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チャレンジャー・挑戦者(2)、吉田エリ| アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

チャレンジャー・挑戦者(2)、吉田エリ

2010年06月03日(木曜日)
カテゴリー:
  • アメリカからのメッセージ
  
3:18 PM

サクラメントに住む友人から電話がかかって来た。
「ボランティアで吉田エリちゃんの通訳をしてきたの。
5月29日、CHICO市でデビューするから、応援に来て!
エリちゃんの球団オーナーも紹介するわよ!」

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「もちろん、万難を排していくよ。」

我が家から車で3時間半、サクラメントの北2時間、
カリフォルニア最大の米作地帯だ。

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町は人口89000名、カリフォルニア州立大学の球場で、
独立リーグ、ゴールデン・ベースボール・リーグの試合は行われる。

チーム名はCHICO OUTLAWS・無法者。

彼女は18歳、身長156センチ足らず、体重52キロだ。

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これが大リーガー体験者もいる190センチ前後、体重100キロの
プロ野球の大男に立ち向かうとは、とても真面目な話とは思えない。
冗談か?マスコミが作り上げた八百長か?
私は信じられない。この目で確かめてみたい。

思い出せば、中学校のバレー部(松江市で優勝)でアタッカーだった
私の身長は当時171.7センチ、松江市では有名な走り高跳びの選手でもあった。

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しかし、高校では身長180cm以上ないと、一流になれないと勝手に自分で決めつけた。
結局、バレー部にも陸上部に入らず、かといって受験勉強もしなかった。

大学はスピードを生かそうとして日本拳法部に入ったが、
この体格では大山倍達にはなれない。 挑戦は4年で終わった。
常に一流への挑戦を、体格を言い訳にあきらめてきた。
本当は根性がない、怠け者だった。

その私にとってナックル姫、エリちゃんの挑戦は、信じられない思いだ。

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女で、156センチで、アメリカのプロ野球へ挑戦。
2部リーグだろうが、3部リーグだろうが。
俺はキツネに化かされているに違いない、
この目で確認したい、真実なら何が何でも応援したい。

私は、そもそも独立リーグで野球をやっている連中が信じらなかった。
年棒で生活できるのか?
メジャー・リーグならいざ知らず、3流の世界で何が面白くて??

しかし、つまらないという期待は見事に裏切られた。
独立リーグは、めちゃめちゃ面白かったのである。

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試合は午後7時15分開始のナイター。

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雲一つないカリフォルニアの田舎町、収容人員は3000名ほどか?

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午後5時過ぎに球場到着、友人からオーナーの奥さん、
メアリーさんを紹介され、写真を一緒に撮った。

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彼女の旦那・球団社長は元大リーガーの選手である。
切符は無料、しかも特別席、草野球は楽しい。
始球式をするのは、町の日本食レストランのオーナー、
今後エリちゃんに食事を提供するというスポンサーシップで、その栄誉を手にした。

親父ギャルとなって彼女を探す、球場の遠い所でストレッチをしていた。

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すぐ目に入る、大男の中に可愛らしい少女がいるのだ。
帽子から髪の毛もはみ出している。

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なかなかツーショットで写真を取るチャンスはない。
日本から来た、
たくさんの報道関係者もいる。

100603_press2.jpg

もちろん、20名を越すアメリカ人、カメラマン、
CNNを初めとする、大手テレビ会社、地元の新聞社、
ニューヨーク・タイムズ、LA・タイムズ、サンフランシスコ・クロニクル。

100603_press.jpg
もう大リーガー並みの報道体制であった。

報道関係者に中に帽子をかぶった女の子と話す、
何と彼女が吉田エリちゃんのエージェントと言う、
女子大生のようだ、権威や格式などまったく感じられない。

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ロスで会った野茂のエージェント、ダン野村など
日本のファンを無視する、高慢な態度であった。

このローカルな雰囲気こそ独立リーグの魅力か?
野球に縁のない様な太ったおばさん、人の良さそうなおじさん。

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刺青のアンちゃん、グローブを持った子供たち、
CHICO大学の肌の露出度の高い女子大生、皆お友達だ。

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オーナー・メアリー女史の指示で試合が終わるまで、
写真撮影、インタビューは禁止されている。

時々球場の周りを本物の大陸横断列車が走っていく、
シアトルのセーフコ球場のローカル版だ。

トイレの前で友人の兄が、カメラを持って立っていた。
「何をしているの?」 「エリちゃんがトイレに入りました。」

「写真を取らなきゃ!」

彼女が出てくると白人女性がサインを求めた。
笑顔でサインをしている姿に勇気もらい、
「写真一緒に撮ろう、頑張れよ」 親父ギャルに成りきる。

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さて試合開始、振りかぶって第一球、速球だ。なかなか良い球だ。
元メジャーリーガー3人を擁する打線を相手に初回を3人で抑えた。
もう大声援だ。
ストライクが出れば、大騒ぎ、撃たれれば、ため息。
ナックル・ボールに目を見張り、時々、ナックル・ボールが抜けて暴投になると、
観客のその落胆ぶりに、本当に彼らに愛されている
吉田エリの挑戦に熱い思いがわき出る。

来て良かった。
我が娘や孫娘を応援来ている雰囲気だ。
1回の裏、ツーアウト満塁のチャンスに1、2塁間を破るタイムリーヒットをうった。

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もう、歓声は止まらない。やった。やった。
何か知らないけど、メジャー・リーグでは味わえない、最高の興奮、
ああ、おもしろかった。

彼女はアメリカ人家庭でホーム・ステーをしながら、これからも野球するだろう。
体格や、性別に負けないで、頑張れ。
人生の成功は、結果ではない、
自分の命を燃焼さす事、これが生まれて来た理由だ。

敬遠を良しとする日本の高校野球に疑問を感じる。
あれでは長い人生の応援歌にはならない。
命を生かしきれない奴が、損したことになる。
地獄には優勝カップや金は持って行けない。

5回を終えたところで帰る。3時間半のドライブだ。
真っ黒な高速道路を走りながら、自分の人生の損得を考えながら走った。

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浅野秀二
6月3日

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