結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2006年04月13日(木曜日)

チェーンストアの「千客万来、万客億来、億客兆来」

常連客と一見客

常連客と一見客

一口に「お客様」といったときにも、
そのお客様には二種類ある。

ひとりは、私の店の特定のお客様。
これをカスタマー(Customer)という。
もうひとりは、不特定の消費者。
コンシューマー(Consumer)と呼ぼう。
昔はこれらを「常連客」と「一見客」といった。

全体に、店の数が少なくて、
お客の数が多いときには、
ほとんどがカスタマーである。
お客には店を選ぶことが出来ないからだ。
商店街はそんなときに栄えていた。
高度成長時代の日本のチェーンストアも、
だから繁栄した。
しかし、店の数が、お客の数に比べて多くなってくると、
よほど顧客との絆が強くなければ、
ほとんどがコンシューマーとなってしまう。
お客1人当たりの店の数が増えてくるからだ。

チェーンストアはエブリボディグッズを扱う。
すなわち大衆品ビジネスである。
誰からも愛される店でなければならない。
しかし、それでもチェーンストアビジネスが成熟してくると、
エブリボディグッズですら、顧客の好みに応じて、
二大政党制のように志向が分かれてくる。
大衆品にも、顧客は好みを要求してくるのだ。
だから大衆品ビジネスにもカスタマーは存在しなければならない。

2006年、4月の今、必要なのは、
特定のお客様、カスタマーを確立し、増やしていくことだ。

ロイヤルカスタマー

さて、カスタマーを位置づけたところで、
そのカスタマーにも、
三つの分類があることをご存知だろうか。
第一は、ニューカスタマー。
新規のカスタマー。
特定のお客様になってくれそうな新規顧客である。
新しくこの店のファンになってくれるお客様。
第二は、リピートカスタマー。
繰り返しのカスタマー。
何度もこの店にやってきて、
商品やサービスを楽しんでくれるお客様。
しかし時には、同業の他の店に
行くことがあるかもしれないお客様。
そして第3が、ロイヤルカスタマー。
信奉顧客。
ロイヤル(Loyal)とは
「忠誠な、忠実な、誠実な」といった意味。
ロイヤルカスタマーとは
「その店に最も信頼を寄せてくれるお客様」。
「信じる者」と書いて「儲け」と読む。
ロイヤルカスタマーとは
「店を信じてくれるお客様」である。
店の側が、その暮らしぶりや志向を、
商売を通して知り尽くしている顧客である。

現代の店は、まず、
多くのコンシューマーを
ニューカスタマーに変えねばならない。
そしてニューカスタマーにはリピートカスタマーに、
さらにロイヤルカスタマーになっていただかねばならない。

ロイヤルカスタマーになっていただくと、実は、
お店にも、そして顧客自身にも、
両者にメリットがたくさん生まれる。
まず、顧客満足を実現しやすい。
不特定の消費者よりも、特定の顧客、
それもごく親しいロイヤルカスタマーのほうが、
満足させやすいことは、明らかだ。
顧客の実態が明確でないから、
商品や品揃えやサービスが確定できない。
売場づくりや商売に集中できないのである。
日々のオペレーションの中での
割り切りも出来ないのである。
次にロイヤルカスタマーは、
店にとって利益率を高めやすい。
低経費の運営をしやすい。
従って顧客に対しては、多くの利益還元をしやすい。
ロイヤルカスタマーは口コミ効果をもたらしてくれる。
これは絶大なる宣伝効果を発揮する。
だから、ロイヤルカスタマーづくりは
新規顧客の獲得につながりやすい。
さらに、ロイヤルカスタマーが多い店は
競争相手の競争力を低下させる。
ロイヤルカスタマー相手の商売は、
従業員の定着率が高まる。

現代の顧客は、自分勝手である。
我がままで、自己中心的である。
しかし積極的でもある。
認められたいと思っているし、褒められたいと感じている。
一言でいえば、ロイヤルカスタマーになりたがっている。
なぜ、ロイヤルカスタマーが増えないのか。
それは、店の側が、コンシューマー発想で、
自分の顧客がロイヤルカスタマーになりたがっていることに、
気づかないからである。

スターバックスと角田雄二

スターバックスコーヒージャパンを創業して
現会長の角田雄二さん。
1995年、ロサンゼルスでレストラン経営をしていた。
この年、シアトルで誕生したスターバックスが、
ロスに第一号店をオープンさせた。
角田さん、一日目に行ってみた。
店員さんの、なんともいえないビッグスマイル。
そして前の客につられて、最もポピュラーなカフェラテを頼む。
シアトルスタイルの炒ったコーヒーを楽しむ。
角田さん、その晩、考えた。
翌日、再び、スターバックスへ。
再び、あのビッグスマイル。
そして今度は、
昨晩から決めていたケニアブランドの苦いコーヒーを注文。
スターバックスは、カウンターで
自分の欲しい商品を注文したら、
名前を言って、それが出来上がるのを、しばし待つ。
名前を呼ばれて、商品を受け取り、それを楽しむ。
この晩も、角田さんは考えた。
あのビッグスマイルは、どうして生まれるのだろう。
三日目、みたび、スターバックスを訪れる。
カウンターで、今度は角田さん、自らビッグスマイル。
店員さんもビッグスマイル。
そしてこう聞いた。
「ユージ、今日は何にしますか?」
「一昨日がカフェラテで、昨日がケニアだったから」
「だから、今日はこれでいかが?」
その晩、角田さんは、
スターバックスのCEOハワード・シュルツに手紙を書いた。
「私は、貴方の店の
ビッグスマイルとシアトルコーヒーに三日間で魅せられた。
もし貴方が、日本でこの店を開くという考えになったら、
私と一緒にやりませんか」
今、スターバックス・ジャパンは600店になろうとしている。

角田雄二は、1995年のある日、
ロサンゼルスのスターバックスの店にやってきた。
そして、第一日目にニューカスタマーとなった。
二日目、彼はスターバックスのリピートカスタマーになった。
そして三日目、早くも彼はロイヤルカスタマーとなっていた。
ロイヤルカスタマーをつくる考え方を、
「ロイヤルマーケティング」といったりする。
そのロイヤルマーケティグの手法には、
①繰り返しパーソナルサービスをする
②繰り返し顧客教育をする
③顧客に経営参画意識をもってもらう
という項目がある。
角田雄二は、三日目にして、
スターバックスに経営参画意識を持ったのだ。

千客万来

かつてロイヤルカスタマーを「固定客」と呼んだ。
その固定客とは、繰り返し来店してくれるお客のことだ。
私はこれを「千客万来」と名づけた。
「千人の顧客、万回の来店」
千人のロイヤルカスタマーが、繰り返し来店してくれて、
万回の来店となる。
これこそチェーンストアの客数主義である。
そしてチェーンストアは、
ロイヤルカスタマーを増やしていく。
千人の顧客は万人の顧客へと飛躍する。
万人の顧客が億回の来店。
万客億来。
そして億人の顧客が兆人の顧客へと成長する。
億客兆来。
これはチェーストアにしか出来ない。

スターバックスは世界で6000店となろうとしている。
若きハワード・シュルツが、
シアトルの会社に入ってはじめた「千客万来」の商売が、
角田雄二に伝わり、日本にやってきた。
「万客億来」の事業となった。
そして世界のスターバックスへと飛躍し、
「億客兆来」のビジネスになろうとしている。
原点はビッグスマイルと炒ったコーヒーの味・香りにある。
ロイヤルカスタマー主義にこそ原点がある。

(株)商業界社長 結城義晴
<『販売革新4月号』Publisher’s Voiceより>


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