結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月22日(土曜日)

コーネル大学2011年特別セミナー『白熱教室!食品小売業の存在意義』の「うどんとまんじゅうくらいの違い」

朝刊各紙のトップに踊った。
「史上最高値75円78銭」

昨日の21日(金曜日)のニューヨーク外国為替市場。
円相場は一時1ドル75円78銭まで高騰。

私は来週木曜日から今年6度目の渡米予定。
そのたびに向こうでの生活資金のためにドルを買うが、
いつも、これが最高値だろうと思いつつ、
裏切られてきた。

今年8月19日の、これまでの最高値75円95銭を、
17銭分更新。

この面での専門紙・日経新聞の記事では、こう、まとめられている。
「市場では、欧米経済の減速懸念や米国の追加緩和観測などから、
歴史的な円高水準が長期化するとの見方が出ている」

輸入産業やアメリカを訪問する者にとってはよいが、
まだまだ、輸出産業にとっては苦しい日々が続く。

日経新聞のコラム『大機小機』。
今日のテーマは「資本主義の歴史的転換期」。

「資本主義の全般的危機ともいえる様相を帯び始めた」

「状況は1930年代に似てきたが、
戦争や福祉国家が解決策だった歴史の
単純な繰り返しはないだろう」

1930年は、流通の世界では、
史上最も有名なマイケル・カレンの革命。
スーパーマーケットが誕生した年。

政治の領域では、この世界恐慌への解決策は、
ひとつがなんと第二次世界大戦という戦争、
もうひとつが福祉国家づくりだった。

コラムは続く。
「先進国の経済水準は当時と比べものにならないほど高い」し、
「豊かさの中の貧困と格差」こそ、
現代の難題となっている。

だからプライベートブランドにフェアトレード商品が入ってくるし、
世界最大の食品展示会アヌーガでも、
「フェアトレード」が大事なトレンドとして取り上げられる。
コラムニストの渾沌氏は指摘する。
「問われているのは
強者の論理で国民経済の危機を招いた
政治と経済のイデオロギーである」

「資本主義の歴史的転換期にある世界は、
経世済民新しい『政治経済学』の登場を待っている」

「けいせいさいみん」とは、中国の古典に登場する言葉。
「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」という意味。

世と民を略して「經濟」や「経済」と使うこともあるが、
この場合、英語の「economy」とは趣旨が違っていて、
「広く政治・統治・行政全般を指示する」。
だから渾沌氏は、
「新しい政治経済学」の登場を切望している。

世界の小売流通業は、
1930年の「スーパーマーケット革命」並みの「革命」を、
待ち望んでいるのかもしれない。

もう一つ日経の記事。
「アマゾンが国内参入
電子書籍、本格普及へ」

「出版界は新会社 読書文化も変化」

「2010年度の電子書籍市場は
13%増の約650億円で、
15年度には2000億円に達する見込み」。

ただし「現状は漫画8割」だとか。

これに対して、
小説家の京極夏彦さんがコメント。

今月、新作「ルー=ガルー2」を、
単行本、ノベルス(新書サイズのソフトカバー)、文庫、電子書籍と、
4形態で同時発売した。

「そもそも、単行本を出して数年たったら
文庫にするという日本の慣習に疑問」
「数年前から単行本と文庫を同時発売してきた」

「結果、どれもよく売れた」
「ユーザーが別だということだ」

「単行本と文庫で読者が違うなら、
電子書籍の読者はもっと違うだろう」

「出版不況を電子書籍のせいにする論調が
一時あったが、根拠がない」

「現状では、商品としての出来は100点満点の10点くらい。
紙の本と電子書籍はテキストデータが同じだけで別のものなのに、
似たような作りだからだ」

「本当は、うどんとまんじゅうくらいに違う」

「紙の本は何百年もかけて今の形になった。
電子書籍も時間をかけて見せ方を試行錯誤しなくてはいけない」。

全くの同感。

㈱商業界時代の雑誌づくりと、
㈱商人舎のネットづくり。
テキストデータは同じだが、
全く別のものだ。
私は全く別のライフスタイルで仕事している。

さて、昨日21日も六本木アカデミーヒルズ49。
2日連続の、同じ会場でのセミナー。

今回は、コーネル大学・新日本スーパーマーケット協会主催。
テーマは「熱血教室!
ライフラインを担う食品小売業の役割と存在意義」

もちろん講師は、コーネル大学から来日したお二人の先生。
ジーン・A・ジャーマン名誉教授と、
ウィリアム・E・ドレイク教授。

同時通訳で聴講できる階段教室は、
コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン卒業生をはじめ、
新日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会の経営者・幹部、
さらに多くの食品産業関係者で満席。
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はじめに、増井徳太郎副会長が主催ごあいさつ。
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第1部はジャーマン先生の講義。
「アメリカの食品小売業の現状2011」

