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スペシャリティーの急上昇| アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

スペシャリティーの急上昇

2009年12月10日(木曜日)
カテゴリー:
  • JACアメリカ流通リポート
  
11:45 AM

A&Pのプレミア商品ラインナップと新世代のPB商品にハイライトをあてる

もしスーパーマーケット業界が、新世代ストアーブランドのスローガンを打ち出す必要があるとすれば、『これはあなたのお父さん世代のプライベートブランド商品ではありません』という台詞が適切であろう。
なぜなら、企業ブランドはもう何年にも渡って消費者達の間に定着してきたからである。

近年、多くの小売業者は単純で地味なパッケージングと、さほど珍しくもない一般的な原料の使用から、カラフルなグラフィックデザインの包装とハイクオリティーな素材使用に置き換えている。その結果、信頼と高い売り上げを産み出している。企業は更に自信をもって、ライバル社のみならず、自社のナショナルブランドに比べても、味や見た目が上回るプレミアムラインの開発を促進し続けている。

非常にスタイル化され、洗練されたプレミアムラインを、“ストアブランド”や“プライベートラベル”と顧客に紹介することさえ行わない企業も、実のところ幾つか存在している。

「これはもうフェイスリフトを行う以上であり、正直を言えば新しいブランドを創り上げているのと同じなのだ。」と、イリノイ州バーミングトンでウイラード・ビショップ(コンサルティング会社)と小売業コンサルタントを行っているジム・ハーテッド氏は語る。

ニュージャージー州モントデール拠点のA&Pは、ストアブランドであるその最新プレミアムラインの開発を明らかに転換しつつある企業の1つである。

過去3年以上かけて開発したVia Roma, Hartford Reserveやナチュラル・オーガニックブランドのGreen Wayを含むコレクションは、外側も中身も総合して洗練されている。パッケージは他とは異なる目新しさであり、スタイリッシュでわかりやすく、時にはユーモラスであったりもする。その一方でフードそのものでも、例えば5種類のリンゴを使ったHartford Reserveの美味しいアップルパイのように、プレミアムな素材を使用している。
もし買い物客がそれ以上に何も知らなければ、ナショナルブランドやニッチブランドを買うであろう。
 
「歴史的にみれば、これは顧客中心ではなかった多くのストアーブランド計画から大々的に逸脱し、アイテムでなくブランドを開発しているのだ。」とA&Pの自社ブランドを指しながら、副社長のダグ・パルマー氏は述べた。

経済の不振はプレミアム・プライベートブランドへと人々を駆り立てるきっかけとなった。

ニューヨークに拠点のある全米スペシャリティー・フード・トレード協会が行った最近の消費者調査によれば、前年度と比べてスペシャリティー食品を求める顧客の37%以上がストアブランドのスペシャリテイーフードを購入したそうである。

多くの要因から認められるように、今こそ顧客とのロイヤリティーを築き、彼らの関心を利益率の高いストアブランドへと転換させるチャンスである。しかし、もし実行に移すのであれば、敏速な動きが必要である。したがって、買い物客の感情に働きかけるような品質の高いアイテムにフォーカスすることが早急に必要であると、シカゴのミンテル社のアナリスト、マルシア・モゲロンスキー女史は語っている。すべてが同じである場合、人々は低価格の商品を選択するからである。

 「人々は、“この商品で満足しているのに、なぜ余分にお金を使う必要があるのか?”と考え始めるからです。」と女史は述べている。

それが正しい商品であるのかを確実にするために、Ukrop’sやShopRite、そしてSobeysなどは、彼らのスペシャルラインの開発の為に、綿密に調査した消費者リサーチを活用している。

最近になってSobeysは、消費者達がもっとお買い得価格でグルメ商品を求めていることをリサーチの結果によって証明した上で、彼らのプレミアムラインであるSensationラインを150から1000アイテムに拡大する計画について発表した。

「Sensationはお買い得感のある価格、顧客の欲望を満たすクオリティーや、革新的な要素が統一されたプレミアムな商品です。」とCEOのビル・マックエン氏は述べている。

A&Pはリサーチによって、買い物客は、棚に並んでいる他の商品とは異なったユニークで解り易く、すっきりとしたタイプの商品を探していることを発見した。

「消費者はほとんどの小売業者が考えている以上に、新しい商品への挑戦に対してオープンなのです。大々的なブランドを立ち上げるのにトラディショナルなメディアや多大なマーケティング費用はもうかからないのです。」と、Hartford Reserve, Via RomaやGreen Wayのデザインを助力したUnited Design社のマネージングパートナーであるペリー・シーラート氏は述べている。

