商人舎

中山政男のPOP語り

中山政男のPOP語り

[第10回] ショーカードへの取り組み方

2012年06月07日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
10:02 AM

言葉が浮かばない

中山政男

POPをつくるとき一番困るのは、
多くの方が「ショーカード(商品説明カード)」の、
文章部分を書くことが苦手、ということです。
コピーを作るのに、どうも迷っているような感じがします。

イチゴが5種類並んでいても、
みんな「甘くて美味しいイチゴ」になっている。

商品と向き合えば、
それぞれの違いがコピーに生かされるはずです。

セミナーでも、「コピー集を作ってもらえませんか」と、
言われることがよくあります。

結城義晴

商品特性を明確に理解する必要があるんですね。

中山

コミュニケーション不足の傾向もあるんでしょうね。
バイヤーが惚れこんで仕入れたものが、
甘いのか、辛いのか、酸っぱいのか。
きちんと情報として提供しないなんて、おかしいですよね。

昔の話ばかりでもいけないんですが、
自分たちのころは、
バイヤーが商品内容の原稿を出してくれなければ、
POPは書けなかったんですね。
原稿に尾ひれをつけて長くしたり、短くしたりするのは、
たしかにコピーに慣れているPOP担当の自分たちの方がうまい。
だからそこはやりますが、まずは原稿を出してもらう。

機械化したことの影響もあるんでしょうね。
機械が用意しているコピーやタイトル、
保存してある文章を使えばよいということになりますからね。

結城

機械化するとコピーは簡単ですね。

中山

昔、イトーヨーカ堂の売り場を皆が見に行き、
真似しようとしましたから、それと思いは似ているような気がします。
でも、売り場にこれだけのPOPが氾濫していると、
商品より目立ってしまいます。

結城

何度も言うようですが、
商品で語らせることが大事なんです。

中山

気持ちはわかるんですね。
パソコンの画面で見ていると、
「あ、ここにもう一色つけたいな」
「ここにも飾りをつけたいな」
「書体を変えてみようかな」
といった気持ちになりがちです。

でも担当者が10人いて、
10人全員がそれをやってしまったら、
とうぜん、売り場にまとまりがなくなります。

20120607_nakayama-yuuki.jpg

.

デザインの基本は「引く」

結城

商人舎のコーポレートデザインを作ってもらったときに、
マニュアルをいただいたんですね。
「名刺に使うときはこうで、ここまではいいけど、
こういう使い方はだめ」だって。

そういうルールがPOPにも必要なんだけど、
タガがはずれちゃてるから何でもありになってしまう。

そういえば、最近、名刺もひどいですね。

中山

デザインと称されるもの、
全体的にこだわらなくなってきていますね。
パソコン操作に慣れ、イラストをいくつ入れても
抵抗がなくなってきているように見えます。

一番勘違いされているのは、
デザインの基本は
「引く」ところから始める
んですね。
でも皆、「足す」ことから始めている。

結城

それはとても大事なことですね。

.

20120607_nakayama.jpg
<コーナーづくりがとてもきれいで、カテゴリー表示がきちんと取り付けられている>

つづく

コメント (0)

[第9回] 業績とPOPの関係

2012年05月31日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
10:03 AM

いいPOPのお店もたくさんある

結城義晴

最近は常識から外れているPOPがたくさん見受けられますね。

中山政男

内容だけではなく、
取り付け方にも気配りが必要ですよね。
もちろん、ひとつの店でも、
全体のPOPが乱れているわけではないのですが。

結城

業績のいい店はこんなことはないですね。
実際、お持ちいただいた写真の中で、
いいPOPだなと思うのは
サミット、オーケー、ヤオコーなどですから。

スタッフ

ある取材で、
記者がヤオコーの商品本部長に、
「最近『コトPOP』が流行っていますが、
ヤオコーでは販促にどのように
活用していますか?」という質問をしたんですね。

そしたら、商品本部長は言下に
「ウチではやりません」と言ったんです。

その理由は先生も言われたように、
資材コストやインク代もかかる。
しかもデザインがばらばらになるから
ということでした。

本部が一括して制作するんですが、
それでも店舗のほうで、
どうしてもこの1品を売りたいという希望がでれば、
本部が了解してOKをだすと。

結城

仕組みになっているんだね。

スタッフ

そうしないと、売場が混乱しますから。

結城

トレーダージョーは店舗で制作するんです。
今、全米に350店舗ほどありますが、
店ごとにデザイナーがいるんです。
でもどの店に行っても、
トレーダージョーの基本デザインがあって、
それは同じなんです。

20120531_nakayama3.jpg

その中のディテールを、
店ごとのデザイナーがやっている。
トップパネルが特徴的なんですが、
ある種、芸術作品なんですよ。

20120531_nakayama2.jpg

だからと言って、
欧米がなんでもいいというわけではない。
日本でも、いい会社の販促物は良くできています。

中山

成城石井は手描きPOPもありますが、
デザインはもちろん、
書いている内容がいいんです。

お客はそれを見て、
あぁこういう商品なんだと気づくし、
もっと知りたければ、
スタッフがきちんと質問に答えてくれる。

.

