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アメリカ流通 浅野秀二のアメリカ寄稿

浅野秀二のアメリカ寄稿

オースティン一の観光地・ホール・フーズ本店

2009年01月27日(火曜日)
カテゴリー:
  • 視察&インタビュー日記
  
2:51 PM

故郷・松江の一番の観光地は、もちろん松江城・千鳥城である。
最近は堀川遊覧が人気があると聞く。
他のいろいろな構造物が出来たが、これと言った成功例はない。
観光業で生きている故郷の人々に、聞かせてあげたい。
想像のつかないひとつの話?

ここオースティンでは、
ホール・フーズ・自然食スーパー本店こそ、
この町で一番の観光地
と言う。
全米各地から、世界中から年間何十万人の人々が、
この2200坪のスーパー・マーケットに、見学に来る。
たかが、スーパー・マーケットと、馬鹿にしてはいけない、
このエンター・テイメント・ショップピングを標榜するこの店には、
1週間に5万6000人の客が来ると言われる。

店舗外観

食事に来る人だけで一日8000名~1万2000名、
従業員は650名、フードサービス・惣菜部門には、なんと260名のスタッフ。
そのうち半分は料理学校を卒業したプロのシェフと言う。
道理で何でも美味しい。
客単価は$28-30と低いが、それは食事に来る人が多いと言うことを示している。
(他のホール・フーズは、$60-$80と言う説明があった。)

私の事前の知識では、この不景気でホール・フーズは急速に業績を落とし、
前年対比2%前後の伸び。
これは食品のインフレを考えると、実質マイナス成長である。
マスコミで読んだ、苦戦をするホール・フーズの確認に来たはずなのに??

1月24日、土曜日、午後12時50分到着。
驚くべき客の数だ。以前と変わらない。
予想に反して、元気なホール・フーズがここにはあった。

ホール・フーズの不調の原因は、やはり不景気もあるが、
過剰な急速な新規店舗開店により、カニバル・友食い状態が大きな理由と考えられる。
それは過剰なウォール街の期待に答えようとした弊害であった。
ここにも金融が正業を蝕んだ、残滓が見れる。

当日・土曜日の夕食の後、再び一人で歩いて店を訪ねた。
午後8時、昼と同じように買い物客でごった返していた。

フードサービス・コーナーの様子

夕食を食べる人で、テーブルは空いていない。
これは正直、信じていただけないと思う。ほら吹き浅野になるに違いない。

明日も確認に来よう。25日、日曜日、再び夕食後、店を10数名で訪れる。

一人のご夫人が、クッキーを見て、
「浅野さん、これ美味しい?」
私がわかるはずはない。
「試食をお願いしましょう?」
そこにいた店員さんに声を掛けた。
「試食はしたいのですが?」

「え、これを試食? それならこれをギフトで差上げます。
お家で食べてください。美味しかったら今度買ってね?」

彼はクッキーの箱に、WOW(驚きの声?)と自分の名前をサインした。
多分これは、キャシャーで支払いをしなくても良いと言うサインと思われる。
これがそのサイン

笑顔で誰にも相談なく、
一店員さんがやってのけたのである。

意表をつく、期待以上の驚き(WOW)
もちろん、我々は感動した。
全員がこのクッキーを買ったのは言うまでもない。
I Love Whole Food、決して我々は忘れません。
永遠に日本に帰っても語り継ごうと思います。
心から満足をした笑顔で満ち溢れた。
長い視察の疲れも忘れ、深夜軽快な足取りでホテルに帰った事を報告したい。
この日もたくさんの客がいたことも付け加えたい。

1月25日、2009年  浅野秀二

————————————————————————————————-
「ショッピング・エンターテイメント」:食品小売業界の最先端スタイル
(以下、2005年作成のJACニューズから一部抜粋)

人は食料品の買出しにスーパーマーケットへ出かけます。極めて日常的に、目立って面白くもなく。
でもそれが普通だったはずです、これまでは。
自然食グルメマーケットチェーンのホールフーズは、買い物を全く新しいスタイルに変換しようとしています。
その意図するところは、洋々たる未来を有する「ショッピング・エンターテイメント」!

