結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年01月31日(金曜日)

日本小売業協会賀詞交換会の「消費者の脱デフレマインド道半ば」

1月最後の日。

月刊商人舎の入稿も佳境に入った。
朝からデスクに向かって、
ひたすら執筆。

悩みに悩んで、
方向性が決まってくると、
集中して一気呵成に終わりまで書ける。

それでもずっと椅子に座っていると、
足の先からふくらはぎにかけて、
冷たく感じるようになってくる。

そこで始めるのが、
谷本道哉式スクワット。
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⑴奥深くしゃがむスクワット33回。
⑵スロートレーニングを15回。
⑶しゃがんでから速く立つスクワット10回。

時間がないときには⑶は省く。
もっと時間や気力がないときには⑵も省く。

けれど⑴は必ず1日に3セットやる。IMG_0420
三度目には⑴を34回。
そうすれば1日100回となる。

毎日、1回ずつ増やしていく。

昼過ぎにスクワットして、
夕方の3時ごろに原稿を1本仕上げた。

そして3時45分に会社を出て、
東京・丸の内の東京會舘へ。
ちょっと恥ずかしいけれど、
駅のホームでもスクワット。

一般社団法人日本小売業協会、
賀詞交換会。
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野本弘文協会会長のごあいさつ。
東急㈱代表取締役会長。IMG_0422
2025年の情勢を分析して、
協会の活動を報告した。

来年10月には、
第22回アジア太平洋小売業者大会が、
東京で開催される。
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野本会長はこの大会に力を入れている。

来賓ごあいさつは
日本商工会議所会頭の小林健さん。
三菱商事㈱相談役。IMG_0427
日商でも今年は賃上げの話題がもちきりだ。
小林さんは指摘する。
「防衛的賃上げが6割を占める。
消費者の脱デフレマインドは道半ば」

その通りだ。

乾杯のご発声は、
好本達也協会副会長。
J.フロント リテイリング㈱取締役。
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好本さんがアジア太平洋大会の委員長。

元気に「乾杯!!」

それから懇親。

まず山本慎一郎さん。
小売業協会のCIO研究会座長。
㈱カスミ前社長で、
USMH㈱執行役員経営戦略本部長兼デジタル本部長。
ゴルフ「立心の会」の仲間だ。IMG_0435
日本小売業協会は商品マスターの整備に取り組む。
その中心となって活躍している。

㈱ライフコーポレーションの森下留寿さん(中)。
取締役専務執行役員 。
江口法生さん(左)は、
日本スーパーマーケット協会専務理事。IMG_0439
森下さんとはライフの繁盛店の話をした。

日本チェーンストア協会会長の尾﨑英雄さん。
㈱フジ代表取締役会長。IMG_0443
チェーン協会長の大役、
ありがとうございます。

玉生弘昌さんは昨年10月に、
㈱プラネット会長をご退任。
そこで名前だけの名刺をいただいた。
1枚1000円也の高級名刺。
一般社団法人流通問題研究協会会長、
㈱True Dataの取締役。IMG_0437
3月になったらゴルフしましょう。

矢野靖二さんは、
㈱大創産業社長。
3ブランド複合出店が絶好調。
「DAISO」「Standard Products by DAISO」、
そして「THREEPPY」。IMG_0441
矢野さんには私なりの経営の考え方をひとくさり。

泉田幸雄さんは協会副会長で、
日本ボランタリーチェーン協会名誉会長。
小林英文さんは日本小売業協会専務理事。IMG_0449

そしていつもお若い増井徳太郎さん。
全国スーパーマーケット協会副会長。IMG_0452

㈱伊藤園フードサービスのお二人。
唐沢進治社長(中)と山下一秀さん(左)。
山下さんは営業本部副本部長。IMG_0446

小池百合子東京都知事も駆けつけて、
淀みなくスピーチした。IMG_0445

最後の最後は野本会長とツーショット。IMG_0451
商業界の二月ゼミでは基調講演をしていただいた。
福岡の原田政照さんが運営委員長のときだ。

原田さんは惣菜の㈱MHホールディングス会長で、
野本さんとは小学校から高校まで同窓。
実家は同じ商店街で商いをしていた間柄。

日本小売業協会は、
1978年に設立された。
初代会長には永野重雄さんが就任。
新日本製鐵会長で、
経済同友会代表幹事・日本商工会議所会頭。
財界四天王と呼ばれた。

