商人舎

杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.28

2009年11月09日(月曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
11:55 AM

第28回グローバリゼーション-心構えの第二段階:準備期 Part2

■予算コントロールの概要

その一例のプロセスの概要を次に述べる。
売上予算コントロールを可能にした要因のキーワードは、販促品の売上の全体売上に対する比率、つまり“販促比率はあまり変動しない”である。

“売場づくり”を高度に安定させる作業システムを確立させた企業は、数年の過程の中で、トータルでも、部門別にも、さらにはカテゴリー別にみても、販促比率が大きくはぶれないことを発見したのである。

そこで、定番品はアイテム数も多く、短期的に売上を操作することはできないが、販促品なら、価格で売上個数を操作しやすいアイテムが選ばれる。品数も限定されるので、販促品の売上目標を設定し、これをコントロールすれば、売上全体の目標も達成するのではないかと考え、実証のためのプログラムを作成した。

■プログラムの流れ

プログラムは、実施月の2ヶ月前から開始される。

まず、実施月の2ヶ月前の販売会議で、販売促進部から販促原案が提示される。原案は各州のチラシ特売の主テーマ、副テーマおよび、テーマごとの主な商品名と売上目標値が記入されている。販売促進部では、前年までの同月、同週データを参考に、原案を作成する。販売目標値は、これが達成されれば、トータル予算が達成するはずという試算を計った上で設定される。

販売会議では、商品部、店舗運営部などとの意見交換がなされた後、販売原案は商品部に流される。
商品部は仕入先と折衝の上、商品名と売価を販売促進部に連絡する。この場合、商品部各部門の予算達成見込み試算が行われることは当然である。実施前月の販売会議前に販売計画書が作成され、販売会議に提出される。この会議には、店長代表3名も出席し、必要な調整が行われたうえ、各店舗、印刷所などに流される。

店舗に流された販売計画は、毎週行われる店舗の販促会議に登場する。店長はまず、週次販売目標達成の見通しを確認する。チーフ達は、それぞれに与えられた部門週次目標達成のための販促品の発注表に記入し、店長の承認を求める。(定番の発注は、チーフの責任で行うが、販促品には店長の承認が必要)

以上の手続きを行う間に販売方法(陳列の仕方、POPの作り方、つけ方、その他の補助具の使い方など)の打ち合わせを行う。

販促の前日には、閉店前にチーフは2番手(部下の中で社歴の一番長いもの)と基準フェイス表(当日の陳列場所と量をアイテムごとに指定する表)を使ってフェイス調整(販促品の陳列場を決めて、定番品の陳列場所の移動を行うこと)を行う。フェイス調整の適否により、当日の売上は2~3割増減することもあるという。

販促当日は、チーフは売場状況に気をくばり、品切れが起こりそうな場合、また逆に、残品が多く出そうな場合は店長に報告し、店長と善後処置を協議する。

特売終了後は、販売データを分析したレポートを作成する。
なお、店舗運営部は、月に2回ブロック別に分割した店長を集めてレビューの会議を行う。
商品部は毎週、前週の部門別販売実績のレビューを行う。販売促進部は販売計画と実績で差異の大きい部門、店舗がある場合はその原因を調査する。

上述のようなプロセスをふむ。プログラムを反復するうちに、予算コントロールの精度は順次高まるという。

続きます

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スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.27

2009年11月06日(金曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
10:51 AM

第27回グローバリゼーション-心構えの第二段階:準備期 Part1

現実に、中長期に渡って安定利益を確保し続けることは、生やさしいことではない。
少なくとも、次の2つのサブシステムを確立させておかなければならない。

■レイバー・スケジューリング

第1のサブシステムは、開店から閉店まで、定められたサービス水準を保った“売場づくり(陳列、商品づくり、鮮度など)”を行うための店内作業システムである。
レイバー・スケジューリングと呼ぶ企業が多いようだ。
ここ数年、好業績をあげていても、たびたび品切れ、品出し遅れを起こすなど、売場の乱れが気になるスーパーマーケットは、必ず、ある時から業績が悪化する。(その理由については後で述べる)

レイバー・スケジューリングの目的は
①サービスレベルの安定
②マン・アワー数の確保
(必ず少しゆとりをもたせること)であり、
③人件費の削減
は最後にすべきである。

なお、レイバー・スケジューリングには、いわゆる標準化が伴う。
標準の決め方にはいろいろ論議が必要であり、企業ごとに異なるのが当然であるが、定められた標準は必ず従業員全員に守らせねばならない。
店内作業システムづくりで、最も難しいことは、パート従業員はもとよりアルバイトの人達にまで、決め事(標準)を守らせることである。
そのためには、店長、売場チーフの指導力教育が重要である。
レイバー・スケジューリングが未完結な企業は、直ちに完結を目指して、改善に可能な限りのエネルギーと時間を投入すべきである。