A&PのVia Romaブランドは、パスタソースのコレクションとその他のイタリアンフードを網羅しています。イタリアのトスカニー地方へ撮影隊を派遣し、ルシジャーノと呼ばれる丘の上の小さな村で地元の写真を撮らせた。この結果、年老いた地元の住民が笑い、微笑みながら互いに語り合う、ありのままの自然な白黒写真が完成し、A&Pはこれらの写真を商品の宣伝広告素材として使用することを決めた。

「我々の市場地域には多くの2世、3世のイタリア系移民が住んでおり、Via Romaは我々の顧客にすぐに受け入れられました。」とパルマー氏は語っている。彼は多くの回答者が彼らの家族のメンバーを連想して親しみを覚えた事を、消費者リサーチによって注目したそうである。

一年前に売り出されたHartford Reserveのラインでは、A&Pが1987年に北米で売り出した最初のプレミアム・プライベートラインの1つであるMaster’s Choiceと入れ替える課題を行った。Hartford Reserveはホームメイドのアップルパイに加えて、珈琲、バルサミコ酢、クッキー、メープルシロップ、そして生鮮食品であるスペシャリティーのチーズやハムなども同様に商品化した。商品のスタイルは高級感があり、黒を基調としたパッケージには、商品の宣伝文句のみならず素材の原産地についての短い物語が書かれている。

「Hartford Reserveは、プレミアム・プライベートラベル商品で通常見たことがなかった沢山のカテゴリーに存在します。洗練さと、手に入れやすさの相互的アイデアはバランスがとられており、全ての商品の創造に物語が存在しているのです。」とシーラート氏は述べた。

A&Pの最大の挑戦は、最新のプレミアム・ストアーブランドを提供するGreen Wayである。

今年度の初期にベールをはずしたGreen Wayは、ナショナルブランドの競合でひしめき合うナチュラル&オーガニックに、最近手を出したことを表している。このゲームに参加する前、社はその同業群から異彩を放った商品の提供について、再度の決定を要した。従ってA&Pは、ナチュラル&オーガニック商品にべったりとフォーカスするよりも、社のラインではヘルス&ウエルネスを包括した商品ブランドのクリエートと、200商品以上のパスタや缶詰、瓶詰め、サラダドレッシングのラインナップの相互を兼ねたラインでなければいけないという決定を下した。

シーラート氏曰く、ブランドのデザインを行う際には、ナチュラル&オーガニックを連想させる典型的農業を暗示する農家、農地、放牧のデザインを避ける事が重要だそうである。その代わりにA&Pのチームは、多くの買い物客が感じるデザインの“雑然さと大袈裟な刺激”から来るフィーリングを減少させ、商品自体の純粋さを強調する、すっきりとしたルックスにすると決定した。と語った。

「Green Wayは、その詳述やデザインも決して複雑でなく、色を抜いた箇所にGreen Wayのストーリーを伝えることが重要であったのだ。」とパルマー氏は語っている。

A&Pが辿ったやり方と、似通った道を選んだ他のスーパーマーケットがある。
それはプレミアム・ストアブランドのムーブメントを率先したTrader Joe’s やWhole Foodsであり、その多くがニッチ商品で、高品質のアイテムを提供していると、モゲロンスキー女史は言及している。2年前にはUkrop’sがスペシャリティーフードのラインであるJoe’s Marketを発表し、最終的にこのラインで独立した店舗が出来た。

Wakefern’s ShopRiteのストアーも、インターナショナル食品にフォーカスした、グルメ商品のラインナップを提供している。イタリアから輸入したヘーゼルナッツのスプレッド、ギリシャ原産のカラマタオリーブ、スペインのサンセバスチャン地帯から輸入のスパークリングサイダーなどがある。ShopRiteのキャッチフレーズはこうである。“世界中を旅して、ベスト中のベストを貴方のためにお持ちしました”

そして虹鱒のフローズンミールから濃縮洗剤に至るまで2500商品を網羅する、25年前にカナダでスタートした、一番売れているLoblaw社のPresident’s Choiceの存在もある。

「彼らはその商品を社のイメージ向上と同様に、売り上げを産み出すための最良の方法であると見ています。全てのスーパーマーケットは良質の商品を買える場所であると顧客から見てもらいたいと切望しているのです。」とNASFT社の情報&教育のリーダー、ロン・ターナー氏は語っている。

しかしこの場合の“良質”とは、マーケティングの角度のみからでは不十分であるとハーテッド氏は述べている。全ての商品背景に動機付けの構想も必要なのだ。

小売業者らは“もし彼らの名前が商品の外側にあるのであれば、その内側も最良の品質であることを絶対確実に行う事”が欠かせないのであるとハーテッド氏は言及している。

2009年11月
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