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イタリア紀行【最終回】 敵地、ローマへ| アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

イタリア紀行【最終回】 敵地、ローマへ

2010年08月20日(金曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
4:25 PM

ナポリに行く前にフィレンツェから半日がかりで、
ピサの斜塔に行くことにした。

小学校時代、初めてピサの斜塔の写真を見て、
「何十年後かには確実に倒れる」
先生のその説明に、その夜は心配で眠れなかった記憶がある。
何とかしなければいけないと、子供心にも悩んだ。

さて、この日は暑くなった。
もう38℃。
駐車場からピサの斜塔まで15分。
物も言わず、脇見も振らず、汗も拭かず、歩く。

やがてピサ・ロマネスク様式大傑作、
ドゥオーモ大聖堂が見えて来た。
斜塔のみではなかったのだ。

100820_asano-pisa.jpg

斜塔は1185年建設中から傾き始め、1350年に完成したという。
高さ55メートルもあり、
傾斜はわずか5度しかないという割には、大きく右に傾いている。
100820_asano-pisa3.jpg
多少の修復をしたので、あと300年はもつと聞いた。

盛和塾では、仕事・人生の結果は、
考え方×才能×努力と学ぶが、
わずか5度の土台の傾きが、その先では大きく狂うことを考えると、
神妙な気持ちになった。

人から見たら、俺はどの程度傾いているか?
5度以上は確実だ。
そうなると、あと3年か?

ナポリからローマに入った。
「すべての道はローマに通ず」
「ローマは一日してならず」
ローマに決して憧れたわけではないが、
多くの物語や、映画の舞台に来たという感慨はあった。
オードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』、
チャールトン・ヘストンの『ベン・ハー』、
最近では『グラディエーター』(剣闘士)の映画もあった。

思い起せば、1970年、大阪万国博覧会のイタリア館で
大阪体育大学の学生4名と私、5名でイタリア館の掃除を請け負った。
一日1万円、4名いれば、1時間で終わる。
時給一人あたり2,500円になった。
当時としてはぼろ儲けだ。

そのころはホステスと呼んだが、今で言うコンパニオンが13名、
ペギー葉山の学生時代の歌で有名になった神戸女学院、
また甲南女子大学、同志舎女子大学など、
関西のお嬢様たちが1年休学して働いていた。

これにイタリアから来た身長180センチ以上で
編成された憲兵隊の6名がいた。
大阪体育大学の学生は、柔道部、レスリング部、
ウエイト・リフティング部、バレー部の4名。
全員田舎出身で、幼馴染のバレー部の坂本昭くんだけが、
当時人気のスパイダーズの井上純ばりの2枚目。
あとは筋肉だけは発達した田吾作だった。

さぁ、どうしてこのお嬢様、コンパニオンと仲良くなるかだ?
2枚目の坂本昭くんは、すぐにそのうちの一人をゲット。
彼の周りはいつも女性でいっぱいだ、不思議なことではない。

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私が憧れたのは、1歳年上の、身長165センチ、
同志社女子大学の英文科に通う、
顔が小さくて八等身の渡辺千波さん。
毎日会話はするが、それ以上にはならない。
こちらはバイトとはいえ、ただの掃除夫だ。
エリート学生は通訳などしている奴もいる。

半年経った秋の終わりの京都、平安神宮のイチョウ並木の下で、
イタリア人の憲兵にもたれて歩く千波を見た。
動悸が激しく波を打った。
彼の名はカルロス、ローマ出身だった。
ローマは許さない。
あれ以来、ローマは永遠の敵となった。

100820_picture.jpg

実はこの時、もうひとつ人生観を変える事件が起こった。
万博も終わりに近づいたある日、レスリング部の某君が告白した。
13名のコンパニオンにうち7名と関係を持ったと言った。
信じられない。
顔も体も鼻も曲がっている、身長も158センチしかない。
耳も潰れているぞ。

