結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年06月27日(金曜日)

商業経営問題研究会(RMLC)開催され、流通革命論議闘わされる

6月26日、東京・麻布台。

故磯見精祐さんの遺志を継いだ商業経営問題研究会が、
商業界会館2階ホールで開催された。
通称「RMLC」(リテール・マネジメント・ラーニング・サークル)

新しいメンバーも、お二人加わって、
報告も、議論も、充実。

まず、座長の私が、渡米前に、お話。
テーマは、
「米国スーパーマーケットの小型店開発を斬る」
ウォルマートのネイバーフッドマーケットの展開ぶり。
NM
テスコ・フレッシュ&イージーの狙いと現状。
ファサード
セーフウェイのザ・マーケットの動向、
そしてウォルマートのマーケットサイドの予測。

コーネル大学マクラフリン学部長と、
ジン・ジャーマン名誉教授の見解。
そして私の考え方。

一通り、お話した。

「小型店開発は、大型化よりも難しい」
これが、私の持論。

ウォルマートもテスコも、
セーフウェイも、
成功させることが出来るかどうかは、
未知数だ。

頭と手を使う「知識商人」として、本当に難しい仕事だから。

テスコがイギリス本国で、
テスコ・エクスプレスを成功させているのは、
テスコのレギュラータイプや
スーパーストア、テスコ・メトロなどで、
圧倒的な国内シェアとロイヤルティを築いているから。
そして小型店と大型タイプ、中型タイプの、
補完関係を見事に整理しているから。

整理しているとは、
それぞれの立地と品揃えを吟味して出店しているということ。

それがないところでの、
小型店開発は、リスクが一杯。

ウォルマートのネイバーフッドスーパーマーケットを見るがよい。
スーパーセンターの食品部門切抜きでは、
ディスティネーションストアにならない。

しかしまれに、立地に恵まれた店では
成績を残している。
極めて少ないが。

ちなみにチェーンストアの考え方は、
どんな店も頑張れば必ず良くなる、
という盲信を排除する。

ウォルマートもテスコも。

特別の手当てをせずとも「儲かる仕組み」を、
必死になって考える。
そしてそんな店を次々につくっていく。
この姿勢である。
だからこんな議論をし、試行錯誤する。

仕組みをつくって、仕組みで動かさねば、
長続きはしないからである。

ドラッカー先生は書き残している。

「イノベーターはリスク志向ではない。
イノベーターは機会志向である」

 

さて私の次は、品川昭さんの総括。
「業態変遷と流通革命のこれから」
3カ月間、世話人として報告してくださった、そのまとめ。

品川さんは、
1950年から1980年を第1次流通革命、
1980年から10年間移行期があって、
1990年から2006年までが第2次流通革命。
そしてこれから、
Next Revolutionが起こると総括。

みんなから議論が出た。

「流通革命とは、
サプライチェーンの支配力を取ること」

いや、
「流通革命とは、
消費者主権を確立すること」

いやいや、
「これまでの日本の流通革命とは、
小売店の寡占を打ち破ったこと」

「革命」とは、
急激に体制の変化を生み出すこと。

だから、現象的に見れば、
急激に変化が起こったときを、
思い出せばよい。

それはあったのか。
あったとしたら、いつなのか、
どんなことで起こったのか。

こんな青臭い議論をしている研究会は、
見当たらない。

でも、議論しつつ、
全員が考えていた。

果たして「流通革命」と呼べるものが、
日本の商業世界に起こったのか。

このブログでの議論の展開を、待ちたい。

Good Night.

<結城義晴>

追伸
商業経営問題研究会、
今回、ウォルナットさんが参加してくれた。
素晴らしいウォッチャーであり、
的確な分析者。
会のあと、神谷町の「古」で一献。
ウォルさんに感謝。


