商人舎

商業経営問題研究会

商業経営問題研究会

RMLC2009年5月度報告-後編

2009年06月24日(水曜日)
カテゴリー:
  • General
  
9:36 AM

5月RMLCの後半は、
『業態の盛衰』(千倉書房刊・田村正紀著)を読んだ品川氏から、
この本が主張する要点の報告がありました。

小売ライフサイクル
現在を切り取った限りでの、「ネット通販」(成長期)「専門スーパー」(成熟期)「総合スーパー」「百貨店」(衰退期)の段階

フォーマットの基本要素
業態の中での要素。これは企業戦略から決まる。
フォーマットは「フロントシステム」(ネットワーク、立地、主力商品など)と「バックシステム」から決まる。

業態の中核的役割
業態とフォーマットが生み出す「店舗数、店舗規模、店舗特異化」「本社、SCM、店舗費用」

3種のイノベーションとイノベータ
価格(品質、価格ともに低い)、バリュー(価値/価格)、サービス(品質と費用・価格ともに高い)

覇権市場への挑戦
上位200社売上高シェアの推移(縦軸にシェア、横軸に順位)。山の形は変わっていない。
しかし、ランキングの顔ぶれ(盛衰)は激変。
73年、ダイエー、百貨店、83年、総合スーパー、2003年にヤマダ電機も登場。
こうしたランキングに躍り出るのがイノベータ。

成長へのベクトル
店舗を大きくするか、規模を拡大するかでみると下記の2社が際立っている。
例:ユニクロ、ヤマダ電機
それぞれ衣料品、家電といったカテゴリーの中では、先行専門店をしのぐまでになった。
イノベータの位置する「辺境市場」(ヤマダは秋葉原、ユニクロは地方ロードサイドなど品揃えや物理的な意味?)とは。
一方で、「マイオピア」(レンコンの穴のように隙間がある)

SMの場合、下記の4つの象限(カッコ内は代表企業)に分けられるが、どの業態を選択するかで、くっきり出る。
「価格訴求型」(大黒天物産)「標準型」(ベルク)「高級型」(シェルガーデン)「生活提案型」(ベニマル、ヤオコー)

「価格戦略論」についてのディスカッション
「セブンプレミアム」「ザ・プライス」の2つを打ち出した。
 ともに低価格訴求を強めていることを受けて、以下、各参加者の意見。

<高木さん>
 食品スーパーの場合、ローカルという限定された地域、範囲の中で、商売の余地がある。
 グローバリゼーションの中では、価格の構造がここまであからさまになると劇的に価格は下がる。

<井口さん>
(先ほど杉田さんから、バイヤー育成についての疑問を受けて)
 原料までさかのぼることまでできるバイヤー育成はコストに合わない。
 味の素が、キユーピー(?)マヨネーズの生産を受けたのも償却済みのタンクなど設備を使ったから。
 これはメーカー間のOEMによる価格の作り方である。
 セブンプレミアムの成分表示と内容物見るだけで、トレードオフがはっきり分かる。
 「セブンが海外にPBの原料調達および販路拡大」との発表があったが、
 (ワイン、缶詰など)インターナショナルな消費されているアイテムはやるのが当然。
 PBの難しさは、リニューアルなどの「継続」にある。

<杉田さん>
 PBをつくる環境は確かに変わった。
 開発、普及前をフェーズ1とするなら、現在は、難しさは変わった。

<中村徹さん>
 低価格づくりの仕組みの中で、業務スーパーの神戸物産、大黒天物産の開発商品の中には、
 どうしても原価構造が分からないほど低価格商品がある。

<臼井さん>
 価格は第一のファクター。
 うちの店ではウナギを見ても、昨年とは打って変わって、値ごろな中国産しか売れない(国産は3倍の売価)。

<結城座長>
「業態」とバナー(企業独特のもの)、そのひとつがPB。
 PBも初期は「価格」であっても、ゆくゆくは特徴を出すものになる。
 「業態」米国上位12社の分類からみても、GMS、SSM、VSだったものが、
 現在はSUC、MWC、といったように業態のバラエティは増えている。
 「豊かさ」「多様化」は増すだろうが、業態は増えていく。
 ラインアップをみると、日本でも「百貨店」は最小限の数で残る。
 「SM」「専門店」「通販」はラインアップされる。
 
