結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月29日(土曜日)

寒い寒いダラスの初日はHEBセントラルマーケットとフード&ドラッグ橋頭堡店舗でローカルチェーンの日

ダラスは寒い。

驚くべきこと。

今年の夏は、干ばつで、
リック・ペリー知事が、
州民にこういったほどだった。
「3日間、雨乞いをしましょう」

それがハロウィンの前だというのに、この寒さ。

環境異変が起こっているのか。
それでも元気に視察を進める。

成田を発ったのが、金曜日の午後2時。
20111029211813.JPG

アメリカン航空の成田・ダラス便は、2時間も遅れた。
20111029211823.jpg

それでも安全な方がいい。
文句を言う者はいない。
20111029211834.jpg

ダラス・フォートワース空港で、
浅野秀二先生と落ち合って

すぐにHEBセントラルマーケットへ
20111029211853.jpg
テキサス州サンアントニオに本社を置くHEBは、
ローカル・スーパーマーケットチェーンにして、
テキサス州最大の非上場企業。

つまりインディペンデント・カンパニー。
これが大事なところ。
2011年全米チェーンストア・ランキング27位。
スーパーマーケット企業では全米6位。
2011年度の売上160億9100万ドル
100円換算で1兆6091億円。
前年比13.9%と絶好調だ。

HEBは3つの戦略フォーマットを展開する。
①EDLPの主力フォーマットであるフード&ドラッグ、
②非食品をプラスしたコンボ型のHEBプラス、
そして、③アップスケール・タイプの大商圏型セントラル・マーケット。

セントラル・マーケットは、
ワンウェイコントロール方式を採用している。。
お客をまんべんなく回遊させる売り場には、
フレッシュな生鮮、
豊富なプリペアード・フード&デリ、
世界中から集められたチーズとワイン・リカー、
スペシャルティなグロサリー商品などが、
これでもかと並ぶ。

屋内外に、カフェスペースが設けられており、
週末には地元演奏家のライブミュージックなども行われる。

われわれも着いてすぐに、屋外カフェで昼食。
20111029211905.jpg

それから屋外インタビュー。
20111029211930.jpg
実に丁寧に答えてくれた。
この店は8番目のアップスケール店舗。
店舗面積6万平方フィート(約1700坪)。

来年には3万平方フィートの実験店を出すそうだ。

そのあと店内ツアー。
部門ごと、カテゴリーごとに、
整理された解説を受けた。

試食のお奨めも受けた。
昼食後だったが、断らずに全部いただいた。
20111029211956.jpg

そして写真。
20111029212006.jpg

全員写真も。
20111029212019.jpg

疲れは見えないほど、気力充実。
20111029212029.jpg

次に向かったのが、HEBフード&ドラッグ
20111029212042.jpg

オースティン、サンアントニオで5割を超えるシェアを持つHEB。
アップスケールタイプのセントラルマーケットを、
ダラスに出していたが、いよいよ本命フォーマットを出店させた。

ウォルマートの牙城にして、
クローガーのドミナントエリア。
ここに撃って出るHEB。

今度は攻める側に回った。

その橋頭堡がこの店
20111029212428.jpg

大繁盛。
20111029212438.jpg

まず生鮮がいい。
20111029212209.jpg

バナナの売り方も丁寧。
20111029212221.jpg

すぐに食べられるバナナと、
少しおいて熟させるバナナ。
20111029212233.jpg
それをきちんと教えている。

SUSHIYAのコーナー。
20111029212250.jpg

フィッシュマーケットとミートマーケット。
20111029212300.jpg

奥主通路。
20111029212315.jpg

そして今やウォルマート以上のパワーを持つ
アイランド販促。
20111029212326.jpg

ファーマシーも地域からの信頼が厚い。
20111029212341.jpg

エブリデーロープライスを展開しながら、
クーポンを積極的に活用。
20111029212352.jpg

これがウォルマートにない販促。
20111029212402.jpg

インストアクーポン。
20111029212414.jpg

そして地域コミュニティとの密着。
20111029212455.jpg

1カ月間のコミュニティ内のスケジュールを張り出している。
20111029212506.jpg

今日の視察は、HEBの日。
ローカルチェーンの日。
20111029212519.jpg

HEBの橋頭保店舗が成功しているのを確認して、
私はうれしかった。

アメリカでも、
ローカルチェーンが隆々としている。

それをこの目で見て、この耳で聞いて、
自ら体験できたからだ。
(続きます)

<結城義晴>

2011年10月28日(金曜日)

円高メリットを活かし、ドラッカー「ポストモダンの七つの作法」に則ってアメリカに学ぶ旅に出発

いま、成田空港。
20111028121232.jpg

第10回商人舎USA研修会の結団式とセミナー

20111028121120.jpg

10時半集合で、1時半まで、
講義や打ち合わせ、顔合わせ。
20111028121157.jpg
昨日27日のニューヨーク外国為替市場、
円相場が一時1ドル75円67銭まで上昇、
史上最高値を更新

このところ、アメリカを訪れるたびに、
円が高くなる。

円高に関して、ふたつ。
第1は、日本経済の空洞化の問題
円高は輸出産業にとって、
決定的な痛手となる。

黙っていても、
自分たちがつくって、売る商品が高くなる。

コストを抑えるといっても限界がある。
だから必然的に海外に工場をつくったり、
拠点を移したり。

その分、国内の工場が縮小され、
場合によっては閉鎖される。
それを「空洞化」と称する。

しかし、この「空洞化」、
指をくわえて見ているわけにはいかない。
何らかの産業で「空洞」を埋めなければならない。

私はその役目が、
小売流通業・サービス業にあると思う。

3年前の2008年4月17日、
商人舎発足の会の記念講演の私のタイトルは、
「小売サービス業が日本を救う」
まったく、その通りになってきた。

空洞化を補い、日本経済を救うのは、
小売り流通業・サービス業である。

それが実現されたなら、
日本は住みやすい国となる。
観光にふさわしい国となる。
そのうえで、新しいテクノロジー産業が構築される。

その原動力となるのが、
小売サービス業である。

円高に関する第2のこと。
それは高くなった円のメリットを活かすこと
私は日本人の海外体験に向けるのが一つの方法だと思う。

日本人が日本人としての強みを自覚し、活かしつつ、
本当の国際人になる経験、体験を積まねばならない。
そのチャンスが、今だ。

小売流通・サービス業は欧米に学んできた。
我々は今こそ、欧米を、アジアを、体験すべきだ。

「もうアメリカに学ぶものはない」
10年も前からそんな声が、
小売業・消費産業の、それも識者のなかから、
ちらほらと聞こえ始めた。

私も直接、そんな発言を、
耳にしたことがある。

しかし聞いてみるとその人は、
もう10年もアメリカを訪れたことがなかった。

ピーター・ドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」。
その第一にあるのが、
「聞く、そして見る」

