地方百貨店の「活性化」と業態盛衰の「不可逆性」

Everybody, Good Monday!
[2025vol㉖]
2025年第27週。
今日で2025年の前半が終わる。
そして明日から今年の後半が始まる。
7月は講義が多い。
バイヤーセミナーや万代知識商人大学。
考えてみると有難いことだ。
聴いてくれる人がいるから、
話をすることができる。
読んでくれる人がいるから、
書くことができる。
お陰様でこのブログは、
ずいぶん多くの人が読んでくれている。
それをひしひしと感じる。
幸せなことだ。
投票する人がいるから、
当選者がいる。
今回は期日前投票をしようと思っている。
確かではないけれど。
重要なはずの国政選挙が、
なぜか盛り上がらない。
そのことにこそ、
問題がある。
さて商人舎流通SuperNews。
四半期決算が発表されている。
しまむらnews|
第1Q売上高1684億円2.4%増・経常利益4.3%増
ニッポン小売業番付26位。
アパレルチェーン2位。
増収増益で好調だ。
営業利益率9.1%。
J.フロントnews|
第1Q売上収益1108億円9.2%増・営利0.9%減の増収減益
小売業番付40位。
百貨店ランキング第3位。
売上げ仕入れ分なども含めた総額売上高は、
3074億円で前年同期比2.6%増だが、
国際会計基準を適用すると、
売上収益1108億円、9.2%増。
営業利益160億円で0.9%減。
しかし営業利益率は14.4%。
従来の基準なら5.2%。
増収減益だが悪くはない。
インバウンド効果が大きい。
そのJ.フロントリテイリング前社長、
好本達也さん。
日経夕刊にエッセイを書いている。
[明日への話題]
半年の連載で今日はその最終回。
タイトルは、
「やっぱり最後の決め手はヒト」
「小売業は『人間産業』だとよく言われる」
同感だ。
「人と人との直接的な関わりが肝要で、
様々な人たちが小売業の未来を形作っていく」
「その中で私が大切にしている二つの言葉をもって、
『あすへの話題』を締めくくりたい」
一つ目は、新入社員時代に教訓を得た、
「一生懸命」
「『一生懸命さ』が最強の交渉術になる」
二つ目は、「長所発見」
「人は短所こそ目につきやすいが、
長所は丁寧に観察しなければ
見つけられない」
「だからこそ、人に出会った時には
まず長所を探す」
「それが人を輝かせ、
チーム力を最大化する秘訣だと
自戒している」
自戒しているというところが正直だ。
これにも同感。
先週の同じエッセイ。
タイトルは、
「地方百貨店の活性化」
取り組むべき重要な課題の一つが、
「地方百貨店の活性化」だ。
そこで29都市38店舗を訪問した。
「感じたのは地方百貨店の熱量だ」
45年も前に椎名誠さんが、
愛を込めて言い切った。
「痴呆百貨店」
椎名さんは「ストアーズレポート」編集長だった。
好本さん。
「お客様との強い絆を築き、
地元企業や団体、自治体の人々と
力を合わせて奮闘している姿が頼もしい」
「地方の未来を切り拓こうと
知恵を絞る若手従業員も多い。
その地特有の歴史や文化も貴重な財産で、
地方のポテンシャルを体感した」
特有の歴史や文化。
その苗床となるような機能を果たしたい。
都市百貨店の類似縮小版のままだったら、
アメリカのようにすべてが淘汰される。
「同時に、地方百貨店の活性化には
画一的な解決策はなく、
『オーダーメイドのアプローチ』が、
必要だと思い至った」
そう、百貨店にこそポジショニングが必須だ。
しかし今、それはない。
「自らの強みを見極め、ありたい姿を描き、
具体的なマイルストーンを設定することが第一歩」
「ゴールまでの道筋が見通せると、
自分たちの装備の中で
何が足りないのかも見えてくる」
好本さんもまだ、
抽象的な解決策しか出していない。
「IT、街づくりなどに精通した専門人材なのか、
若手人材を育成するノウハウなのか」
岡山の天満屋、
大分のトキハ。
埼玉の丸広、
私の故郷福岡の岩田屋。
比較的元気だった地方百貨店も、
完全に失速気味だ。
独立独歩も苦しくなってきて、
岩田屋は2002年に伊勢丹に買収され、
今や三越伊勢丹傘下にある。
アメリカではほとんどすべてが、
メイシーズに買収された。
シアーズやペニーなど、
ディスカウントデパートメントストアに、
機能が代替されてしまったからだ。
今やそのシアーズもペニーも、
ウォルマートに食われて倒産してしまった。
マルコム・マクネア教授の「小売りの輪」論が、
70年も前にそれらの転換を言い当てていた。
いわば百貨店業態そのものの産業構造問題である。
日本でも都市百貨店の地方支店を含めて、
地方百貨店は機能を喪失しかかっている。
「地方百貨店が
笑顔のお客様で溢(あふ)れることが、
地域を輝かせ、日本全体を元気にする
鍵であると信じて」
歴史的に見る限り業態の盛衰は、
不可逆的である。
それでも一生懸命と長所発見が、
企業と組織に息を吹き込むことは信じたい。
では、みなさん、今週も、
一生懸命、仕事しよう。
Good Monday!
〈結城義晴〉