商人舎

杉山昭次郎の「 流通 仙人日記」

 杉山昭次郎の「流通仙人日記」

スーパーマーケットのマーケティング Vol.11

2011年01月17日(月曜日)
カテゴリー:
  • 商業の現代化
  
10:08 AM

11. 近代化から現代化へ

■日本の近代化の遅れ

 先進諸国は、グローバリゼーションの進捗に伴い、工業面においてさまざまな壁に突き当たっている。その一つが、工場労働者の雇用の喪失である。アメリカでは、工場生産が海外に流出したため、多くの工場が閉鎖され、ワーキングプアを発生させ、経済全体を圧迫している。我が国でも、同じ問題が発生している。

 イギリスの産業革命に発する工業化の進展は、ヨーロッパを中心に世界に大きな変化をもたらした。「近代化」と呼ばれている。

 徳川幕府の鎖国政策に圧力をかけ、開国に踏み切らせたのも、世界の近代化の流れの一端であった。

 日本は近代化の遅れを取り返すべく、工業化に励んだ。不幸な戦争で多大な犠牲を払うことになったが、戦後も工業化の努力は続け、先進国入りができるまでの国力を身に付け、今日に及んでいる。

 近代化は経済学的には素朴な資本主義を体系化し、国際的には帝国主義、植民地主義を蔓延させた。素朴な資本主義、帝国主義には当然のことながら、グローバルにアンチテーゼが発生し、是正を求める強力な運動が続いている。また、工業そのものでも、環境問題への対応、「発明は必要の母」などの短絡した思想の見直しが、工業内部に湧きあがっていた。

 大変大ざっぱな記述ではあるが、このようにして、脱近代化の波が押し寄せてきたのである。脱近代化の流れは、「現代化」と呼ばれる。

 また、脱近代化を、脱工業化や情報化ととらえることもある。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.10

2011年01月14日(金曜日)
カテゴリー:
  • グローバリゼーション
  
2:08 PM

10. 成熟期の戦略課題

■アジアの転換期

 ここまでチェーンストアの転機について考えてきたが、ここで戦略課題を探るためには、もう1つの大きな転換期について考える必要がある。それは時代の要請とも呼ぶべきかもしれない。

 今、世界の中で特にアジアは、大きな転換の途上にある。世界経済の中で、中国、インドなど、工業化で遅れをとっていた昔の大国の台頭ぶりはすさまじい。これらの国々をもはや新興国と呼ぶ期間も長くはないであろう。半世紀前まで、ヨーロッパと北米の白人諸国によって構成されていた先進国の構造がつくり変えられつつある。

 アジア、南米からも先進国に仲間入りする国が、今後一世紀の間に数国は登場することは確実であろう。

 日本はこれらの国に少し先駆けて先進国への仲間入りを果たした。しかし、その優位性にあぐらをかくことは許されない。今後先進国入りをする諸国は、日本以上に「追いつけ、追い抜け」のエネルギーに満ちあふれているはずである。

■グローバリゼーションの特色

 さて、以上のような転換の動きをグローバリゼーションと呼ぶ。グローバリゼーションの特色の1つに、先進国のテクノロジーを発展途上国に移転して、安い人件費のもとで製品をつくり、先進国で消費しようとする流れがある。この流れは、必然的に、途上国に工業化をもたらす。工業化が進む途上国では、雇用が増大し、熟練労働者が増え、国民所得が増大する。国民所得の増大は消費力の増大につながり、経済全体を活性化させる。

 このような良循環が途上国の地歩向上の原動力となるのだが、この循環のスピードを高めるものとして資金調達と教育があげられる。両者とも工業化進展との循環関係をもっている。ちなみにアメリカへの留学生の人数は、日本人は減少の傾向にあるが、中国人はすでに日本人の約10倍に達し、なお増え続けているという。

続きます

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スーパーマーケットのマーケティング Vol.9

2011年01月12日(水曜日)
カテゴリー:
  • 業態の転機
  
11:40 AM

9. 業態によって異なる転機の時期

■GMSの成長期への移行

 今、私が転機について色々述べようとする理由を先に言えば、転機の前と後では企業のすること、つまり政策が大きく変わるからである。変えなくてもすむならば、それは転機とは言えない。転機が訪れたら、企業の重点課題、優先課題なかんずく、戦略的重点課題の見直しが必要になる。

 スーパーマーケットはGMSなどと同じ頃、大量生産、高度大量消費に呼応して大量販売を行うべく、誕生した。この業態の揺籃期の戦略的最重点課題は、プライシング、つまり、低価格販売であった。

 しかし、生鮮食品の利用度の高い我が国の家庭食では、価格だけでは、それまでの業種店(つまり、魚屋、八百屋、肉屋など)からシェアを奪えず、業績も上がらず、成長期への移行が遅れた。

 逆に衣料品は、百貨店、洋品店からのシェア奪取がプライシングだけでも容易であり、戦争による耐久生活から開放され、需要が急増したことも重なって、業績の伸びが著しく、GMSはスーパーマーケットより10年は早く成長期に突入することができた。

■スーパーマーケットの成長期への移行

 スーパーマーケットが成長期に移行したのは、鮮度管理のシステムを稼働させてからである。成長期を迎えたスーパーマーケット各社は、出店戦略を最重要視し、企業規模を拡大した。売場面積を順次拡大し、折からのモータリゼーションの気運にものり、立地条件の革新にも成功した。

 その間、店内作業システムの開発、配送センターの設置など、業務システムの開発・改善も進めた。また、サミットが開発し、「演作システム」と名づけたような、ルーティン化された営業手続システムを作り上げる努力も行ってきた。

■そして成熟期へ

 成長期に上述のような経営努力を積み重ねているうちに、次の転機が訪れた。すなわち成熟期を迎えたのである。

 成熟期とは、成長期間中、企業が荒削りな経営システム(戦略システムと業務システムが含まれる)のままで進めた規模拡大の速度をダウンさせ、経営システムの成熟をはかり、より充実したサービスを市場(顧客に)提供するようになる期間である。

 この期間中に、企業間競争は、成長期にくらべ、厳しさを倍加させる。なぜならば、競争企業もまた経営システムを成熟強化させているからである。

 以上を、あえて一言にまとめて言えば、出店競争の矛先を収めて、既存店の活性化に重点施策を移すべきということになる。

続きます

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