ドラッカーは、〈イノベーションの原理〉を五つあげている。
第一は、機会を徹底して分析する。
第二は、自分の目と耳で確認する。
第三は、焦点を絞り、単純なものにする。
第四は、小さくスタートする。
第五は、最初からトップの座をねらう。

自分の目で見る、自分の耳で聞く。
それがイノベーションの基本態度である。

円高の今、多くの幹部・社員が、
自分の目で見、自分の耳で聞き、
自分で体験することができる。

「ポスト・モダンの七つの作法」の第二。
「分かったものを使う」
ドラッカーの言葉を使えば、
「既に起こった未来」
それを学ぶ。

例えばアメリカにも、
団塊の世代がある。

「団塊」とは呼ばず、
「ベビーブーマー」というけれど。

これは日本よりちょっと早い。
第二次世界大戦が終結して、
戦地から大量の兵士が戻ってきた。
そして、子づくりに励んだ。
母国が戦場とならなかった戦勝国のアメリカの方が、
イギリス、フランス、そしてドイツ、イタリアよりも、早かった。
もちろん日本よりも早かった。

その団塊の世代がまた30年後に、
ベビー・ブーマー世代をつくった。
これもアメリカが日本より数年、早かった。

アメリカの近代小売業は1850年代にスタートした。
1858年 ジョン・ワナメーカー、ペンシルバニアで最初の百貨店を開店。
1859年 ザ・グレイト・アメリカン・ティ・カンパニーが食品店を創業。
1879年 フランク・ウールワースが非食品のバラエティストアを発明。
1886年 リチャード・ウォーレン・シアーズ通信販売業スタート。
アメリカ小売業の近代はもう、
150年もの歴史を刻んで、
幾多のイノベーションの歴史を重ねてきた。

アメリカには消費の先行性とともに、
小売りシステムの先進性があるのだ。

その「既に起こった未来」を見る、聞く。
「分かったもの」を使う。
ドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」。
第四は「欠けたものを探す」

日本に欠けたもの、それがアメリカにある。
探し物のすべてではないが、
アメリカには確かに、それがある。

さらにドラッカーの言葉。
「企業の目的と使命を定義する場合、
出発点は一つしかない。
顧客である。

顧客によって事業は定義される。
顧客を満足させることこそ、
企業の使命であり目的である」

それでいてドラッカーは、こうも言う。
「もっとも重要な情報は、顧客(カスタマー)ではなく、
非顧客(ノンカスタマー)についてのものである」

自分の目で見、自分の耳で聞くとき、
大切なのが、三つの目。
「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

「虫の目」とは、現場を見る力。
細部まで丁寧に「見極める能力」。
これを支えるのが、専門性と現場主義。

「鳥の目」は、大局を見る力。
全体像を俯瞰しながら、「見渡す能力」。
これを支えるのが、情報量と知識。

「魚の目」は、流れを見る力。
時間の経過の中で、現在と未来を「見通す能力」。
これを支えるのは、経験と見識。

そして、「四つ目の目」は、
謙虚で、真摯で、真っ正直な「心の目」である。

アメリカ小売業の競争は、
試験管の中の現象である。
ビーカーやシャーレの中の変化である。
純粋に市場原理に基づいたコンペティションが展開される。

日本やヨーロッパと比べて、
はるかに規制が少ないからだ。

しかしここに
「客観化・普遍化・理論化」の確かさが生まれる。

アメリカ小売流通業から学ぶのは、
この客観性、普遍性、理論性である。

もちろん日本に持ち帰って、
この客観的で普遍的なセオリーや経験則を、
日本独自のイノベーションに役立てたい。

ただしここでもドラッカーの「ポスト・モダンの七つの作法」の第三、
「基本と原則を補助線として使え」

イノベーションに必須の要件は、
堺屋太一言うところの「本気のプロデューサー」の存在である。
それは、「自ら、変わる」ことのできる人財である。

アメリカ消費産業に触発され、
アメリカ小売業に感動することによって、
人は、自ら、変わる。

商人舎研修の狙いは、ここにある。

昨夜は、商人舎チーフ・コーディネーターの鈴木敏と打ち合わせ。20111028081846.jpg

朝には、ゲスト講師の大久保恒夫さんと合流。
20111028121207.jpg

㈱マルト社長の安島浩さんも、
いわきからタクシーで合流。
20111028134205.jpg

まったく偶然のことながら、
月刊『マーチャンダイジング』主幹の日野真克さんとも遭遇。
20111028121148.jpg

なにかが起こりそうな今回のツアー。
まずは第1陣「経営戦略」スペシャル・コース出発。
20111028134216.jpg
2日遅れで、
商品戦略マーチャンダイジング・コースの第2陣が出発。
ワシントンで合流。

今年第6回目にして、
2011年最後のアメリカレポート。

極力、2012年の動向にアンテナを張りつつ、
お届けしようと思う。

乞う、ご期待。

<結城義晴>

2011年10月27日(木曜日)

作家・北杜夫「マンボウ」の死とセルコチェーン設立50周年記念の平富郎「競争こそ企業と経営を磨く砥石」

昨日のこのブログで、
「北風小僧の三太郎」がやって来たと書いたら、
それは「木枯らし1号」だった。

いよいよ、晩秋。

二十四節気の霜降(そうこう)が、
今年は今週月曜日の24日で、
立冬(りっとう)は2週間後の11月8日。

読んで字のごとく、
霜が降りて、
冬が立つ。

1年を24に割るのだから、
ほぼ半月。

霜降は「楓や蔦が紅葉し始めるころ」とされ、
さらに霜降から立冬までの間に吹く寒い北風を、
「木枯らし」と呼ぶ。

私は今日、
成田空港に入り、
明日出発。

今年、6度目の渡米。
9月28日にダラス、サンフランシスコを訪れ、
帰国してから5日おいて、
10月9日から、ケルン、パリだった。

今回はその後、時差が直らず、
体調は悪くはないが、
良くもない。

気を付けるといっても、
睡眠をとることしか手立てがない。
しかしまとまって眠る時間もないし、
時差ぼけで眠れない。

食欲は旺盛で、
気力も充実しているから、
睡眠不足は、
細切れの眠りで補う。

今回帰国したら、
まとめて眠り続けるとしよう。

そんなことを考えつつ、
いま、定宿の成田エクセルホテル東急に入った。

さて、北杜夫さんが亡くなった。
驚いたことに、
4大新聞の朝刊一面コラムすべてが、
北杜夫さんの逝去を取り上げた。

朝日新聞の『天声人語』
「小学生のころ、こんな俳句を作ったそうだ。
〈コオロギがコロコロと鳴く秋の夜〉。
大歌人だった父は面白半分に
それを見たが何も言わなかった、
とご本人は回想していた」

