商人舎

中山政男のPOP語り

中山政男のPOP語り

[第7回] POPで迷ってしまうお客

2012年05月17日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
12:04 PM

コモディティとノンコモディティ

結城義晴

POPはシンプルにすればいいんですかね。
でもシンプルな方が難しいし、作り手のセンスが出ますよね。

中山政男

そのとおりですね。
どのPOPでも全てシンプルがいいとは言いませんが、
懲りすぎてしまって残念なものが多く見られます。

結城

異常なくらいですね。
外国のスーパーマーケット関係者がこれらのPOPを見たら、
きっと驚きますよ。

ウォルマートは商品の6割がコモディティで、
4割がノンコモディティなんです。
その4割のノンコモディティに対してショーカードをつけたり、
説明をしたりするわけです。

ノンコモディティでも、お客さんはよく知ってますから、
それらが売り場のあるべきところにキチンとあって、
いま販売価格はいくらなんだということが分かって、
間違わないためにキチンと商品名が書かれていれば、
お客には十分なんです。

コモディティ商品は、お客はみんな知っていますから、
わざわざコカ・コーラと商品名を書かなくても価格だけでいいわけです。

中山

そう、本当はお客にとってはその方が見やすい。

結城

日本のスーパーマーケットも売上げの6割から7割は
コモディティでしょう。
そのコモディティが今日はいくらかということを
お知らせするのは意味があるんですね。

でもそれ以上に、ノンコモディティの「POP」が
売り場に氾濫しているとしたら、
必要なコモディティが見つけづらい、
お客にとっては不便な売り場になっているということです。

売り場のバランスが大事なんですね。
一方で、均一セールにもかかわらず、
商品名と価格のPOPタイトルが売り場にズラリと並んでいる。

.

言葉の氾濫

中山

こういうことが現場で起こっているんですね。
1つの売り場に
「お買い得」「超お買い得」「超特価」「店長の一押し」…
と、同じようなタイトルのPOPがたくさん貼り付けられている。
また「広告の品」のタイトルより目立つものがあるから、
チラシを片手に広告商品を探しているけど、見つけられない。
しかもタイトルが多いから、いっそうわからない。

お買い得品が一番安いのか?
ご奉仕品が一番安いのか?

何が一番安いのかがわからないから、お客は迷いますね。
企業のルールをお客にまで伝えなくてはいけないんだは思うんですが。

結城

それが問題ですね。
ウォルマートは基本的に「エブリデイ・ロープライス」政策です。
たとえばコカ・コーラ2リットルを98セントで1年間、
売価を変えずに売るわけです。これが基本。

それ以外の一部の商品を「ロールバック」として、
ある時期だけ売価変更して販売する。
ウォルマートには、この2つのルールしかない。
だから非常に分かりやすい。

中山

そうですね。
その企業の特色、ルールが決められて、お客に浸透している。

結城

コカ・コーラ2リットル、98セントをメーカーと交渉して、
78セントで売るときに、「ロールバック」とするわけです。

売れていくとメーカーも利益が出ますから、
68セントとしましょうとなった場合、
それをまたロールバックとする。

「エブリデイ・ロープライス」と「ロールバック」しかない。
それを私は「正札販売」と言っているんです。

それに比べて、日本の売り場は
「お買い得品」の、
「今月の特売」の、
「お勧め品」の、、、
何が何やらわからない。

中山

均一セールなら「99円の市」というような
大きなパネルを一つ掲げれば、済むわけですね。
それなのに商品名に99円の価格を表示した、
同じようなプライスカードがズラリと並んでいる。
これが、今、流行っているんですね。
もしかしたらお客は大量のPOPにびっくりして、
購入することもあるでしょうが。

結城

その時だけでしょうね。
やがてお客は飽きますし、気にしなくなるでしょうね。

中山

私は何十年とPOPのデザインにかかわってきましたから、
こういう状況をみるとちょっと悲しいんです。(笑)

結城

そうでしょうね。
でも、ある種の麻薬みたいなものですね。
お客をいい気分にするというのではなく、
作ることが目的になってしまっている、
作らずにいられないという意味ですが。

.

