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商業経営問題研究会

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RMLC2009年5月度報告

2009年06月23日(火曜日)
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10:44 AM

業態の盛衰  井口征昭氏 

RMLC5月の会合は、19日13時30分より港区芝の機械振興会館で開催。
13名が参加。
今月は、井口征昭氏が「業態の変遷」をパワーポイントを使い解説された。

(1)商業統計に見る業態の変遷

①販売額の業態別推移
 ・商業統計では、商業販売額のピーク(平成9年)に迎えていた。
 ・同時期に総合スーパーも9兆9570億円でピーク。
 ・百貨店は平成3年に既に11兆3500億円でピークを迎えていた。
 ・食品スーパーは、現在まで17兆円前後で増減中、ドラッグストアは平成19年3兆130億円でまだ成長中。

②店舗の業態別推移

 ・店舗数でみると百貨店のピークは平成3年(478店)、総合スーパーは平成6年(2159店)、食品スーパーは平成11年に1万8700店でピークとなった。
 ・総店舗113万店のうち、専門店(69万店)、中心店(29万店)が高い構成比を示しており、
 ・店数の限りでは、大型店の寡占化は進んでいないように見える。

*経済産業省における「業態」定義
食料品スーパー(売場面積250㎡以上。食品比率70%以上)、食料品専門店(同90%以上)、食料品中心店(同50%以上)*衣料、住居とも同じ

 以上を踏まえ、井口氏が「総合」の成長と衰退のヒントを探っていく。

(2)小売り業態理論

①3つの理論 
 1.分散と集積
 2.小売の輪
 3.アコーディオン理論(零細小売業→百貨店→GMS・SM→専門スーパー→SC)

②所得に見る消費環境
 ・ピークをみると、世帯の所得は2000年にピーク。
 ・国民総生産(1970年188兆円⇒2007年561兆円)
 ・国民所得(1970年59兆円⇒2007年376兆円)
 ・雇用者報酬(1970年32兆円⇒75年82兆円⇒80年130兆円⇒90年227兆円⇒2000年271兆円⇒2007年265兆円)
 ・企業所得(1970年22兆円⇒2007年128兆円)

③家計消費支出の推移 
 ・世帯当たり支出は1993年がピーク、以降95年比で2007年90%まで減少。
 ・モノ消費(衣食住)70年から07年で300% *チェーンストア産業の努力の成果
 ・コト消費(教養・教育)は同450%の伸び
 ・公共費(水光熱費、交通・通信、医療保険)は同600%

④マーケットの変化
 ・70年代 大量消費(生産者主導、標準化・均質化の追求、量販店の成長基盤形成)
 ・80年代 商品の質(ターゲット・エリアマーケティング)
 ・90年代 消費の成熟(ラグジュアリー専門店)
 ・2000年代 価値観での消費(SPAとカルチャー)

(3)業態別特徴と主要チェーンの特徴(売上構成比、顧客層、商圏からとらえる)
 
①理念
 ・百貨店=ファッション・くらし創造、総合スーパー=まちづくり・EDLPといったようにフォーマットの主張が見える
 ・SM…ヤオコー(エポックメーキングとなった南古谷SCは、構造はNSCだが、専門店の集積で擬似GMS形成。デイリーからホリデーまでカバー)、サミット(店の近所の、日常の食生活のお手伝い)
 ・コンビニ…ローソン(ほっとステーション、開いててよかった)

 百貨店、総合スーパー、SM、コンビニの4つの象限が、専門店ビル、RSC(ライフスタイル提案専門店と専門スーパーの集積)、NSC(日常生活に必要な商品を扱う専門スーパーの集積)、通信販売へと転換

②売上構成
 ・百貨店51.2%、量販店(イズミ)18.6%、コンビニ(家庭用品含み)26.3%
  *生活の緊急需要に応えることから一定の品揃えの確保が見られる。
 ・通販3兆8000億円、いずれ百貨店、総合スーパーを抜く。

③顧客層
 ・百貨店…カード顧客の属性をみても、西武百貨店は30歳代、そごうは50歳代と分かれており、世代別に独自のライフスタイルを持つ
 ・量販店…標準世帯を対象にしている

④人口動態
 ・80年、35歳と5歳に山を迎え、量販店の客層となる。2000年、30歳と55歳に山
  *以降、マーケットのボリュームとなる山が続かなかった(少子化の始まり)
 ・家のローンと子育てを終えた団塊世代と親元に近くに住み支援を受ける30歳代が“現代の豊かさ”の正体

