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アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

小国の幸福 ~スイスの旅 その2~

2013年07月30日(火曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
11:41 AM

スイスは九州ぐらいの広さに
約760万人が住んでいる。

国の面積こそ狭いが、
公用言語はドイツ語、フランス語、
イタリア語、スイス語の4カ国語。
その上、国民のほとんどが英語も使う。
この多様性、柔軟性こそ、スイスの強さだと理解した。

20130729_stbernard.jpg

一時、壊滅状態に陥ったスイスの時計業界は
見事に復活した。

日本の時計メーカーは
セイコーやシチズンくらいしか知らないが、
スイスはロレックス(ROLEX)、オメガ(OMEGA)、
ブライトリング(BREITLING)、パネライ(PANERAI)、
スウォッチ(Swatch)など、有名ブランドだけでも18社もある。

20130729_rolex.jpg

その他、大小合わせると、600社もあり、
合計売上高1兆4580億円とは正直、驚いた。
スイス通貨高や高い給与にもかかわらず、
2012年は19.1%も伸びている。

20130729_watch.jpg

堺屋太一氏の言葉を借りれば、
日本社会は、供給者の論理であり、
旧帝国海軍・陸軍・官僚組織など、
すわなち、規格大量生産型の工業社会を
形成するためだったとなる。

そしてそれにマッチした日本の流通業は、
旧態依然とした柔軟性のないチェーンストア理論と標準化の中にあると
解釈できないか?

アメリカであれほどもてはやされた、
アルバートソンやシアーズの凋落は明白だ。
ただし、ウォルマートは中産階級以下を対象にしているので
規格大量生産型でもよい。

最強のスーパーマーケット、ウェグマンズの商品政策は、
1967年当時、すでにこのように述べられている。
「誰もがやっていない商品を扱い、
まだどこでも提供されていない商品、ユニークな商品のみが、
高い利益を生み出すのだ」
その商品政策の結果、ウェグマンズは
生鮮、惣菜、フードサービス重視の店づくりをした。

日本の成功の仕組みは、
低賃金の韓国、台湾、中国を前にもろくも崩れつつある。
ユニークさと付加価値で再挑戦が必要だ。

スイス時計業界の隆盛をみて、
スイスの挑戦に学ぶものがありそうな気がした。
(短絡で言葉が不十分ですみません)