「かつて雑誌に『私の作品など茂吉の一首にも及ばない』と語っていた。
2年前にお会いしたときに問うと、
やはり頷(うなず)いておられた。
〈父より大馬鹿者と来書ありさもあらばあれ常のごとくに布団にもぐる〉は
若き北さんの一首。
天上で、大いなる父君と再会を果たしているころか」

読売新聞の『編集手帳』

「〈恋人よ/この世に物理学とかいふものがあることは/
海のやうにも空のやうにも悲しいことだ…〉
◆物理の答案用紙に書かれた詩は以下のようにつづく。
〈僕等には/クーロンの法則だけがあれば澤山(たくさん)だ/
二人の愛は/距離の二乗に反比例する/
恋人よ/僕等はぴつたりと抱き合はう〉
『斎藤宗吉』と名前の欄にあった。
旧制松本高校に在学していた頃の北杜夫さんである。
作家は処女作に向かって成熟していく――」

日経新聞の『春秋』
「重厚な大河小説から、ユーモアの効いた中間小説、ファンタジー、童話まで。
北さんが紡ぎ出した世界は多彩だった。
なかでも広く親しまれたのは
『どくとるマンボウ』の名前を冠したエッセーだろう。
軽妙洒脱(しゃだつ)の文章は、
厳格な印象の鴎外や茂吉とは対照的で、
日本の文学をずいぶん豊かにしたような気がする」

残念ながら『春秋』が一番つまらない。

私は今回は毎日の『余禄』に軍配を上げたい。
「北杜夫さんは子供時代、
雑誌の『少年倶楽部』や日記帳を入れていた押し入れに、
ちゃぶ台と懐中電灯を持ち込んでよく籠もった」

「父の斎藤茂吉にこんな歌がある。
『押入れにひそむこの子よ父われの悪しきところのみ受継ぎけらし』」

「『そう』の時は夜、明かりをつけた家を開け放ち、
集まる虫に網を振り回した北さんだ。
捕った虫は親しい昆虫収集家に贈った。
その収集家が沖縄県の新種の甲虫に北さんの名前をつけたと
報じられたのはつい先月である。
家人には大迷惑の虫捕りも、報われたようだ
▲学名ユーマラデラ・キタモリオイ、
和名マンボウビロウドコガネ。
この世の仕事を成し遂げ、
押し入れの中の夢見る少年は今
コガネムシとなって飛び立った」

これだけ看板コラムに取り上げられる理由は、
コラムニストがみな、
「マンボウ」世代に属するからだろう。

マンボウ世代だけれど、
マンボウ精神を受け継ぎつつ、
物書きを続けるのは難しい。

続けているのが、
毎日の『余禄』コラムニストということになるか。

そのことが面白い。

実は私も「マンボウ世代」。
若いころ、北杜夫ファンだった。

『幽霊―或る幼年と青春の物語』1960年。
『どくとるマンボウ航海記』1960年。
『夜と霧の隅で』1960年。
この時、杜夫33歳。
輝いていた。

『遥かな国遠い国』1961年。
『どくとるマンボウ昆虫記』1961年。
『南太平洋ひるね旅』1962年。
『船乗りクプクプの冒険』1962年。
私は夢中で読んだ。

『楡家の人びと』1964年。
『どくとるマンボウ青春記』1968年。
大河小説は重厚だった。

それからちょっと、マンボウから離れた。
そして1993年、『どくとるマンボウ医局記』。
このあたりで、「あれっ」と思った記憶がある。

つまらなく感じられた。

私が変わったのか、老いたのか。
北杜夫が変わったのか、尽きたのか。
時代が変わったのか。
バブル崩壊のあとだった。

作家は処女作が一番いい。
そんな説がある。

ある意味で、賛成。
しかしその輝いていたころの価値が、
損じられることは断じてない。

以って自戒とすべし。

享年84。
ご冥福を祈りたい。

合掌。

昨日は、協同組合セルコチェーン
設立50周年記念大会。

場所は新横浜国際ホテル。
20111027143343.jpg
1962年(昭和37年)5月に事業協同組合となり、
今年5月に50周年を迎えた。
中小規模のスーパーマーケット56社が主宰。
いわゆる小売主宰ボランタリーチェーンとして、50年。
加盟歴30年以上の企業は、15社に上る。

高度成長期の1970年代には、各地に地域本部を設け、
2000年代にはプライベートブランドを開発・展開。
2010年代に入り、「セルコライブネット」システムを開始。
これは売場のライブ映像を店舗に配信するサービス。

情報、知恵、ノウハウを共有する着実な活動を行ってきた。

もちろん、低成長時代に入った1990年代には、
中小スーパーマーケットの集まりだけに、
チェーン運営には会計的に厳しい面もあった。

「皆、手弁当で勉強をした」

当時の会長の平富郎理事相談役(㈱エコス会長)は振り返る。

現在は、加盟企業組織の協同組合セルコチェーンと、
本部機能の㈱日本セルコとの二本柱で、
ローカルスーパーマーケット56社476店の活動を支える。

震災のため、延期となっていた記念式典を、
昨日、やっと迎えた。

行政、加盟店、お取引先など、
関係者がお祝いに駆けつけ、会場は満席。
はじめにセルコチェーンの佐伯行彦理事長が開会のあいさつ。
㈱さえきホールディングス社長。
20111027143327.jpg

続いて経済産業省中小企業庁の岡本勇二さん、
㈱ライフコーポレーション会長兼CEOの清水信次さん、
㈱商工組合中央金庫東京支店長の中川祐一さん、
三菱食品㈱会長の中野勘治さんが来賓祝辞。

「メガバンクの誕生のように、
消費者にとって大きなことはいいことばかりではない。
地域社会に貢献しよう、
その職責を果たそうとしているセルコチェーンは大事」と清水さん。
20111027143335.jpg

三井食品の中野さん。
「イギリスのジャーナリスト、ビル・エモットは、
『製造業偏重だった社会から今までの軸を変える必要がある。
日本の長期資産を生かすべきだ』と語る。
日本は知力、助け合い、ふれあいという資産を持っている。
ライフラインサービスをに担う食品産業こそ、これからの軸になる」
20111027143349.jpg

