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アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

中国紀行(3) 揚子江クルーズ

2012年04月25日(水曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
12:03 AM

20120424_yangtze-river.jpg

友人から揚子江の旅の報告が欲しいと言われていた。
船の中でセミナーがあったので、簡単に記載しよう。

20120424_yangtze-seminar.jpg

揚子江は長い間、長江と呼ばれてきた。

西洋人が地元の人に川の名前を聞いたところ、
その地方の呼び名が、揚子江に聞こえたので、
この150年ほどは、この名前が一般的に
通用するようになったらしい。

20120424_seminar2.jpg

チベット高原の6621mの山から流れ、距離は6418km。
ナイル、アマゾンに次ぐ、世界第3位の川である。
水源地の標高は5800m、
流域の人口は3億9800万人。
中国の人口の3分の1、途方もない数字である。

流域の農地面積は中国全体の24%で348万ヘクタール。
穀類の40%、米の70%はここで生産される。

夏の雨季には川の深さは世界一となる。
三峡ダムの完成により、川は深いところで150~180m。
ダムの近くでは113mにもなる。
おかげで内陸2200kmの重慶に、
1万トンクラスの船が入れるようになった。

我々が乗った5階建てのクルーズ船も7000トンもあった。
重慶から上海まで2211kmあるが、
クルーズは重慶から武漢まで、1100kmの船旅だ。

20120424_dinner.jpg

クルーズ船は大小合わせて230隻あり、
中国人の間でもっとも人気のあるコースらしい。
これだけでも大変な経済的インパクトがある。

20120424_cruise-tourists.jpg

残念なことに、三峡ダム見学の日、
春には珍しく大雨であった。
残念ながらダムは見えなかったので、
パネル写真だけでも。
20120424_3gorge-dam2.jpg

重慶から武漢までの間、4つの街に停泊観光をした。

過去にこの地域は数百kmにわたって、
水位が50~100mも上がってしまった。
そのため、何千、何万という街や村が水の中に沈んだ。
人口の移動は130万人にもおよび、
川の両岸の山の上には、政府によって新しい住宅地が造られた。
それが600km以上の川岸に点在している。

20120424_relocated-houses.jpg

住民は山の上の新築高層住宅に追いやられたが、
もともと住んでいた居住空間の2倍になり、
新築で非常に喜んでいると聞いた。

しかし、この近代的新築高層アパートの住民が
泥で濁った川で洗濯をする姿は
やはりアンバランスであった。

20120424_laundry2.jpg

このような険しい山の頂にできた街は、
人の上がり下りが大変で不便極まりないだろう。

重慶から出発して、最初の700kmぐらいは
険しい山の中を下って行く。

20120424_suibokuga3.jpg

ヨセミテ公園のような美しい景色が続く。

20120424_suibokuga4.jpg

しかも連日の霧で、まさに水墨画の世界であった。

20120424_suibokuga5.jpg

しっかりと太陽が見えた日は、北京以外では1日もなかった。

20120424_suibokuga.jpg

1957年ごろ、ロシアの援助で初めて揚子江に橋が掛けられたが、
この20年で揚子江に掛けられた橋は180にもなるそうだ。
これはケタ違いの数字、すごい公共事業だ。

20120424_bridge2.jpg

中国政府はアフリカやアジアに限らず、
中国の金でアメリカの道路や橋、高速鉄道などの
インフラを整備したいと提案をしたらしい。
なるほど、これだけの公共事業をこの20年で、
中国国内でやってきたのだ。
それを海外でもやろうというのは当然だとうなずける。
造れば造るほど、技術は進化する。

20120424_bridge.jpg

このままいけば、中国の橋梁技術、高速鉄道建設技術は
どこかで日本に追いつくだろう。
いや、もう追いついている部分もあるかもしれない。
これから中国の世界インフラ整備の影響は、
国際社会にとって信じられないものとなる。

三峡ダム(幅2.3km)より高いダムは、
アメリカのフーバー・ダム、
ダムの長さでは3.8kmのアスワンダム。
しかし、発電量は世界一で、黒部ダムの200倍にもなるそうだ。
原子力発電で16基分、なにもかもがケタ違いだ。