20120517_tomato.jpg
<POPの乱れもなく、分かりやすく掲示している>

つづく

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[第6回] POPの事業仕分け

2012年05月10日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
10:15 AM

最低線の売り場づくりからはじめる

中山政男

年間、かなりの店を見ていますが、
POPが乱れている店は、
売り場の陳列も同様に乱れているところが多いですね。

結城さんがさきほど言われたように、
やはり商品ありきなんですね。
商品にまず語らせる。
それでも語れないところがあるだろうから、
それをPOPで補って語らせる。

結城義晴

品名・容量や価格は必需の要素ですね。
それにプラスして、適度なショーカードも必要です。
こだわった商品の、その理由を説明するといったように。

中山

例えば以前、クレソンの提案をしました。
肉の付け合わせだけじゃなく、
カツオやヒラメと一緒にカルパッチョ風にしたり、
ジャコとサラダにしたり、鍋物の具にしてください
っていうメニュー提案だったんですが、
クレソンが3倍から5倍位売れたんですね。
しかも、カツオやヒラメも売れた。

POPも使いようによってはすごく効果がある。
POPひとつで、売り場って発展していくと思うんですね。
だからこそ「POPの仕分け」が必要だと思うんです。
要るPOPなのか、必要のないPOPなのか。
そして売り場をすっきりさせようよ、見やすくしようよって。

結城

そうですね。

中山

まず、基本的に必要なプライスカードを取り付けてみて、
次に必要な商品にショーカードを、
といったように、コーナー全体を見ながら進める。

結城

そうすれば仕事も相当楽になりますよね。

中山

そうです。
作業が相当省けてきます。
一回整理し、必要があればバラエティを広げればいいんです。
もちろん売り場には楽しさも必要ですし。

一番もったいないのは、POPづくりに無理、無駄があって、
費用が余計にかかかっていることなんですね。

そしてそれを管理する人は誰なのかが大事。
様々な方面から、いろいろな情報が入りますから、
あれもこれもと、現場でどんどん足していくと、
益々POPの内容が盛りだくさんになりすぎてしまいます。
私は、それはかえって、
お客様に親切だとは言えない結果になってしまうと思うんです。

結城

派手にPOPをつけたら、
たまたま売れてしまったりすることもある。

中山

そういうことがあると、
「このPOPで売れたんだ」と思ってしまいます。
ひどいPOPをつけたら本来、バイヤーには叱られます。
でもたまたまそれが売れたとしたら、
このPOPを全店につけろと指示が出ますよね。
でも、全てがその方法、そのPOPで売れたとは思えないんですよ。

結城

う~ん。なるほどね。

.

マネジメントの問題

中山

結城さんが以前、商業界の月刊『食品商業』の中で、
「POPが危ない、チラシが恐い」という特集をしましたよね。
今でも変わらない店はあります。

さっきも言ったように、
ある程度の基本を決め、整理することで、
作業効率もよくなり、コストダウンもできる。
売り場全体に自然に気配りが行き届き、
清潔感がアップする。

一度、それぞれの企業なりの基準を見直そうと
指導してるんです。

結城

POPの原則はあるんですよね。
今はそういった原則を学ばないんでしょうかね。

中山

大手企業でも、あれ…?と思うような手書きPOPが、
急に増えてきたりするのを見かけます。

結城

情報を出すということなんでしょうが、
でも、社内できちんと議論し、進めないといけませんね。

ジャズのアドリブと同じで、
アドリブをやるのはここからここまでというルールが必要ですね。
しかもプロのアドリブ。
素人のアドリブはまったく聴けませんよね。

それと同じことで、基本のPOPがあって、
手書きPOPのアドリブがある。

中山

まったくそうですね。

結城

1つはマネジメントの問題です。
マネジメントとは、
いかに成果を上げ、利益をきちんと出すかということですけども、
今は利益が出ない方に向いているようです。
すなわち、売上至上主義が蔓延しているようで、
POPもたくさん作れば売上げがあがると、
勘違いされている節がある。

中山

そうです。
一枚の用紙の中でも盛り込みすぎなのに、
それをもう一枚、もう一枚と付け加える。
一枚では物足りない気になってしまうんでしょうね。

.

