商人舎

杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットのマーケティング Vol.5

2010年12月08日(水曜日)
カテゴリー:
  • スーパーマーケットのマーケティング
  
1:52 PM

5. 黒田節子さんのスーパーマーケットのマーケティング

■「ミスマッチ」発生の要因
 ちょうどその頃、『食卓革命』などの著者である黒田節子さんとも会合などでたびたび会うことがあり、話し合う機会が多かった。

 黒田さんの著書には「スーパーマーケットのマーケティングとは企業の政策と消費者の食生活とのミスマッチを正すことである」ということを教えてもらった。

 当時のスーパーマーケット各社はマスを追及するあまり、顧客の食生活の買物行動、調理方法、献立のメニューなどともミスマッチが目立ち始めていた。

 ただし、これらのことは大多数の男性経営者や仕入れ担当者達は気づいていなかったと思う。自分で買物をすることもなく、キッチンで料理することもなく、夕食も家族と共にとることなど稀であったからである。

 一方では、買物客のほうにも色々な変化が起き始めていた。 主婦の毎日の日課であった買物は、電気冷蔵庫の普及や主婦の有職化などで買物頻度、買物場所も変化し始めた。また調理では、魚をさばくことのできない主婦、時間をかけて煮物をしない主婦、“味噌汁にご飯”の和食から“コーヒー、トースト、ベーコン”への洋食化など、変化を挙げればきりがない。

 このようにライフスタイルが多様化し、それぞれのライフスタイルの食生活は、パターナイズすることができないほどに多岐にわたるものになったのである。

 そのような消費者の変化を考えると、私が感心したところの関西スーパーマーケットの店舗づくりにも惣菜売場がないというのはミスマッチという黒田さんの指摘は妥当である。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング vol.4

2010年12月02日(木曜日)
カテゴリー:
  • スーパーマーケットのマーケティング
  
11:52 AM

4. スーパーマーケット談議

■井上氏との実り多き議論 

 その頃(昭和40年代の中頃)、私は大阪に出張するたびに夕方、若くして急逝したニッショー の井上部長を呼び出し、夕食を共にすることが多かった。主にスーパーマーケット談議をするためであった。

 この会合は私には大変勉強になったので、故・井上氏には今でも感謝している。会合では、関西スーパーマーケットやサミットの評価が必ず話題にのぼった。2人の見解が一致することもあったが、相反することもあった。一致する場合は話がすぐ終わり、話題が移る。不一致の場合は、議論になるので、より多くの時間を費やした。この議論が私にとって大いに有意義で、勉強させてもらった。

 それらの議論の一つに次のようなことがあった。

 関西スーパーマーケットの業務システムの論議を進めていた時、井上さんは「システムが硬直化して新しい戦略の展開を拒否しているのではないか」と述べられた。

 そこで私は、「鮮度管理自体が重要な戦略ではないか」と反論した。
これに対して井上さんは「鮮度管理だけではマーケティングとは言えまい?」と反論してきた。

 当時、ニッショーではマーケティングのデータシステムの開発を始めていたようだ。ちなみに同社ではレイバースケジューリングシステムが第一義的に完成され、コンピューターを使って作業割り当てを行っていた。

 私は井上さんの再反論に出合って、関西スーパーマーケットの“店舗づくり”について感じていた、ある不安が明確になった。先にも述べたように、関西スーパーマーケットの“店舗づくり”には敬意をはらっていたが、何度か視察させてもらった際に受けた諸説明の中には、マーケティング意識のベースが明確に見えてこなかったからである。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング vol.3

2010年11月26日(金曜日)
カテゴリー:
  • スーパーマーケットの店舗づくり
  
11:13 AM

3. 本格的スーパーマーケットの“店舗づくり”

■関西スーパーマーケットの規範モデル
 昭和40年代の中頃、関西スーパーマーケットが鮮度管理を中核に「本格的スーパーマーケット」と称する店舗づくりに成功し、業界ジャーナリズムの間に「関西スーパーマーケットの業態確立」という評判が高まり、話題となった。その頃、私も同社を訪問し、勉強させてもらった。さすがに「本格的スーパーマーケット」の店舗づくりは素晴らしいものだった。それまで私が漠然といだいていた理想的な店舗が現実に目の前に存在していたのである。バックルームもまた作業のしやすいように無駄な手間をかけないように設計されていた。

 当時の北野祐次社長から数回にわたって本格的スーパーマーケットをつくり上げるまでの経緯、考え方の推移、社員たちとのコミュニケーション等々の説明をしていただいた。すべてが、それまで私が学んできたマネジメントの規範モデルにマッチした進め方で共感するところ大であった。

■店内業務システムの重要性
 その規範モデルの中でも特に注目すべき一例をあげれば、業務システム、特に店内業務システムとでも呼ぶべき、経営の最重要サブシステムの“あるべき姿”であった。

 業務システムとは、戦略計画を遂行するための実践活動のシステムで、スーパーマーケットでは発注→検収→商品づくり→品出し陳列→陳列手直し→売り切りなどのプロセスが主要要素であり、最終的に利益を実現するサブシステムである。そして、それを実現するためのレイバー・スケジュールは、業務システムの柱ともいうべきものである。

 業務システムが未熟だったり、ずさんであった場合、すぐれた戦略構想はもちろん所期の効果はあげ得ない。

 関西スーパーマーケットは、この頃、毎月各店とも極めて順調に予算達成を続けていたという。

 いくつものスーパーマーケットの従業員に薦めて私も加わり、度々店舗見学に訪れ、勉強させてもらった。

 店内はいつも整備され、陳列も乱れるようなことはなかった。つまり、いつも安定していた。しかし、変化が少な過ぎることが気になり出したのである。シーズンの変わり目には品揃えはちゃんと切り替えられる。また、もずくに代表されるように、関西スーパー独自の開発商品も少しずつ増えてはいた。しかし、新しい戦略路線の展開を感じさせる変化はほとんど見られなかった。

続きます

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