結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年03月31日(日曜日)

倉本長治の「損得より善悪」とドラッカーの「integrity」

一月、往ぬる、
二月、逃げる、
三月、去る。

3月が終わる。

1月はニューヨークに行った。
2月もニューヨークを訪れた。
3月は日本にいて、取材や会議をした。
ずっと雑誌を作り続けた。

あっという間に2024年の四半期が過ぎた。

ショージ・オーウェルの1984年も、
スタンリー・キューブリックの2001年も、
あっという間にやってきて、
あっという間に過ぎていった。

家のベランダには花が咲き乱れた。
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白と紫のビオラ。
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これも薄紫と黄赤色のビオラ。
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桃色のパンジー。
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朝のテレビ番組では、
関口宏が引退した。
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毎週日曜日8時からの番組を36年務めた。

うしろから「あっぱれ!」と、
声をかけられて、
関口は泣いた。
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この3月、ブログにはほぼ毎日、
熟慮のうえの投稿があった。

吉本一夫さん。

感謝したい。

月刊商人舎も熱心に読んでくださっている。
こちらも感謝したい。

確かな見識とキャリアを積んだ経営者だ。

今朝の投稿は、
昨日のブログへの考察。

「『損得より善悪』という概念は難解です。
資本主義では、得=善、損=悪ですし、
実際、赤字は社会的悪だと、私も思います」

倉本長治の商売十訓。
その第一訓が、
「損得より先に善悪を考えよう」
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これに対する吉本さんのコメント。

「時間軸起点で、目先の損得より
長期的損得という視点もありますし、
スコープ起点で、部分最適でなく
全体最適という視点もあります」

「しかし、それらは結局、
実用主義、功利主義的な発想です。
倉本長治さんが言われてるのは、
もっと違う気がしています」

その通りです。

吉本さんのご指摘の通り、
長治は第五訓に入れている。
「欠損は社会の為にも不善と悟れ」

第二訓は、
「創意を尊びつつ良い事は真似ろ」
これを私はinnovationであると読み解いた。

第三訓は、
「お客に有利な商いを毎日続けよ」
marketingである。

そのあとの第四訓が、
「愛と真実で適正利潤を確保せよ」

そして第五訓が「欠損」のこと。

第一訓は、
これらを先導するように、
integrityを教える。

世間が「士農工商」と蔑(さげす)んでいようとも、
いや、蔑まれているからこそ、
integrityを第一に考えようよ、と、
長治は説いた。

「商人と屏風は、
曲がっていないと立たない」

この蔑みの言葉に反論して、
倉本長治は言った。
「商人も屏風もどちらも、
まっすぐで平らなところにしか、
立たない」

ちなみに、
ピーター・ドラッカーは言う。
「マネージャーとして、始めから、
身に着けていなければならない資質が、
ひとつだけある。才能ではない。
真摯さ(integrity)である」
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さらにドラッカーの最も有名な言葉。
「企業の目的として、
有効な定義はひとつしかない。
すなわち顧客の創造である」

「従って企業は二つの、
そして二つだけの基本的機能を持つ。
それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションだけが
企業に成果をもたらす」

長治のインテグリティは、
「損得より先に善悪を考えよ」

イノベーションは、
「創意を尊びつつ良い事は真似ろ」

マーケティングは、
「お客に有利な商いを毎日続けよ」

吉本さん、
そのことに気づいてくださって、
本当にありがとう。

朝日新聞「折々のことば」
2024年1月13日の第2967回。

「時代をこえて
超然と生きるなんて、
つっぱりすぎ。さりとて、
時代を気にして
引きずられっぱなしも
気にくわぬ」
〈森毅(つよし)〉

森毅は数学者、エッセイスト。
京都大学名誉教授。

「歴史が好きなのは、歴史を知ると、
ふだん当然だと思っていることに
距離をおけるから、
『現在の考えの幅をひろげる』
ことができるからだ」

「時代とは、
適度な『間合い』をもってつきあうのが大事。
ある視点から見た歴史の道筋に縛られるのも、
自分にこだわってばかりなのもつまらぬ」
〈随想『歴史のなかの自分』から〉

倉本長治も超然と生きてはいなかった。
もちろん歴史に引きずれらもしなかった。

それはドラッカーと同じだ。

二人とも歴史が好きだった。
だから見えるものがあった。
そして見えたものが共通していた。

私はそれを発見して、
驚いたし、納得した。

吉本一夫さん、ありがとう。

36年間を通じて、
関口宏にも、
見えたものはあっただろう。

〈結城義晴〉

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