彼は勝利者らしく、静かに笑って、口を開いた。
「彼女達の心はいつも変化している。
彼とケンカして別れて、寂しい夜もあるかもしれない。
美人だって彼がいない時もある。
友人との人間関係、仕事のむしゃくしゃ。
気晴らしに遊ぶのは、俺のようなアホな男がベストさ。
俺は、彼女達の心の隙を逃さない」

「どんな言葉掛けたのだ?」

「簡単さ、修飾語はいらない。Y X X X?
4文字それだけだ。
いつも同じ言葉を繰り返す。
絶対にしつこくしない。
バカにされても、振られても気にしない。
毎日同じ事繰り返し言う。」

「なに?Y X X X?」
「嘘だろう、お前はバカか?」
「オー・マイ・ゴッド、信じられない(当時はこの英語は知らない)」
「オー、ロミオとジュリエットの世界はどこにある」

お釈迦様は、人の心は一日9億3千万回変化するという。
この体験は、その後の私の営業訓となり、
顔のねじれも、垂れ目も気にならない。
彼にはいまだ感謝している。
これ以来、大人になった。

ローマが敵であったことも忘れて、数々の遺跡をまわる。
円形闘技場・コロッセオ。

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イタリア統一のシンボル、エマヌエーレ2世記念堂。

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バチカン市国の世界最大のキリスト教寺院・サン・ピエトロ大聖堂。

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博物館やスペイン広場などを見学。

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この荘厳な巨大な建物、絵画を見た天正遣欧少年使節(1582年)や
支倉常長(1615年)は、何を考え?どんなことを思ったのか?

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歴史はロマンで一杯だ。

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支倉常長はローマ教王、パウルス5世に謁見して貴族にもなった。

団体と別れて2泊延長し、
出来る限りのローマ市内のスーパー見学もした。

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都心には小型店のグローサリー・ショップだけ。
ようするにLimited Assortment Store。
アルディーとイギリスから西海岸にやって来たFresh & Expressの世界だ。

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食事が美味しいと聞いていたので、スーパーの惣菜を期待して来たが、
イタリアにはホールフーズはなかった。

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ベネチアでは、ホテルが郊外だったので、
近くのスーパーセンター、オーシャン(フランス系)を見学。
これもロシアで見たものと変わらない。

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つくづくアメリカのスーパーは、多様で、進化していることを実感した。

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憧れのカンツォーネの歌は、オプションで
オペラ・アリアとカンツォーネに参加したが、
会場はせまく、観客と歌手のコラボレーションもなく、失望した。

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100820_opera3.jpg

ホテルはムッソリーニが建築したテルミニ駅の近くだった。
ここから数ブロック離れたところに、
イタリア人と結婚し、大変立派なレストランを経営している、
イタリアの日本人、肝っ玉お母さん、ともこさんの店がある。

100820_tomoko-restaurant2.jpg

彼女の店で夕食をとる。
イカ墨パスタが美味しく、3度も通った。

100820_pasta-squid.jpg

彼女の苦労話は明るく楽しかった。
彼女は65歳。
築地の寺の娘で、
幼稚園の先生をしていた時、30回もお見合いをした。
彼女の並みはずれたエネルギーに、
いずれの男たちも尻に敷かれると、恐れをなした。

彼女は生まれつきのリーダー。
いつも並みはずれた日本女性は、外国にはみ出される。

結局、イタリアに来て38年、
ご主人は亡くなったが、息子が手伝っていた。
ペンションも2軒経営をしているらしい。
食事つきで価格はリーズナブル、次回は長期でローマに来れそうだ。
時が経つのも忘れて、毎晩12時過ぎまで話し込んだ。

100820_tomoko-restaurant.jpg
(左端がともこさん)

異国で暮らす日本人の話題はいつも同じだ。
強烈な祖国愛である。
ローマの青い月の光の下で、祖国への愛を語ろうとは思わなかった。

夢見ていたのは、金髪でコンパクトなグラマーのイタリア娘と、
恋の語らいと抱擁のはずだった。
どこかで道を間違えた。
映画のようにはいかない。

「イタリア娘の、熱き血潮触れてみて、裏切る祖国かな」
 (愛の賛歌の1小節より?)

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浅野秀二
8月18日

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