 危ういのが「総合スーパー」だろう。
 日本でもランキングにヤマダ電機、いずれユニクロが10位以内に入るだろう。
 実は米国視察でもGMSは視察対象にもならない。
 JCペニーが存在感なくしつつある。専門店、SUCにとられている。
 かつては中心にいた業態が、両端から取られている。
 日本では総合スーパーがその位置にある。
 SMの世界でもコンベンショナルが危ない
 米国におけるホールフーズの成長、アルディのような小型ディスカウントの台頭など。
 HEBのようなマルチタイプも見られる。
 以前の4つの象限におけるSMのポジションは4隅に位置する勢力にとられつつある。
 
 百貨店は、顧客、営業基盤などの現状の資産をどう生かすか。
 テナント入れ替えによって新しい消費を作り出し、提供する役割が求められる。

「食品商業」編集長 山本恭広

コメント (0)

RMLC2009年5月度報告―質疑応答

2009年06月24日(水曜日)
カテゴリー:
  • General
  
8:34 AM

井口氏の「業態の盛衰」報告―その後の質疑報告
 
 井口氏の問題提起を受け、百貨店業態の今後について、主に議論されました。

<村上篤三郎さん>
 百貨店、GMSはどうなるか。特に百貨店は、統合・合併などで分化が著しい。
 GMSも業態として括るのではなく、固有の企業の生き方と戦略を個々に見る必要がある。

<高木和成さん>
 SCにおける中核テナントとして位置づけるとGMSの位置づけも生き方も変わる。

<結城座長>
 業種⇔業態と対比的に、「百貨店」から「コンビニエンスストア」が業態といわれるが、
 業態をさらに進んだものとして、フォーマットと位置づけている。
 業態のライフサイクルを整理する必要がある。
 
 米国では、A&P食品は食品のチェーンとして、JCペニーは衣料品中心のチェーンとして成長したが、
 利便性高めるために住居関連など揃え始めた。
 食品と非食品発祥の企業はそれぞれ別の成長の仕方をしてきた。
 日本のGMSが模範としたKマートも、ウォルマート、ターゲットが侵食していったが、その出自が分かりやすい。

 「業態の盛衰」以外にも、同じ時期に「小売業態の誕生と革新」(中田信哉著 白桃書房)が出ており、
 アカデミズムの世界でも業態に関する関心が高まっている。
 今回のベースとなった商業統計も昭和51年から業態別統計が取られた。
 その後、平成11年から商業統計にドラッグストアが加えられた。
 しかし食品スーパーマーケットの項目がない。最も影響力のある業態にも関わらずだ。

 今、業態の整理が求められている。
 まずは業態=店舗(営業、組み合わせの形態)としたほうが理解しやすい。

<品川昭さん>
 実は西友が全盛の時代からGMSが悪いといわれていた。
 “G(ジェネラル)”という特徴のない概念が悪いのか。
 一方で、地方ではスーパーセンターのように、生活すべてをカバーするといって、
 仏具から車まで消費頻度が低いものまで品揃えしている。
 コモディティストアとはいえ、消耗頻度・購買頻度が低く、専門店の品揃えまで取り込んでいる。

<杉田幸夫さん>
 その店が置かれた商業環境と相対的に見る必要がある。
 商業過疎の地域においては何でも揃えても支持される。
 GMSの場合、組織内部にも問題がある。
 例えば人事開発をみても専門店に対抗できる品質のバイヤーがどこまで育てられるか。
 一品当たりの費用対効果も専門店にかなわない。

<井口征昭さん>
 専門スーパーは、専門分野についての品揃え、低価格訴求。
 専門店はラグジュアリー。
 百貨店は自前ではMDできない。業態というよりも「小売商業施設」。
 そんな業態がなぜSCつくったか。
 九州でのイズミ見たとき、勝てないと思った。分類と現実に出てくる店の形は違ってくる。

