商人舎

杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.22

2009年09月10日(木曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
12:54 PM

第22回 グローバリゼーション-食生活の変化

■グローバリゼーションにさらされているSM

以上、極めて大ざっぱにグローバリゼーションについて「言わずもかな」なことを述べてきた。
グローバリゼーションは以上の記述からもうかがい知れるような人類の広範囲の領域にものすごい勢いで押し寄せている変化の流れだと言いたかったからである。
この変化に対処する仕組み作りをすることを現代化と呼んでみたい。
かつて工業化による変化に対応する仕組み作りは近代化と呼ばれたように。

善良な人(お人好しと他人に思われる人)はグローバリゼーションの行く先は地球上のすべての人が人間らしい生活を営めるようになることと期待することであろう。
批判の目の肥えた人・シニカルな人は、現在、世界各地に多発している。テロ、民族紛争、ワーキングプアなどの問題を取り上げ、楽観論を批判するであろう。
私はときどき、若い頃、カトリックの神父に「山が高ければ、谷は深くなる」と教えられたことを思い出す。
浅学な私には、グローバリゼーションの全体像を解説したり、将来を予測する力はない。
しかし、スーパーマーケット産業は必ずグローバリゼーションにさらされる。いや、すでにさらされている。したがって、スーパーマーケット企業は対処しなければならない。
しかし、その全貌はまだはっきり見えていない。従って、その対処法をプログラム化することはできない。そこで、ここではスーパーマーケット企業のグローバリゼーションに対処するための心構えの一部を論ずるに止まる。

■食のグローバリゼーションの3領域
スーパーマーケットの使命は消費者の食生活の充実、向上に貢献することである。我が国の食生活は、諸外国の影響を受けて、明治以降、大きく変わり続けている。
大変豊かになり、飽食の時代と呼ばれるようになって久しい。
また、主婦の有職化、モータリゼーションの影響も受けて、家庭食のメニュー・買物の仕方などは、20~30年の間に信じられないほど変わった。
反面、伝統食の良さが見直され、例えばそば打ちの講習には若い主婦などが多数集まるという。
一方、外国において、日本食の評価が高まっているという。アメリカ、ヨーロッパをはじめ、アジアの主要都市には日本食レストランが出店し、日本人以外の人達にも人気が高いという。
半世紀前、日本に進駐してきた米軍のGI(兵士)達がサシミを見て、手も出さなかったことを思い出す。
先日、テレビで見たのだが、ヨーロッパ人のシェフが「日本人はなぜサシミを食べるのにワサビ醤油しか使わないのか。我々なら、それぞれの魚種、その日の他のメニューに合ったソースを開発するのに」と言っていた。肉食に偏りすぎた欧米では健康上の理由もあって、サシミ、寿司などに関心が深まっている。
中国の富裕層向けにコシヒカリ、リンゴなどの輸出も行われるようになってきた。
中国向けに日本の農作物を輸出することなど、一昔前には思いも寄らなかった。

以上、大変大ざっぱではあるが、食生活のグローバリゼーションが進んでいることを述べた。

 続きます

コメント (0)

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.21

2009年09月04日(金曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
3:15 PM

第21回 グローバリゼーション-国境を越える産業、経済、芸術、スポーツ

■グローバリゼーションの意味

前述のマス・カスタマイゼーションの記述に先立って、現代化に深い関わり合いをもつ、グローバリゼーションを取り上げたいと述べた。
ところで、グローバリゼーションという言葉は改めて断る必要もなかろうが、経営上の戦略コンセプトではない。
20世紀半ばの不幸な世界戦争によって、完全に終焉した帝国主義による植民地政策に変わる、世界各地域・各国との交流、かかわり合いの変化の流れを総称する用語である。
国境を越え、現地に新しく現地法人を設立したり、現地法人を買収したり、現地法人と合弁で事業展開をする企業をグローバル企業という。
コカコーラ、マクドナルド、ケンタッキー・フライドチキンなどが代表選手であろう。IBM、シティ・バンクなどはさしずめ世界チャンピオンというところか。日本からはトヨタ、ソニー、パナソニックなどがチャンピオンシップの争奪戦に名乗りを上げている。