⑤商圏
 ・SM、500mが重要。生鮮食品の回転確保

⑥購買の仕方
 ・百貨店=こだわり、スーパー=生活に必要、通販=興味)
 ・商品開発(百貨店=探し出す“点”限定品、スーパー=つくる“線”価格・健康・グルメ志向)

⑦店舗展開
 ・専門店…プレステージは限定した場所
 ・カジュアル・紳士・ベビーは良品計画328店からユニクロ749店、しまむら1111店

 上記のトップチェーンに競合企業を加えると「専門(衣料品)スーパー」4000店になる。

(4)日本の小売業の今後
 グローバリゼーションと国外移転が進む中で、低価格および低経費追求は必須であり、そのための調達力が課題となる。
 そこで業態別の課題でみると。

百貨店
 筆者(注・井口氏)の経験則であるが、1店当たり年商が100億円以上ないと百貨店本来の品揃えと店揃えができない。
 集客の目玉となる海外人気ブランドを集積させるには300~400億円は必要。
 三越の場合、仙台390億円、札幌380億円とかろうじて維持する水準。千葉、高松クラス(約270億円)は厳しい。イオンと共同出店した郊外型の武蔵村山、名取は厳しいことは明白(デパ地下の食品はもう少し商圏は絞れる)。
 百貨店の場合、取引先(出店企業)は規模ではなく、個店でしかみてくれない。

総合スーパー
 1.「標準家庭」の減少
 2.専門スーパーの侵食
 3.食品はSMのみ残る
 4.総合スーパーの2階以上は専門店誘致
 5.箱型GMSとイオンSCでは優劣明らか

スーパーマーケット(SM)
 SM+GMS(食品フロア)で現行の2万店がピークであるが、内食回帰が追い風である上、これだけの店数はインフラとして残る。

高齢化の消費傾向
 60歳以上の特殊な消費傾向に注目したい。
 例えば、「贈与金」2万2635円(3万円強の“交際費”に含まれる)、「自動車関連」3905円。いずれも34歳以下(贈与金4851円、自動車13483円)、35~59歳(同6091円、20112円)と顕著な違いがあり、ここをみてもGMS成長の糧であった団塊世代の消費が一変していることが分かる。

 
「食品商業」編集長 山本恭広


井口氏の分析とその報告の後に、参加者からの質疑応答がなされました。
その模様は次回ブログで報告…商人舎事務局

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RMLC2009年4月度報告

2009年06月19日(金曜日)
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1:29 PM

4月度は、前回より、メンバー入りされた中村徹さんに問題提起をしてもらいました。

(1)EDLPブームの“根拠”を検証する 
            EDLPとEDLCの関係…中村徹氏

中村さんには、イオン在籍中、主にデイリー食品の分野で、
開発および調達業務を10年以上積まれた経験を踏まえて語っていただきました。

GMS中心に行われている値下げ競争の背景と現状については、
「仕入原価の引き下げや仕組みを伴っておらず、“ノーガード”状態」とし、
実はバイヤーも、売場担当者も、
商品コストを知らない中で仕事をしているのが、大半であると指摘されました。

商品を仕入れる際、「製造」「物流」「決済」などの各段階で
さまざまなコスト改善の余地があるはずで、
原価構造と取引構造から見なければならないというもの。

この面でのコスト引き下げが恒常的なローコスト化(EDLC)につながり、
EDLPの前提になるはずだが、
「製造・物流コスト」はブラックボックスの状態。
従って、EDLCとなると「人件費」の引き下げにしか目がいかない。

コスト引き下げ対象の項目についても、
取引メーカーとの商談・交渉の材料として、一覧表化されたものを提示していただきました。

「伝票」「受発注」「返品(の有無)」それぞれにコストを明らかにしつつ、
商品別、取引先別の収益を考慮しないと有効性が分からないというもの。

EDLCとは作り手のローコスト化を図ることでもあり、
製造ラインの稼働及びサイクルを把握しておくと、
その平準化のタイミングを知ることで、調達コストは引き下げられる。
これが恒常化できると定期的な特売用アイテムの調達にもつながるということでした。

一つの豆腐メーカー、卵メーカーに対して、
競合他社と日替わりで調達し合うということも行われているという、参加者の声もありました。

続いて、高木和成さんより、毎月発信されている「RMO通信」より、
「改正薬事法」対策ついての現状について、解説いただきました。

(2)改正薬事法対策について…高木和成氏

ファミリーマート300店、セブン&アイ(アインファーマシーとの提携)、
イオン(グローウェルHD、CFSコーポレーションとの提携)といったように
ドラッグ事業の青写真と主要業態・チェーンの取り組みの方向が見えてきた。