その後、「50年のあゆみ」のDVD放映、
功労者、永年加盟組合員、永年賛助会員などの表彰などがあり、
㈱与野フードセンター社長の井原實副理事長が謝辞を述べ、
第一部の式典をしめくくった。
20111027143417.jpg
私も機関誌『セルコ・レポート』にもう20年近く、
隔月連載エッセーを書き続けている。
タイトルは『スーパーマーケットへの進言』。
私の窓口はずっと取締役管理部長の小野寺義夫さん。
編集は㈱タンクの石田京さん。
お二人とも表彰された。

第二部は場所を移して、記念講演。
20111027143436.jpg

基調講演は佐伯理事長。
「50年目の節目に これからのセルコチェーン」

20111027143442.jpg

「1兆円グループをめざし、
仲間企業との絆を深め、強い商品づくり・店づくりを推進したい」。
講演というよりも、代表としての強い意思表明だった。

記念講演は平理事相談役。
20111027143448.jpg
これが、とてもよかった。

「歴史を見ても、日本人は、
とことん追い込まれると強い。

劣悪な環境、過激な競争の中からこそ卓越した人が出る。
東北から、次の世代を担う大政治家、すぐれた経済人が誕生する」

「スーパー成長の絶対条件は、
人口増、インフレ、物不足だった。

1990年をピークに、今は真逆。それが時代背景」

「イオンはヨーカ堂にMDでは勝てないと、
坪100円の郊外の土地を買って出店した。
それが、モータリゼーションの波に乗り、成功した。
負けたことが、勝ちの要因に変わる」

「時代は止まっていない。
いま勝っている要因が、
将来負けの要因になるかもしれない。

だから、時代を見失わないよう。
トップの責任は重大だ」

「トップがまじめに頑張ればいいとだけ思っていては、
従業員がかわいそうだ。
時代の変革の時こそ、一番得意なものを捨て、
チャレンジしなければなければならない」

「スーパーマーケットに天才はいらない。
努力だけが必要。
社長は仕事量を減らすな。
寝る間を惜しんで学ぶことが大事」

「競争こそ、企業と経営を磨く砥石と思え」

「お客や取引先に迷惑をかけないで、
リスクの伴う改革をしよう。
究極のローコスト経営をせよ」

60分の講演時間。
70歳から健康のために夫婦で始めたゴルフにまで話が及び、
後半は「平ワールド」全開。

私は昨年夏、富士登山をご一緒した。
富士で、平さんの魂に触れた。

そして、第三部の祝賀パーティへ突入。
再び佐伯理事長。
「我々は戦う集団になる」
20111027143520.jpg

来賓の方々のあいさつ。
農林水産省食糧産業局食品小売サービス課の池渕雅和課長。
「ライブネットなど前向きな姿勢がセルコチェーンの原動力」
20111027143525.jpg

一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会会長の小川修司さん。
「バイタルマジョリティこそ中小企業である」
20111027143641.jpg

日本スーパーマーケット会長、㈱ヤオコー会長の川野幸夫さん。
「製配販、力を合わせてサプライチェーンを築きましょう」
20111027143652.jpg
ヤオコーは一時期、セルコ・チェーンの優等生だった。

国分㈱会長兼社長の國分勘兵衛さん。
「スーパーマーケットのボランタリーチェーンは、
食のライフラインを維持するもの」
20111027143658.jpg

田中茂治㈱日本アクセス社長。
「個の力には限界があるが、
セルコの横の協業、製配販の縦の協業で成長しよう」
20111027143709.jpg

伊藤忠食品㈱濱口泰三社長。
「世代、時代は変わっても、
お店の役割は変わらない」

20111027143729.jpg

三井食品㈱長原光男社長。
「震災で消費者は地縁の大切さ、地域スーパーの役割を実感した」
20111027143737.jpg

セルコチェーン大会では、
いつも卸売業のトップ全員が祝辞を述べるのが恒例。

この日のパーティでは組合員の紹介があった。
地区別に企業のトップが壇上にあがった。
北海道・東北地区。
20111027143747.jpg

企業数の多い関東・甲信越地区は2回に分かれて登壇。
20111027143753.jpg

20111027143803.jpg

北陸・関西地区。
20111027143808.jpg

四国・中国地区。
20111027143826.jpg

いよいよ、お祝いの鏡開き。
20111027143835.jpg

そして乾杯!
20111027143848.jpg

この後は、動きもままならないほど人、人、人が入り乱れて、
懇親に次ぐ懇親。

㈱たいらやの村上篤三郎社長と㈱寺岡精工㈱の寺岡和治社長。
20111027143857.jpg

㈱サンシャインチェーン本部の川崎博道社長(右)、
営業取締役の新井明さん(左)、
三洋電機販売㈱顧問の大崎公司さん。

20111027143904.jpg
新井さんは、2年連続で来年2月のアメリカ視察に参加してくれる。
楽しみだ。

大橋幸多さん(左から2人目)と三井食品㈱の皆さん。
20111027143913.jpg

商人舎ファミリーの皆さん、
コーネル・ジャパンの皆さんも、
多数参加していた。

そして平理事相談役と佐伯理事長。

20111027143927.jpg
50周年、本当におめでとうございました。

「競争こそ、企業と経営を磨く砥石と思え」

私はこの言葉が一番好きだ。
平富郎が最も輝いていたときの言葉。

それは今、後継者たちに、
受け継がれている。

おめでとう。
ありがとう。

<結城義晴>

2011年10月26日(水曜日)

『日経MJ』小売りトップたちの下期消費の見方とコーネル大学ジャーマン名誉教授の「ポジショニングのすすめ」

横浜も東京も、今日は、
最高気温が20度をきって19度。

クールビズの続きで、
スーツにノーネクタイで家を出たが
北風小僧の寒太郎まで吹いているので、
ちょっと肌寒い。

そこで鞄の中からネクタイを取り出して、
駅の待合室で鏡に向かって、締めた。

少し暖かくなった。

そんな季節の変わり目です。

かつて「日経流通新聞」と称していた『日経MJ』。
MJは「マーケティング・ジャーナル」の頭文字。

その日経MJ 、このところ、とてもいい。
デスクが、いいのでしょう。

今日の一面左肩に「小売りトップの見方」
今年下期の消費と営業に対するそれぞれの見方・考え方。
「業種によって温度差がある」

イオン社長の岡田元也さん。
「下期も上期同様、業績好調は続く」

セブン&アイ・ホールディングス社長
村田紀敏さん。

「新しいもの、新たな提案をすれば消費は動く」

ファミリーマート社長の上田準二さん。
「消費者は無駄な出費は控えている。
ただし、低価格品のみを買うことには飽きており、
週何回かは付加価値の高い商品を買う」

高島屋社長の鈴木弘治さん。
「下期の百貨店業界の売上高は
前年同期比2%ほどのマイナスと見ている。
楽観できる状況ではなく、
今後も回復基調で上向くとは考えていない」