20120424_3gorge-dam.jpg

途中、小学校に行った。

20120424_school-kids2.jpg

子供たちの目は光っていた。

20120424_school-kids.jpg

親の世代は美人やハンサムは、ほとんど見受けられなかったが、
子供たちはかわいい子が非常に多かった。

20120424_school-kids4.jpg

アメリカ人の年寄り夫婦が言っていた。
「あの子を養女で連れて帰りたい」
子供たちの表情からも、
暮らしが格段に進歩していることがわかった。

20120424_school-kids3.jpg

武漢からは上海までは飛行機で移動、1時間20分の旅である。
武漢は800万人都市。
それでも大気汚染で太陽は見えなかった。

20120424_asano.jpg

船に上でTAICHI(太極拳)に挑戦した。

20120424_taichi.jpg

軽い動きだが、汗が出る。
体を片足で支えられない。

20120424_taichi2.jpg

バランスが悪い。

20120424_dog.jpg

アメリカに帰ったら「三峡ダムは大惨事の恐れがある」
という新聞記事をみた。

20120424_article-3gorge-dam.jpg

帰ってから見て良かったと思った。
今後、洪水や地震が発生したとき、
あれだけの水を支えられるのか?
中国の公共事業の力が、これから試される。

なんにせよ、揚子江クルーズは一度見学をお勧めしたいですね。

20120424_asano-cruise.jpg

浅野秀二
4月23日

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中国紀行(2) 西安・重慶へ

2012年04月17日(火曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
12:02 PM

北京から西安まで飛行機で1時間半。
中国の歴史上、最大の領地と繁栄を誇った唐の都、
長安に移動した。

20120417_building4.jpg

長安は、秦の始皇帝が中国を統一してから
13の王朝の盛衰があった街である。

20120417_building2.jpg

内陸のせいか、北京以上に空気が汚れていた。
とても住みたいと思える街ではないというのが、
第一印象だった。

20120417_building3.jpg

玄宗皇帝が楊貴妃と遊んだ池には、行く機会がなかった。

20120417_cruise.jpg

1979年に発見された、史上最高の歴史的遺産
「兵馬俑」の見学が目的だった。

20120417_heibayou3.jpg

実は兵馬俑を見るのは2度目で、
最初に行った時ほどの感激は、正直、なかった。

20120417_heibayou2.jpg

同じツアーで来ていたアメリカ人の多くは、
すでにヨーロッパを見尽くし、行くところがなくなり、
ついにアジアに目が向き、中国に初めて来た人たちが多かった。
紫禁城、万里の長城、そしてこの兵馬俑を見た彼らは、
中国悠久の歴史と歴史遺産のスケールに、
声も出ないほど感銘を受けていた。

20120417_heibayou.jpg

大国アメリカが絶対に勝てない歴史遺産。
アメリカ以上のスケールの大きさである。
ヨーロッパが世界の歴史だと思っていた人たちにとっては
かなりのショックだったようである。

20120417_heibayou4.jpg

兵馬俑は1974年に井戸を掘っている農民によって、
偶然、発見された。
周囲57平方キロの広大な死後の世界で、
陶器でつくられた、約7000体の始皇帝を守る兵士の像と
始皇帝が乗った銅馬車がある。

20120417_heibayou5.jpg

夜は、唐の時代の歌と踊りのディナーショーに行った。

20120417_dinner-show.jpg

これを見ると、中国はこの時代に、
歴史のピークを迎えたということがよくわかった。

20120417_dinner-show2.jpg

唐の時代に、すでにラスベガスがあったのだ。

20120417_dinner-show3.jpg

20120417_dinner-show4.jpg

20120417_dinner-show5.jpg

20120417_dinner-show6.jpg

20120417_dinner-show7.jpg

その後、科挙制度の徹底で前例主義に落ち入り、
1000年の衰退をしたと思える。
それを変えたのが中国共産党の、ここ30年の歴史だ。

ここには一晩泊まり、次は重慶へむかった。
飛行機で一時間。
空港での中国人のマナーの悪さは、
昔と変わらず、妙に安心した。

北京が2000万人、西安は800万人、
重慶はなんと周辺の都市をすべて吸収して、
人口3100万人らしい。

20120417_building.jpg

空から見る街は、霧なのかスモッグなのか、よくわからないが、
街が見えないほど汚れている。
ここは丘陵地というか、渓谷や山ばかりの土地で、
揚子江の旅はここから始まる。

日中戦争時、国民党の蒋介石が、
「ここは日本から遠く、内陸で霧が多いので
日本が攻めにくい」と言う理由で、
一時的に首都を移したらしい。

「ここでは日本の爆撃があり、多くの市民が犠牲になった」
と聞いて身を縮めた。
その時の防空壕がまだたくさん残っているらしい。
今ではそこレストランなどを開業している人も多い。

高速道路にのって、景色を眺めていると、
山々には想像を絶するほどの数の新しい高層マンション、
アパートなどが建築されていた。

それもたった、ここ10年のことだそうだ。
何もなかったこの田舎街の山々に、
ニューヨーク以上の高層ビルが建っている。

一番発展の遅れている内陸の重慶の様子を見て、
中国の発展は20世紀後半から21世紀初旬の
世界史の大奇跡であると思えた。

元伊藤忠の会長で、
今は在中国日本大使の丹羽宇一郎さんが、
体を張って、中国と日本のもめ事を阻止したいと言っていたことがよくわかった。

なにかと今まで批判的な目で中国を見てきた。
しかし、その実力の前には敬服せざるをえない。

私と一緒にいたアメリカ人も全員が言っていた。
「中国は敵に回せない」
「やがてアメリカをしのぐ存在になる」

ナポレオンが言っていた。
「眠れる獅子を起すな」
しかし、すでに起きてしまった獅子と、
日本や世界はどう向き合っていくのか?
いずれにせよ、むずかしい。

20120417_asano.jpg

浅野秀二
4月17日

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中国紀行(1) 北京の空は青かった。

2012年04月09日(月曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
2:20 PM

3年ぶりの北京である。
期待していた以上に、北京の空が青い。

20120410_blue-sky.jpg

高速道路から見る風景は以前と比較して
木が多く植林されていた。
昔は禿げ山だったが、万里の長城の付近まで緑が多くなっていた。
北京の空気汚染が多少は改善されているような気がした。

