結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月05日(水曜日)

イオンによる中四国のマルナカ/山陽マルナカ買収劇の意味

「イオン、マルナカを買収」
今日の午後からインターネットで流れた衝撃のニュース。
日経新聞は夕刊一面トップで扱った。
20111005203507.jpg
始まりは昨2010年8月11日の日経のスクープ。
このブログでは翌12日に取り上げた。

「イオンとマルナカ、包括的業務提携」

イオンは2010年度決算では、
セブン&アイ・ホールディングスに次ぐ日本第2位の小売業。

イオンは食品スーパーマーケット業態の、
ナショナルチェーン展開に力を入れていて、
北海道から九州までに子会社のマックスバリュ各社を配し、
カスミ、ベルク、いなげや、マルエツ、光洋などに資本参加。

2010年度の売上高と店舗数は、
マックスバリュ西日本 2444億円・161店
マックスバリュ東海     1564億円・90店
マックスバリュ九州     1189億円・111店
マックスバリュ中部     1184億円・88店
マックスバリュ東北      908億円・89店
マックスバリュ北海道    775億円・74店

持ち分法適用会社は、
マルエツ    3322億円・255店
カスミ        2186億円・139店
ベルク        1116億円・66店

資本提携企業は、
いなげや    2199億円・125店

そこにマルナカと山陽マルナカが加わる。
中四国最大のスーパーマーケット企業グル-プ。

香川に本拠を置く四国のマルナカと、
岡山に本部を持つ中国地方の山陽マルナカ。
両者で瀬戸内リージョナルチェーンを構築。

マルナカ       2068億円・139店
山陽マルナカ    1241億円・72店

これらをトータルすると、
イオン・グループのスーパーマーケット群は、
売上高が合計2兆0196億円、
総店舗数1409店となる。

しかしアメリカを見ると2010年度で、
クローガーの売上高821億8900万ドル、
1ドル100円換算で8兆2189億円。
総店舗数は3605。
宝石店チェーンの売上げも含んでいるが、
ほぼスーパーマーケットといってよい。

一方、セーフウェイは、売上高410億5000万ドル。
4兆1050億円、期末店舗数1694。

為替換算で1ドル76円とみると、
クローガーが6兆2463億円、
セーフウェイは3兆1198億円。

購買力平価で1ドル120円とみると、
クローガーは9兆8628億円、
セーフウェイは4兆9260億円。

人口はアメリカが3億人を超え、
日本が1億2700万人だから、
イオンも頑張っていることになるが、
1店当たり売上高で比較すると、
小型店が多いのが日本の特徴となるか。

買収の目途は11月。
多くの人が関心を持つ買収額は、
「400億円強」という報道が日経、
ロイターは「400億~500億円」と伝える。

さらにマルナカ・グループの約500億円の負債も、
イオンが肩代わりする。

マルナカ社長は、中山芳彦さん、
山陽マルナカ社長は、
その長男でマルナカ専務の明憲さん。

マルナカ・グループはいわばオーナーシップ経営で、
創業家などがほぼ全株式を所有する。

イオンは自己資金でその全株式を買い取って、
100%子会社とするが、
現経営陣は残って、
店名も「マルナカ」を変えない方針のようだ。

イオンは四国と岡山近辺の、
比較的弱い地域の店舗網を密にすることができる。
現在、四中国地方のイオングループは、
店舗数が360強に増加し、出店数トップ、
売上高も三番手からトップに躍進する。

そのことでさらに、
バイイング力がアップし、
商品調達力の強化を図ることもできる。

さらに11月に買収が完了すると、
2011年2月期連結売上高で、
セブン&アイ・ホールディングスを抜いて、
日本小売業トップになる見通し。

きわめてドライな言い方だが、イオンにとって、
「年商3300億円、210店舗の買い物」は、
ひどく安い。

イオンの大型M&Aは、
ダイエーと資本・業務提携した2007年以来。

負債を含む買収総額は、
ダイヤモンドシティの1663億円に次ぐ。

日経の記事は背景もよく抑えている。
マルナカが首都圏の「マルエツの約2%の株式を保有」。
そして「マルエツの筆頭株主は約32%を持つイオン」。
この買収によって、
イオンによる「マルエツの持ち株比率は、
間接的に3分の1を超える」。

「イオンは首都圏のカスミ、いなげや、ベルクにも出資しており、
今後、資本面を含めた関係強化に動くとの見方も出ている」

さらに、「山陽マルナカは今年6月、
独占禁止法違反(優越的地位の乱用)で、
約2億円の課徴金納付と排除措置を命じられた」

イオンは人材を配置して、
コンプライアンスの徹底を図る。

今年、マルナカは創業50周年を迎える。

経営に関しては、
長男で専務の中山明憲さんへの「社長交代」が表明されている。

イオンの100%子会社になったとしても、明憲さんは、
現㈱マックスバリュ中部会長の中西進さん(元フレックス社長)らと、
同じようなルートを歩むに違いない。

もちろん本人次第。
一番プレッシャーを感じているに違いない。
頑張ってほしいものだ。
マルナカという会社にとっても、
世代交代が促進され、
私は「是」とみる。

私は1年前のブログで書いている。
「この包括的業務提携の意義は大きい」
それが一段と大きくなった。

「第一に、食品スーパーマーケットの業務提携であること。
イオンはスーパーマーケットに最大の力を入れている。
だから全国の食品スーパーマーケットに大きなインパクトを与える」
9月22日のブログで、セブン&アイによる近商ストアへの3割出資を報じた。
全国的には、こういった事例が促進されるだろう。
すこしずつ、アメリカの例に倣うことになりそうだ。

もちろんインディペンデント・スーパーマーケットには、
サバイバルの道が狭くなったわけではない。
大いに開けている。

コーネル大学ビル・ドレイク教授の言うがごとし。
「インディペンデントの優位性」
パブリックスもHEBも、
ウェグマンズもナゲット・マーケットも、
インディペンデントで十二分の仕事をしている。

トレーダージョーは、
ドイツ系資本のアルブレヒト・ファミリー傘下で、
感動的な店舗運営を続けている。

「第二は、中四国エリアの『クリティカル・マス』突破を狙っていること」
これは明らかだし、イオン自身のサバイバル戦略のひとつでもある。

この1年の間に、私は、
マルナカの店を何度か視察したが、
イオンのプライベートブランドが、
ほとんど並んでいないことが気になった。

業務提携とは異なる動きがあるのかと思った。

1年前のブログの終わりの方に書いている。
「マルナカよ、お前もか!」ではない。
「これも一局」である。

だから私の見解は変わらない。
「少なくともアメリカのクローガー方式を採用すべきだ。
間違ってもアルバートソン型に至ってはいけない」

当面は「マルナカ」の店名で、
明憲さんが社長の役目を果たすという方針だから、
これはクローガー方式を表明している。

その後は、しかし、
現マルナカはマックスバリュ四国となり、
現山陽マルナカはマックスバリュ西日本となる可能性もある。

「それもまた、一局」だとは、思う。

<結城義晴>

[追伸]
『帰国後のアメリカ報告』は本日、休載します。
明日に続きます。

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