1984年に就任した第2代会長は、
五島昇さんで、これまた、
財界四天王のおひとり。
日本商工会議所会頭、東急電鉄社長・会長。

日本小売業協会は、
凄い人たちがつくった協会なのだ。

第3代は三越会長だった市原晃さん。

そして第4代会長はジャスコ会長の岡田卓也さん。
チェーンストアからの会長だった。

第5代は伊勢丹社長の小柴和正さん、
第6代は再び三越会長の中村胤夫さん、
百貨店からの会長が続いた。

そして第7代がサークルKサンクスの土方清さん。
コンビニエンスストアからの会長。

第8代会長は故清水信次さん。
スーパーマーケット協会会長、
日本チェーンストア協会会長など歴任。
もちろんライフコーポレーション会長。

野本さんは第9代会長だ。
第2代の五島さんの系譜といえる。

毎年、この日本小売業協会賀詞交歓会で、
業界の新年会が幕を下ろす。

閉会してから東京會舘下のタリーズで、
流通科学大学教授の白鳥和生さんと、
さまざまな情勢について語り合った。
とくにM&Aの情報交換は意義があった。

二人とも一応、「情報通」なのだ。
ただし、内容は秘密。

明日から2月だ。

最後に朝日新聞「折々のことば」
第3331回。

できるはずだと
思い上がるから、

行き詰まるんです。
〈篠田桃紅(とうこう)『これでおしまい』から〉
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「永遠にやったって、
できないに決まっていること」を、
自分はやっているから、
行き詰ることがないと、
107歳のときの書家は言った。

御意。

〈結城義晴〉

2025年01月30日(木曜日)

2025日本惣菜協会賀詞交歓会と惣菜の「Mass Customization」

朝から東京・自由が丘。
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並木道の木々も葉が落ちて「裸木」。
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いつもの花屋。
モンソーフルール。
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花屋のマーチャンダイジングは、
季節感が最大テーマだ。
それが完璧にできている。
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さて、ちょうど1週間前の1月23日の報告。

日本惣菜協会2025年賀詞交歓会。
会場は東京會舘。

私は大阪で万代知識商人大学修了式に出ていた。
だから山本恭広編集長が参加した。

いまや市場規模10兆円を超える中食産業。
産業の中心となる協会は2024年12月時点で、
正会員、賛助会員、協力会員、
合わせて710社となった。

伸びる協会。
市場の伸びがそれを支えている。

私は1995年から、
農林水産省「中食市場動態調査研究会」に参加した。
故田内幸一先生を座長とした専門委員会だった。

田内先生は一橋大学を定年退官して、
日本大学商学部教授に就任されていた。

内食と外食に対して、
中食市場が拡大するとの結論だった。
それがどう成長するのか、
どんな問題が待ち構えているのか。

そんなことを議論した。

この研究会で岩田弘三さんと親しくなった。
ロック・フィールド会長。

それから30年。

中食市場と惣菜マーチャンダイジングは、
想像を超えた発展をした。

中食産業に関しては、
月刊商人舎7月号で特集した。
「惣菜センター革新」
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日本惣菜協会専務理事の清水誠三さんには、
11兆円を目前にした中食産業について、
丁寧に語ってもらった。shoninsha2407

フルックスグループ代表の黒田久一さんには、
実務家の視点から惣菜の潮流を語ってもらった。
協会副会長。
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交歓会会場は東京會舘3階のローズ。sozai_party

開会あいさつは協会会長の平井浩一郎さん。
㈱ヒライの社長。
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熊本県中心に福岡・大分・佐賀の各県で、
弁当・惣菜店137店舗をチェーン展開する。
昨年からのコメ価格の問題に触れつつ、
ますます高まる中食産業の役割の重要性を強調。

祝辞は林芳正官房長官。hayashi

それから斎藤健自由民主党衆議院議員。
農林水産大臣、法務大臣、経済産業大臣を歴任し、
常に協会に関わってきた。
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時期総理と目される政治家までやってきて、
協会への期待の大きさが感じられる。

祝辞のあとは新入会員企業の紹介。newmenber

正会員、賛助会員合わせて35社が登壇して、
1社ずつ紹介された。

乾杯の挨拶はキユーピー㈱社長の高宮満さん。kewpie
「仕事や商品を通じて、
感動を伝えていきましょう」
とてもよかった。

成長産業、伸びる産業には人が集まる。

商人舎の[特集のまえがき]に書いた。

プロセスセンター「是々非々論」
惣菜・デリのイノベーション・ベクトルを整理する
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――「3S1C」は、
インダストリアリズム(産業化)の、
基本コンセプトであり、
それがチェーンストアに導入された。

