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<連載>スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.1 | 杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

<連載>スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.1 

2009年01月20日(火曜日)
カテゴリー:
  • 競争力は開発・改善スピード競争の成果
  
6:06 PM

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杉山昭次郎先生から原稿が届きました。それもメールで:shock:
パソコンができる奥様との共同作業で送っていただいたようです :-P
これからしばらく、スーパーマーケットの競争力強化について考察いただきます:idea:

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第1回 競争力は開発・改善のスピード競争の成果

「百年に一度」といわれる経済不況の真っ只中で、スーパーマーケットの競争は一段と激化している。

背景には、「購買力のパイが小さくなっている」「消費者の問題意識の変化とニーズの多様化」などがある。その中で、競争相手の企業はコスト削減という逆風と戦いながら、業績向上を実現するための開発・改善をし続けようと力を入れている。
しかも、改善、開発により達成しようとしている課題は、従来よりも難度の高いものにも及ぶ。
さらに、その進行のスピードもアップしようとしている。

当然、自社も競争力の強化のため、競合企業以上に開発・改善を急がねばならない。実際、この1年あまりのスーパーマーケットには、そうした努力が伺える店が多くでてきている。

しかし、このような改善を進めても、業績が伴わず前年割れで悩んでいる店もあろう。
そのような時、改善の計画や進行のしかた、進行の途中で生じる問題の予防、解決策などの検討を適切に行わず、改善そのものを頓挫させてしまったりしたことはないだろうか。

競争力強化の視点で言わせてもらえば、開発・改善は「手がけただけ」とか、「そのうち出来る」のでは意味がない。
「必要なときまでに目標レベルまで実現している」のでないと、業績には反映してこないからである。

競争力の差の一つは開発・改善のスピードの差とも言える。

たとえば、3年前に現在のレベルにまでなっていたら・・・もっと良い結果を出せたと思えることがあるとしたら、対応努力をやってはきたが、市場のニーズに遅れて付いて行っているということに他ならない。
そこで、開発・改善のスピードアップの問題について考えてみよう。

■競争力アップにつながらない商品開発

スーパーマーケットの競争力の技術的レベルの諸問題は、出店戦略と営業活動に大別されるが、ここでは営業活動について考えてみたい。

営業活動における競争力に関わる課題は、品揃え、プライシング、販促、品質、鮮度、安全安心に関する情報、サービスなどなど、多岐にわたる。これまでに実施されてきたプログラムは、数え上げれば驚くほど多数に上るであろう。
その成果が「現在の競争力」である。

現在、競争劣位にある企業は、遅れを取り返すためプロジェクトを増やし、一つ一つのプロジェクトの精度を高め、かつスピードアップを図らねばならない。
そのプロジェクトの一つに、差別化のための商品開発を選ぶ企業は多いはずであるし、すでに現在進行中の企業もあるはずである。

ところでこの商品開発だが、やみくもにアイテム数を増やしても、あるいは計画段階の精度を高めても、競争力構築のスピードアップには繋がらない場合がある。

■■商品開発に必要な二つのサブシステム

その理由は、商品開発には次の「二つのサブシステム」のサポートが欠かせないからである。

1.当該商品を適切なフェイスに適切な量を陳列し、効果的なPOPなどの情報提示を行い、売れた商品の補充品出しをし、閉店前の売り切りを行うなどの作業システムが安定していること。

この場合、カテゴリー内の関連商品はもとより、売り場全体の陳列が一定水準以上に保たれるようなレイバースケジューリングシステムが定着していることが望ましい。
改めて説明するまでもないが、「売り場づくり」が荒れていては、売れるはずの商品も売れなくなる。
反対に、優れた差別化商品の定着化の成功実績を重ねることを継続していけば、お客の新商品に対する期待、注意力が高まり、購買意欲の喚起を促す効果も得られる。
それが、お客の新しいニーズに合ったものであれば、満足感を得られる店としての評価を得られる。

2.テイスティング販売時の販売数量目標値に対する実績推移と、原因の明確化をPOSデータだけではなく、現場で収集されたお客様情報、競合店情報などを含めて現場担当者達(例えば、バイヤー、店長、チーフ、販促担当など)で検討し、定番化、廃止、テスティング継続などを決定できる分析システムが機能していること。

このようなシステムが育成定着してくると、「個々の能力開発(OJT)が進む」、「部門間、個人間の連携がスムースになる」ため、各部門の上級者が本来の基幹的業務に取り組めるようになり、かつ、開発・改善の進行スピードもアップする。
このことは、競争力を高めるには組織力の強化が伴わなければならないことを意味する。

■■■労多くして、功不確実な商品開発だが…

商品開発では、かつて「育成商品」と呼ばれたアイテムが少なくない。
売り始めから大ヒットするような例は、極めて稀である。テストの結果、廃止か、継続かを決める議論になる。継続の場合には「育成商品」と呼ばれる。
ともあれ、新開発アイテムはお客に認めてもらえるまでに時間がかかるものが多い。商品開発は労に対し、功が不確実である。
最近のように安全の問題や、材料の価格変動などのリスク面を考えると、ますます難しい。
「難しいから競争相手はやらない、出来ない」ことを、こちらが出来ればこちらの強みになるはずである。

昨今のような経営環境の悪化の中、企業間競合は熾烈を極めつつある。競合他社に対する何らかの優位な差別化を図らなければ生き残れない。
それらが、競争力強化になり、その競争力を維持向上させていくためには組織力の向上と活性化が必須である。

次回はこれに視点を置いて、問題提起してみたい。

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