ワールドカップ地域予選オーストラリア戦を前にして、インタビューに答えて「オーストラリアは極めて手ごわい。今、我々は、この手ごわいチームに勝つべく、いくつかのコンセプトを生かすべく、選手ともども練習を積んでいる」と、述べていた。
さらに、全日本の前オシム監督が「私の仕事は、プレーヤーにプレーの仕方を教えるのではなく、何をするべきかを考えさせ、チーム全体として、それらをまとめさせることだ」と、度々言っていたことを思い出した。
これらの考え方が、スポーツの世界でもチーム力を強化しているのであろう。

SM産業でも、成長期および成熟期初期までは、ワンマン型リーダーシップが効果的であったことは否めない。
しかし現在は、企業規模も大きくなり、課題が山積し、しかも、市場が変化し続ける時代である。いかに優れたワンマンといえども細部までは目がとどかない。
組織力で問題解決を積み重ねるという調整能力を、組織において育てざるを得なくなっているのである。

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スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.3

2009年02月24日(火曜日)
カテゴリー:
  • 週間販促計画に見る効率的な組織の運用
  
10:16 AM

第3回 週間販促計画にみる効率的な組織運用Ⅰ

製造業では、プロセスモデルを設計して分業化を行ってきたが、小売業では、プロセスモデル抜きで、分業を行ったので、処理方法および、結果の標準化が進まず、分業の効果は上がらなかった。
また、マネージャーの役割も抽象的段階にとどまり、効果的な役割り行動には結びつかなかった。

世界に冠たる、トヨタの生産ライン、看板方式は、組織計画の産物である。
自社内はもとより、内部納入の関連企業まで、まず精緻なプロモスモデルを設計し、担当を割り当てたのである。

サミットは、昭和40年代の後半、看板方式のジャストインタイムの概念による逆算方式に従って、プロセスモデルをつくることから改善を始め、2~3年の間に組織体質を一変させた。
「決め事の遵守」と「プロセスの分業」が当時の合言葉であった。

組織計画を効率的に運用すると、組織能力が向上することは次のように説明されよう。

■週間販促を事例としたプロセスモデル

週間販促計画(チラシ販売を中心として)具体例として取りあげてみよう。

週間計画は少なくとも2カ月前には、その概要が販促部から示されているのが一般である。
概要とは、4週間(1カ月分)の各計画の主テーマ、及びサブテーマを、チラシ紙面のスペースを分配して示される。テーマは、社会行事、季節性向、消費者のライフスタイル性向などから選び出される。
概要は、販促部、商品部、店舗側のマネージャー達が出席する会議で協議された上で決定される。

ここで大切なことは、この計画で売上予算達成の見通しである。

販促と定番の売上構成比は過去実績により部門別、カテゴリ別に基準値が定まっている。
従って、販促は予算コントロール上、操作可能な最有力手段となっている。

各マネージャーは、自部門の予算達成の見地にたって発言をする。概要案は、予算の見地から検討された上決定される。
決定された概要計画は商品部に示され、各担当バイヤーは、仕入先(生産者)との交渉仕入れに、アイテム及び売価の商品部案が決まる。
商品部案のラインアップと売価は商品部内に充全な意見交換が大切なことは、当然である。

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スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.2

2009年02月17日(火曜日)
カテゴリー:
  • 組織計画は組織力強化不可欠の基礎条件
  
10:59 AM

第2回 組織計画は組織力強化の基礎づくり

前項では、競争力強化のための1つの重要課題、商品開発をスピードアップするためには、コスト(エネルギーと時間)をかけても、店舗の作業とシステムと、レビューのためのデータ処理システムを整備しなおす必要がある場合が少なくない、と述べた。

チェーンストアの複数のサブシステムは密接に絡み合っているので、それぞれのサブシステムは、他のサブシステムと連動し合うことが肝要である。
個人間、サブシステム間、部門間で協調し合わねばならない。
そして協調が重要なことは、企業で働く人は誰でも知っているにも関わらず、現実には、ギクシャクしている組織は少なくない。
その原因は多岐にわたり、長い間に複雑に絡みあっているので、簡単には解説することもできない。
そこで、今回は、組織力強化を妨げる1つの原因に過ぎないが、組織計画についてのみ考えてみることにする。
組織計画は、組織力強化の1要素に過ぎないが、建築に例えれば、土台づくりに似て、組織力の基礎づくりである。

■プロセスモデルと組織図の関係

組織計画とは、一口で言えば、仕事の流れ(プロセス)の区分をはっきりさせ、プロセスの1つ1つを、組織図に表わしたものといえる。
誰、ないしは、誰々に分担させるかと明らかにすることである。

製造業では、大量生産のため、戦前から工程別に処理の仕方(作業方法)と、その成果(製品・仕掛品)を標準化し、それぞれの担当者を決めていた。
工程の中には検品も含まれ独立したプロセスとして設計されていた。
家を建てる場合、戦前は柱や板を建築現場に運び込み、大工が数人でノコギリを引いたり、カンナがけをして、工程の区分は不明確かつ不文律の受持ちはあっても、役割も不明確であった。

戦後に建築法は一変した。
木材は、工場ないしは工房でカットされ、現場では組立て作業を行うだけになった。つまり分業にされたのである。
小売業も、昭和30年代にチェーンストアが現れるまで、プロセス別に分業はなかった。商品を仕入れて販売するまでの処理過程が短く、取扱量も少なかったからである。大工さん達のように不分律的に受持ちが出来上がっていても、マネジメントと呼べるものではなかった。

しかし、チェーン化が少し進み、ワンストップ・ショッピングのために、取扱商品の数が数千アイテムに及び、しかも、単品を大量販売するようになると、いやでも分業化せざるをえなくなった。
しかし、昭和30年代の後半から40年代にかけて行われた分業は極めて大雑把なものであった。
商品を鮮魚・精肉・青果・グロサリーなど、商品グループにわけて、担当部門を決める分け方と、プロセスとしては、仕入と販売に2分割して、商品部と店舗に担当させるにとどまった。
例えば、店舗における商品の流れには、検収、搬入、保管、値づけ、品出し、陳列、補充、売切りなどのプロセスがある。
生鮮食品では、この他に冷塩水処理、商品づくり、計量、値づけなどのプロセスが加わる。

以上のようなプロセスの流れを図形化したものを「プロセスモデル」と呼ぶ。

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