単純化(Simplification)、
標準化(Standardization)、
専門化(Specialization)、
そして集中化(Centralization)である。

惣菜やデリカテッセンの
マーチャンダイジングにおいても、
この大原則を崩すことはできない。
崩してはならない。

今回は惣菜の集中化がテーマとなる。
しかし集中化が目的ではない。
それは手段である。

目的はおいしい惣菜を、おいしいままに、
顧客に供与することである。

したがって集中化によって、
おいしさが削がれてしまったら、
集中化は否定されねばならない。
標準化も単純化も専門化も同じである。
「3S1C」そのものが手段なのである――。
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惣菜と中食には、
「マス・カスタマイゼーション」が必須である。

「店舗ごとに、あるいは顧客ごとに
異なるニーズに合った惣菜やデリをつくりつつ、
単品大量に近い生産性を獲得する」

「マス・カスタマイゼーションは、
『トレードオン』の考え方だが、
ここでも困難な課題が浮上している。
しかしそれを可能とすれば、
模倣困難性を体内化できるのだ」

「ベンダーやメーカーから提供される
“キット製品”をバックヤードでひと手間加えて、
見栄えの良い惣菜売場をつくる。
味は他人任せ、売上げも他力本願。
そして同質化の深みにはまっていく。
これは『非』としなければならない」

惣菜で3S1Cを語る時代になった。
それがマーケットの成長を証明している。

ただし膨張であってはならない。

〈結城義晴〉

2025年01月29日(水曜日)

イオンリテール営業企画本部長interviewは米国研修同窓会!

今日は千葉県の海浜幕張。
毎日、なんだかんだで飛び回っている。

イオンタワーアネックス。
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2階のロビーにいたら、
鈴木哲男さんと遭遇。IMG_5231
 お元気、大活躍。
商人舎2月号に寄稿していただいた。

ありがとうございます。

それから写真を撮り忘れたが、
笹川譲さんから声をかけられた。
㈱明治屋商品事業部の関東支店副支店長。

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科で、
私の講義を受けてくれた。

2004年度の3期生だ。

懐かしい。

まだ商業界社長の時代、
毎週土曜日に講師をしていた。
「ホスピタリティマーケティング」

頑張ってほしい。

イオン本部に来ると、必ず誰かに会う。

目的はインタビュー。

イオンリテール㈱営業企画本部長。
伊藤竜也さん。
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2018年の7月に、
イオンリテールの米国研修があった。
私がコーディネーター。

今、当時のブログを見返してみても、
ほんとうに中身の濃い研修だった。

伊藤さんも参加して、
グループ発表では準優勝だった。
当時は浦和美園店店長。
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伊藤さんにとっては初めての米国旅行で、
それが原点となったと言ってくれた。

2021年に営業企画本部長に就任して、
現在の4大フェアなどをつくった。

立て板に水のような語り。
実にいい内容のインタビュー。
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途中から間渕和人さんも参加してくれた(右)。
執行役員経営企画本部長。

広報部長の森拓也さんも加わって、
和やかな座談会のようになった。

みんなアメリカ研修の修了生。
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伊藤さんの営業企画革新の考え方に、
私も目から鱗だった。

いい勉強になった。

インタビューの内容は、
月刊商人舎3月号でお披露目する。
楽しみにしてください。

最後に全員で写真。
私の隣から間渕さん、伊藤さん、森さん、
そして広報部の関本彩佳さん。
撮影は山本恭広編集長。IMG_5252
ありがとうございました。

帰りの電車のなかでも思った。
いいインタビューだった。

イオンにやってくると、
いつも同窓会のようになる。

それは嬉しいことだ。

さて日経新聞の記事。
「セブン、発注システム刷新」

セブン-イレブン・ジャパンが、
店舗の基幹システムを全面改革。

今年の春から順次、ストコンを廃止する。
そしてタブレット端末やスマートフォンに変える。

アメリカでは当たり前のようになっている。
それをセブン-イレブンの2万1000店が、
業界の先陣を切って始める。

ストコンは「ストアコンピューター」。
スーパーマーケットやチェーンストアでは、
必須のシステムだ。

従業員の勤怠管理や廃棄商品の登録、
商品の販売動向などの情報を一元管理する。

セブンは1978年に、
発注端末機「ターミナルセブン」を導入。

システムの刷新を執拗に繰り返してきた。
それはセブン-イレブンの独壇場だった。
鈴木敏文の執念ともいえるシステム構築だった。
なによりも「単品管理」を支えた。
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現在も店舗ではNEC製のストコンをはじめ、
発注用、検品用の専用端末を使用している。

