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[連載]物流クレート標準化物語

[連載]物流クレート標準化物語

第4回 標準クレート導入効果とさらなる普及に向けて

2010年10月14日(木曜日)
カテゴリー:
  • クレート
  
10:28 AM

日本スーパーマーケット協会ホームページの「物流クレート(通い箱)標準化」に
㈱北陸シジシー導入概要のニュースが掲載されています。
この記事内容から推察してみると、
報道されている以上の大きな導入効果が見えてきます。
今回は、この事例から学びたいと思います。

さて、発表されたニュースリリースでは、
北陸シジシーグループ9社・92店舗で標準クレートを5000枚導入となっていますが、
実際には、準備された総クレート枚数は4万枚規模と推測されます。

なぜなら、450坪型スーパーマーケットでは、日配・惣菜部門における納入クレートは、1店舗当り1日平均で約43枚であり、
クレート回転日数は4~7日です。

さらに曜日による波動係数を±1.2とし、52週の波動係数±1.2を加味しますと、
92(店舗)×43(枚/日・店)×1.2×1.2×7(日)=39,876枚、
およそ4万枚となります。
したがって、5000枚導入とは、1日当りの店舗納入ベースの枚数と理解できます。

従来、店舗では日々使用されるクレートの2~3倍の空クレート容器を
保管し、在庫します。
当然、貯留スペースが必要になります。
同様に物流センター、ベンダー、メーカーそれぞれも貯留スペースをもたなければなりません。
また各流通段階で、保管クレート容器の整理・整頓、搬送、ハンドリング、洗浄などの付帯作業が行われます。

標準クレート導入前には、小売事業主・ベンダー・メーカー等7~13事業所が
個別に専用クレートを使用していたことを考えると、
導入後は使用クレート総数が1/5~1/10に大幅に削減されると推測されます。

すなわち今回の導入では、地域・エリアが一体となって
以下の取り組みを行うことを目指しているのです。

①使用済み、あるいは普段使用してない空容器の保管スペース、
そして空容器にかかわる整理・整頓、洗浄作業スペースの省スペース化と
作業の手間ひまの軽減

②使用クレートの回転効率の向上、使用資材の大幅削減

③小売事業主・ベンダー・メーカーの保管、整理・整頓、洗浄の
共通プラットホームの形成によるスペースの大幅削減、作業の集約化

④必要なときに必要な量の清潔な容器の供給(かんばん方式)とリターナルの実現

コスト削減、スペース削減はもちろんですが、結果としてCO2削減による
環境配慮型のビジネスモデルが構築されることへの期待が広がります。

この「物流標準クレート」の取り組みは現在 日配・惣菜部門ですが、
日本のスーパーマーケットのコア・コンピタンス商品は、地産地消を基本とした各地域・エリアでの高鮮度商品群、すなわち生鮮3品・日配・惣菜が核商品です。
それも半径100~150km圏内を想定したエリア単位での業界・企業の壁を越えた取り組みが本来の方向性であるとも言えます。

本来、小売流通業は商品提供が基本です。
したがって「物流標準クレート」普及は一般社会的なソフト・運用面でのプラットホーム形成の始まりだと確信しています。

しかし、「物流標準クレート」を普及させる上での最大課題は、
クレートの紛失問題と紛失責任(賠償主)問題だと言っても過言ではありません。
モラールが高いといわれる日本でも、1サイクル当たり通常1%前後のクレート容器の行方不明・紛失が発生しています。
1%を少ないと思われる方には、実際に計算された数値を示せば驚嘆されるはずです。

たとえば、1日5000枚使用された時、紛失する1%の枚数は50枚。
年間では1万8000枚にもなります。
と言うことは4万枚用意しても、すぐに不足してしまうため、
3~4カ月ごとに補給しなければなりません。