コトPOPの解釈

結城

私は「知識商人」をかかげて、
これからは知識や知恵が大事だと言っているんですが、
POPひとつとっても、基本の知識が必要です。

これらの「コトPOP」を見ていると、
あまりにも差があり過ぎますね。

スタッフ

価格競争が激しくなると、
勢い、こうした「コトPOP」が
多くなってくるようです。

中山

それはあるでしょうね、きっと。
さきほども言ったように、
売場にたくさん付けたら、
目立って売れたことがあるんでしょうね。

もちろん、役立つ内容を
きちんと表示している店もあります。

ですから解釈の違いなんだと思います。
私はシズル感やシーンでPOPを作れ、
などと言っていますが。

モノを売るんだじゃなくて、コトを売る、
それが「コトPOP」だということ、
その考え方はいいんですね。
とてもいいんです。

だけどそれが独り歩きをしてしまって、
「魚屋の独り言」って言うと、
全国の魚屋が独り言をいうような、
今の状況になっているケースがある。

結城

本当ですね(笑)

.

POPをつける理由

中山

成城石井のPOPは文字数は多いんですが、
内容はすごくいいんです。
たとえば、生キャラメルひとつとっても、
ブームの先駆けとなったキャラメルを
成城石井では置いていない。

そのかわり、
「私たちはいろんな
生キャラメルを食べてみました。
話題の商品だけではなく、
この商品が美味しいと思いました。
だから、おすすめします」
というように書いてある。

結城

この「だから」が大事なんですね。

中山

「おすすめ」ってよく書いてありますが、
内容を見ると何が、なぜ、おすすめなのか
わからないPOPがあるんです。

価格なのか。
味なのか。
新しいからなのか。

何をすすめているのかがわからない。
でも遡ると、本当は、
「こういうことですすめるからおすすめ品にしよう」
とタイトルをつけていたはずですよね。

一番安い価格の商品は、
タイムサービスにしよう、
その次はチラシ広告に載せたものを
広告の品にしよう。
次はおすすめ品にしよう、
といった感じで。

これらはだいたいの何%の価格差があると、
頭に置きながらタイトルを決めていたんですね。

結城

理屈があるんですね。

中山

そうです。
それをPOPカレンダーに
落とし込んで、すすめてきた。

今は、作るごとに内容が変わっても、
良しとしているように見える。

一方、過去のやり方や商品情報が
役に立たなくなりつつあるのも分かります。
お客の嗜好の変化や環境の変化、
新商品にも対応しなければならない。

人手は足りず、
仕事量は増えている訳ですから。
でも、そんなときでも店側が落ち着いて、
情報を整理した上で、
POPで表示しないとならないと思います。

お客はPOPの内容で
店の誠実さが分かるものなんですよね。
だから最低限、
プライスタイトルの仕分けは大事だと思うんです。

どの売り場をまわっても、
お客をおどろかせてばかりだと…。

結城

お客さんもうんざりしますね。

中山

こんな話をすると、
「見直すきっかけになった」と喜ばれますが、
「アラばかり探してる」とか、
「古い」とかも言われますね。

でも、いい商品があり、いい店なんだから、
もう少しPOPをなんとかすれば、
なんて言いたくなってしまうんですよね(笑)

結城

先生のお役目ですね(笑)

.

20120531_nakayama.jpg
<用紙の大きさに対し、説明文が適度な長さでまとめられている>

つづく

コメント (0)

[第8回] POP制作機械の問題

2012年05月24日(木曜日)
カテゴリー:
  • 中山×結城のSpecial対談
  
10:06 AM

機械化による無駄なコスト

中山政男

POP制作システムを販売する側も、
情報提供などをすべきだと感じます。
売った後のフォローをもっとすべきだと思う。

結城義晴

メーカーのトップが言っていましたが、
POPマシンが普及してしまうと、システム会社はやることがない。
せいぜいアフターケアくらいだって。
だから、あまり関心を持っていないようですね。

中山

普及するまでは、メーカーも、
より使いやすさを求めて工夫していたんです。
でも、だいたい市場に行き渡ってしまいました。
そうなると、その後は消耗品に気が向いてしまいがちになります。
保守契約をしているんですが、
修理のときもお客のためになる情報提供が少ない。

結城

だから、たくさんのPOPを作らせる風潮になるんですかねぇ。
あるスーパーマーケットの女性社員が商人舎のアメリカ研修会に参加して、
「アメリカにはコトPOPがないんですね」って、ほんとうに驚いていました。
POPの意味を勘違いしている感じもします。

アメリカも優秀な店ばかり見てもらうんですが、非常にシンプルで、
なおかつ重要なところはきちんと書いてある。
そういった本来のPOPやショーカードを理解できない人もいる。

.