今後はタブレットとスマホが、
それらを兼ねた機能を備える。

1店舗に平均4、5台ずつ本部から貸与される。

ストコンに入っていたデータや、
独自のネットワークは、
クラウドで管理される。

これまでは発注や販売データ分析などは、
事務所に戻って端末で作業した。

これからは売場で働きながら、
ブレットやスマホでそれができる。

従業員が事務所と店内を行き来する回数は、
1日当たり4割程度減る見込みだ。

現在は複数店を経営するオーナーが増えている。
新システムでは複数店の実績を、
同時に比べることもできる。

勤怠管理も簡単になる。

さらに商品やイベントに関しても、
事前設定によって、
関連情報が定期的に端末に配信される。

レジは全国で約4万5000台稼働している。
これも26年度中に新システム対応の、
小型サイズのタブレット端末に切り替えられる。

レジの刷新は17年以来約9年ぶり。
小型化によってレジスペースは30%以上空く。

そのスペースを使って、
カレーパンや焼き菓子、スムージーなど、
レジ横商品を増やす。

新レジは英語、中国語、韓国語の表記も可能。
増加するインバウンド客への対応も強化する。

セブン&アイにとっては久しぶりに、
明るいニュースだ。

加盟店のためのシステム刷新は、
フランチャイズビジネスの最重要案件だ。

その現場のためのシステムは、
鈴木敏文の思想を受け継いでいる。

セブンもイオンも、
日本小売業のリーダー企業として、
革新を続けている。

嬉しいことだ。

〈結城義晴〉

2025年01月28日(火曜日)

フジテレビの「長時間記者会見」と岡藤正広の「利は川上にあり」

フジテレビの長時間記者会見。

昨日1月27日午後4時から、
今日28日午前2時半過ぎまで。
約10時間半以上、
カメラは回り続け、
テレビ放映された。
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CMもニュースも、
一切、入らず。
ただ壇上のフジテレビ関連のトップと、
質問する記者連だけの、
異様に単調な番組。

もちろん元SMAPの中居正広問題。
フジテレビの経営体質問題。

午後7時から10時までの時間帯は、
平均視聴率(関東地区)で13.1%だった。

会社はもう崩壊寸前。
しかし編成局長はしてやったりか。

そういったところが、
逆にフジテレビらしいが。

私も㈱商業界社長時代に、
労働組合と14時間の団体交渉をしたことがある。
午後6時から夜を徹して朝8時まで。

何度もなんども休憩をとったが、
それにしても互いに粘り強い労使だった。

朝が白々と明けてきたときに、
合意約款を協議約款に変更する了解を得た。

長時間記者会見の最後のところを見届けて、
そのときのことを思い出した。

さて今日は、東京・小平。
第一屋製パン㈱の本社と工場がある。

その工場敷地内のお稲荷さん。
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毎月の取締役会。
年度末の実績が出た。
それから様々な報告と審議。

いつもよりも長い会議だった。

野中郁次郎先生のご逝去のあとで、
私は「ワイガヤ」の気分があった。

フジの長時間記者会見のように、
取締役が質問して、
執行役が答えるのではなく、
もっとワイワイガヤガヤと話し合っていい。

そんな気分になった。

そのなかで褒めること、指摘すること、
賛否両論、喧々諤々があって、
みんなが前向きになるのがいい。IMG_8889 (002)

日経新聞「私の履歴書」が好調だ。
今月は伊藤忠商事CEOの岡藤正広さん。

今日のタイトルは、
「利は川下にあり」
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中国大使を務めた丹羽宇一郎さんが、
伊藤忠社長昇格の直前にまとめたディール。

セゾンのファミリーマートへの出資。
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岡藤さんは言う。
「いまや伊藤忠の財産だと思う」

そして胸を張る。
「利は川下にあり」

「これは私の経営戦略の柱をなす考えだ」

「消費者の声を直接拾い経営戦略に反映する、
マーケット・インに徹することで、
自ら付加価値を創造していけるからだ」

ん~、半分賛成。
異論・反論も唱えたいが、
それはあとで述べよう。

2015年にチャンスが巡ってくる。
ユニーグループ・ホールディングスと、
ファミリーマートとの経営統合だ。

「欲しいのはコンビニだけだった」

ユニーはいらないが、
サークルK・サンクスは、いる。

そこで岡藤さんはある人を訪ねる。
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長。
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いきなり直球を投げ込んだ。
「ファミリーマートと提携しませんか」