さて、そんな理屈はともかく。
アルプスの大自然の景観と比較すれば
人間の営みなど、小さなことに思えてきた。

20130729_asano.jpg

標高4478mのマッターホルンの展望台(2288m)まで
登山鉄道で登った。

20130729_view.jpg

山をバックに赤ワインで乾杯だ。

2013079_matterhorn-asano.jpg

4000メートル級の山々の大パノラマだ。

いつも富士山が世界一と思ってきたが、
マッターホルンの頂上はユニークな形をしていて、
ものすごい迫力がある。

2013079_matterhorn2.jpg

「世界一の山はたくさんある」ということがわかった。
ここでもユニークさが重要だったのだ。

美しいスイスの自然と最高の気候に、
無性に山歩きがしたくなった。

20130729_asano2.jpg

ここにはお金には代えられない感動がある。

20130729_matterhorn.jpg

マッターホルンに行くために、シェルマットの街に泊まった。
そこは日本人観光客で溢れかえっていた。

2013079_tourists.jpg

地元の人いわく、
「毎年6月から9月まで、
Japanese Invasion(日本人の侵略)があります。
でも彼らはとてもいい客で、大歓迎です」

2013079_tourists2.jpg

銀座並みの日本人の群れが
こんなところでみられるとは思わなかった。
この町が日本人に人気があるとも知らなかった。
世の中、知らないことばかりだ。

<By 浅野秀二>

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小国の幸福 ~スイスの旅 その1~

2013年07月17日(水曜日)
カテゴリー:
  • 旅先からのつれづれ日記
  
3:46 PM

人生で一番楽しい「旅」を
仕事にしてしまった僕の旅の楽しみは、
とにかく一日も早く家に帰ることである。

家に帰れば、愛犬のチビとモカが大歓迎してくれる。
100601_chibi-moca.jpg

自宅にいる時こそが非日常、
たまらなく快適なひと時である。

そうは言いながらも、帰国日を楽しみしつつ、
やはり休暇は再び旅に出ることになった。

穴場の旅行が好きな僕は、
誰もが最高の観光地と認めるスイスなどに
特に興味は持てなかった。

ところが、人生と同じで、
人は時々、希望しないことに足を突っ込み、そこにはまる。

20130717_glacier6.jpg

サンフランシスコからニューヨーク経由で、
スイスのチューリッヒに着いた。
20130717_zurich3.jpg

チューリッヒ市の人口は36万人、大都市圏を入れると147万人。
スイス最大の都市圏だそうだ。

今まで見慣れた各国の国際空港と違って、
こじんまりとした地方都市のような静かな空港に驚く。
これがスイスの表玄関か。
20130717_zurich-airport.jpg

不安な気持ちを抱きながら、
空港でホテルのシャトルバスを待った。
やがて、迎えのバスが来た。
朝の10時15分にホテルに着いたが、
まだホテルはチェックインの時間ではない。
20130717_zurich2.jpg

一応フロントに聞いてみよう。
金髪で背の高い、綺麗なお姉サマだ。
「何時にチェックインできますか?」
「部屋の掃除が終わっていれば、今でもOKですよ」
と彼女は笑顔で答えた。

すぐ部屋に入れた。
なんと親切で余裕のある社会だ。

機内では2時間しか寝なかったが、休まないで街に出よう。
20130717_zurich.jpg

ホテル近くにトラム(市電)の駅があった。
20130717_asano-train.jpg

しかしコインが手元になく、切符が買えない。
若くて美人な地元の人に聞きながら、
なんとかクレジットカードで買うことができた。
喜んだのもつかの間、あんなに苦労して切符を買ったのに、
改札には出入口がなく、拍子抜けした。

列車にも乗ったが、
ここでも改札口で切符を調べるにくる駅員がいなかった。
20130717_asano-train2.jpg

誤魔化そうと思えば、いくらでもできるのだ。
しかし、日本人のプライドがそれを許さない。

駅員が多く、誤魔化すことができない完璧な日本の姿が、
これを見ると、妙に人件費の無駄な仕組みに思えてくる。

翌日は23スイスフランですべての公共機関に乗ることができ、
博物館・美術館などを利用できる切符で観光した。
これは確かに安い。

チューリッヒ湖の遊覧船に乗った。
20130717_lake-zurich-swimming.jpg

私のテーブルの前に老人が座った。
元IBMの研究員で、ロセオと名乗った。
20130717_asano-roseo.jpg

「スイスは教育レベルが高く、職業訓練制度は優れている。
技術コンクールでは韓国には負けるが、世界有数の国だ」
(韓国か…日本ではなかったのが悔しい)

スイスの一人あたりの国民所得は、$51,170。
20130717_lake-zurich.jpg

ルクセンブルグ、ベルギー、シンガポールに次いで世界4位。
上位の国はすべて小国である。
ちなみに日本は15位で$34.640。

ロセオとの会話は弾んだ。
「スイスではイノベーションが日々行われ、
特に医療・薬、機械、時計、金融、観光、IT産業で
ヨーロッパのどこにも負けない。
最も成功した豊かな社会なのだ。
失業率は3~4%、この湖の周辺の家は5~6億円以上、
世界の金持ちがここに住んでいる」
もっと話していたかったが、船が陸に着いてしまった。
「さようなら」

3日目の夜、ツアーの団体に合流した。
アメリカ人とオーストラリア人、合計32名の参加。
夕食時に、各々が自己紹介。
旅のコーディネーターはイタリア人の女性。
明日からはいよいよアルプスに行く。

