商人舎

ヒューストンのスーパーマーケット事情| アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

ヒューストンのスーパーマーケット事情

2010年11月24日(水曜日)
カテゴリー:
  • アメリカ小売業-最新トレンド
  
3:13 PM

今年最後の流通視察出張である。
ヒューストン、ワシントンDC、ニューヨーク。
各都市2泊の旅に出た。
ダラスには2カ月に一度は行くが、ヒューストンは5年ぶりである。

ヒューストン市は全米第4位の町、
テキサスでは人口は一番多い市である。
2007年の時点で220万人もいる。
都市圏としてはダラスより少ないが、562万人の大都市圏を持つ。
だが不思議な事に、この町への流通視察は少ない。

フォーチュン誌のFORTUNE500の中で、
本社所在地はニューヨークに次ぎ、多い。

気候は亜熱帯、年間降雨量は1200~1300ミリ、
テキサスは農業州でもある。
農業生産は1位が畜産・肉業、2位が花卉・果樹園、
3位はブロイラー、4位は綿花、5位は酪農である。

101124_flower.jpg

スーパー業界では、ウォルマートが1位でシェアは、
27.6%(2010年)、昨年と比較して0.86%のマイナス。

クローガーは26.3%、1年間で1.14%のシェアを伸ばした。
これはプライベート・ブランドが27%まで伸びたことと、
FRPのデータべースの活用に成功したことが、大きな原因とされている。
イギリスのテスコ社の購買べース分析を行ったことで
有名になったDUNNHUMBY社。
クローガー社が2003年に共同で作った会社、
DUNNHUMBY・USAの功績がここにきて、現れた結果である。

次はHEBでシェアは15.6%、0.15%のシェアのアップがあった。
3社で70%のシェア、残されたシェアはわずか30%しかない。

101124_heb-plus.jpg

今回の視察目的は、スーパーマーケット・ニュース社の
2010年6月07日のホームタウン・ゴメーの記事、
Rice Epicurean Marketsの記事確認もあった。

101124_rice-facade.jpg

5店舗の独立店舗が、HEBのような大手ローカル・チェーンや、
全米1位のウォルマート、自然食スーパーのホールフーズのような
有力企業に、如何に有効に戦っているかを、見たかったのである。

101124_rice-deli.jpg

「ライス・エピキュリアン・マーケットは、
ヒューストンで最も古いスーパーマーケット・チェーンである、
ライス・フード・マーケット(1937年創業、66坪)の一部門として、
1988年に最初の店をオープンした。
創業者はウイリアム・レビー氏、現在の社長は創業者の孫である。

1996年にライス・エピキュリアン・マーケットは、
ビジネス・スーパーマーケット誌で絶賛され、優秀栄誉を授与された会社である。

101124_rice-flower.jpg

現在は5店舗あり、ホームタウン・グルメ、
スペシャリティー、惣菜の洗練された店である。
“Epicurean”とは食道楽を意味している。
名前の通り、料理学校で訓練されたプロの調理師が作る料理は、
ヒューストンでは有名である。
時には古くて、ローカル色豊かな料理が、
新しくて、グルメな料理と一緒に並ぶのである。

101124_rice-deli2.jpg

バラエティー、新鮮さこそ命、
これが大型、ナショナル・チェーンに対抗する
一つの有力な方法であると考えている。

また、デリ・惣菜には、コミットメントと一貫性が大事である。
メニューは25~35の主食レシピ、45~50のサイド・ディッシュ。
50~70種のサラダが常にローテーションを繰りかえす。
顧客第一主義、それが会社の哲学であり、成功の鍵はプリペアド・フードと考え、
とにかく客の要望には敏感、積極的に答えるようにしている。

101124_rice-salad.jpg

デリ・惣菜の売上は9~10%であり、
各店舗ごとに一人のシェフがメニュー、労働コストなど
責任を持つ体制である。
この他、すぐれた花売り場、巨大な青果売り場との
コンビネーションで新鮮さとエキサイトメントを
醸し出すのに成功している。」

上記が記事の内容であった。
正直5年前に来た時は、苦戦をしていた。

101124_rice-catering.jpg

かつて各大都市には高額所得者に圧倒的に支持される
高級・グルメ店舗、高収益・大繁盛店があった。
しかし、ホールフーズが出来てからは、ことごとく苦戦している。
ニューヨークのバルディッチ、サンフランシスコ周辺のドレーガー、アンドロニコス、
シアトルのメトロポリタン・マーケット。

(ニューヨークのゼイバーズ、ディーン&デルーカは
土地の無い都心にあるが、今でも繁盛している例外的存在である。)

彼らが提供してきた、ヨーロッパのグルメ・高級食材、比類のないサービスなどは、
ホールフーズの提供する、カスタマーサービスを凌駕する
エンターテイメント性、味、健康や環境配慮、有機自然食、
持続型生産社会、圧倒的な量感、色彩、バラエティのある商品など、
これらの新しい価値観の前では、勝負にならないのである。