ファミリーマートとサークルKサンクス、
それをセブン-イレブンに差し出そうという提案。

どう見ても無理だろうな。
鈴木さんは規模を追う経営者ではない。
お荷物を抱え込むはずがない。
それにセブン-イレブンは、
ファミリーマートやローソンを食って、
成長を続けていたのだ。

それを統合してしまったら、
伸びシロを自ら消してしまうことになる。

案の定、「コンビニ2強連合構想」は実現せず。

しかし鈴木さんから助言をもらう。
「商社にスーパーの経営は不可能ですよ」

岡藤さん。
「私の仮説が確信に変わった」

まずはユニーもろとも統合して、
ファミマとサークルKサンクスの融合を進める。
いずれユニーを切り離す。

「格好の相手はすでに意中にあった。
ドン・キホーテだ」

これもうまくいって、
サークルKとサンクスだけ手に入れた。

「約4年がかりの業界再編」

商社マンとして、
岡藤さんは本当に凄い。

けれど「利は川下にある」という考え方は、
絶対的なテーゼではないと思う。

川上を総合的に制覇する総合商社だからこそ、
「利は川下にある」のだ。

川下を視野に入れない商社や製造業は、
もはや前時代のレガシーである。

もちろん、
プロダクト・アウト一辺倒だったら、
マーケット・インは必須だ。

川下は顧客に近い。
そこに「利」の元があると考えるのは妥当だ。
いわばこれが初期のマーケティングの発想である。

ただし川下にどっぷり浸かってしまったら、
そう簡単に「利」を生むことはできない。

小売業のほとんどが、
それに苦しんでいるからだ。

小売業を貫徹するセブン&アイですら、
イトーヨーカ堂はうまく経営できていない。

総合商社にとってこそ、
川下に利があるのだ。

だとすれば小売業が、
商社機能をもてば、
「利は川上にある」となる。

ユニクロもニトリも、
川上に利を求めている。

ダイエーの中内功さんは、
「工場をもたないメーカー」と言い続けた。

さらに言えば、
伊藤忠におけるファミマは、
「胴元商売」である。

伊藤忠はコンビニの本部機能を担う。
商社とフランチャイズビジネスは、
胴元商売という点で親和性が高かった。

しかし本当の、最後の川下は、
フランチャイズ加盟店である。

そして加盟店オーナーたちは、
楽に「利」を得ることなんてできない。

製造業も卸売業も、
この理屈がわからねばならない。

山崎製パンのデイリーヤマザキは、
残念ながらコンビニチェーンのなかで、
後塵を拝している。

主語は何か。
主体は何か。

それを充実させるために、
バーチカルに統合を進める。

あくまでも本分、本業を貫かねばならない。

ウォルマートは1990年に、
川中の卸売業マクレーン社を買収した。
そして同社から食品を学んだら、
2003年に黒字の卸売業を売却してしまった。

本分がわかっていたからだ。

利は川下にあり。
けれど川下は、
苦しくて、細かくて、難しい。

それを成し遂げるところに価値が生まれるのだ。

〈結城義晴〉

2025年01月27日(月曜日)