20120410_great-wall.jpg

今回はアメリカ人の団体ツアーに参加した。
揚子江クルーズである。
いつもならいる中国系アメリカ人は今回、一人もいない。
他の参加者たちは年齢が高い(背も高い)ので、
みんな本当に優しいジェントルマンとレディーたちで快適だ。

20120410_great-wall-group-pic.jpg

北京のホテルに3泊した。
2日目は紫禁城、天安門広場、頤和園(サマーパレス)を観光。

20120410_imperial-palace.jpg

そして3日目は万里の長城と明13陵の観光であった。

北京の変貌には驚いた。
宿泊したホテルは金融街にあった。

20120410_financial-street.jpg

まぁニューヨークで言えば、ウォール街と言ったところか。
とにかくすべてが新しいので、
ニューヨークより街が綺麗なのである。
整然としていて、ゴミは落ちていないし、落書きもない。

20120410_financial-street2.jpg

ホテルの周りにはさすがに物売りもいたが、
失業者・浮浪者のような人にはほとんど出会わない。
空気が比較的良かったので2日にわたって周辺を走ることもできた。

20120410_financial-street-jogging.jpg

20120410_financial-street-jogging2.jpg

付近のマンションは20坪でも最低60万ドルはするという。
ガイドさんが買ったマンションは、
買ってから13倍もの値上がりをしたと笑っていた。

この30年での北京の変貌は信じられない。
通訳ガイドさんは、アメリカに行ったことはないと言うのに、
英語は完璧だった。
この5年で33カ国に行ったが、
彼ほど素晴らしいガイドには会わなかった。
経済、社会、歴史、なんでもござれ、
ユーモアがあって、態度も素晴らしく良かった。
人物は一級である。

20120410_guide.jpg

彼は、鄧小平の政策で中国は大きく変化したのだと、
何度も繰り返し言っていた。
それにしてもこの巨大な中国のこの変貌は、
鄧小平氏の存在だけでは説明しきれない。
明らかに資本主義と共産主義、一党独裁の
融合のお陰だと言える。

ただ、これからはその弊害が出てきそうだ。
甘やかされて育った一人っ子や高齢化社会など、
日本と同じような問題に直面するだろう。

この3日間で特に嫌な場面には出会わなかった。
3日目の朝は、フートン(胡同)地区を見て回った。

20120410_rikisha.jpg

力車で狭い、昔ながらの古い街を走った。
また、一人住まいのアーティストの女性宅にも訪問した。

20120410_artist-room.jpg

かわいい犬が出迎えてくれた。

20120410_artist-dog.jpg

だが結局、彼女の作品の即売所に変わった。

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20120410_artist-bottle.jpg

さすが、商売の国、中国だ。
この30年で大きく変貌したとはいえ、
昔の北京の様子は残っているところもあった。

日頃のジョギングの成果か、
今回は簡単に万里の長城を2区間、登れた。
下りは一部、かっこつけて走った。
ついに万里の長城でジョギングができた。

20120410_great-wall-jogging.jpg

登れて喜んでいたが、
私より年寄りのアメリカ人たちもどんどん登っていた。
まだまだ頑張らないといけない。

途中でたくさんの中国の若者に会った。

20120410_great-wall-young-chinese.jpg

それにしても中国の人々は優しくなって、洗練されてきた。
特に若者は明るくて、非常によく笑う。
彼らの未来が明るいことを象徴しているような笑顔を何度も見た。

平和は素晴らしい。
昔は行けなかった中国にこうして行けるのも、
平和と友好のお陰だ。

インテリのガイドさんから反日的な言葉は一切聞かれなかった。
実はこれも初めてのことである。
過去3回中国に行ったことがあるが、
いつも反日的な言葉が聞こえてきた。

彼は日中の間には誤解と不安があり、
お互いコミュニケーションをしないといけないと力説していた。

ホテルの前には高級ショッピング・センターがあった。
地下にある高級スーパーに行った。

20120410_supermarket.jpg

見るべきものはなかった。
野菜や果物はすべてビニールで包装されていた。

20120410_supermarket-banana.jpg

このような売り方は、我々には違和感がある。
新鮮さが感じられない。

20120410_supermarket-fruits.jpg

ワインは一番安いもので20ドルだった。
トレーダー・ジョーの「チャールス・ショー」ワイン、
価格1ドル99セントに慣れている私には、異常に高く感じられた。

中国の新聞『CHINA DAILY』 を買った。

20120410_china-daily.jpg

「日本のプロ野球の名声はダルビッシュの右腕にかかっている」
という記事が写真入りで載っていた。

20120410_darvish.jpg

東日本大震災の津波で流された幽霊船がアラスカ沖まで流れつき、
アメリカ沿岸警備隊によって大砲で沈められたという記事もあった。

20120410_ghost-ship.jpg

浅野秀二
4月9日

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