結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月25日(火曜日)

フェラガモの〝フェンス”とオーケーの「オネストカード」はドラッカーに通じる

昨日の続きで、
日本チェーンストア協会の9月の販売概況。
会員企業60社、8021店だが、
総合スーパー企業9社の売上げが、
全体の約5割を占める。
だからこれは9月の総合スーパーの趨勢とみてよい。

総販売額は9870億円、
前年同月比プラス0.6%増。

コンビニがマイナス4.0%、
食品スーパーマーケットがマイナス2.0%、
百貨店がマイナス2.4%だったから、
総合スーパーのプラスは、
たとえ0.6%であっても、
大健闘。

大部門別にみると、
食料品6404億円、プラス0.5%、
衣料品903億円、プラス3.1%、
住関品1936億円、マイナス0.8%、
サービス32億円、マイナス9.1%、
その他594億円、プラス3.4%。

衣料品が好調だった。

それでも、9月は、
月初と中旬の2度の大型台風の影響を受けて客足が減り、
昨年の記録的残暑への反動もあって、
わずか1%未満の売上げとなった。

それにしても、コンビニやスーパーマーケットまで、
マイナストレンドにあるのに、
よくぞ総合スーパーが、
プラスの数値をたたき出したものだ。

健闘をたたえたい。

さて第13回「世界経営者会議」。
日本経済新聞社主催。

この中で、サルヴァトーレ・フェラガモ会長の話がいい。
フェルッチオ・フェラガモ氏。
日経の編集委員・田中陽さんが、
インタビューでまとめた。
田中さんは流通や小売りの専門家。

フェラガモは1927年の創業以来、
「家族経営」に徹している。
いわゆるインディペンデント・カンパニー。
その「優位性」はコーネル大学ビル・ドレイク教授が指摘している。

「『船頭多くして船山に登る』となってしまわないように、
(一族から)1世代に3人だけが入社するというルールを作った」
家族経営・同族経営だが、
1世代に3人だけ、会社経営に携わることができる。

「入社要件の1つは言語、大学卒業、
そして最も重要なのは経験」
「語学力」が、最初に出た要件。
そして「大学卒業」。
現在は、修士課程くらい修めないといけない。

「フェラガモ・グループと縁のない会社で
3年間働くことだ」
さらに「3年間、他人の飯を食って来い」ということ。

田中さんの質問がいい。
「フェラガモにとって、『いい商品』とはどのような商品か」

答えは「高品質」や「こだわり」かと思いきや、
そうではない。
「量産品でもラグジュアリーでも、
目標を達成すれば成功だ」
フェラガモにして、
「量産品」と「ラグジュアリー」の、
プロダクト・ミックスを重視していることがわかる。
私の持論。

「経営利益は、
『コモディティとノンコモディティ』の、
『プロフィット・ミックス』によって生み出される」

その目標を掲げ、
目標を達成すれば、
すべて成功と評価する。ただし、
「我々は生活必需品を売っているわけではない」
フェラガモの製品に対して、
「喜びを感じうる要素、崇拝できる要素」
を、盛り込んでいる。

そのためにフェラガモには、
「クオリティーや職人技がある」
その意味は、
「何百回見ても、その仕事に
感情と情熱がこもっていることがわかる」

「この情熱が重要な成功の一因」と自ら分析する。

そして重要な組織の考え方。
「創造力を発揮してもらうため、
周りには“フェンス”を設けている」

フェンスとは「原則や価値観」。
それを厳然と決めておいて、
「それに合致すれば自由に作っていい」

ピーター・ドラッカーの
「ポスト・モダンの七つの作法」
その三は「基本と原則を補助線として使う」
フェラガモの〝フェンス”の概念は、
これに近い。

すると、「知識も技術も包含した革新が生まれる」
すると「ナレッジ」と「イノベーション」が創出される。
フェラガモさん、ドラッカーを学んでいる。

いいインタビューだった。

もうひとつ田中陽さんのインタビュー。
昨日の日経MJ「売り手の考え」から。
オーケー社長・飯田勧さん。
タイトルは「売り物は『誠実』」

オーケーと飯田さんは、
「消費者に目に見える形で
誠実さを表している」

それがこの会社、
この店の「最大の『売り』だ.

その代表的な手法が、「オネスト(正直)カード」
「カードの会員数は250万人強」

飯田さんは説明する。
「生鮮食品の状態など正しい情報を
お客さんにわかりやすく説明しないと、
理解していただけないからです」
食品スーパーマーケットの基本中の基本。

「お客さまを決して裏切らないことの表れです。
奇をてらったものではなく、
きわめて単純なことですよ」

とりわけて生鮮食品は難しい。
「仮に天候不順で入荷量が少ない生鮮食品を売ろうとした場合、
品薄だと商品の価格は高くなりがちです。
でも品質は良くないものもあります」
スーパーマーケットはこれで悩み続けた。

「何も説明もせずにお客さんが買ってしまうと、
『あそこの野菜はよくない』ということが
頭に残ってしまいます」

「ですから『買っちゃ駄目ですよ』と
説明しないといけません」

ところがなかなかそうはいかない。
「少し気がゆるむとどうしても表示に、
『買ってください』というような内容のことを
書いてしまいがちです」

「それでは駄目なのです」

「『買ってくれるな』と言わなきゃ、
値打ちがありません」

飯田さんの経験法則。
「売り上げを取りに行くと
ケガの方が大きくなります」

荒井伸也先生はこれをゴルフにたとえて、
「ヘッドアップ」と呼ぶ。

座布団三枚!

オーケーは非上場のインディペンデント・カンパニーだ。
「ですが経営指標は細かく公開しています。
2011年3月期の単独の経常利益率は5.6%です」

そのうえで、公開企業のごとく、行動している。
「オーケーの株式を新たに発行して、
お客さまに持っていただいています。
おととしは1株3530円で47万株を発行して
半日で売り切れてしまいました」

顧客参加型企業経営
である。

「非上場なので株価は
経常利益から算出した税引き後利益の
17倍にしています」

日経新聞の資料。
オーケーの2011年3月期の単独売上高は
前の期比7%増の2297億円、
経常利益は15%増の130億円。

経常利益は7期連続の増益。

オーケーの特徴は、
これまたドラッカー言うところの「インテグリティ」(真摯さ)。

フェラガモの「ナレッジとイノベーション」、
オーケーの「インテグリティ」。

インディペンデント・カンパニーの優位性は、
この2社によって証明されている。

今日は田中陽さんの「追っかけ」のようになってしまった。
心より感謝。

<結城義晴>

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