野中郁次郎先生ご逝去/暗黙知・形式知と「二項動態」のデジャヴ

Everyone, Good Monday!
[2025vol③]
2025年第4週。

突然ですが、訃報です。

野中郁次郎先生。

1月25日、肺炎でご逝去。
89歳。

一橋大学名誉教授。
カリフォルニア大学バークレー校特別名誉教授。

1935年、東京都出身。
都立第三商業高校から、
早稲田大学政経学部卒業後、
富士電機製造㈱に就職。

この実務者経験が野中郁次郎の特長をつくった。

カリフォルニア大バークレー校経営大学院を修了し、
南山大学、防衛大学校、一橋大学の教授などを歴任した。

暗黙知と形式知。
そしてSECIモデルによって、
日本の企業経営に決定的な影響を与えた。

その「暗黙知」のコンセプトはもともと、
マイケル・ポランニーが提唱した。
ハンガリーの哲学者。

「暗黙知」は、
「主観的で言語化ができない知識」。
経験や勘に基づく知識のこと。

一方の「形式知」は、
「言語化して説明が可能な知識」。
例えば文章・図表・数式などによって、
表現し、説明できる知識を指す。

暗黙知と形式知との相互作用の中から、
組織的に知識が生み出されていく。

そのプロセスに興味をもった。

それが「SECIモデル」の発見となった。
SECIは「セキ」と発音する。

暗黙知を共感する「共同化」、
暗黙知を概念に変換する「表出化」、
形式知を理論モデル・物語にする「連結化」、
形式知を行動・具現化する「内面化」。

これらが組織活動の中で循環しながら、
knowledgeをつくり、成果を上げていく。

「オーガニゼーション・サイエンス誌」は、
経営学のトップクラスの専門誌だ。

1994年にこのメディアに論文を発表。
「組織的知識創造の動態理論」。
“A Dynamic Theory of Organizational Knowledge Creation”

続いて95年に発刊したのが、
“The Knowledge‐Creating Company”51E0eVgHpcL._SX313_BO1,204,203,200_
オックスフォード・ユニバーシティ・プレス刊。

これは全米出版社協会で、
ベストオブザイヤーに選ばれた。

日本語版は『知識創造企業』
index

この本の第2章では、
哲学を中心にしたレビューが展開された。

プラトン、アリストテレスから、
デカルト、カント、ヘーゲル、
西田幾多郎らの認識論までレビューし、
激論の末にたどり着いたのが、
マイケル・ポランニーの「暗黙知」の概念だった。

野中理論は、
組織論にもってきて、
独自性をつくった。

簿記3級や珠算3級で落第した野中郁次郎。
その人が世界に誇るKnowledge理論を生み出した。
60歳のときだった。

2012年12月に講義を聞いた。

持続可能なイノベーション企業、
そこに必要なリーダーシップ。
そして組織の在り方。
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理想主義と演繹法のプラトンと、
実践主義と帰納法のアリストテレス。
今どちらの哲学が大事なのか。
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共感・共振・共鳴の経営、
暗黙知を形式知として形にし、
さらに実践知にする。
そのための考え方。

The Wise Leaderの必要性。
その能力とは何か。
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ドラッカー、シュンペーターから、
ポーター、ハイエクまで、
それぞれの思想をきっぱりと位置づけ、
脳にとって刺激的なセミナーだった。

「究極の価値は、
勇気によって創り出される」

この言葉にはそれこそ勇気を得た。

昨年末の12月29日のこのブログで、
野中先生の新刊本を紹介した。
『二項動態経営』
野間幹晴さん、川田弓子さんとの共著。IMG_8355 (002)
「野中先生はもう89歳。
しかし研究意欲は衰えない」
そう、書いた。

その1カ月後に亡くなられた。

「二項動態経営」とは、
――組織のあらゆるレベルのメンバーは、
動く現実の流れのなかで
さまざまな矛盾やジレンマに直面する。
その個別具体の文脈のなかで、
共通善に向かって、
「あれかこれか(either/or)」の
二項対立(dichotomy)ではなく、
「あれもこれも(both/and)」を追究する
二項動態的な集合「実践知」創造を通じて、
葛藤を超えて「より善い」をめざし、
新たな価値創造への道を
他者とともに切り拓くのである――。

「二項動態」の発想は、
暗黙知と形式知の両利きである。

野中郁次郎の最初の発見は、
絶筆の書の根底に流れていた。

心からご冥福を祈りたい。

さて、私の一日。
午前中は横浜商人舎オフィス。
連載の原稿を書き終わって、
その校正をした。
さらにアメリカテキストをチェック。

その後、東京駅へ。IMG_8880 (002)

大手町を歩いて、
大手町野村ビル。IMG_8882 (002)

そして大手町プレイスタワー。IMG_8883 (002)

地下1階の大手町プレイス内科。IMG_8881 (002)
毎月の検査と診察。

ヘモグロビンA1cは6.4。
血糖値も中性脂肪も尿酸値も、
まったく問題なし。

ほんとうにありがたい。

「知識商人」と「トレードオン」
恥ずかしながら私の提唱する概念。

「知識商人」は、
ピーター・ドラッカー先生から借りた。

「あちらを立てればこちらが立たず」は、
1990年代から言い続けている。
そして「あちらを立てて、こちらも立てる」に至った。

それをコロナ禍のなかで、
「トレードオン」と表現した。

私が持論のように展開していることは、
野中郁次郎のデジャヴだったのかもしれない。

黙禱して、合掌。

〈結城義晴〉

2025年01月26日(日曜日)

