夏の甲子園準々決勝の激戦とミニストップ「消費期限偽装」

第107回全国高校野球選手権。
夏の甲子園。
毎年書いているが、
準々決勝が一番面白い。
ベスト8の対戦。
いずれも3回戦まで勝利したチーム。
その前に地方大会で一度も負けずに来た。
その8強が出揃って、
4試合が行われる。
その熱戦が1日で展開される。
郷土のチームを応援したり、
居住している地域の学校を支援したり、
自分と紐づいているのがとてもいい。
第1試合は山梨学院高校が猛攻で11点を挙げ、
昨年の夏の覇者京都国際高校を破った。
第2試合は東京都の東西対決。
日大三校が関東第一高校に5対3で勝った。
第3試合は追いつ追われつの好ゲーム。
県立岐阜商業が優勝候補の横浜高校を、
延長11回にタイブレークのサヨナラ勝ち。
私は延長の攻防をハラハラしながら見ていた。
残念ながら横浜は負けた。
第4試合はこれも優勝候補の東洋大姫路高校を、
沖縄尚学高校が2対1の投手戦を制した。
いずれの試合も前評判が覆された。
それだけ実力均衡の面白い戦いだった。
準決勝は1日空けて21日(木)。
日大三校(西東京)—県岐阜商、
沖縄尚学—山梨学院。
楽しみなゲームだ。
県岐阜商の横山温大(はると)右翼手は、
生まれつき左手の指がない。
米国大リーガーには、
ジム・アボットという投手がいた。
先天性右手欠損のハンディを負いながら、
1989年から99年まで活躍した。
横山選手はアボットを目標に研鑽を摘んで、
山梨代表チームのレギュラーとなり、
今日も大活躍でベスト4に進んだ。
何かが起こりそうな気配だ。
さて、悪いニュース。
ミニストップの消費期限偽装。
日経新聞が丁寧に取材して報じた。
イオンのコンビニ・ミニストップの23店で、
弁当、惣菜の「消費期限偽装」が判明した。
6月下旬、委託先の定期検査で、
消費期限を記したおにぎりのラベルが、
二重に貼られているのが見つかった。
調査すると8月16日時点で、
7都府県の23店で偽装が確認された。
店内厨房での調理後すぐに、
消費期限を記したラベルが貼られる。
ところが一定時間をあけてから貼付していた。
売場に一度並べた商品のラベルを、
付け替える問題も判明した。
ミニストップは改善策が整うまでの期間、
全店で当該の店内調理品の販売を止める。
プロセスセンターやセントラルキッチンでは、
商品は厳格な管理下で加工される。
しかし店内調理品はそこが甘くなりやすい。
さらに消費期限が短い。
ミニストップではセンター製造のおにぎりは、
消費期限が約1日だが、店内調理品は8〜10時間だ。
消費期限を過ぎると、
自家消費するか、廃棄される。
店内調理品は2割以上粗利益が高い。
加盟店は売れれば儲かるが、
廃棄のリスクも大きい。
だから消費期限の偽装が起こった。
2020年の公正取引委員会の調査では、
コンビニ1店あたりの営業費は年2299万円。
そのうち2割の468万円が廃棄ロスである。
ミニストップの営業への影響は大きい。
コンビニ業界で、
営業収益5番手、店数4番手のチェーンだ。
しかも営業損失、経常損失が出ている。
偽装事件などが起こる場合、
他の面でも問題は隠蔽されていることが多い。
何よりも襟を正して、
すべて真っ正直に対応しなければならない。
インテグリティとは真っ正直のことだ。
さて糸井重里のエッセイ「今日のダーリン」
「『かっこいい』の勃興と衰退」
ふだん、あんまり使う機会は減ったけれど、
ぼくは「かっこいい」という
ほめことばを使っている。
語源としては「格好良い」なのだろうが、
それとはちょっとちがう感覚である。
ぼくが18歳になるくらいまで、
じぶんの周辺に、このことばはなかった。
少なくともぼくは言ったことがなかったし、
友人たちも「かっこいい」という、
ことばのない生活をしていた。
はじめて聞いたのは、
高校の同級生Kくんの甥である
小学生男子が、Kくんがなにかをしたときに、
すかさず「くーちゃん、かっこいいーっ!」と、
叫んだときだった。
ぼくは、その場にいたのである。
その「くーちゃん、かっこいいーっ!」が、
ぼくにはものすごい「絶賛」のことばに聞こえた。
「かっこいい」ということばが、
かっこよかったのだ。
ぼくの生活のなかに、
それを取り入れるようになったのは、
それから徐々にだったけれど、
いつのまにか、「かっこいい」抜きで
生きていくことができなくなった。
いまでも、
ぼくの価値観のかなり大きな部分を
「かっこいい」という感じ方が、
占めていると思う――。
私も同じ世代、
同感だ。
――ぼくらよりも、
もっと年上のお兄さんたちは、
石原裕次郎を象徴とする、
「イカす」という表現を多用していたけれど、
ぼくらの世代からは「かっこいい」が
どんどん勢力を増していった。
しかし、いま思うのは
「かっこいい」という価値観は、
少しずつ衰えてきているんだろうなということだ。
「イケてる」とか「エモい」とかが、
新興勢力なのかな。
女性は「かわいい」とか
「おしゃれ」とか、かなぁ。
「かっこいい」の使用頻度は減っても、
おそらく、ぼくは「かっこいい」と、
言い続けそうです――。
県岐阜商の横山右翼手、
無心のプレーは「かっこよかった」
ミニストップ、
偽装の儲けを狙うのは、
ひどく「かっこわるかった」
無私と利他こそ、
かっこいい。
〈結城義晴〉