一方、ファーストリテイリング会長兼社長
柳井正さん。

「秋冬からの方が経済環境は厳しくなる。
景気が悪くても成長していかないといけない」

最後にライフコーポレーション会長
清水信次さん。

「上期は東日本大震災の特需を除いても、
健闘したが、下期は厳しい」

総合スーパーやコンビニの経営者は下期も好調が続くとみる。
百貨店、ファッションのトップは厳しいと考える。

日経リサーチが集計を担当した日経DIの10月調査は、
「消費、緩やかに回復」
日経MJ の三面。

一方、世界のトレンドを言い当てるのは、
ポール・グルーグマン教授。
「世界は50%以上の確率で、
景気後退に陥る」

それよりも気になるのは、
日本能率協会総合研究所の調査。
「買い物場所の使い分け調査2011」
そのものずばりのタイトルの調査だが、
それでもネーミングには一工夫ほしいところ。
これも日経MJの二面を占める。

関東・東海・関西の男女2000人以上から回答を得た。
年齢は15歳から69歳。

「買い物したいスーパー」を問う。
2009年お調査で一番多かったのが、
「商品が安い」だった。

ところが今回の2011年調査では、
「品ぞろえが多い」が一番で74%。
「商品が安い」は二番手。

逆転現象が起こった。

ついで「商品が新鮮」
ここまで回答の70%台。

それから60%台に、
「品質が良い」「安心・安全」が来る。

東日本大震災を体験して、
日本人の購買に影響が出た。

それはリーマンショックの世界的金融危機の影響から、
次の段階に移ったことを意味する。

先週の金曜日21日に行われたコーネル大学セミナー。
20111022103625.jpg

名誉教授のジン・ジャーマン先生の講義は、
「食品小売業のトレンド」。
20111022103608.jpg

その結論は、「ポジショニング」の勧めだった。
私が最近言い続けていることとシンクロしていた。

まず、全ての業態が食品購買客を狙っている。
米国スーパーマーケットの来店頻度は週2.5回、
対してスーパーセンターやドラッグストアは月に1回。

ウォルグリーンはシカゴの10店舗で生鮮を品揃え、
2011年末までに400店に拡大する。
CVSファーマシーは生鮮食品を都市部の1400店に導入。
これは全体の20%に相当する。

ウォルマートの対極にあるターゲットは、
2012年末までに1300店舗で生鮮食品売り場を取り入れる。

食品を扱って、既存店売上高が6%改善。

さらにアリス・コム、アマゾン・コムなどネット通販で、
食品販売が増えている。

つまりは多くのチャネルで、
生鮮やデリを扱う。
購買頻度アップを狙う。

日本もまったく同じ。

ドラッグストア、ホームセンター、
家電・カメラ量販店、ディスカウントストア。

そのうえで、ソーシャルネットワークによって、
「価格の透明性」が飛躍的に高まった。

比較しやすい環境を手にした消費者と、
価格比較される食品リテイラー。

だからアメリカでは、
価格競争力のある企業の躍進が続く。

ウォルマート、アルディ、ウィンコ・フーズ。
ダラージェネラル、セーブアロット、ファミリーダラー。

一方、ホールフーズウェグマンズのようなスペシャリストが、
立脚点を鮮明にして、「凛」としてマーケットに立つ。

コモディティ・ディスカウンター。
サービス&クォリティ・スーパーマーケット。
その間に、コンベンショナル型のスーパーマーケットが、
サンドイッチ状態。

彼らは従来から、
豊富な品ぞろえと鮮度・品質で対抗してきた。
しかしアメリカではこれが、
「コストの増加」を引き起こす原因となっている。

顧客が求めるのは、
(1)より安い価格
(2)より高い付加価値
(3)より速い対応

日本の「買い物場所の使い分け調査2011」は、
このジャーマン教授の指摘とは異なる。

しかし私はアメリカのポジショニング競争を、
日本の人々も知っておかねばならないと考える。

ジャーマン先生は言う。
「自身の正しいポジショニングが不可欠だ」

私はこれを「ポジショニング競争」と名付ける。
これは「コンテスト型競争」であって、
「レース型競争」ではない。

価格志向の企業群の中からも、
「レース型競争」から抜け出している者が出ている。

ここに気付かねばならない。

さて昨日25日は、
虎ノ門の日本チェーンストア協会の会議室をお借りして、
商業経営問題研究会(通称:RMLC)の10月例会。
20111026203502.jpg
商業経営問題研究会とは。
通称「RMLC」〈Retail Management Learning Circle〉。
小売業、流通業、商業に関して、
客観的・多角的・実務的な側面から研究し続けている会議体。
2003年、杉山昭次郎を中核として「杉山ゼミ」が発足し、
その後、故磯見精祐が座長となって「RMLC」へと発展。
2007年、磯見逝去の後、座長を結城義晴が引き継ぎ、
高木和成が代表世話人として今日に至る。
毎月、20日前後に4時間に及ぶ月例研究会を開催し、
鋭い切り口で問題提起し、問題解決への提案を続けている。

事務局は㈱商人舎内info@shoninsha.co.jp
<『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』(東洋経済新報社刊)より>

代表世話人の高木和成さん。
20111026211642.jpg

現在、RMLCには20名ほどの会員が参加している。
毎月、10数名が集まっては、
そのときどきの小売流通業のテーマに関して、
ゲスト講師を招いたり、各自が研究や考察を発表したり。
そのあとで、ディスカッションする。
20111026211631.jpg

昨日は、は9月に行った栃木県宇都宮市・真岡市の店舗視察について、
山口紀生さんと小林清泰さんがそれぞれの視点で分析報告。
20111026203513.jpg

そのあと、和田光誉さんが、テスコ日本撤退を受けて、
外資小売業の現状と、その課題をレポートしてくれた。
20111026203526.jpg
午後1時半に始まり、終わるのは5時。
休憩はわずかに10分。

次から次に質問や意見が飛び交う。
㈱セイミヤの加藤勝正社長も、
潮来から駆けつける。
いつも真剣な議論が交わされる。
20111026203534.jpg
この商業経営問題研究会名で初めて出版されたのが、
『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』
会員にとって、ひとつの成果物。

