テキサス・サンアントニオへ下見視察| アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

JACのコーディネーター、
五十嵐ゆう子さんから提案があった。
HEBの本拠地であるテキサス州サンアントニオ市に
下見に行きたいと言うのである。

考えてみれば、確かに最近は行っていない。
10年以上前は年に1～2回は訪問をしていた街だ。
当時の見どころはウォルマートとHEBのガチンコ勝負であった。

日本ではあまり馴染みがないが、
サンアントニオ市はアメリカでは
年間2800万人もの観光客が来る大人気の都市である。
アラモ砦、リバーウォークなどが有名だ。

実はここは土地が安く、人口は急速に増えている。
トヨタの大工場と下請け工場群がある。
市街地だけでいえば、
ダラスの人口123万人より多い、
130万人が住んでいる。

確かにダラスの周辺人口は664万人（アメリカで4番目）で
サンアントニオ市周辺の223万人よりは多い。

その中でスーパーのHEBは断トツのシェアを誇っている。

サンアントニオ市でのシェアは54.6%。
1980年代に進出して来たクローガーも1993年に撤退したほどだ。
もちろんアルバートソンもこの町からは消えた。

ウォルマートは果敢に攻めているが、
逆にマーケットシェアを2011 年の22.5%から
2012年には20.1%に落としている。
（いずれも2012年の数字）

2013年から2014年にかけ、
ウォルマートはサンアントニオ市で
新規店舗を一気に4店舗も開店させた。
1200人の新規雇用を生み出すと地元では話題になった。

さあ、それをいかにしてHEBは迎え撃っているのか？
興味津々である。

さて、五十嵐さんと
オペレーション担当の川村むつみさんを伴って、
8月の週末を利用した3泊の下見旅行に行った。

流通視察が一番の目的ではあるが、
彼女たちにはリバーウォークの楽しさも体験してほしかった。

ボートに乗ったり、散歩したり、食事をしたり、
彼女たちはすっかり興奮した。

「なんて素敵な街でしょう。来てよかった」
なんか俺まで嬉しくなった。

とりあえず、
Central Market, Costco, Whole Foods, Super Target,
Walmart, Dollar Shopを視察した。
最近上場して株価が公示価格の倍以上つけた
自然食で話題のSproutsの改装店なども見た。

サンアントニオ市で
2012年10月に開店したばかりの
Trader Joe’sにも行った。
今まで見たTrader Joe’sの店では最高傑作だと思う。
壁に書かれた手書きの絵が、町の歴史や風景を描いていて、
新店はやはり初々しい。

しかしなんともいっても衝撃は、
HEBの元副社長のフレミング女史から聞いていた
2012年後半に開店したHEB Plusの新店だった。

HEB plus!の店舗ファサード。

入口は、
Fresh Foods青果部門と、

Pharmacy薬局部門の2カ所ある。

ガソリンスタンドが併設されている。

HEBの店舗では最大のサイズの店で、
185,000平方フィート (約5139坪)もある。

天井の一番高い所は12メートル前後あると思えた。
おそらく世界一天井の高いスーパーに違いない。

梁は一部鉄が使われているが、基本的には木だ。

「女性は色白百難隠す」といわれるが、
「店舗の天井の高さも百難隠す」というのが私の持論だ。
入った途端、
WOW！すげえ！

食品スーパーから出発したHEBの食の魅力に、
非食品から出発したウォルマートは、
いまだにかなわない。

ウォルマートは、売れないアパレルを
食品売り場と同じ面積を割くなど
なんでも扱うことによって魅力のない店を作っている。

ラフにいえば、同じ20％の売場面積でも
アパレルは全体の売上げの10%前後だが、
食品は60%前後、売り上げる。

HEB plus!は、あくまで食品が中心。
子供と婦人服は多少売っていたが、
アパレルはほとんどなかった。
薬局・ドラッグ部門や
個性ある自然食のペット用品の売場には、
客がたくさんいた。
家電はテレビなども売っていたが、
ゲーム機器やスマートフォンなどが中心となっている。
レジはなんと28台もあった。
土曜日の朝9時半でレジの80%に客がいた。

ここから5分の場所にある
ウォルマート・スーパーセンターの新店に行くが、
レジは16台しかない。
しかもキャッシャーには人がいないのである。

明らかにウォルマートは
HEBには太刀打ちできないのである。

なぜか？
それは結城先生のツアーに来ていただくしかない。

衝撃はここで終わらなかった。
実は偶然オースティンのセントラル・マーケットを訪れた時に、
商人舎のツアーで何度もインタビューをしたフーディー（食の専門家）、
バーバラ女史に会った。

「どこに行っていたのよ？
長い間、顔を見せなかったじゃない？
いつもJACや君のことを気にしていたのよ。
いつも連絡してくるサチコも元気？
日本は不景気らしいが、君のビジネスは大丈夫？
良い情報を教えてあげる。
先週7月26日(金)にHEB最初の
環境配慮型店舗のグリーン・ストア(2083坪)が
開店したばかりよ。
今までの店より電気光熱が79%、
水は63%削減されている。
行ってみるといいわ」

そこで急ぎ行ってみた。
外観から見るととても店舗には見えない。

店に入ると、ここは完全に別世界。

天国で買い物をするような感覚に陥った。

芸術的に積み上げられたブロッコリー。

オーガニック売場の什器は木製。

床もピカピカである。

ブログでは詳しくは書けないので、
ぜひ商人舎で臨時ツアーでも今年中に企画していただきたい。

今夜は興奮してなかなか眠れない。
良い夢が見られそうだ。

＜By　浅野秀二＞