伊藤忠CEO岡藤正弘の「かけふ」と「会議は嫌い」

日経新聞「私の履歴書」
今月は岡藤正広さん。
伊藤忠商事会長CEO。

痛快な言説が話題になっている。
1948年、大阪生まれの団塊の世代。
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第22回は「会議、誰のため?」

同感することばかり。

伊藤忠の社長になった岡藤さん。
「私は昔から会議が大嫌いだったのだ。
大阪弁でいう『いらち』、
つまり短気でせっかちな性格のせいかもしれない」

「ただ、昇進するほど会議に関する無駄が
なんと多い会社かと痛感するようになった」

「こんなことをやっていたら会社が潰れる」

伊藤忠では毎週月曜午前に、
情報連絡会が開催されていた。
各カンパニープレジデントと海外主管者が集う。

そこで社長になるとすぐに、
情報連絡会の時間を短縮した。
続いて毎週月曜開催から月1回に。
ついには廃止してしまった。

1年に1度、特別経営会議は、
3日かけて開催していた。

これも半日に圧縮した。

重要なこと。
「会議を実りあるものにするため
上司に予習を課した」

議題を事前に把握して
上司が仮説や結論を持って臨めば
会議は報告の場から意思決定の場に変わる。
それだけで生産性がどれだけ向上するか。

「稼ぐ、削る、防ぐ――」
略して「かけふ」

これが岡藤流経営改革の合言葉となった。

私は逆だった。

㈱商業界の社長になって、
何十年にもわたった財務の不良債権を発見した。

それをすべて公然化した。

その年度は過去最高の経常利益を出し、
その一方で不良債権を、
一気に特別損失で落とした。

会社を債務超過にした。

そして大改革を始めた。

出版社にはありがちなのだが、
部署ごとに「蛸壺」を掘って、
ばらばらに仕事をしていた。

荒井伸也さんが指摘した、
「悪しき職人化」がはびこっていた。

その態勢を部門横断型の組織にした。
「クロスファンクショナルチーム」だ。
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そして、
「月曜ミーティング」を始めた。

商業界の始業は9時半だった。
しかし編集部などは10時、11時、
場合によっては昼出社が当たり前だった。

そこで毎週月曜日。
部長や編集長全員に、
朝8時に出勤してもらった。

前の週の問題点を洗い出し、
議論をして解決する会議だ。

伊藤忠がやっていた「情報連絡会」と同じ。

ただし議題を事前に把握して、
仮説や結論を持って臨む。
意思決定の会議にしようとした。

はじめは全然、うまくいかなかった。

ある部長は冗談風に言った。
「朝、家を出るときに鍵を閉めるけれど、
暗くて鍵穴が見えません」

部長・編集長が月曜8時から会議で議論し、
それが終わるころ一般社員が出社してくる。

それを見せつけたかった。

そして月曜ミーティングは続いた。

当然のように反発もあった。

私は部長・編集長の意識を変えたかった。
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そんなことをしながら、1年ほど。

改革プランができ上って、
上昇気流に乗り始めた、と思った。

そこで私は社長を解任された。

それでも過去最高益を出して、任期満了で会社を去った。

岡藤さんは伊藤忠という大商社の社長だった。
そこにはびこる「マンネリ」を正そうとした。

私の場合は小さな出版社だった。
そこで大改革を試みた。

だから無理やり、毎週月曜の会議を開いた。

今思うと、
あれは失敗だったかもしれない。

しかしそんなに悠長なことはしていられなかった。

私も長い会議は好きではない。
今、商人舎は少数精鋭。

会議を開かなくとも、
全員が意思疎通できる。

そんな会社でもときには、
年に一度、3日連続の会議など、
開いてもいいかもしれない。

意図のある会議、
目的をもった会議。
それは必須だ。

報告連絡のための長々とした会議は、
全く必要ない。

〈結城義晴〉

2025年01月25日(土曜日)

ひこばえ会の「病気自慢」と西宮今津のロピア&万代の「親和性」

ひこばえ会。
「孼」と書く。

高校時代の文学同人誌「孼」の仲間の会。
昨年から季節が変わるたびに集まるようになった。

会場は横浜・伊勢佐木町の万喜多。
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世話人の関孝和の昔なじみの店。