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食品業界が直面するマクロの影響を、
1.景気後退
2.消費者の変化
3.新しいテクノロジー
4.消費者が求める利便性
5.業界の競争
6.新たな位置づけ

と、6つの視点から分析してくださった。
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消費者は内食志向が高まり、
高級店からバリューストアへ足を運び、
低価格なPBを選択し、
ベーシックなものを購入する。

さらに消費者は、
ユーチューブやアマゾン、フェイスブックなどのソーシャルメディアを駆使し、
ツイッターでつぶやきながら、賢い消費行動をとる。

こうした顧客との双方向コミュニケーションを図るために、
食品小売業は、悪戦苦闘している。
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店舗とサイトとの新しいビジネスモデルが進行している。

その背景にあるのは、
食品マーケットをあらゆる業態が狙っているアメリカの競争環境。
だからこそ、自社・自店のポジショニングが重要である。

結論は私の見解と全く一致。
90分の時間があっという間に過ぎるほど、
整理された興味深い講義だった。

そして昼食。
昼食時間に談笑するのは、
㈱セイミヤの加藤勝正社長と、
㈱関西スーパーマーケットのコーネル・ジャパン・トリオ。
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2期生の国分㈱の山崎桂介さんと㈱よこまちの横町浩明さん。
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第2部は、ドレイク先生による「小売業の使命とは」
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「アメリカ小売業の災害への備えと対応」が、
今回のテーマ。

全世界の自然災害の経緯をデータで追跡。
自然災害の影響は拡大している。

この災害に対して小売業はいかに役割を果たすか。

ドレイク先生は、
「小売企業は独自の役割を果たしてきた」ことを強調した。
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そのうえで2005年のハリケーン「カトリーナ」来襲のときの、
ウォルマートやホーム・デポ、ウィンデキシーの対応を解説。

とりわけウォルマートのカトリーナ対応は、
連邦災害対策局(FEMA)をはるかに凌いだ。

そのプロセスがハーバード大学ケネディ・スクールの研究を、
トレースする形で紹介され、ドレイク先生の分析が加えられた。

「アメリカの政府がウォルマートのように対応していたなら、
私たちはこのような危機に陥ることはなかっただろう」
ジェファーソン郡のハリー・リー保安課の言葉。

「ウォルマートの模範的対応」と題したスライドには、
2005年8月23日から9月5日までの行動が、
丁寧に描かれた。

最後は「ウォルマートの対応のまとめ」と、
「ハリケーン・カトリーナから学んだ教訓」。

その第2、公共部門と民間部門の関係は、
体系化されなければならない。

その第4、現地の自治と行動の自由が必要である。

素晴らしいレクチャーだった。

第3部は、ディスカッション。
両先生と参加者との質疑応答、議論・討論。
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口火を切ったのは、コーネル・ジャパン3期生の岡秀夫さん。
行政と民間の役割について質問。
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ドレイク先生は、、
アメリカの事例から、そして今回の震災の経験から
公的な機関と民間の役割の枠ぎめが大切であると強調された。
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2期生の㈱伊藤軒・中井としおさん。
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1期生の㈱京急ストア上野裕さん。
「伝説の1期生ならぬ、電鉄の1期生です」
笑いを誘ってから、貫録のコメント。
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「電鉄系の店舗は、3.11では帰宅困難者の宿泊場所となったが、
一方で、従業員の安全確保も考えなければならない。
小売業の使命とはどこまでか」と発言。

