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コミュニティーとの一体感を目指した「サインタワー」| 小林清泰の環境デザイン研究

小林清泰の環境デザイン研究

コミュニティーとの一体感を目指した「サインタワー」

2011年01月11日(火曜日)
カテゴリー:
  • ショッピングセンター
  
12:53 PM

アメリカのショッピングセンターデザインが、新しい価値の方向性を示し始めた。
この数年、アメリカ視察で一番強く感じるのは、大型ショッピングセンター開発が
進んで出店地域の町並みを造り上げている点である。

国土が大きいアメリカでは、商業施設の出店は
地域のディベロッパーが土地を確保し、流通業を誘致する。

ショッピングセンターの外観デザインコード(建物の高さや材質、カラー等)を用意し、
ディベロッパー側が出店者の様々な要望を受け入れながら建てていくケースが多い。

ディベロッパーの手腕は、良質な街並みを作り、
そこに相応しい人々にたくさん住んでもらって、地域の価値を上げていくこと。
言ってみれば流通業にとって一番大切なお客様を、購買力を、
間接的にではあるが流通業に提供していくのだ。

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[進化したサインタワー]

TARGETやLowe’sのデザインは単なるサインのベースという
従来のやり方自体から脱して、ショッピングセンター建築と
サインタワーのイメージを合わせて、
ショッピングセンターとしての一体感を強く表現し、
使われている素材感等でこのショッピングセンターのグレードを表している。
今まではあまりみられなかった新しい手法である。
110111_super-target.jpg

特にLowe’sサインタワーの背景をみると、
ショッピングセンターの家並とデザインモチーフが同一であることが分かる。

110111_lowes.jpg

従来のローコスト型サインタワーデザインはこのようなものがある。
H・E・B
110111_heb.jpg

アルディ(ALDI)
110111_aldi.jpg

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日本ではナショナルチェーンといわれる大手流通業は、
自前のスタッフによる情報網で土地情報を得て、自ら開発を行い、
ショッピングセンターを建てる。
中小流通業でも土地開発部隊を持ち、
土地情報を自前であげられる組織力を持つ企業もあるが、割合は少ない。

そのため、大手ゼネコンやハウスメーカー系が物件を持ち込んで、
建物(店舗)を入札ではなく半ば「特命」で受注している現状がある。
いわゆる、持ちつ持たれつの関係である。

しかしこれからは、小売業側が自分達にとって都合の良い施設(店)を
作ればそれで良いという時代はそろそろ終わりにしたい。
それでないと地域住民からの支持が得られなくなるし、
競合で意識の高い相手に負けてしまうことになる。

ただでさえ狭い国土の中、成熟し、あらゆる「物」が飽和に近い今の日本社会で、
今もこれからも「物」を継続販売していこうという流通業は、
ますます進む成熟化社会を担ってゆく地域住民から、
新しい価値観を持つ施設(ショッピングセンター)が求められてくる。

今回取り上げたサインタワーは、これからの日本の商業施設が
取り組んでいくべき方向性を示していて、その象徴といえる。

新しい価値観は、流通業の出店は「街造りの重要な拠点を担う」という視点、
言い換えれば「コミュニティー形成への積極的な参加視点」である。

しかし日本では、街は国や地方自治体がつくるものという意識が濃い。
流通業側もゼネコン側も「街造り」という意識がほとんどない。
言い換えれば、考えもしないと言えるかもしれない。

出店地域のポピュレーションがあまり変化しない、出来上がった市場へ
オーバーストアであっても店を出し、競合に打ち勝つことが命題だから、
多くを望めないことも理解している。

しかし、このTARGETやLowe’sといった、アンカーテナントの
サインタワーデザインをもつショッピングセンターから、
流通業が町並み造り市場の形成に向かって、
積極的に参加している姿勢を強く感じた。

110111_highlands-ranch.jpg

<By 小林清泰>

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小林清泰プロフィール

アーキテクチュアルデザイナー/プロダクトデザイナー
株式会社 ケノス 代表取締役

一級建築士、商業施設士。チェーンストアデザイン及びコンサルタント (チェーンストア基本デザイン 及び店舗標準化、店舗マニュアル作成)

実績:ホームセンター「カインズホーム」、CVSチェーン「セーブオン」。2008年度環境省「省エネ照明デザインモデル事業」に「店内照明全てがLED照明のコンビニ」で応募し採択される。
http://shoene-shomei.jp/h20/model/report_7.html

空間構成システム、LED照明器具等プロダクトデザイン。グッドデザイン賞受賞歴 2005年度「LAWSONカウンターシステム」、2006年度アルミスペース フレーム「ZSTEM+LED照明」、2009年度「LEDベース照明」
http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35555

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