101124_rice-ad.jpg

ライス・エピキュリアン・マーケットの店には、今回も期待を裏切られた。
木曜日であったが、一番忙しい夕方6時に、客は閑散としていた。
涙が出る思いである。

101124_rice-fruits.jpg

私にはこれらのローカル高級店舗が、
ホールフーズに対抗する有力な手段は思い浮かばない。
顧客、社会、対応能力のスピードも、
ニッチへの挑戦もホールフーズには敵わない。

空港で移民局に一人留められ、1時間遅れで出発、
スケジュール変更を余儀なくされた。

最初の店舗はホールフーズ。
美人のマーケティング・スペシャリストが我々を待ちうけていた。

101124_wf-mktg-specialist.jpg

写真をご覧ください。

101124_wf-mktg-specialist2.jpg

ホールフーズにはこのような秘密兵器もあったのだ。
視察はそっちのけ、彼女の笑顔に釘付け、
写真を取ることに忙しかった。
浅野さんだけが楽しんでいる???

101124_wf-mktg-specialist3.jpg

翌日は、フユウ柿の果樹園の農業視察。

101124_orchard.jpg

自分では収穫はせず、客が来て勝手に収穫し、
1ポンド、$1.39支払う、平均購入金額$400前後。
客はほとんどアジア人だった。
70歳のオーナーは54歳で退職後、この農園をスタート。

101124_orchard-owner.jpg

16年前に買った100エーカーあまりの土地の、
当時の価格は15万ドル。今では350万ドル、20倍に値上がった。
「はやく農場を売って海外旅行をしたい」悲鳴のように聞こえた。
金では時間は買えない。気持ちがわかる。

1100本のフユウ柿と、1200本のブラックベリー、薩摩ミカン、
アジア梨、これから植えるブルーベリー800本なども栽培をしている。

101124_orchard-kaki.jpg

シーズン中の週末は、1日に客が数百人来ると言っていた。
この日はスクールバスで先生、父兄、たくさんの子供たちで賑わっていた。

101124_orchard-school-bus.jpg

101124_orchard-kids.jpg

農場にはシカや、猪が出るそうだ。
300キロの猪を仕留めたハンターもいる。

その後NASAを見学し、あらためてアメリカに偉大さに触れる。

101124_nasa-asano.jpg

101124_nasa-noguchi.jpg

101124_nasa-yamazaki.jpg

そして、定番のセントラル・マーケット、
HEB PLUSも相変わらず繁盛していた。

101124_central-market.jpg

夜はメキシコ料理とカラオケ、ダンス。

101124_mexican.jpg

メキシコ系の女性が陽気に「さあ、踊ろう」と、
我々男の集団に誘いかけて来た。 最高の夜となった。

101124_mexican-dance2.jpg

ビール、テキーラ、マルガリータ、大いに騒ぎ、飲んで踊った。

101124_mexican-dance.jpg

エンターテイメントの学び、実践こそ、今回の最大のテーマである。
これから、ワシントンDC、ニューヨーク、期待で胸が膨らむ。

「浅野さん最高~」
誰が酔っぱらって叫んだ、夜道が怖い。
金曜日の夜の徒歩の帰りは事故が危ない。
運転手もこちらも酔っ払いだ。
空は満月、テキサスの月を見て何を思う。

浅野秀二
11月22日

« 最新のホールフーズ業績 | ワシントンDCとニューヨーク »

商人舎サイトマップ お問い合わせ
今月の標語
  • 目標主義者になろう。
カレンダー
2010年11月
月 火 水 木 金 土 日
« 10月   12月 »
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • JACアメリカ流通リポート (5)
  • お知らせ (1)
  • はつえの発見! in USA (2)
  • アメリカからのメッセージ (51)
  • アメリカ小売業-最新トレンド (13)
  • 写真でみる[最新注目店] (4)
  • 旅先からのつれづれ日記 (50)
  • 日本と日本人への想い (20)
  • 視察&インタビュー日記 (20)
最新記事
  • 2015年08月20日(木曜日)
    残暑お見舞い申し上げます
  • 2015年07月01日(水曜日)
    立命館大学同窓会流通業OB、京都に集まる
  • 2015年05月01日(金曜日)
    スペイン旅行(2)
  • 2015年04月24日(金曜日)
    スペイン旅行・マドリード
  • 2015年04月21日(火曜日)
    立命館大学流通研究会(OB会)の皆さまへ
最新コメント
  • 2015年01月01日(木曜日)
    初絵スミス :カボサンルーカスからクリスマスのご挨拶にコメントしました
  • 2014年12月23日(火曜日)
    浅野秀二 :カボサンルーカスからクリスマスのご挨拶にコメントしました
  • 2014年12月22日(月曜日)
    m.asai :カボサンルーカスからクリスマスのご挨拶にコメントしました
  • 2014年12月22日(月曜日)
    浅野秀二 :カボサンルーカスからクリスマスのご挨拶にコメントしました
  • 2014年12月21日(日曜日)
    片岡 :カボサンルーカスからクリスマスのご挨拶にコメントしました
JACenterprises 浅野秀二の米国セミナー講義録 ジョージ君、アメリカに行く

USA視察研修会Specialコース

定番視察研修会報告

参加者の声は天の声!

  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.