正常に戻すには

中山

必要以上に手間ヒマがかかっているという現状を、
どう、正していけばよいか。

結城

単位当たり営業利益を出してみればいいんですがね。
すべての資材、POPコスト、人件費などを粗利益から引いて、
営業利益を算出する。
それを売場面積で割って、単位当たりの営業利益を出して比較すれば、
無駄なことをやっている部門が判明します。
粗利益に占めるPOP関連のすべてのコストを、
「POP分配率」として算出してもいいですね。
これなら一目瞭然です。

中山

私はよく、失敗したPOPの量を見るんです。
そうすると、ものすごい量が捨ててあったりする。
ある店はトナーの在庫が大量にあると聞きました。
決算をしてはじめて、その実態がわかるようです。

結城

商品在庫ではなく、トナーの在庫ですか。

中山

非常にもったいないことです。
販促室は気付くべきだと思います。
オーナー企業であれば、指摘してすぐに改善できますが、
そうでないと今までの仕組みを変えるのに時間がかかる。

あるドラッグストアでは、
POPだけで企業規模に合わないほどの費用をかけている。
本当にもったいない。

結城

ドラッグストアのPOPはすごいですからね。

.

コーポレートカラーがPOPから消えた

スタッフ

たとえばウォルマートは青、ターゲットは赤と言うように、
アメリカでは企業カラーがありますよね。
そのカラーに合わせた販促物を考え、訴求しているように思うのですが。

中山

以前は、POPにコーポレートカラーを入れるように、
デザインマニュアルを作成したものです。
それこそ、20店舗以上になればマニュアルはキチンとありました。
思えば、以前の方がコーポレートカラーを活用するということに、
こだわりが強かった感じがします。

自分がデザインをやっているから言うわけじゃありませんが、
やっぱりデザイン意識は必要なんですね。
デザインを少し変えただけで、
月に何百万もコストダウンできるということだってあるわけです。

だけど今は、そこまでこだわっている企業は、
少なくなってきているようです。
私は、今こそ、専任を2、3人置くべきだと言いいたいんです。
資材コストやトナーコストをコントロールすれば、
十分、専任スタッフを置くだけの費用は出ますから。
そうすれば違うこともできるようになります。

結城

なるほど。

.

時間がもったいない

中山

もったいないことに、バイヤーや店舗スタッフが
POP制作に時間を費やしてしまっているケースがあります。

すばらしいPOPを作るのに時間を要したというのはいいとしても、
バクダンなどの装飾をつけたり、文字を大きくしたり、
色を変えたりするってことに、時間を費やしてしまっているんです。

スタッフ

POP制作をしていると、
クリエイティブな業務をしていると思えるんでしょうか。

中山

1枚のPOPを作るのに1~2時間ぐらいかけてしまっていることもあります。
商品の説明文から色使いなどに迷うこともあるようです。
プライスカードやショーカードなどは、
基本的なレイアウトだけでも決めておけば、
時間も短縮できると思うのですが、
あまりマニュアルが活用されていないようで残念です。

20120524_sashimi.jpg
<コーナーパネル、イメージベルトですっきりと効率よくコーナーづくりをしている>

つづく

コメント (0)
<次のページ
前のページ>

商人舎サイトマップ お問い合わせ
今月の標語
  • 勇気ある決断
中山政男プロフィール

株式会社POP研究所代表取締役

日本のPOP広告研究の第一人者として、POP広告40年の経験と実績をもとに、POPツールデザイン・制作、また各企業店舗の活性化に取り組む。

全国のスーパーマーケットや各種小売店の、読みやすく、美しい、訴求力のあるPOP広告作りの指導実績は高く評価されている。手作りPOP用具開発、またコンピューターPOP制作のソフト開発にも多数参加。

全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会等のPOPコンテスト審査委員歴任。

現在スーパーマーケット数社のPOPコンサルタント、POP広告店舗診断で全国を奔走中。

株式会社POP研究所

カレンダー
2025年12月
月 火 水 木 金 土 日
« 3月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • 中山×結城のSpecial対談 (12)
  • 中山政男が叱る!!間違いだらけのPOP!! (6)
  • 店舗見学 (62)
  • 研修の現場から (6)
  • 視察レポート (1)
最新記事
  • 2020年03月05日(木曜日)
    マルエツ目黒店を訪問
  • 2019年10月24日(木曜日)
    フレッセイ 笠懸店訪問
  • 2019年09月04日(水曜日)
    いなげや 川崎京町店訪問
  • 2019年07月09日(火曜日)
    紀ノ国屋 国立店を訪問
  • 2019年06月05日(水曜日)
    イオンフードスタイル八王子店を訪問
最新コメント
  • 2012年09月12日(水曜日)
    商人舎事務局 :砂町銀座商店街-Ⅰにコメントしました
  • 2012年09月06日(木曜日)
    花十○十 :砂町銀座商店街-Ⅰにコメントしました
  • 2011年03月12日(土曜日)
    tiger mask :[第1回] 根本的な問題点にコメントしました
  • 2011年02月10日(木曜日)
    ゴルーモップ :これは何だろうにコメントしました

USA視察研修会Specialコース

定番視察研修会報告

参加者の声は天の声!

  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.