翌朝、簡単な市内観光後、
サンモリッツ(St. Moritz、標高1800m)に向かった。
20130717_stmoritz.jpg

有名なスキー・リゾートで、
3000mを超える山から一気にすべり降りることができる
最高のスキー場である。
20130717_stmoritz4.jpg

行く途中はカリフォルニアのヨセミテ公園を、
もう少し大きくしたような大景観だった。

その姿の美しさに感動の声を挙げながら、
2600mのユリア峠(Julier Pass)を越える。
20130717_stmoritz2.jpg

周辺は3600mを越す山々が広がっている。
20130717_stmoritz3.jpg

街に着くと、馬車が待っていた。
馬車で片道約15kmかけ、
氷河の近くまで行くと言うのだ。
20130717_glacier3.jpg

氷河が解けた川は、ミネラルの影響で乳白色。
この5年で氷河のサイズは半分ほどになったらしい。
20130717_glacier4.jpg

地球温暖化の影響を最も受けているのはスイスだ。
20130717_glacier2.jpg

今度来るときには氷河に見えないかもしれないと説明を聞き、
たくさんの写真を撮った。
20130717_glacir.jpg

20130717_glacier5.jpg

その後、ヨーロッパで一番水が澄んでいる、
サンモリッツ湖(Lake St. Moritz)を見ながらホテルへ。

水を清く保つため、エンジン付きのボートは禁止されている。
スイスは環境問題の意識が高いのだ。
この町はヨーロッパ、いや世界のリゾート地。
世界の富豪が住む町らしい。
スイスの美しさは、想像以上だった。

途中たくさんのインド人と中国人のグループにあった。
20130717_india.jpg

歴史は動いているのだ。
この美しさと快適さを見て、彼らは何を感じるのだろうか?
やがて彼らの国から移民が押し寄せるだろう。
その兆候はすでにみられる。

<By 浅野秀二>

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I Love My JOB

2013年07月05日(金曜日)
カテゴリー:
  • アメリカからのメッセージ
  
4:24 PM

いつも頭の中を回っている言葉がある。
時々、口からもメロディーをともなって出てくる歌がある。

「I love you, yes I do
愛しているよと 君に云いたくて
そのくせ 怖いのさ
君に今度 逢うまでに
みつけておこうね
その勇気を」

加山雄三の歌だ。
今日はYOUの代わりに、私の仕事と置き換えたい。

「I love my JOB,
はっきりと宣言をしたい。
皆様のお蔭でこうして
好きな仕事させていただいています
心から感謝しています。」

20130704_sf2.jpg

今年の前半も忙しかった。
5月中旬、日本から帰ってきた2日後、
5月14日の結城先生に同行。
その後7月3日まで2日間を除いて、
出っぱなしだった。
約50日間の長丁場だ。

正直体調を気にした。
平均すれば睡眠時間は4~5時間しかない。
睡眠だけは十分に取ろう、
風邪だけはひけない。
最初の23日間は家にも帰れない。

空港から町へ、町から空港へ、
ホテルからホテルへの移動。
洗濯は毎晩するように心がけた。
夜遅い食事は避け、軽くワインを飲み、熟睡するだけ。

20130704_lv.jpg

この間、ラスベガス5回、
ニューヨークとロスは3回、
サンフランシスコ、サクラメント、シカゴ、ダラスは
それぞれ1回ずつ行った。

これはシカゴの高層マンションから見た景色。
20130704_chicago2.jpg

奥に見えるのはミシガン湖。
20130704_chicago.jpg

ラスベガスでは、
トレーダージョーのマネジャーと5回も会った。
すっかり友達になった。
「いつでもお前と一緒に日本に行ってもOKだ」

ラスベガスでは次のツアーがくるまで2日間あったので、
オーガナイザーと彼の奥さんと3人で
モニュメントバレーまで行くことになった。

20130704_monument-valley.jpg

「大西部の奇観はすごい。
ここが地球とは思えない。
宇宙のどこかにいるようだ!」と喜んでいただいた。

20130704_monument-valley2.jpg

ところがレンタカーで往復16時間もかかったので、
2人とも寝不足でフラフラ。
何とか無事に帰ったが、危険な旅であった。
無謀がまだできる若さは素晴らしい。

ニューヨークでは2度も雷雨にあった。
飛行機がキャンセルになり、
別の便で7時間遅れの深夜12時過ぎに
別の空港に到着。

20130704_ny3.jpg

その翌日、1時間半もかけて
Wegmans Foods Marketに行ったが、雷雨で停電。
そこで別のWegmansへまた移動したが、
そこでは大雨に降られた。