オーガニック食品のチェーンである同社は、これまで白人の都会派主婦やハリウッドのセレブリティたち、
ナチュラル志向派などにファンを持ち、言わばアッパーミドル層を対象としてきました。
2005年3月2日、本社のあるテキサス州オースティンにオープンしたホールフーズ最新店舗は、ウォルマートもびっくり!
といった広いスペースに作られ、まるで食品小売業界でのディズニーワールドの様相。
これまでのスーパーマーケットの概念を180度覆し、辛い家事としての買物仕事を、入場無料の楽しいエンターテイメント場にまで引き上げました。

呼び方はどうあれ、魅力たっぷりの、食料品のディズニー風ファンタジーワールドを作り上げたホールフーズ経営幹部たちは、かつてスターバックスが全米のコーヒー・スタンドに行った大革命と同じように、
これこそが次世代の食料品小売業スタイルと信じ、買い物の場をインタラクティブな社交場のように設え変えたのです。

「アメリカ人は食べることが好きで、買い物も好きです。が、なぜか食物の買い物には尻込みしがちです。掃除洗濯などのように、つまらない雑用のひとつと考えるからです。」
ホールフーズ創業者であり、51歳でありながらスニーカーとジーンズという若々しいセンスのジョン・マッケイ氏は語ります。「ホールフーズ社では買い物は楽しむべきもの、という主義です。
この最新店舗を第一歩として、ヘルシーさと楽しさとが一体となった新しいライフスタイルを開拓し始めます。何の矛盾も、難しいこともありはしません。」

食べることに関心を持ちつつ健康に留意するようになっている最近では、
多くのアメリカ人が会員カードの割引しか得られない地元の一般的スーパーマーケットから遠ざかり始め、
オーガニックの食品を扱うホールフーズに足を向けるようになって来ています。
そしてフード・マーケティング研究所の調べに拠ると、業界他社の多くが約34000sqfへと店舗を縮小している傾向があるにもかかわらず、ホールフーズはこれまでの平均31000sqfのこじんまりとした店舗に別れを告げ、今後4年間で50000sqf規模の58店舗をオープンさせる予定だと言います。

オースティンに開店したこの店舗面積は80000sqf。かかった費用についてはコメントされていませんが、
ホールフーズの動向に精通した不動産エキスパートの試算では約1500万ドルであり、これは業界平均の約2倍です。
その投資がもたらすもの、それは買い物客を喜ばせるに余りある広さであり、
更には顧客にのんびりゆったり過ごさせる口実に他なりません。もちろん、そこに置かれている商品は、
人口防腐剤、着色料、人口甘味料、有害な脂肪酸などを一切含まない、従来通りのオーガニック商品です。
クレジットカードだけ手に持ち、お買い物を心行くまで楽しんでください、という、顧客に対しての至ってシンプルにアピールしています。

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視察アポと現場対応能力

2009年01月25日(日曜日)
カテゴリー:
  • 視察&インタビュー日記
  
11:01 AM

ラスベガスから、テキサス、オースティンに来た。
地の果てだ。
いや実はそうではなかった。
ここはテキサスの州都、5万人の学生の街、ミュージック・キャピタルと呼ばれ、美しい、全米で住みたい街のナンバーワンである。

1月13日のブログの中で、H-E-Bがアポは取らないことを書いたが、
今日、1月23日、店長、Ms.Linda (Director of Store)との質疑応答に成功した。
linda
これを現場対応の能力という。

昔、決してウォルマートの店長アポは取れなかった。
しつこくやっても、本社に電話をしても無駄な抵抗であった。

シカゴ郊外の店舗での出来事である。
店長を見つけると、見事なマチョマン・筋肉マンであった。
体重は100キロ位だろう。背はあまり高くはない、180センチ無いかもしれない。

私は声をかけた。
「ヘイ、ビッグマン、俺は元日本の空手のチャンピオンだ。?
君のような体格を見ると、無性に腕相撲を挑戦したくなる。
ところで日本人のオールド・マンの、俺に勝てるか?」

若くない171センチ、70キロ、アメリカでは明らかな小男の部類にはいる。
彼の顔がたちまち赤くなり、目がつり上がった。彼はうめく様に叫んだ、
「カモン,Let ‘s do it.やろう」

「まて、勝負には条件がある。」
「俺が勝ったらこの店の写真を取らせろ、インタビューに応じろ?」
「俺が負けたら、このグループが、たくさんショピングして金を使う。」
「OK?」
「ヨシャー」

しばらくは互角の戦いだった。??
これでもアメリカの大学では100キロを越すレスリング部の連中を、
腕相撲でバタバタと負かした経験もある。
今回は、やがて負ける。
あれから30年の歳月は流れている。それは当然の結果であった。

私の無謀な挑戦・勇気に、彼はついに大笑いをした。
「お前はいい男だ。」
「何でも言うことを聞いてやる、今、コンピューターのデーターをコピーしてくる。
すべての数字を教える、店の写真も取っていい。」

ようするに、アメリカ人は、本当にアホが好きなのだ。
(これは美女の場合も当てはまる。??)