■販売予算コントロールシステム

不可欠なサブシステムの第2は、販売予算のコントロールシステムである。

●予算コントロール以前

40年ほど前、まだ私が実務にたずさわっていた頃、ガルブレイスの『不確実性の時代』を読んで、安心というか、複雑な読後感を持ったことがあった。
当時、売上げは毎月大きくばらついていた。
同じチラシ特売を行っても、成果は店によって大変差異が大きかった。
好業績の店では、売上げが平日平均の2~3倍になることも少なくなかったが、不振店では、1.5倍に止まるのが通例であった。単品別の売上数は、なぜこんなにも売れたのか、あるいはその反対なのか、説明がつかなかった。

小売りの商売とは、不確実性そのものだということが、本を読んで分かったので安心した。
とはいえ、それでは、経営にたずさわる者としては困る。何とも言えない複雑な気持ちになったものであった。
今から20年前頃までに学校を卒業して、チェーンストアに入社した人達には、理解できないかもしれないが、私が『不確実性の時代』を読んだ頃のチェーンストアは、店内作業の標準化は全く行われていなかった。
品揃えも各店バラバラ、正午になっても品出しされていない商品も少なくなかった。よく売れる商品は品切れし、死筋商品があちこちに散乱していた。
鮮度管理という言葉すら、使われていなかった時代である。
こんな状況の中でも、今日、活躍しているスーパーマーケットは、トップはもとより、バイヤー、店長、チーフ達は売上げを伸ばす努力は行っていた。
そして、業績を伸ばしてきた。
ただし、月次の売上目標は口称目標、努力目標であり、実質目標ではなかった。なにより、コントロールする手段を持たなかったのである。

●業務システム標準化の導入

しかし、昭和40年代の半ばから、関西スーパーが鮮度管理を中核とする店内作業システムを作り上げ、同業各社に惜し気もなく紹介してから、状況は大きく変わり出した。
品揃え、商品づくり、品出し、陳列等々、“売場づくり”の業務システムは標準化(決め事と呼ぶ企業が多かった)が進み、店ごとのバラつきは影をひそめた。そして売場も業績も安定しだした。
その中で、より意欲的なスーパーマーケットは、月次の販売計画立案システムの強化にも力を入れ、売上予算もコントロールできるようになったのである。

続きます 

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スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.26

2009年11月04日(水曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
10:59 AM

第26回グローバリゼーション-グローバリゼーションに対する心構え

■心構えの3段階

先にも述べた通り、食品小売産業のグローバリゼーションのもとでの戦略はいかにあるべきかを論ずる力は私にはない。情報不足が原因である。
とはいえ、スーパーマーケット(食品小売産業)のグローバリゼーションも自動車やエレクトロニクス産業同様に進み、競争はますます、厳しくなることは確実である。
そこで、今考え得る範囲内で、対応のあり方を心構えとして整備し、経営活動に折り込むことが肝要となっている。

近代が、工業化と共に進み、ヨーロッパの先進国が帝国主義と呼ばれた植民地政策を行った時代とすれば、ポスト近代である現代は、第二次世界大戦で終焉した帝国主義の後にクローズアップしてきたグローバリゼーションが現代の中核的課題として位置付けることができよう。
ポスト工業化の時代は情報化だといわれて久しい。今やIT産業は情報革命の名にふさわしい発展を遂げつつある。
グローバリゼーションとIT化は現代化の2大支柱である。
換言すれば、グローバリゼーションとIT化が工業の一層の発展にも大きく貢献していると言うことにもなる。

さて、スーパーマーケットの心構えは、
① 企業の基礎固め
② 準備期
③ 戦略展開

の3段階に分けると考えやすくなる。

もっとも、3段階とは言ったが、これは必ずしも時間的経緯としての段階ではなく、考え方を整理するための段階である。従って、時間的には同時進行であっても差し支えない。
特に①と②には、重複する課題もある。

■心構えの第一段階:基礎固め~販売予算コントロールシステムの確立~

グローバリゼーション対応策の第1の課題は、一口でまとめれば、目標利益の確保である。
自社が海外進出するにしても、外国資本企業の日本上陸を迎え撃つにしても、本体事業のキャッシュ・フローが不安定であると、取り組むべき課題の優先順位の判断を誤りがちになる。また、従業員の不安感がトップ・本部・上司に対する不信感につながり、組織の凝集力が損なわれ、やれることもやれなくなる。

市場主義経済のもとで経営を行うためには、常に資金面にゆとりを持ち続けることが、存続、発展に不可欠の条件である。 食品小売業は、需要が景気動向に左右される程度が少ない。
したがって、フロック的に大もうけをすることがないかわり、一度利益を確保できるシステムを作り上げておけば、逐次、改善を積み重ねることにより、安定利益を持続させることが可能になる。そして、得られた安定利益を次々の改善に投入することにより、企業は発展するのである。
いわば、利益、使命能力開発の経営の複合目的の安定的循環を維持することである。

「そんなことは、誰でも知っている」という人も多いかもしれない。

続きます

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