WorldBaseballClassic「日本対ベネズエラ」の「優勝以外は失敗」

World Baseball Classic2026。
日本対ベネズエラの準々決勝。
マイアミの夜は、
勝者の歓声と敗者の沈黙を等しく飲み込む。
9回、大谷翔平の打球が高く舞い上がり、
遊撃手のグラブに収まった瞬間、
日本ベンチの時間は止まった。

WBC準々決勝、
日本はベネズエラに5対8で敗れた。
数字だけを見れば、
乱打戦の末の逆転負け。
しかし、この試合が残したものは、
もっと深い。
ジャパンの先発投手・山本由伸は、
初回、先頭打者弾を浴びた。

打たれたのはロナルド・アクーニャJr.、28歳。
アトランタ・ブレーブスの外野手。
彼のスイングには、
南米の野球が持つ「躊躇のなさ」があった。
だが、日本も負けてはいない。
大谷翔平も先頭打者アーチ。
チームの鼓動を一気に取り戻した。

互いの「顔」が応酬する、
象徴的な序章だった。
3回、阪神タイガースの4番・佐藤輝明が、
タイムリー二塁打を放った。
鈴木誠也は2回に負傷交代し、
その空白を森下翔太が埋めた。
阪神タイガースの3番打者。

ロベルト・スアレスのチェンジアップを、
完璧に捉えたて勝ち越し3点本塁打。
スアレスは日本のホークス、タイガースで投げ、
今年からアトランタ・ブレーブス。
この瞬間、流れは日本にあった。
だが5回、隅田知一郎(ちひろ)は、
マイケル・ガルシアに2ランを浴びて1点差。
隅田は西武ライオンズの左腕投手。
ガルシアはカンザスシティロイヤルズ。
つづいて6回、伊藤大海(ひろみ)が、
ウィルヤー・アブレイユに、
逆転3ランを打たれた。

伊藤は北海道日本ハムファイターズのエース。
アブレイユはボストンレッドソックス。
隅田も伊藤もいずれも、
直球を狙い打たれた。
井端弘和監督は試合後、
「直球をはじき返された」と語った。
それは単なる球威の問題ではない。
ベネズエラは日本投手陣の「傾向」を研究し、
準備していた。
日本も全得点を長打で奪った。
しかし試合の支配権は終盤、
確実にベネズエラに傾いた。
タイガースの森下と佐藤は躍動した。
昨年度の日本のセリーグ優勝の立役者。
一方、今年から大リーガーとなる二人は、
まったくさえなかった。
肩に力が入っていた。
村上宗隆と岡本和真。
村上はヤクルトスワローズから、
シカゴホワイトソックス。
岡本は読売ジャイアンツから、
トロントブルージェイズ。
米国マイアミでの対戦。
佐藤と森下のほうが、
村上と岡本よりも断然、
心理的に楽な気分で打席に立てる。
ならば村上と岡本のメンツなど考えず、
初めから佐藤と森下を主力にすべきだった。
近藤健介も今年は全く打てなかった。
もともと日本随一のミート打法。
しかし調子が悪い選手は、
心理的に追い込まれて、
ますます悪くなる。
短期決戦でその近藤を使い続けた。
このベネズエラ戦でも代打に起用した。
もっと使ってもいい選手はいた。
つまりは監督の井端の采配の問題だ。
残念だが、負けるべくして負けた。
最後の打者となった大谷は、
悔しそうだった。
「惜しいゲームだった。
勝てる要素のあるゲームだった」
「自分の力不足も含めて、
優勝以外はまあ失敗というか」
心底、悔しがった。
一方、アクーニャ・ジュニア。
「これはわが国にとって歴史的瞬間だ。
しかし仕事はまだ終わっていない。
われわれには勝つべき二つの試合がある」
二つの試合とは準決勝と決勝のことだが、
私には「アメリカに勝つことこそ目的だ」と聞こえる。
そしてベネズエラ監督オマール・ロペス。
「私はこの仕事を無休でやっている。
代表監督として給料はもらっていない」
「今、ベネズエラの街に出て、
酒を飲みながら喜んでいる国民。
それが何よりうれしい」
大統領を米軍に拉致されたベネズエラ。
自分の仕事のベースボールでその屈辱を晴らす。
とてもベネズエラには勝てない。
そんな気がした。
そしてこのベネズエラからの敗戦に、
悔しがる大谷翔平にも、
心を馳せる。
イラン戦争の中で行われた、
WorldBaseballClassic2026。
ネットフリックスからの解約は相次ぐが、
まだ終わっていない。
〈結城義晴〉


































