ウォルマート「NYSEからNASDAQへ」の証券市場転換の意味

商人舎流通SuperNews。
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株式上場先をニューヨーク証券取引所からNasdaqへ変更
ウォルマートのダグ・マクミロンCEO、
多分、最後の仕事だ。
12月9日(火)、株式上場先を変更した。
ニューヨーク証券取引所からナスダックへ。
前者はNYSE、後者はNASDAQ。

アメリカの2大証券市場。
2025年5月末時点で、
両市場の時価総額は、
約62兆ドル。
1ドル150円で換算すると、
9300兆円。
凄い市場だ。
ウォルマートは1972年10月1日に、
ニューヨーク証券取引所に初上場した。
1株は16ドル50セントをつけた。
1945年の創業は、
ベンフランクリンの加盟店だった。
1962年にディスカウントストアを開発した。
「ウォルマート」の店名だった。
それから10年後に、
ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。
ナスダックは1971年に設立された。
世界で初めて完全電子取引を採用した市場だった。
しかしまだまだ圧倒的にニューヨークが、
社会的権威と資金調達力を持っていた。
NYSEは1792年の設立だ。
それから8年後にサムは、
店舗フォーマットを改革した。
「1980年代対策店舗」と呼んだ。
つまり1972年から8年間は、
株式市場から調達した資金をもとに、
ハイ&ローで成長した時期だった。
この成長をばねに1980年から、
エブリデーロープライス戦略に転換する。
ウォルマートは投資家たちの需要に応えるため、
何度も株式分割を実施した。
実際に2024年に12回も、
株式分割をしている。
イトーヨーカ堂時代の伊藤雅俊さんは、
同じように株式分割を繰り返して、
株主の期待に応えた。
株主の多くが従業員だったからでもある。
これもサムと同じだ。
サムは40年以上連続で、
株主への年間配当を増額した。
マクミロンCEOは、
その伝統のニューヨーク市場から、
ナスダックへの変更を決定して、
花道を飾る。
そして語る。
「人間主導でテクノロジーを活用する
オムニチャネル小売業者として、
ウォルマートがイノベーションと成長に
深くコミットしていることを反映しています」
上場変更の理由は一言で示せば、
オムニチャネルリテーラーとなったからだ。
「ナスダックのテクノロジーへの注力と、
デジタル変革を推進する企業への支援は、
ウォルマートの戦略ビジョンと
完全に一致しています」
「お客さま、会員さま、アソシエートたち、
そして株主の皆さまにとって、
スムーズで円滑な摩擦のない
未来を築き続ける上で、
ナスダックへの上場は
新たな章の始まりです」
「新たなチャプターを準備して、
私は去ります」
ニューヨーク証券取引所には、
グローバル大企業が上場している。
ジョンソン&ジョンソンやコカ・コーラ、
日本のトヨタなどもニューヨーク市場組だ。
一方、ナスダック(NASDAQ)には、
GAFAを始め、名だたるIT企業が並ぶ。
12月時点の時価総額をランクすると、
1 エヌビディアNASDAQ
2 アップルNASDAQ
3 マイクロソフトNASDAQ
4 アマゾン・ドット・コムNASDAQ
5 アルファベットGoogl NASDAQ
6 アルファベットGoog NASDAQ
7 ブロードコムNASDAQ
8 テスラNASDAQ
9 メタ・プラットフォームズNASDAQ
10 イーライリリーNYSE
10位がやっとニューヨーク市場の薬品会社だ。
そして11位がウォルマート(NYSE⇒NASDAQ)。
以下、
12JPモルガン・チェースNYSE
13バークシャーハサウェイNYSE
14ビザNYSE
15オラクルNYSE
16ジョンソン・エンド・ジョンソンNYSE
17マスターカード NYSE
18エクソン・モービルNYSE
19ネットフリックスNASDAQ
20パランティア・テクノロジーズNASDAQ
24コストコ・ホールセールNASDAQ
25ホーム・デポNYSE
26プロクター・アンド・ギャンブルNYSE
30ユナイテッド・ヘルスNYSE
かつてのアメリカでは、
大企業の「オールドエコノミー」がNYSE、
新興企業の「ニューエコノミー」がNASDAQだった。
棲み分けがあった。
しかし、現在は、
いやウォルマートの変更以降は、
その垣根は全くなくなったと言っていい。
もちろんNASDAQは、
電子取引システムを活用する。
取引スピードが速く、コストが低い。
だから多くの投資家にとって魅力がある。
NASDAQは革新性がある。
常に新しいテクノロジーやビジネスモデルの企業を、
市場に招いている。
これがアメリカ経済のダイナミズムをつくっている。
NYSEの通常取引時間は、
午前9時30分から午後4時まで。
NASDAQはこの時間帯以外に、
プレマーケット(通常取引前)と、
アフターマーケット(通常取引後)もある。
この延長取引の時間帯に、
迅速な投資活動が進む。
ウォルマートのNASDAQへの移行は、
当然の流れであると考えられるし、
新しい企業への転換であるとも判断できる。
ダグ・マクミロンは、
サム・ウォルトンのつけた社名から、
「ストアーズ」を削除し、
サム・ウォルトンが果たした上場市場も、
NASDAQに変えた。
ウォルマートの新しい「章」が始まる。
〈結城義晴〉

