いつものように鮪のヌタをいただいて、
おでん鍋と牡蠣と豚肉の鍋。

それぞれにビールや清酒、焼酎を飲んで、
楽しい懇談。

どうしても病気自慢大会となる。
しかしみんな、年の割には健康で、
深刻な話にはならない。

〆はお重スタイルの海苔弁。
店の名物。

会が終わると、
さらりと分かれる。

これもいい。
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伊勢佐木町のイルミネーション。
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来週の1月29日から、
春節が始まる。

横浜中華街も近くて、
中国人が大挙押し寄せる。

そのための歓迎のデコレーション。IMG_8876 (002)

さて、兵庫県西宮市。

かつては関西スーパーの強いドミナントエリアだった。
1970年代にはダイエーと関西スーパーが、
激戦を交えた。

現在は万代が旗艦の西宮前浜店を構え、
周辺にドミナント展開する。

ダイエー西宮店は2月で一度閉店し、
イオンに変わる。

ライフは今津駅前店を出している。

そのエリアの海側の端に、
コーナンのショッピングセンターがある。
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その2階に昨年12月17日、
ロピア西宮今津店が出店した。

2階の駐車場から店に入る。IMG_8833 (002)

1階のコーナンの売場から、
オートスロープで2階に上がることもできる。

ホームセンターの上階への出店は、
ロピアが開発した手法だ。IMG_8832 (002)

2階にはスポーツオーソリティ、
ジョーシン電機、ABCマートがあって、
中核店舗がロピアだ。IMG_8834 (002)

2020年9月に寝屋川に初進出してから、
関西営業本部は現在、21店舗を擁する。

大阪府に9店、兵庫県に7店、
奈良県に4店、京都府に1店。

その最新店がこの西宮今津店だ。

青果部門は「八百物屋あづま」の屋号。IMG_8836 (002)

「同じ商品ならより安く、
同じ価格ならより良いものを」
ロピアのスローガン。

それは変わらない。

「食のテーマパーク」を標榜して、
華やかな売場をつくる。
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鮮魚は「日本橋魚萬」の屋号で、
築地や日本橋のモノクロ写真をずらりと並べた。
それが売場に特異のムードをもたらす。IMG_8840 (002)

惣菜はアイテム数は少ないが単品量販。IMG_8839 (002)

精肉部門は「肉のロピア」。
全体の2割の売上構成比だ。IMG_8841 (002)

この店は関西営業本部のなかでも、
よくできている。
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阪神電鉄「今津駅」の隣は、
「甲子園駅」で甲子園球場がある。
だから壁面のイラストは高校球児だ。IMG_8844 (002)

冷凍食品売場は「LOPIA FROZEN」IMG_8846 (002)

いっぺん買ってみ。」
このPOPがグロサリー売場の各所に張られている。
そして傘下の企業の新製品が並ぶ。
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グミ製品を集めまくった菓子売場。IMG_8848 (002)

久しぶりに関西ロピアの店を見て、
大いに満足した。IMG_8866 (002)

コーナンやアークランズは、
ロピアとのコンビネーションを増やしている。

「料理したい店」と「DIYしたい店」には、
強い親和性があるのだ。
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コーナンに隣接して、
業務スーパーが出店している。IMG_8856 (002)

ロピアと対峙しているのが、
万代西宮今津店。
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店長は見当たらなかったが、
万代らしい売場づくりは貫徹されている。

ロピアの腰高の青果部門に対して、
万代は低い什器で商品が手に取りやすい。IMG_8859 (002)

惣菜部門では節分向け恵方巻のPOP連弾。
「万代は日本一を目指します」
恵方巻販売日本一を宣言する。IMG_8860 (002)
近隣にロピアが進出してくると、
エリアは広域商圏化する。

万代はその顧客をとらえて、
売上げを伸ばす。

ポジショニング競争は、
大局的な立ち位置を示す店を、
ともに繁盛させる。

そしてポジショニングの欠落した店店を、
マーケットから排除していく。

トーホーの「Aプライス」
業務用の小型食品プロショップ。IMG_8861 (002)

業務スーパーもAプライスも、
普通のスーパーマーケットではない。
それがサバイバルの条件なのだ。

万代の阿部秀行社長。
「競合が出てきたら、
伸びるチャンスやないか!?」

よく観察してみてほしい。

万代はロピアが出てくるたびに、
競争する店がことごとく売上げを伸ばしている。

互いにポジショニングを確立しているからこそ、
万代とロピアは親和性が高いのだ。

〈結城義晴〉

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