この1%を低減化するにはどうしたらよいのでしょうか?
やはり、プラットホームに参加される企業の従業員、作業者のモラール向上と
そのための教育が必須になります。
さらに、空容器回収時の運転手に受払確認(検収)を含めたインセンティブな貢献報酬制も必要かもしれません。
例えば1枚回収で0.5~1円支払いするなど、
成功報酬制の導入が得策に思われます。
すなわち、この「物流標準クレート」持続の鍵は輸配送業者も含めたプラットホーム形成がカギを握るのです。

今回は、日本スーパーマーケット協会の㈱北陸シジシー「物流標準クレート」導入の記事から、今後の普及促進について考察しました。
小売流通企業が中心的な役割を担って推進していただきたいと強く願っています。

最後に、小売流通業界での一般的な容器の流れ、その概要について再整理・体系化しますと、下図のようになります。

crate2.jpg

参考としていただければと思います。

<by 商人舎標準クレート研究チーム・N>

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<物流クレート標準化協議会ニュース>㈱北陸シジシー導入概要

2010年09月24日(金曜日)
カテゴリー:
  • 標準クレート導入報告
  
8:07 AM

9月15日のブログで紹介しました㈱北陸シジシーの「標準クレート」導入。
その概要をもう少し詳しく報告します。

まず、導入場所は北陸シジシーの日配センター。
標準クレートのタイプはI型を使用し、初回導入枚数は5000枚を予定します。

1gatacrate.jpg

I型クレートサイズは
・外寸 278×388×132ミリ
・内寸 534×348×120ミリ
・有効内寸 520×334×110ミリ

スーパーマーケット導入企業は北陸CGC共同配送加盟企業の9社92店舗。
石川県内では、ニュー三久、マルエー、ナルックス、祐企、マルゲンセンター、大丸、安達の7社44店舗、
福岡県内では、ハニー、若狭農業協同組合の2社48店舗とネットワークとなります。

当初の取引先企業は3社ですが、もちろん順次、拡げていく予定にしています。
この9社92店舗と、日配センター、取引先3社の間で、
14日(火)より、毎日、約100枚のクレートが循環していくことになっています。

標準クレートの導入効果は、
①月間車両台数にしてマイナス1台、
②月間カーゴ台車数はマイナス15台、
③月間作業改善人数はマイナス1人(1人/1日当り8時間作業換算)
そして他に、
④作業時間及び廃棄段ボールの量などが改善する
と予測しています。

20100922-1.jpg
この北陸CGCの取り組みは、「地場スーパーが連携して物流の低減に乗り出した」と地方紙にも大きく取り上げられました。


★標準クレートの詳細は日本スーパーマーケット協会「物流クレート(通い箱)標準化」ページに掲載されてます。

<by 商人舎標準クレート研究チーム・K>

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第3回 標準化クレート原型の誕生

2010年09月22日(水曜日)
カテゴリー:
  • クレート
  
2:26 PM

1988年、某スーパーマーケットでは、日配品・惣菜工場で使用していたA社製とB社製の在来プラスチック・コンテナ(プラコンと略す)を併用していました。
しかし、静電気によって生じる容器汚染の解消と、空容器回収と保管スペースの効率向上(ネステイング化)以上に工場を大幅FA化(ファクトリー・オートメーション)する目的から、専用容器として新たなプラコンに変えるという取り組みを、A社と開始することになりました。
これが、標準化クレート開発の原型だろうと思います。

プラコンの開発、製作には諸課題がありました。
例えば軽量化、洗浄性と清潔感、強度、対候性(屋外で使用された場合に、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)、経年変形の有無などです。
当然、プラコンは、原材料として再利用することを要件に加味しました。
これらの課題を解決するために、価格・ロットを含めた性能要求仕様書を策定したうえで、各メーカーに見積照会書を出し、その結果、A社に発注が決まったのです。

このときのプラコン形状は、わずか2種類(深箱・浅箱)でした。
しかし、プラコン製作のための金型作り、プラコンの生産ライン、その能力、さらには生産工程などでさまざまな問題が発生し、導入当初は1日1万枚納入が間に合わないばかりか、納入車両の工面もつかずで、プラコン製造工場まで引き取りに行ったりしました。