<杉田さん>
 アソートメント面で見ると、個々のMDというよりも専門店アソートメントといっていい。

<山口紀生さん>
 百貨店生き残りの水準である“100億円”以上の80店舗がこれからも残るというが、
 自社MDができないのでは、そんなに残るのは考えられない。GMSはだめでも自社で仕入れて売っている。

<品川さん>
 しかし、百貨店は、これまで外部仕入れ(委託)の活用が成長の原動力であった。

<高木さん>
 そもそも現在の自分たちの消費場面で果たして百貨店は利用しているだろうか。

<臼井さん>
 しかし、百貨店の持つMDのグレードとクオリティはやはり違う。
 本当に必要なもの、大事なものに対する価値観がある以上、
 それなりのグレード、クオリティを持つ限り、専門店だけでなく、百貨店、または通販に向かうだろう。

<結城座長>
 百貨店は100万人商圏(「業態の盛衰」では50万人商圏)と考えると120店舗は計算上、残る。
 英国で有名なハロッズは単独店である。マークス&スペンサーのような店数だけでない百貨店として生き方もある。
 だから基本フォーマットに加え、その店の持つポジショニングが重要。
 その企業の特徴を示す「バナー」という概念である。
 それは、5つの違いから成り立つ。
   ①店づくり、レイアウト、内装・照明の差異性
   ②売り方、商品設計の差異性
   ③コミュニケーション
   ④プロモーション
   ⑤ノン・ファンクショナル・ベネフィット[パーソナリティ・イメージ]
 こう考えると、統合、閉鎖して、経営効率を上げることだけが、残り方ではないと思う。

<高木さん>
 百貨店も業態分化している。ごちゃまぜになっている(大型、小型といった分け方あるが)。

<杉田さん>
 江戸時代から続いているような構造と歴史から、経費面から考えると存続は難しくない。
 とはいえ、新たな開発は考えにくい。

<結城座長>
 百貨店の場合、残存者利益を享受する形での存続はできる。
 ただし、新たな立地、特に郊外での出店で成功は難しい。

「食品商業」編集長 山本恭広

コメント (0)

RMLC2009年5月度報告-後編

2009年06月23日(火曜日)
カテゴリー:
  • General
  
3:23 PM

「業態の盛衰」(千倉書房 田村正紀著)を読む  品川氏

小売ライフサイクル
現在を切り取った限りでの、「ネット通販」(成長期)「専門スーパー」(成熟期)「総合スーパー」「百貨店」(衰退期)の段階

フォーマットの基本要素
業態の中での要素。これは企業戦略から決まる。フォーマットは「フロントシステム」(ネットワーク、立地、主力商品など)と「バックシステム」から決まる。

業態の中核的役割
業態とフォーマットが生み出す「店舗数、店舗規模、店舗特異化」「本社、SCM、店舗費用」

3種のイノベーションとイノベータ
価格(品質、価格ともに低い)、バリュー(価値/価格)、サービス(品質と費用・価格ともに高い)

覇権市場への挑戦
上位200社売上高シェアの推移(縦軸にシェア、横軸に順位)。山の形は変わっていない。
しかし、ランキングの顔ぶれ(盛衰)は激変。73年、ダイエー、百貨店、83年、総合スーパー、2003年にヤマダ電機も登場。こうしたランキングに躍り出るのがイノベータ。

成長へのベクトル
店舗を大きくするか、規模を拡大するかでみると下記の2社が際立っている。
例:ユニクロ、ヤマダ電機
それぞれ衣料品、家電といったカテゴリーの中では、先行専門店をしのぐまでになった。イノベータの位置する「辺境市場」(ヤマダは秋葉原、ユニクロは地方ロードサイドなど品揃えや物理的な意味?)とは。一方で、「マイオピア」(レンコンの穴のように隙間がある)

SMの場合、下記の4つの象限(カッコ内は代表企業)に分けられるが、どの業態を選択するかで、くっきり出る。「価格訴求型」(大黒天物産)「標準型」(ベルク)「高級型」(シェルガーデン)「生活提案型」(ベニマル、ヤオコー)