これからも、研究し、議論し
問題解決の道筋を提起する。
そんな活動を続けることで、
第二弾、第三弾の単行本を発刊したいものだ。

それはおそらく「ポジショニング競争への解」を、
もたらしてくれるものとなるだろう。

<結城義晴>

2011年10月25日(火曜日)

フェラガモの〝フェンス”とオーケーの「オネストカード」はドラッカーに通じる

昨日の続きで、
日本チェーンストア協会の9月の販売概況。
会員企業60社、8021店だが、
総合スーパー企業9社の売上げが、
全体の約5割を占める。
だからこれは9月の総合スーパーの趨勢とみてよい。

総販売額は9870億円、
前年同月比プラス0.6%増。

コンビニがマイナス4.0%、
食品スーパーマーケットがマイナス2.0%、
百貨店がマイナス2.4%だったから、
総合スーパーのプラスは、
たとえ0.6%であっても、
大健闘。

大部門別にみると、
食料品6404億円、プラス0.5%、
衣料品903億円、プラス3.1%、
住関品1936億円、マイナス0.8%、
サービス32億円、マイナス9.1%、
その他594億円、プラス3.4%。

衣料品が好調だった。

それでも、9月は、
月初と中旬の2度の大型台風の影響を受けて客足が減り、
昨年の記録的残暑への反動もあって、
わずか1%未満の売上げとなった。

それにしても、コンビニやスーパーマーケットまで、
マイナストレンドにあるのに、
よくぞ総合スーパーが、
プラスの数値をたたき出したものだ。

健闘をたたえたい。

さて第13回「世界経営者会議」。
日本経済新聞社主催。

この中で、サルヴァトーレ・フェラガモ会長の話がいい。
フェルッチオ・フェラガモ氏。
日経の編集委員・田中陽さんが、
インタビューでまとめた。
田中さんは流通や小売りの専門家。

フェラガモは1927年の創業以来、
「家族経営」に徹している。
いわゆるインディペンデント・カンパニー。
その「優位性」はコーネル大学ビル・ドレイク教授が指摘している。

「『船頭多くして船山に登る』となってしまわないように、
(一族から)1世代に3人だけが入社するというルールを作った」
家族経営・同族経営だが、
1世代に3人だけ、会社経営に携わることができる。

「入社要件の1つは言語、大学卒業、
そして最も重要なのは経験」
「語学力」が、最初に出た要件。
そして「大学卒業」。
現在は、修士課程くらい修めないといけない。

「フェラガモ・グループと縁のない会社で
3年間働くことだ」
さらに「3年間、他人の飯を食って来い」ということ。

田中さんの質問がいい。
「フェラガモにとって、『いい商品』とはどのような商品か」

答えは「高品質」や「こだわり」かと思いきや、
そうではない。
「量産品でもラグジュアリーでも、
目標を達成すれば成功だ」
フェラガモにして、
「量産品」と「ラグジュアリー」の、
プロダクト・ミックスを重視していることがわかる。
私の持論。

「経営利益は、
『コモディティとノンコモディティ』の、
『プロフィット・ミックス』によって生み出される」

その目標を掲げ、
目標を達成すれば、
すべて成功と評価する。ただし、
「我々は生活必需品を売っているわけではない」
フェラガモの製品に対して、
「喜びを感じうる要素、崇拝できる要素」
を、盛り込んでいる。

そのためにフェラガモには、
「クオリティーや職人技がある」
その意味は、
「何百回見ても、その仕事に
感情と情熱がこもっていることがわかる」

「この情熱が重要な成功の一因」と自ら分析する。

そして重要な組織の考え方。
「創造力を発揮してもらうため、
周りには“フェンス”を設けている」

フェンスとは「原則や価値観」。
それを厳然と決めておいて、
「それに合致すれば自由に作っていい」

ピーター・ドラッカーの
「ポスト・モダンの七つの作法」
その三は「基本と原則を補助線として使う」
フェラガモの〝フェンス”の概念は、
これに近い。

すると、「知識も技術も包含した革新が生まれる」
すると「ナレッジ」と「イノベーション」が創出される。
フェラガモさん、ドラッカーを学んでいる。

いいインタビューだった。

もうひとつ田中陽さんのインタビュー。
昨日の日経MJ「売り手の考え」から。
オーケー社長・飯田勧さん。
タイトルは「売り物は『誠実』」

オーケーと飯田さんは、
「消費者に目に見える形で
誠実さを表している」

それがこの会社、
この店の「最大の『売り』だ.

その代表的な手法が、「オネスト(正直)カード」
「カードの会員数は250万人強」

飯田さんは説明する。
「生鮮食品の状態など正しい情報を
お客さんにわかりやすく説明しないと、
理解していただけないからです」
食品スーパーマーケットの基本中の基本。

「お客さまを決して裏切らないことの表れです。
奇をてらったものではなく、
きわめて単純なことですよ」

とりわけて生鮮食品は難しい。
「仮に天候不順で入荷量が少ない生鮮食品を売ろうとした場合、
品薄だと商品の価格は高くなりがちです。
でも品質は良くないものもあります」
スーパーマーケットはこれで悩み続けた。

「何も説明もせずにお客さんが買ってしまうと、
『あそこの野菜はよくない』ということが
頭に残ってしまいます」

「ですから『買っちゃ駄目ですよ』と
説明しないといけません」

ところがなかなかそうはいかない。
「少し気がゆるむとどうしても表示に、
『買ってください』というような内容のことを
書いてしまいがちです」

「それでは駄目なのです」

「『買ってくれるな』と言わなきゃ、
値打ちがありません」

飯田さんの経験法則。
「売り上げを取りに行くと
ケガの方が大きくなります」

荒井伸也先生はこれをゴルフにたとえて、
「ヘッドアップ」と呼ぶ。

座布団三枚!