■製造業のグローバル化はマーケットを創造する

グローバル企業は20世紀の後半から急増しはじめ、21世紀にはさらに増加のピッチが上がるものと思われる。
製造業がグローバル化するメカニズムを、ごく単純化して例示すると、次のようにまとめることができる。
先進国の企業が途上国企業に進出する場合、直接の目的は①製造コストの削減、及び②物流コストを含む販売コストの削減である。
途上国においては、資本が投入されることによって、①雇用が増大し、②インフラ(発電、輸送手段など)が整備され、③消費力が増大する。そのため、自国の生産力も強化される。
経済力が向上する国には、他のグローバル企業も投資したがる。この投資により、現地企業はさらに活性化し、消費力を増し、経済全体を押し上げる。
中国においては、以上のような循環のメカニズムは数十年続いているため、中国の中にもグローバル企業が生まれ、外国企業を買収したり、海外進出を目指す企業が増えだしている。

以上を再び要約すれば、製造業のグローバル化は新しいマーケットの創造につながると言うことになる。
10億以上の人口をもつ新しい市場の出現に欧米先進国のグローバル企業が目をつけるのは当然のことである。
アジアには中国以外にも、インド、インドネシア、ベトナムなど巨大潜在マーケットがいくつもまだ眠っている。この眠りを起こすのがグローバリゼーションの流れということだ。

■スポーツ、芸術、政治の世界で進むグローバル化
以上が産業・経済のグローバリゼーションの骨組みであるが、これ以外の領域でもグローバル化は進んでいる。スポーツ、芸術、政治の世界で、この性向が目立っている。
ヨーロッパで発展していたスポーツ各種はオリンピックを通じて、全世界に広まった。
逆に世界的にはローカルのスポーツもオリンピックに取り上げられ、世界的に広まっている。柔道はその代表例といえよう。野球はアメリカで生まれたスポーツであるが、オリンピックにも取り上げられている。本場アメリカのメジャーリーグで活躍するスターの多くがUSAから見れば外国籍のプレーヤーである。
日本人にとって驚くべきことは、日本の国技の相撲の世界で最高位の横綱の座が、数年にわたって外国人によって占められている事実である。これでは国技ではなく、国際技だと嘆く人もいる。これは日本にとって、あるいは日本人にとって、良いことなのか、悪いことなのか。
西洋音楽は今では、日本でクリエートされた音楽ではないという意味で西洋音楽と呼ばれるが、今日では日本人の音楽になりきっている。音楽は言葉の違いによる障害がないのでグローバル化が進めやすいのであろう。
美術の世界にも同じことが言えよう。
油絵は今やヨーロッパのみの絵ではなくなっている。
環境問題、資源問題もグローバル化している。地球温暖化問題は今や世界最大の問題である。しかし、いまだに対策について各国の合意はできていない。

続きます  

コメント (0)

スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.20

2009年08月18日(火曜日)
カテゴリー:
  • マス・カスタマイゼーション
  
10:33 AM

第20回 マス・カスタマイゼーション―販促の差別化

■販促のサブコンセプトづくり

現在のSMの販売促進は、マスセールスに終始している。
チラシ特売が中核となり、相変わらず、大目玉でお客を釣り出し、定番品も買ってもらいたい、という類のものである。
とくに、競争力劣位企業のチラシは、バーゲンハンターの餌食となり、荒利率低下の元凶となり果てている。コンセプトが貧困すぎるからである。
わずかに、エブリディ・ロープライスが新しさを感じさせるが、これとて、コンセプトを深めないと効果に結びつかない。

販促は企業段階で、誰に、何を、なぜ、お勧めするかを練るべきである。
不特定多数客に、安く仕入れた商品を、大量に売るため、に企画したチラシは、同じようにして企画された競合店のチラシより、価格をより安くしなければ、効果が上がらない。

そこで、例えば、【誰に】不特定多数客を毎日の献立づくりに悩んでいる主婦に、【何を】メニューの主原料になる商品およびそれに彩りを加える副材料と調味料を、【なぜ】決めやすくするヒントを与えるため、に置き換えてみれば、差別化になるであろう。
このような考え方で練られた企画なら、お勧め品を少し目立つ陳列で、POPをつけ、少し安くすれば効果は上がるであろうか。
何よりも、そんな“店舗づくり”をしているお店に、お客は来店するのではないだろうか。
そして、そんな“店舗づくり”をする店に変えました、一度、目でお確かめください、というようなチラシは効果をあげるであろうか。
マス・カスタマイゼーションは、販促面でも以上のような、サブコンセプトを生み出す。以上のサブコンセプトをメニュー提案と呼ぶのはいかがだろうか。