温かい、出来たばかりのプラコンをトラックに積み込み、ロープ掛けして日配・惣菜食品工場に持ち帰り、いざ、ロープを解くと変形したままのプラコンになっていたなど、笑うに笑えない出来事もありました。

このプラコンの洗浄ライン・システム(プラコン保管システム含む)の開発でもいろいろな問題が発生しました。このシステムは、ゴミ・塵埃除去から洗浄、乾燥、スタッキング、保管までを1時間あたり6000個処理しようというものでした。
この時に発生した問題は、プラコンに貼付したラベルが剥離できずに、ヘラで手作業で剥がしたりしました。数カ月もすると、プラコンが黒ずみ、洗浄不足?洗浄能力不足?洗剤不良?と、大騒ぎ。
静電気に起因していることがわかり、この問題解決にも時間が掛かりました。
店舗側からはプラコンに触ると手が汚れる、商品にも汚れが付着するなど、クレームが殺到し大変でした。

一方で、小売・流通系の低温物流センターにおける食品メーカー(とりわけ日配・惣菜商品)からの納入荷姿は、納入業者専用の段ボール、形状や色が多種多様なプラコンなどでした。
これらのバラバラな形態の梱包容器から、商品を取り出して検品を行い、店舗別に商品をピッキングし、エリア配送店舗別に仕分け(アソート)をし、さらに店舗別の最終検品と、出荷のための仮置きを行うとなると、各工程で多種多様な容器の整理・整頓のために、商品本来のスペースの3~5倍の空スペースを設ける必要がありました。
それだけ作業動線が長くなり、ユニット・コントロール本来の物流効率化に逆行している現象が多々ありました。
こうした多種多様な容器・プラコンの輻輳(ふくそう=物が一カ所に集中して混雑していること)問題を解決するために、商品部門・カテゴリー単位の集約化を行うとともに、PC(プロセス・センター)、TC(トラフィック・センター)の再配置によって、少なくとも店舗への納入荷姿の標準化に取り組まなければなりませんでした。

さて、冒頭のA社との取り組みの話に戻ります。

某スーパーマーケットでは、2000年頃から店舗数が増え、出荷数量が拡大するにつれ、センター内のプラコン容器置場が手狭となってきました。棒積プラコンのスペースが限界となり、空容器回収もままならなくなりました。また年末繁忙期にプラコンを継続使用することも限界に至りました。
実際には、2002年夏から、在来プラコンの諸課題、具体的にはネステイング化と静電気汚損解消、ラベル貼付剥離性などの解決策を具体的に整理し、各メーカーに性能要求書を再提出させ、その結果、B社との具体的なプラコン(標準クレート誕生)開発が始まりました。

その際の主な内容は以下の通りです。
①ネステイング可能容器の開発=ネステイング効率50%目標(深箱時)
基本色の濃淡で同一色重ね時スタッキング、異色重ね時ネステイングの採用
②静電気帯電防止策
特殊シリコン系粉末微少添加、万が一、付着しても目立たない色として緑系を採用
③ラベル貼付時の貼付性の保持と剥離性の確保
ラベル貼付可能箇所に線絞・絞表面成型(梨状・イボ)加工
④環境問題(資源再利用)

古容器資源再利用率50%以上とする。また成型年月日の表示など、先ず上記性能を維持保証する金型開発から始め、約4カ月の試行錯誤を重ね、ライン生産に約3カ月掛け作り貯めました。
新プラコン導入の運用は、年末繁忙期を避け、2003年1月に一斉にスタートしました。

こうして振り返ると、容器の寿命は10~15年周期といわれますが、開発技術、時代環境とともに、その機能や形態が進化してくることが分かってきます。

<by 商人舎標準クレート研究チーム・中林>

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