「価格戦略論」についてのディスカッション
「セブンプレミアム」「ザ・プライス」の2つを打ち出した。ともに低価格訴求を強めていることを受けて、以下

<高木さん>
 食品スーパーの場合、ローカルという限定された地域、範囲の中で、商売の余地がある。
 グローバリゼーションの中では、価格の構造がここまであからさまになると劇的に価格は下がる。

<井口さん>
(先ほど杉田さんから、バイヤー育成についての疑問を受けて)
 原料までさかのぼることまでできるバイヤー育成は、コストに合わない。
 ある2番手メーカーが、一番手メーカーの生産を受けケースがあったが、償却済みタンクなどの設備を利用するため。
 これはメーカー間のOEMによる価格の作り方である。
 セブン・プレミアムの成分表示と内容物見るだけで、トレードオフがはっきり分かる。
 「セブンが海外にPBの原料調達および販路拡大」との発表があったが、
 (ワイン、缶詰など)インターナショナルな消費されているアイテムはやるのが当然。
 PBの難しさは、リニューアルなどの「継続」にある。

<杉田さん>
 PBをつくる環境は確かに変わった。
 開発、普及前をフェーズ1とするなら、現在は、難しさは変わった。

<中村徹さん>
 低価格づくりの仕組みの中で、業務スーパーの神戸物産、大黒天物産の開発商品の中には、
 どうしても原価構造が分からないほど低価格商品がある。

<臼井旬さん>
 価格は第一のファクター。
 うちの店ではウナギを見ても、昨年とは打って変わって、値ごろな中国産しか売れない(国産は3倍の売価)。

<結城座長>
 「業態」とバナー(企業独特のもの)、そのひとつがPB。
 PBも初期は「価格」であっても、ゆくゆくは特徴を出すものになる。
 「業態」別に米国上位12社の分類をみても、GMS、SSM、VSだったものが、
 現在はSUC、MWC、といったように業態のバラエティは増えている。
 「豊かさ」「多様化」は増すだろうが、業態は増えていく。
 ラインアップをみると、日本でも「百貨店」は最小限の数で残る。
 「SM」「専門店」「通販」はラインアップされる。
 危ういのが「総合スーパー」だろう。
 日本でもランキングにヤマダ電機、ユニクロが10位以内にいずれ入るだろう。
 実は米国視察でもGMSは視察対象にもならない。JCペニーが存在感なくしつつある。
 専門店、SUCにとられている。かつては中心にいた業態が、両端から取られている。
 日本では総合スーパーがその位置にある。
 SMの世界でも、米国におけるコンベンショナルなSM が危ない。
 たとえば、米国におけるオーガニックSMのホールフーズやアルディのような小型ディスカウントの成長。
 HEBのようなマルチタイプが見られる。
 以前の4つの象限におけるSMのポジションからみて、この4隅に位置する勢力にとられつつある。
 百貨店は、顧客、営業基盤などの現状の資産をどう生かすか。
 テナント入れ替えによって新しい消費を作り出し、提供する役割が求められる。

コメント (0)
<次のページ
前のページ>
商人舎サイトマップ お問い合わせ
今月の標語
  • 勇気ある決断
カレンダー
2025年12月
月 火 水 木 金 土 日
« 4月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
指定月の記事を読む
カテゴリー
  • General (26)
最新記事
  • 2010年04月26日(月曜日)
    2010年RMLC2月度例会報告
  • 2009年11月26日(木曜日)
    RMLC2009年10月度報告-#3 山梨・静岡視察店報告
  • 2009年11月25日(水曜日)
    RMLC2009年10月度報告-#2 米国研修会報告
  • 2009年11月20日(金曜日)
    RMLC2009年10月度報告-#1 小林清泰氏の報告
  • 2009年07月28日(火曜日)
    RMLC2009年6月度報告―#4 品川氏の報告(続編)と質疑応答 
最新コメント
    コメントはありません。

USA視察研修会Specialコース

定番視察研修会報告

参加者の声は天の声!

  • ホームに戻る
  • トップに戻る
  • 友達・上司・部下に知らせる

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。
Copyright © 2008-2014 Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.