オーケーは非上場のインディペンデント・カンパニーだ。
「ですが経営指標は細かく公開しています。
2011年3月期の単独の経常利益率は5.6%です」

そのうえで、公開企業のごとく、行動している。
「オーケーの株式を新たに発行して、
お客さまに持っていただいています。
おととしは1株3530円で47万株を発行して
半日で売り切れてしまいました」

顧客参加型企業経営
である。

「非上場なので株価は
経常利益から算出した税引き後利益の
17倍にしています」

日経新聞の資料。
オーケーの2011年3月期の単独売上高は
前の期比7%増の2297億円、
経常利益は15%増の130億円。

経常利益は7期連続の増益。

オーケーの特徴は、
これまたドラッカー言うところの「インテグリティ」(真摯さ)。

フェラガモの「ナレッジとイノベーション」、
オーケーの「インテグリティ」。

インディペンデント・カンパニーの優位性は、
この2社によって証明されている。

今日は田中陽さんの「追っかけ」のようになってしまった。
心より感謝。

<結城義晴>

2011年10月24日(月曜日)

「ケインズvsハイエク」の対立軸と「EDLP対ロイヤルティ・マーケティング」の融合

Everybody! Good Monday!
[vol43]

2011年も第43週。
10月の第4週というか5週というか。
最終週というか、その前の週というか。

今日24日月曜日から、
来週月曜日の31日ハロウィンまで、
ひとくくりに一気呵成。

「秋の日はつるべ落とし」
まさしくこの言葉のように、
あっという間に時間が過ぎる。

その一刻、一時、一瞬を、
大切にしたい。

私は今週、金曜日から、
アメリカ。

ダラス、ワシントンD.C.、ニューヨーク、ロサンゼルス。
10日間。

商人舎第10回記念USA研修会。
大久保恒夫さん、林廣美先生、
豪華ゲスト講師陣とともに、
今年最後のアメリカを楽しむ。

期間中31日にハロウィンがやってきて、
そのハロウィン一色の売場が、
11月第4週木曜日のサンクスギビングデー向けに変わる。

その様を見る、聞く。

これも楽しみの一つ。

今月の商人舎標語は、
「着眼大局 着手小局」

アメリカでは、東海岸、西海岸、中南部を巡り、
ハロウィンやサンクスギビングのプロモーションを感じ取りつつ、
一方で、2012年を展望する。

今日の日経新聞朝刊『オピニオン』。
コラムニストの土谷英夫さんが、
「ケインズvsハイエク再び」と題して、
「着眼大局」の視点を書いている。

「今日10月24日は、
世界経済にとって縁起の良い日ではない」
1929年10月24日はウォール街の株が暴落し、
「世界恐慌」が始まった日。

「その世界恐慌の原因や対処法」をめぐって、
「ケインズ」と「ハイエク」の対立軸が今、
再びみたび注目されている。

1883年生まれのジョン・メイナード・ケインズは、
イギリス人で、マクロ経済学の父。
1899年誕生のフリードリッヒ・ハイエクは、
ドラッカーと同じオーストリア人で、
「『小さな政府』派の教祖」。
<ちなみに、ハイエクは故倉本長治商業界主幹と同じ年だし、
ドラッカー先生よりも10歳上>

土谷コラムニストは、
ハイエクとの直接インタビューを思い出しつつ、
その主張をまとめる。

「政府の役割を減らすべきだ。原則は2つ」
①個人の自由な行動に干渉しない。
②市場に適さないものに保護や補助金を与えない。

1980年代は「ハイエクの10年」だった。

イギリスのマーガレット・サッチャー首相が、
「規制緩和、国有企業の民営化、所得税のフラット化など、
小さな政府を実践し世界に広めた」

「快走するかに見えた市場任せの経済は、
世紀の変わり目辺りで変調をきたす」

土谷さん、文章が簡潔で、鋭い。
「米国でIT(情報技術)バブルがはじけた。
そして2008年、世界を巻き込むリーマン危機――」

「『ケインズに返れ』の声が高まる番だった」

20カ国・地域首脳会議、すなわちG20も、
ケインズ理論を選ぶ。

「日米欧が一斉に景気刺激に踏み切り、
中国も大盤振る舞いした」

その結果が昨年のV字回復。
「2009年にマイナス成長だった世界経済が
2010年には5%成長」

ケインズ優勢、ハイエク劣勢か?

だが、第2幕。
「ギリシャなど欧州の国家債務危機」

「政府が危機の原因では、
景気刺激どころではなく、
緊縮策を迫られる」

アメリカの民主党バラク・オバマ大統領は、
高い失業率に業を煮やし、異例の「雇用演説」。
ケインズ派のスタンスで、
来年の大統領選挙に臨む。

一方の「共和党は、だれが候補者になろうとも、
ハイエク派の『小さな政府』を看板にする」

さて、日本の野田政権。
「期せずしてケインズ政策をとる」

ケインズは書いた。
「ピラミッドの建設、地震、そして戦争でさえもが
富の増進に一役買うかもしれない」

ケインズが2011年の東日本大震災を言い当てたわけではないが、
復興に巨額の財政出動を要する状況は、
ケインズ政策そのものだ。

ただし、国家財政から見て、
「復興増税、消費税増税」は避けられそうもない。

米国のポール・クルーグマン教授。
このブログでもよく取り上げる。
「世界は50%以上の確率で景気後退に陥る」
しかし、中国をはじめとする新興国の経済効果で、
「世界全体では穏やかな後退にとどまる」

この点が、「30年代と大きな違い」とコラムニストは指摘する。

「先進国では格段に充実した社会保障などセーフティーネットが下支えになる。
半面、それが財政悪化の要因にもなり財政出動の余地を減らし、
時に政府自身を危機の原因に追い込む」

まさしく、オクシモロンの問題解決が要求される。
あちらを立てて、
こちらも立てる。

「ケインズは、
政府が市場の欠陥を正せると考えた。
ハイエクは、
思うままに市場を操れるほど人間は賢くないと考えた」

コラムの結び。
「この勝負、なかなかつかない」

二者択一の勝負がつかないのが、
21世紀の特徴。

そのギリギリのところで、
妥協点を見つけ、これしかないという解決策を導き出す。
これこそオクシモロンの問題解決だ。
「着眼大局 着手小局」こそ、
オクシモロンの具体的方針となる。

さて先週発表された小売業態別の9月実績。
真っ先に10月18日発表の「全国百貨店売上高概況」
日本百貨店協会に加盟している86社の調査。

9月の総売上高は4369億7845万円で、
前年比はマイナス2.4%。
3カ月連続でマイナス。

商品別売上高は軒並みマイナス。
震災特需で夏場まで順調に推移していた家電も
ここにきて、前年比マイナス16.5%。

また、台風が週末に重なったことや、
残暑が続いたことも影響して、
秋冬物の衣料品の動きは鈍く、
マイナス2.5%だった。

エリア別にみると、新店効果が続いている福岡は、
プラス10.9%(全店ベース)と順調。
東北地区は今月、プラマイ0。
復興需要が一段落してきたことを示している。

10月20日、日本フランチャイズチェーン協会から発表の
「コンビニエンスストア統計調査」

9月の既存店総売上高は6779億4000万円、
そして前年同月比はマイナス4.0%で、
11カ月ぶりにマイナスとなった。

昨年9月は、10月のたばこ増税を前に、
たばこを大量購入した人が多かった。
この駆け込み需要で昨年9月の売上げは絶好調。

その反動で、今年の9月は、
売上高、客平均単価ともにマイナスとなった。
たばこを含む、非食品カテゴリーの前年比は、
なんとマイナス18.5%。

ただし、来客数は微増だが、プラス0.4%。
昨年の反動を抜きにして考えれば、
9月も比較的堅調だったといえる。

最後に「スーパーマーケットの販売統計」
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会、
3協会からの合同発表。
20111024145504.jpg
9月の総売上高は7807億7316万円。
既存店の前年同月比は98.0%、
つまりマイナス2.0%。