1 件のコメント

  • 久しぶりに投稿させていただきます。
    「特別な手当をせずとも儲かるしくみ」は、ある程度の店数を必要とすると思いますが、日本においては、全国展開ができでる、もしくは小型で多店舗化がしやすいといういずれかでなければ年に10店以上の出店はできず、結果、そこまでの実験にたどりつけないというケースが多いと思います。そこで、店長の権限と役割ということがとても重要になると思います。つまり、100店舗のチェーンで同じ商品部・Byrを前提にある実験を始めた場合、当初店長のエネルギー100とすると、本部Byrのエネルギーはある専門領域において100以上(200500)でスタートしますが、オープン一ケ月後には100程度になり(そのことを店長と対等に話せる)、季節が変わった時(棚変等)には1/100になってしまいます。志のあるByrがいて本気で考え続けたにしても物理的に30/100程度のエネルギーにならざるを得ません。ある程度の店舗規模以上(300坪以上?)で全く新しいチャレンジをする場合、多店舗化を前提とした実験=専任の商品部Byr(一と通りのマネジメントのできるレベルの人材)・スタッフを連動させた実験でなければ、実験ということにすらならないという感じがあると思います。そこで店長の役割であり可能性に限界を設定していない=店長による個展経営こそDNAという企業であれば、店長のパワーが100のところ500や1000程度に引き出さされるケース(フォーマットの精度の高さと立地の良さ+店長思い入れ、志が水準以上となった場合、等)において、結果として実験が継続することになるということがあります。ただし、枠におさまらないスーパーな店長を認めた場合という前提です。GMSの企業がコンビニをというように規模が極端に違えば別組織で対応せざるをえませんので、店長のありよう含めての実験ができる可能性がありますが、引きずられる商売の種類であり規模であれば上記のようなことが現実的に問題になってくるという感じがしています。
    お話を直接お聞きしたわけではないので、議論がかみあっていなかったらお許しください。また、断片的なことかつ言葉足らずで誤解されることがあるかもしれません。結城先生の整理された理論のおかげで、これまで常々考えてきたことが、まるで霧がすこしづつ晴れていくような感じを受けています。本当にありがとうございます。RMLCの議論にはとても興味があります。またブログで紹介してください。

  •    バイオリン弾き様、相変わらずの早朝の書き込み、
       ありがとうございます。

       まず前提は、すべての店がチェーンストアでなければ
       ならないわけではないということです。
       しかしチェーンストアという優れた手法をとる場合、
       最初の設計が極めて大事になります。
       だからプロトタイプをつくるときには、
       さまざまな実験をし、試行錯誤を重ねます。
       その中で、個店の店長の役割と仕事の範囲が、
       明確にならねばなりません。
       設計は最初にします。
       しかし設計された店は、
       日常的に維持され続けていきます。
       だから、維持していくときに、
       楽にオペレーションができるようなおおもとの設計が
       重要になるのだと思います。
       設計に携わる人数はわずか。
       運営にいそしむ人数は多数で多様。
       だから「楽に利益が出る設計」こそが、
       チェーンストアの鍵を握ることになります。
       小型店が、生鮮食品の回転率という問題から、
       「楽に利益を維持しやすい仕組みではない」
       というジャーマン教授の指摘は、
       この意味で、重いものだと考えられます。

       
       バイオリン弾き様も、一度、
       RMLCにご参加ください。
       歓迎します。
         
       

  • 本当にお世話になりました。
    みなさんとてもフランクに激論で? けっして難しいことを論じているんじゃなく、って、素朴な話題の、けど深みのあるレクチャーを受けさせていただきました、ウォルのほうこそ、感謝×2ですわぁ・・・
    三重からは遠いけど、できる限り参加させてもらえればいいなぁ、って、今後ともヨロシク願います。

  •    ウォルさま、ありがとうございます。
       楽しかったですね。
       ちょっと年上の人たちの、革命論議。
       受け止めつつ、そこに思考をめぐらせる。
       贅沢な時間なのかもしれません。
       また、やりましょう。
       ときどきで良いから、参加してください。
       名古屋あたりでも、RMLCやりたいですね。

  • あたたかいお誘いありがとうございます。
    そうですか、チェーンでなくともできる可能性があるのですね。まだよく理解できておりませんのであらためて機会をいただきたいと思います。大変興味がありますので、ご迷惑でなければ一度参加させてください。お願い申し上げます。

  •    バイオリン弾き様、どうぞおいでください。
       来月は、18日(金曜日)に開催します。
       テーマは決まっていませんが。

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