「イヤー、ほんとうか?それでは本社の意向、ルールに逆らうことにならないか?」
「心配するな、この店は俺がボスだ。好きにやる。」

基本的にアメリカは個店主義である。
 店長の権限は非常に強く、自由采配が大きい。
各店ごとに顧客にとってベストなことをすれば良いのだ。
本社だけを見てはいない。

さて、H-E-Bの後は、H-E-Bの経営するセントラル・マーケットに行った。

リチャード・ギアに似た美男子の店長が、わざわざ説明に来てくれた。
430名の大型店の店長が、日本のグループに説明にくることは少ない。
前回、リチャード・ギア、そっくりと私が言ったことが社内で評判になり、彼は非常に喜んでいた、と後で聞いた。
もちろん、彼がどんなにハンサムか、人前で大いに賛嘆した。
誰でも褒められるのはうれしい。
その賛嘆の言葉を聞きに人は来る。店に来るのだ。

物を買いに来る?そんなレベルの話してはない、
貴方の賛嘆の言葉を人は聞きに店にくるのだ。
物を売っている、それは20世紀の小売業の話だったそうだ。

浅野秀二
1月23日

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ガス採掘会社訪問

2009年01月21日(水曜日)
カテゴリー:
  • 視察&インタビュー日記
  
7:39 PM

今日は、オバマ新大統領の就任式である。

一日中、テレビにかじり付いて見ていたかったが、
京葉ガス(一部上場)のガス採掘会社の採掘現場と会社訪問の日である。

小売業の視察で御会いした方には、不思議に思われるかもしれないが、
京葉ガスの米国研修を受けて20年の歳月が流れた。
商品の差別化が難しいガス会社であるからこそ、人材教育に熱心に取り組んでいる。

10年前、船橋の本社研修センターで講演をした時、社長から
「1150名の社員の中で浅野さんの話を聞いた方が250名います。
御社の最大の勢力になりました。」

ありがたい言葉である。
仕事冥利に尽きる。

もうひとつ、その時の所長は、元通産省の神田氏(現在常務)。
「お嬢様(誰?)に会わせてください。」
これは今もって実現していない。

さて、採掘現場はサンフランシスコから東、内陸のサクラメント方面へ約一時間30分。
カリフォルニア州は国内消費の13%しか、生産してはいないが、
それでも内陸盆地には、広大なガス田が存在している。

北カリフォル二アは天然ガス、南カリフォルニアは、原油となり、違いがあるようだ。
現在カリフォルニア州には30箇所の新たなる井戸が採掘中で、
このポール・グラハム社はそのうちの7箇所を採掘している大手である。

深さは約1000メートルから3500メートル、平均的井戸は1000所帯の家庭需要を賄う。
井戸を掘る平均コストは約8000万円から1億円。
掘り始めると昼夜休みなく続けないと、事故が発生する。
3交代、12名と監督1-2名のチームで、現場監督はトレーラーハウスを持ってきて、
そこを掘り続ける限り、住みつことになる。

ガスの値段が下がってきて、多くの受注があったが、すべてキャンセルになった。
たぶん回復には数年かかると思うと、ケブン社長は暗い顔を見せた。

オバマ大統領をどう思うか? 
「経験も実績もない、口先だけ、何も出来ないと思う。」
彼の政権になって、
一度はブッシュ政権下で、許可されそうになったカリフォルニア海岸線の原油開発案件は
再び、環境問題から反故となった。
ケブン社長には、オバマ政権は、歓迎すべき、政権ではないようだ。

私は要請があれば、小売業以外の研修・視察も可能な限り、お相手しようと考えて来た。
経済、政治、社会、歴史、宗教、いろいろな要素が複雑に絡み合って、動いている。
小売業だけを見ていれば、小売業が理解できるものでもない。
経済をいくら観察をしても経済がわかるわけでもない。

われわれアメリカに住む人々は、
アメリカ中心・全能史観で世界の出来事をみる癖がある。

これが、ブシュ大統領が墓穴を掘った原因とも考えられる。

日本に帰る時に、出来るだけ、アジアの多くの国々を訪問してきた。
アメリカ全能史観を修正する必要を感じていた。
多彩な人種的バックグランドや、多様な環境で育ったオバマ大統領も
この一連の流れの中で、誕生をしたと考えるとわかりやすい。
テキサス・カーボーイ・メンタリティでは、理解を越えていた。

世界は複雑怪奇である。

2年前に、リオビスタ市と愛知県飛島村(日本一財政の豊か自治体)を縁結び、
姉妹都市を提携させた。
その時の市長、エディ・ウッドラフ氏の働きで
この、Paul Graham Drilling社の訪問がかなった。

すべては個人的、人間関係からスタートをする。
組織と組織ではない。
人類の歴史は、すべてが、I love you から始まるのである。

浅野秀二
1月21日、2009年

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