結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年11月20日(火曜日)

ウェグマンズのデプス・アソートメントと東京オイリオ会講演の年末対策

11月17日の毎日新聞一面コラム『余禄』。

「スーパーで
6種類のジャムと24種類のジャムの売り場を作り、
売れ行きを調べた」

「訪れた客の割合は、
4対6で種類の多い売り場の方が人気があった。
だが客のうち実際に買った人の割合は6種類の方が30%、
24種類の方はわずか3%だった」

どうやって人気を調べたのかは、
このコラムからは分からないが、
「人間は選択肢が多すぎると決定できない」

小売業の人々にとっては、いわば常識。
「絞り込みの効用」

もうひとつ。
「チョコレートを並べた同様の実験で
客にチョコを一つ選んで試食してもらい、
味に点数をつけさせる」

「種類の少ない売り場の平均点数の方が、
多い売り場を大きく上回った」

「選択肢が多すぎると自分の選択に自信がもてず、
その満足度も低くなる」

友野典男著『行動経済学』(光文社新書)から、
「選択のパラドックス」と呼ばれる現象。

ここでいう「種類」とは、
品種、あるいは品目だろう。

専門的に言えば、
品揃えには「広さと深さ」がある。
そのなかから戦略を選ぶ。
Narrow and deep。

私がつくった言葉でいえば、
「小さく、狭く、濃く、深く」
これは私の専売特許。

この品揃えをつくることを、
「デプス・アソートメント」という。
英語でDepth Assortment。

アメリカのウェグマンズは、
同じ品目のなかに、
クラブパックを多用する。
つまり大容量商品。

通常の容量の商品と大容量商品とで、
ひとつの品目のなかに単品を増やす。
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写真は両サイドがオーガニック・グレープ・トマト。
左が大容量3ドル99セント、
右が小容量2個で5ドル、
つまり1個2ドル50セント。

こんな売り方が至る所で展開される。

そして大容量のクラブパックを集めてコーナーづくりする。
名づけて「クラブパック・セクション」。
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精肉では大々的にクラブパック展開。
20121120172651.jpg
これもデプス・アソートメントの成果。

ウェグマンズは、
2011年度年商61億9900万ドル。
1ドル100円で換算すると6199億円。
その伸び率は前年比10.7%。
店舗数80店。

1店平均年商77億4875万円は、
こうして創り出される。

品目は英語でItem、
単品はStock Keeping Unit、
略してSKU。

鈴木哲男さんは定義する。
品目Itemは、
「顧客が識別できる商品の最小分類」
単品SKUは、
「これ以上分割できない商品の最小管理単位」
この定義、とてもいい。

顧客が識別できる最小分類を、
さらに分割して管理単位として提案する。

顧客側から見ると、
アイテムがわかればいい。
そのアイテムの中から、
自分の好きな容量のSKUを選ぶ。

店側はSKU管理して、
顧客の利便性を創出する。

ウェグマンズは小容量と大容量、
あるいは通常容量とクラブパック大容量。

さまざまな顧客が、
便利な方を選んで買ってくれる。

面倒だけれど、顧客には極めて便利。
そして大容量を集めれば、
ウォルマートやコストコに負けないコーナーが出来上がる。

つまり全部ウェグマンズで揃う。

これを「コンプリートストア」という。
完璧な店。

関西スーパーが考え出した「2・3の原則」。
例えば「鮭の2切れ入りと3切れ入り」を品揃えする。

そうすると二人家族は2切れ入りを、
三人家族は3切れ入りを買う。
これは便利だ。

四人家族は2切れ入りを2パック、
五人家族は2切れ入りと3切れ入りを、
六人家族は3切れ入りを2パック。
このようにすべての家族構成に対応できる。

ただし単身者世帯には、これは通用しないので、
そんな人が多い商圏の店やコンビニなどでは、
1切れ入りを売る。

アメリカではコストコやサムズ・クラブが、
ほとんどの地区に出店している。
だからアメリカ人は大容量の購買に慣れていて、
それを上手に消費しつくすし、使いこなす。

だからウェグマンズは、
クラブパック大容量と通常容量を、
青果、精肉などほとんどの部門でつくり、
デプス・アソートメントしている。

品揃えの深さが、
ウェグマンズの特長なのだ。

さて毎日新聞のコラムは、
ジャムとチョコレートの「選択のパラドックス」を、
衆議院総選挙の政党乱立に当てはめる。

なんと14政党。

「政党の組み合わせ次第では
ジャムを買おうとしたら
チョコを売りつけられることになりかねない」
品種が多すぎて混乱している売場のようだ。

デプス・アソートメントならば、
その心配はない。

さて昨日、午後に東京・台場へ。

ゆりかもめから見る東京湾は、
薄日が差す程度のあいにくの曇り空。
この秋一番の冷え込み。
12月中旬並みだった。
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それでも、台場の景色はなかなかのもの。
海面に高層ビルが反射している。
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私は、15時30分から、
日清オイリオグループ㈱の政策発表会での講演。
「東京オイリオ会」。
10月18日に大阪で、
西日本地区対象に講演したが、
今回は東日本地区向け。

会場は、グランパシフィック LE DAIBA。
クリスマスツリーが出迎えてくれた。
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到着してすぐに、
代表取締役専務の芋川文男さんと懇談。
来年の主力商品の展示コーナーの前でツーショット。
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講演会場には、
総合スーパー、スーパーマーケットの商品部が参集。
その数、150名ほど。
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テーマは、「2013への商品と価格の行方」
「コモディティ化と価格透明化現象が招くもの」が副題。

初めは日本流通業の5つのTide of Time。
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東日本大震災の影響、
消費税税導入論議と価格意識の問題、
M&Aの新たなうねり、
小型店舗開発とノンストアリテイリング、
食品分野の多業態間競争激化。
そんなテーマをダイジェスト。

そして、米欧のチェーンストア動向。
数表とスライドを見せながら解説。
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さらに商品問題の持論を展開。
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コモディティ&ノンコモディティの現象、
プライベートブランドの最新動向。
10月にアメリカで発見した最新情報も提供。

これは今、どこにも出ていない内容。

全体として、年末から来年に向けて、
商品戦略のカギを握る重要な考え方を語った。

90分間のご清聴を感謝。

講演後には、社内報のために再び、
芋川さんと記念撮影。
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そして、急ぎ、タクシーで池袋へ。
立教大学大学院のサービスマーケティングの授業。
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初めにレポートや論文を書くための、
「結城義晴の文章法」を伝授。
20121120163907.jpg
その後は、履修生個々の「私のクレド」の発表。

それぞれに熟考したクレド。
丁寧なパワーポイントで、
ユニークなクレドをつくり、
プレゼンしてくれた。

本当に面白い授業だった。

寒い一日だったが、
充実感にあふれていた。

心から感謝したくなった。

<結城義晴>

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