次々と質問や意見が発せられた。
先生方は熱心に耳を傾け、
丁寧に答えてくださった。
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3期生の㈱よこまち・横町正俊さんは、
自身が被災した際の状況と対応を具体的に説明した。
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1期生の㈱北辰商事の太田順康さんは、
物流が寸断された要因と、今後の取り組みの在り方を、
ロヂャースの対応を紹介しながら語った。
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太田さんは震災直後から、
10数回にわたり被災地に支援物資を届けた。
自衛隊はすばらしい活躍をしたが、
自衛隊の物流機能には限界があった。
物流のプロならではの目線で、
多くの課題を指摘してくれた。

ジャーマン先生は、
こうした議論をじっと聞いていた。
そして指摘した。
「ウォルマートには災害時に対応するだけの親切さと能力があった。
災害のストレスを受けながら、能力を発揮できるのかどうか。
大事なのは、小売業はどこまで責任を負うのか。
どこで責任を終わらせ、政府に引き継ぐのか。
そのガイドラインづくりが大事だ」
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司会者からの無茶ぶりで、私も持論を発言。
「我々はすでに大震災や災害から多くのことを学んでいる。
イオンも、セブン&アイも、CGCもAJSも、
対応マニュアルをもち、実際に見事に行動した。
今後、大事なのは、それらを小売業や製配販、社会全体で共有化し、
改善・改革を続け、さらに公開し、活用することである」
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「そのうえで、業界を挙げて、定期的に防災訓練を展開し、
その運動を世界に発信することだ。
災害列島日本に住まう者として、
日本が安全で安心できる国であることを、
強くアピールすべきだと思う」

ジャーマン先生も、
「協会こそが共有化するためのエンジン役を果たすべきだ」と、
賛成してくださった。
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そのジャーマン先生の講義内容に対して、
コーネル・ジャパンの荒井伸也首席講師からも、意見がでた。
荒井先生はこのたび、中内学園流通科学大学客員教授に就任。

「店をアップスケールするにしても、
ディスカウントタイプにすることがあっても、
ポンペイの都の繁栄の時代から、
スーパーマーケットは普遍的な業態である」
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ジャーマン先生も
「調整・変化しつつ、成長するという意味であればその通り。
しかし、最初から意図的に新たな分野に参入することができれば、
もっと良いと思う」
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ドレイク先生は指摘した。
「スーパーマーケット企業はアメリカでも戦略を変えたがらない。
そこで、少しずつ変えていくと、本来の目的を見失う。
時の経緯の中で、最初の戦略が変容してしまうこともある。
少しずつ積み重ねた結果は、例えば、
シアーズ、Kマートの崩壊というケーススタディが示す」
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私もそうだが、ジャーマン先生、ドレイク先生の視野には、
1930年以来の変革のときが迫っているとの認識がある。
『大機小機』で渾沌氏が指摘した歴史的転換期。

私は「業態」が「フォーマット」に分化していると認識している。
京極夏彦ではないが、それは、
「うどんとまんじゅうくらいに違う」。

コーネル・ジャパン関係者を中心に紹介してきたが、
このディスカッションでは、他にも多くの参加者が質問を発した。
90分にわたる贅沢な時間は、これまた、あっという間に過ぎた。
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すべてのプログラムを終え、
主催者の増井副会長と二人の先生方は満面の笑み。
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私は、ドレイク先生とジャーマン先生に、
自著に筆で言葉を添書きして、
感謝をこめて差し上げた。
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ドレイク先生には『小売業ハンドブック』に、
「心は燃やせ、頭は冷やせ」
”Warm Heart,but Cool Head”
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ジャーマン先生には『店ドラ』に、
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」

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ジャーマン先生は「アートだね」と喜んでくださった。
私も、心から感謝。

そして最後に増井副会長と写真。
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六本木ヒルズ49階の眼下には、
秋の東京の市街が広がっていた。
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コーネル大学ジャパンの3年間。
ジャーマン先生とマクラフリン先生、
そしてドレイク先生とホークス先生。

伝説の第1期生(電鉄の第1期生を含む)、
奇跡の第2期生、実行の第3期生。

そして80カリキュラムを支えてくださったファカルティ、
日本の講師陣の皆さん。

充実した研修の日々だった。
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ニューヨーク州イサカのコーネル大学、
東京・市ヶ谷の法政大学、
ヤオコー、ロヂャース、サミットのセンターや店舗、
三井物産や東京商工会議所の研修センター。

様々な場での交流。

すべての人々に、
心から感謝しつつ、
日本の小売産業・食品産業の現代化を、
祈念したい。

<結城義晴>

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