踏んだり蹴ったりなニューヨークであった。
20130704_ny5.jpg

今回、地元サンフランシスコ周辺の視察が意外と少なかった。
20130704_sf.jpg

今年前半はサンフランシスコ、サクラメント方面が多かったが、
秋は再び、東海岸とダラスが中心なる。

インタビューを通じて、
いくつか印象に残った言葉がある。
ニューヨークのホールフーズでの出来事。

20130704_dallas-wholefoods.jpg

創業者、オーナー社長のジョン・マッケイ氏は
店舗訪問をする時、会うすべての従業員に聞く言葉があるらしい。
「Are you happy?
(貴方は幸せですか?ホールフーズで働いて幸福ですか?)」

私はこの話に感動した。
ジョン・マッケイ社長の最大の関心事は
社員の幸せだったのだ。

フォーチュン誌で
2013年の働きたい企業ランキング17位に入った
「コンテナー・ストア」のマネジャーへ質問した。
「どうしてコンテナー・ストアは働きたい会社の
上位に常にランクインしているのか?
その理由は?」
20130704_containerstore.jpg
彼女は瞬間的に答えた。
「Emotionally, I love my company and my people.
(感情論よ、会社や働く仲間が好きでしょうがないの)」

理屈はいらない。
そこに愛があれば、働きたい会社ということか?
もちろん、経営には金も福利厚生の充実も必要だ。
それ以上に大切なものは、信頼や愛や仲間意識だ。

金ですべてが買えると言ったホリエモンも、
相場師、村上代表も消えて久しい。

ユニクロの柳井社長は仕事をする奴は1000万円稼ぎ、
能力もない人間は100万円でも良いと言った。
それはアメリカの能力主義のようだと
考える人もいるかもしれない。
しかし、アメリカは必ずしもそういう社会でもない。
成功報酬だけで社員のやる気を出させているわけはない。

20130704_dallas-central-market.jpg

物心両面も満足させようとした稲盛先生は
考え方でJALを立て直した。

人の幸せを願う考えこそが、
アメリカの流通業の成功の原因だ。
アメリカ経営の精神面を知ることが、
米国視察の大きな目的なのである。

Wegmans、Trader Joe’s、Whole Foods、Zappos。
それはアメリカの民主主義の
普遍の価値からくるものかも知れない。

日本では、己の野心や欲望、幸福のみを追求するのが、
アメリカの強欲な資本主義と捉えられている。
金融やIT関連ではそういう一面もある。
それはフロンティア精神とも言える。

野球で言えば、
野茂はすべてのリスクを承知で
自分の野望と夢を賭けた。
そして誰にも負けない成績を残した。
彼こそアメリカの理想とする英雄像がある。

20130704_ny6.jpg

それと比較して、松井秀樹氏は
ニューヨーク・ヤンキースの4番打者として
特に突出した成績を残したとは思えない。
だがヤンキースは、7月29日に彼のお別れ試合をする。
これは非常に特別なことだ。

なぜか?
松井こそ「For the team(チームのために)」という
アメリカの一面を代表する具現者であったからだ。
チームのため、ファンのため、世のため、
仲間や、人の幸福のために自己犠牲も伴わない精神だ。

野球には犠牲バンドや犠牲フライもある。
『葉隠』の「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」は
チームのため、国のための自己犠牲の精神と似てはいないか?

アメリカの小売業を勉強することは、
数字や形や、知識とともに、
考え方を学ぶことのように思える。

さあ、50日続いた出張も終わる。
すべて無事??に終わった。
皆様に心から感謝。
もっと忙しくしていただきたい。
肉体の限界に挑戦したい。
I Love You.

20130704_ny7.jpg

<By 浅野秀二>

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