■異質なコンセプトを融合・両立させよ

情報サービスでも、アメリカ、ヨーロッパ、中国、南米、等々世界の行楽、ピクニックによく使われるメニュー、飲料を紹介すれば、お客は喜ぶか。
若い主婦に、アジに代表されるような近海魚のおろし方、地元野菜の調理法、ドレッシングの作り方などの料理教室を、定期的に開催したり、サービスカウンターで料理相談に応じることは、マス・カスタマイゼーションにならないか。
以上のようなサービスには、コストはかかるが、従来のチラシ特売に比べ、中長期にどちらが、コスト効率が良くなるかを研究する必要はありそうである。

工業的マスセールスから脱皮することが、SMの現代化であり、マス・カスタマイゼーションは1つのキーコンセプトとなりうるであろう。
マス・カスタマイゼーションは2つのコンセプトを結合した概念である。
かつては、前者か後者を排除した。今、一度排除したコンセプトを復活させ、両者を両立させるための施策を新しく作り出せ、というわけである。
現代には、排除し合う複数の要因を、それぞれの良さ、優れている点を活かすための工夫が求められるようになっている。

合金は2つ以上の金属を溶け合わせ、それぞれの素材の長所を引き出し、新しい特長を作り出したものである。
溶け合わせるため、熱処理をしたり、媒体薬を加えたりする。優れた超合金を作り出すために、研究機関は膨大な資源(時間、エネルギー、カネ)を投入している。

SM企業もまた、古今東西南北の食生活、食文化の良さを引き出し、世界の食生活、食分野の発展に寄与するためには、いくつもの異質なコンセプトの融合を図り、新しいコンセプトを打ち出し、関係者が共有しなければならなくなっている。
これがグローバリゼーションである。

資源投入の装備を怠りなく。

コメント (0)
<次のページ
前のページ>
商人舎サイトマップ お問い合わせ
カレンダー
2015年4月
月 火 水 木 金 土 日
« 8月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • こだわり商品 (2)
  • ことわざから学ぶ (1)
  • カスタマイゼーションの効用 (1)
  • グローバリゼーション (13)
  • コンセプトの効用 (3)
  • スーパーマーケットのマーケティング (13)
  • スーパーマーケットの店舗づくり (1)
  • スーパーマーケットの未来 (1)
  • チェーンストア (1)
  • マス・カスタマイゼーション (10)
  • マス・カスタマイゼーションの準備段階 (2)
  • マーケティング (5)
  • リーダーシップ (1)
  • 事務局 (2)
  • 企業使命の重要性 (1)
  • 企業文化 (2)
  • 利益の概念 (1)
  • 商業の現代化 (2)
  • 固定客づくり (2)
  • 新プロセスモデル (5)
  • 業態の転機 (1)
  • 競争力は開発・改善スピード競争の成果 (1)
  • 筆者からのメッセージ (2)
  • 組織の変容 (4)
  • 組織計画 (1)
  • 組織計画は組織力強化不可欠の基礎条件 (1)
  • 組織計画は設計するだけでは機能しない (1)
  • 試行錯誤的問題解決 (3)
  • 賢者は歴史に学ぶ (1)
  • 週間販促計画に見る効率的な組織の運用 (2)
最新記事
  • 2011年08月05日(金曜日)
    【最終回】 スーパーマーケットのマーケティング Vol.41
  • 2011年07月13日(水曜日)
    スーパーマーケットのマーケティング Vol.40
  • 2011年07月07日(木曜日)
    スーパーマーケットのマーケティング Vol.39
  • 2011年07月01日(金曜日)
    スーパーマーケットのマーケティング Vol.38
  • 2011年06月24日(金曜日)
    スーパーマーケットのマーケティング Vol.37
最新コメント
  • 2010年12月14日(火曜日)
    ワンダーウーマン :スーパーマーケットのマーケティング V...にコメントしました
  • 2010年07月04日(日曜日)
    ヒロロ :スーパーマーケットの競争力強化の視点...にコメントしました
  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.