20120503.jpg
<対象商品にプライスカード、必要に応じてショーカードを
きちんと乱れなく取り付けている売り場>

(つづく)

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[第5回] 商品に語らせろ

2012年04月26日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
11:34 AM

経営戦略とPOPの関連付け

結城義晴

僕はアメリカ視察の中で、
「商品に語らせろ」と主張しています。
商品がまず語って、POPなどは、
その商品の特性とマッチしていないとダメなんです。
POPはあくまで脇役ですからね。
POPが主役というのはちがう。
POPを売っているわけではないですから。

中山政男

その通りです。

結城

お客さんはPOPを買うわけではないですし。
いや、芸術的なPOPで、
「買っていきたい」と思えるくらいのものならいいんですけどね!
素人の、統一の取れていない、
何が言いたいのか分からないようなPOPが
日本の売り場には氾濫しているということになるんですね。

中山

それなりのコンセプトを持った店、
例えば「安売りでワーッと売る」っていう店なら
POPを多用してもいいと思いますが。
ただ、最新の冷凍ケースなど什器にこだわっていても、
POPがめちゃくちゃでは、
全体の雰囲気がぜんぜん合わないのでもったいないですよ。

結城

でもね、ディスカウントの店なんか、
例えばアメリカのアルディだとか、コストコがそうですけど、
そういうところにはお金をかけませんよ。
POPにお金をかけていたらディスカウントできないんです。
そういう店は徹底して、標準化して、
シンプルなPOPをつける。

逆に、きちんとしたクオリティのあるものを売る店は、
やっぱりプロが作ったPOPをつける。
アメリカの小売業は経営方針や戦略と、
オペレーションや現場が一貫しています。

20120426-whole-foods.jpg
<アメリカ・ホールフーズの「商品が語っている」売り場と脇役のPOP>

.

流行のコトPOP、手書きPOP

中山

こういう内容のPOPがね、今、多くなってしまっているんです。

結城

(悪い例を見ながら)う~~~ん。

20120426-yuuki-nakayama.jpg

スタッフ

黒地に文字をのせるというのは、流行なんですか?

中山

そうですね。
私も黒板POPとして教えているわけですが、
黒地だから悪いのではなく、内容と作り方の問題です。

ある店が始めたんですよ。
それで確かに商品が売れたということが伝わり、
これはいいということになり、真似をし、
広まっていったわけです。
たしかにこのように黒だけに限らず、
ベタ塗りに抜き文字は目立つのですが、
どの店でもこの作り方を真似てしまうと、
内容が伴わない場合は、
逆に効果が得られないんですよ。

.

サービス残業の問題

中山

また、このようなPOPをつくるのに、
仕事が終わった後に時間をたくさん費やして、
作業しているということも聞きます。

結城

サービス残業ですね。

中山

本当にこれでいいんだろうかと思うことがあります。
もちろんPOPにはいろいろな種類があるわけで
時間がかかることも分かりますが、
この内容のPOPにこんなに時間をかける必要があるのかと思う。

けっして適当にやれと言っている訳ではありませんが、
もっと効率を考えないといけないのではないでしょうか。

結城

労働基準法違反まで奨励するかのごときPOPづくりは、
意味がありません。
マネジメントの問題がPOP制作現場にも、
出ているということですね。

中山

(赤地に緑の文字のPOPを見せながら)
これをつけていた店の店長と険悪になったことがあるんです。
使われている文字はタイトル文字用で、
しかも色づかいが補色だから、
お客さんは読みづらいですよね。
だから、これは見づらいではないですかと言ったら、
「売れているんだから何が悪い!」と怒るわけです。

結城

色に関する基礎知識の問題ですね。

.

20120426.jpg
<ケース、POPとも上品にコーナーづくりをしている>

つづく

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中山政男プロフィール

株式会社POP研究所代表取締役

日本のPOP広告研究の第一人者として、POP広告40年の経験と実績をもとに、POPツールデザイン・制作、また各企業店舗の活性化に取り組む。

全国のスーパーマーケットや各種小売店の、読みやすく、美しい、訴求力のあるPOP広告作りの指導実績は高く評価されている。手作りPOP用具開発、またコンピューターPOP制作のソフト開発にも多数参加。

全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会等のPOPコンテスト審査委員歴任。

現在スーパーマーケット数社のPOPコンサルタント、POP広告店舗診断で全国を奔走中。

株式会社POP研究所

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