併せて医薬品販売の制度化に伴い、創設された
「登録販売者」の合格者が5万8000人にのぼっていることや、
川上段階でも医薬品、OTCにおけるPB開発が予想されること。

これに併せて、主戦場をフォーマットとするドラッグストアも
安さ訴求型と付加価値型の二極化に分かれることが予想される。

以上を受けて、大塚さん(ヤオコー。ドラッグ事業の縮小)からは、
食品スーパーでみると、現状、構成比5%にとどまる非食品の中で、
さらに医薬品となるとマーケットは絞り込まれ、
担当者の育成を考えるとコストパフォーマンスは低い。
また、売る場所が増える、どこでも買えるようになると、
コモディティ化するわけで、価格競争になる。
そういうカテゴリーは規模のメリットが今後も働くことになり、
取り組みの動機にはならない、との意見が出されました。

ただし、部分的に導入すると人件費などで赤字化してしまうが、
本格的に、ドラッグを軸に新しいフォーマット開発など
事業構造を変えるつもりで取り組むと
食品スーパーの現状のビジネスモデルを変えるきっかけになる。

こう考えると、食品スーパーだけでなく、
ホームセンター、バラエティストアでも自前でやることによる
事業化の可能性は完全に否定できないという意見にまとまりました。

「食品商業」編集長 山本恭広

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RMLC2009年3月度報告

2009年05月08日(金曜日)
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10:21 AM

3月度のRMLCでは、結城座長に引き続き、
品川昭氏(品川エコ・エコノミー研究所)より、SMの競争力についての考察がありました。

「百年に一度の不況下にみるSMの競争力」(品川氏)

「SMの競争力」が本研究会の基調テーマですが、
百年に一度の不況という中では、マネジメント、マーケティングに代表される「経営学」だけでなく、
「経済学」「社会学」「歴史学」といったような角度から見ることもできると思います。
競争力を考えるに際し、同業の店対店を起点とするなら、
「店づくり」、「地域・都市間」、
(SM対GMS、対CVS、対VS)異業態、
(外食、ファストフード、ネット販売)異業種との競争へと段階ができています。

さらに産業・消費・金融構造にも視点を向けなければならないでしょう。
特に今は、産業構造レベルでの地殻変動が起きているだけに見ておかなければならない。
金融ショックの発信地である米国も、消費経済の実態をみると、
54,453ドルの年収に対し、43,395ドルの支出となっています。
低所得者層(低位20%)では9,168ドルの収入に対し、17,837ドルの支出、
中低位層20%でも24,102ドルの収入に対し、
27,410ドルの消費と計4割の人が支出過多になっています。
過剰な消費に支えられている経済であることを見ておく必要があります。

続いて、参加者との意見交換がなされました。その中から代表的な質疑を報告します。

杉田氏
小売業の業態開発のプロセスを振り返ると、
「不況を契機として出てくる」と「時代を先取る形で計画、提示、革新を重ねる」の2つの側面があると思います。
これは「外的」(つまり環境に対応する)「内的(経営者自身による革新)」とも置き換えられるのではないでしょうか。

結城座長
小売業の場合、最終消費者に近いという点で前者(環境変化)の影響を受けることが多いのではないかと考えます。
とはいえ、マーケットの要素も大きいと思います。
そして、そこに着目する経営者の視点、資質ということになります。
「外的環境」「経営者の資質」のどちらかで決まるといっては、「経営学」というものが成立しないのですが。
ゴドフリー・M・レブハー氏が「チェーンストア~米国百年史」のなかでは、
チェーンストアの成長要因として、
①チェーンストア方式に内在するもの
②経営者の資質
③弾力性
④仲間(同業者など)との効果的な団体活動、
の4つを挙げています。

米っく在住のロバート鈴木さんのご指摘ですが、
マーケットの面で言うと、米国では、
物事を「In」(好ましい)と「Out」(好ましくない)に分けて語るというトレンドがあるそうです。
今の時代、公共交通機関の利用や水道水を飲むなどの生活が志向されており、これは「In」、
逆に新車購入やペットボトルなどは「Out」といったようなもの。

企業目的を「使命」におくとするなら、
「健康で安全な“食品を提供”する」ことに焦点を絞り、
こうした社会的な責任を果たせるビジネスモデルとは何かを考えなければなりません。
今、話題の「ロープライス」や「コンビニエンス」も政策として、
原動力の一つに持たなければなりませんが、それ自体目的とはなりえなません。

3月度は20名の参加者が集まり、活発な議論がなされたことを報告します。

月刊「食品商業」編集長 山本恭広

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