2025年12月21日(日曜日)

「構造改革」は本当に始まるか?

「構造改革」が始まる。

日経新聞経済コラム「大機小機」
ウィークデーに経済の識者たちが、
匿名のペンネームでズバリズバリと書く。

一直さんは私の好きなコラムニストのひとり。

12月20日の記事。

「今年を振り返ると、
日本の将来を方向付ける大きな変化が
着実に進行していることに気が付く」

まず、
「なによりも日本を取り巻く
国際環境が大きく変わった」

➀米国をめぐる国際問題
ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官。
2023年11月29日に亡くなった。

しかし2014年に『World Order』を書いた。
伏見威蕃訳では『国際秩序』
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「民主主義と自由市場を広めれば
自動的に公正で平和で
排他的ではない世界が創れるという見方は
冷戦直後の楽観的な思い込みだったのではないか――」

その通りだ。
冷戦がソビエト連邦の崩壊と、
ベルリンの壁の撤去によって終了し、
次には思い通りの世界がやってくる。

そんな楽観的な思い込みは確かにあった。

コラムニスト。
「国際経済システムは
かつてないほどグローバル化している」

「一方で政治構造は変わらず
国民国家が土台になっている」

「加えて米国の国力、国際的指導力は、
冷戦直後に比べ大きく低下した」

それから11年。

「今年再び登場したトランプ米大統領が、
ロシアのウクライナ侵略に
歯止めをかけようと奔走しても、
いま現在、目立った成果をあげられないでいる」

トランプにも効果的な手は打てない。
世界を悪くするばかりだ。

「さらに世界第2の経済大国となった中国が
軍事的プレゼンスを急速に高めている」

エマニュエル・トッドは、
『西洋の敗北』で言い切った。71tZv7pJH6L._SL1500_

「ソ連の崩壊も西側の勝利だと誤解された」

「実際は崩壊に向かう米ソの両体制のうち、
ソ連が先に崩壊しただけだ」

そのうえでトッドは言う。
「勝ち誇った米国は、
2001年に中国を世界貿易機関(WHO)に迎え入れる
自殺行為に出た」

これもその通り。
中国がプレゼンスを高めた。

一方、一直さん。
「米国が盟主として
世界に君臨していた冷戦時代と違い、
経済グローバル化のもと
経済競争が激化し、
各国で所得格差が拡大した」

しかし反動が起こった。
「その結果、ポピュリズムが政治を動かし始め、
米国含め各国が自国中心的な色彩を強めている」

日本もこのメガトレンドの渦中にいる。

「昨年の衆議院選挙、
本年7月の参議院選挙を通じて、
青壮年世代の現役勤労者、
いわゆる中間層の投票率が顕著に上昇し、
自公連立政権が崩壊、
自民主導の戦後政治体制は終わった」

一直さん。
「世界も日本も『多党制・多様性の時代』に入った」

見たとおりだ。

「各国の安全保障は
それぞれが担わざるを得ない。
米国との同盟を組む日本も
安全保障コストである防衛費を
増やさざるを得ない」

高市内閣は防衛費を前倒しで、
2%にもっていく。

やがて3.5%に増強するとみられる。

「注目すべきは、
中間層が声を上げ始めたことによって、
長期自民党政権を支えてきた既得権層が
力を失い始めたことだ」

一直さんは経済に結びつける。
「これによって経済構造は変わってゆく」

その通りだろう。

そして一直さんは言う。
「政府による累次の規制改革策がなしえなかった
構造改革が動き始める」

安倍晋三内閣の三本の矢。

浜田宏一エール大学名誉教授。
第2次安倍晋三内閣官房参与。81biiTDsvKL._SL1500_

「アベノミクスの三本の矢を、
大学の通知表にならって採点すると、
金融緩和はAプラス、財政政策はB
成長戦略の第三の矢はEだ」

「ABE」というダジャレ。

そのEの成績を付けられた成長戦略は、
経済の構造改革が中核となる。

安倍政権にも浜田内閣官房参与にも、
それはできなかった。

しかし一直さんは、
「状況」がそれを進めると言う。

「人口減少社会を見据えた
社会保障制度改革など長期構造改革に
政府が腰を据えて取り組む環境が整う」

最後に「大いに期待したい」

しかし一直さんのこの見方こそ、
「楽観的な思い込み」ではないか。

私は楽観はしない。

せめて小売業、チェーンストア、
製配販の消費産業だけでも、
「構造改革」を先取りして、
その先導役にならねばと思う。

顧客に近い産業の使命である。

それが「商業の現代化」だと思う。

〈結城義晴〉

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