食品合計は6726億9875万円(マイナス1.2%)、
生鮮3部門の合計が2524億7310万円(マイナス1.9%)、
そのうち青果が1039億0810万円(マイナス3.9%)、
水産が697億2718万円(マイナス0.4%)、
畜産が788億3782万円(マイナス0.4%)。

惣菜は689億3206万円(プラス0.4%)、
日配は1446億6981万円(マイナス1.3%)、
一般食品は2066億2379万円(マイナス0.6%)。

非食品が654億0283万円(マイナス3.6)、
その他が426億7157万円(マイナス5.8%)。

全体総括を語ったのは、
オール日本スーパーマーケット協会松本光雄専務理事。
20111024145512.jpg
「商売として難しい9月。
売上減の要因のひとつは、2つの台風上陸。
関西、東海、関東に被害の影響がでた。
ふたつめは、寒暖の差が激しく、
季節変動の売り場づくりができなかったこと。
昨年は、スーパーマーケットにもたばこ特需が吹き荒れた。
その反動で、4%マイナスの企業もあった」

「北海道、東北エリアが落ち着いてきたが
まだ震災による閉鎖店がある」

「部門別では、
野菜高騰が顕著だった昨年に比べ、
今年は価格が落ち着いている分、売上げはとれない。
水産はやや回復基調。
放射能汚染の風評被害は
潜在的にあっても、表には出ていない。
ただし牛肉は7掛けの値崩れ、
販売数量は8掛けと厳しい」

9月のゲストスピーカーは、
㈱ヤマナカ取締役常務執行役員の平山逸美さん。
20111024145521.jpg
「東海地区は50%が自動車関連産業で成り立っている。
リーマンショック、トヨタショックで
生産関連が悪化したが、回復基調にあった。
そこに震災が起こり、急激に落ち込み、
食料品支出は全国平均を下回っている」

「節電で工場などの稼働日が変更され、
週末に稼ぐ小売・サービス業は大きな影響を受けている。
一家に車が2台あればいいが、1台だと通勤に使うため、
週末の車による来店客が減り、大物購入も減った」

「円高で産業の空洞化が懸念され、
買い控えやPBなど低単価商品の購入、
ディスカウント店へのシフトが進んでいる」

「東海地区は激戦地。
地元の中での戦いから、
他府県からの参入企業との戦いに変わった。

とくに岐阜のバローの出店が加速し、
3年で20店が計画されている」

「5年前は6000人に1店舗だったが、
現在は4000人に1店舗」

「EDLPは消費者に受け入れられ始めた。
バローとマックスバリュが売上げを伸ばし、
勝ち負けが鮮明になってきている」

「ヤマナカも『チェレンジハウス』というEDLP店舗を
既存店舗の活性化策として展開しはじめている」

「ヤマナカでは新たにFSPのポイントカードを導入した。
予定の30万人を超え9月時点で37万人会員を集めた。
チラシ販促から、カード会員への
サービス、販促にシフトしていきたい」

エブリデー・ロープライス(EDLP)と、
ロイヤルティ・マーケティング。

アメリカ小売業の対立軸だ。

しかしアメリカの好調スーパーマーケットは、
HEBもウェグマンズも、
EDLPとロイヤルティ・マーケティングを、
融合させて、
ウォルマートやアルディに対抗している。

ナショナルチェーンのクローガーも、
EDLPとフリークエント・ショッパーズ・プログラムを、
両立させようと悪戦苦闘。

あちらも立てて、
こちらも立てる。

どちらかで勝負がつくことはないし、
融合も両立も簡単なことではない。

それに挑むのが、私たちの仕事。

では皆さん、今週も。
Good Monday!

<結城義晴>

2011年10月23日(日曜日)

ジジと十字架[2011日曜版vol43]

ユウキ家のジジです。
20111023120807.JPG

ユウキヨシハルのおとうさん、
きょうも、いません。
20111023120827.JPG
先月から、1日も、
やすんでいません。

うごきまわるのが、
だいすきなんですから、
しかたありません。

きのうは、朝からrikkyoへ。
20111023120840.jpg

ユウキ・ゼミ。
20111023120851.jpg

そのあと、みんなで写真をとった。
20111023120908.jpg

卒業アルバムの写真。
20111023121720.jpg

なまえを、かく。
まちがえないようにするためです。
20111023121730.jpg

ユウキ・ゼミのオカモトさん。
20111023121741.jpg

全員の集合写真も。
20111023121812.jpg

キマリました。
20111023121822.JPG

ことしのユウキ・ゼミは、
7人のセイエイです。
20111023121753.jpg

そのあと、ニイザ・キャンパスに移動。
20111023121839.jpg

2日間の合宿です。
おとうさんは、合宿主義。

ドラッカー先生の「時間をまとめる」を、
ジッセンしているのです。

しっかり研究して、
夜は、コンシン。
20111023122050.jpg
卒業生のシブキさんも、
きてくれました。
トヤマさんも熱心に、
きいています。
20111023122112.jpg
で、のみすぎた。

ふつかよいで、
朝のサンポ。
20111023122307.jpg

グランドへ。
20111023122158.jpg

ゲンキなフットボールの選手たち。
20111023122128.jpg

ハット、ハット。
20111023122140.jpg

ゴー。
20111023122209.jpg

すこしだけ、ゲンキをもらった。
20111023121753.jpg

朝の教会。
20111023121919.jpg

十字架。
20111023121908.jpg
日曜日の礼拝をしていました。

みあげると・・・。
20111023122253.jpg

秋の空。
20111023122225.jpg

そして、十字架。
20111023122237.jpg

「忙しい」とは、
「心を亡くす」とかく。
20111023122321.jpg
こころをなくしては、
いけません。

おとうさん。

<『ジジの気分』(未刊)より>

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年6月
« 5月  
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.