結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月10日(金曜日)

阪急オアシスの「リニューアル戦略店舗」一巡りの巻(後篇)南千里店と淡路店

今日の朝日新聞のコラム『経済気象台』では、
「失われた30年」がテーマとなり、
日経新聞コラムの『大機小機』では、
「世界の成長を日本の成長に」となっている。

コラムニスト山人の朝日はこう、始まる。
「今の日本経済の光景を見ていると、薄ら寒くなる」

「景気が再び停滞感を強めているからだけではない」

「バブル崩壊後20年も経済が停滞基調にあり、
デフレ状態が長期にわたって続いているのに、
そこから脱しようという覚悟が、政府にも民間にも見えないからだ」

ずいぶんと高みに立ったモノ言い。

わからないでもないが、
特に民間には覚悟も意欲もある企業がある。

「民間でも、お上頼み、既得権益擁護の姿勢が目立つ」
これは既得権益を「持てる民間企業」の姿勢。

「政府も民間も、自らリスクをとることなく、
他者や将来世代の負担・犠牲の下で、
現在の自らの利益を守ろうとしている」

「政府、企業、個人それぞれが、
日本がよって立つべき基盤を率直に語り合い、現状を拒否し、
それを変える大きな戦略の下で、
それぞれが自らできることを地道にやり続けることである」

「それができなければ、日本は『失われた30年』に陥る」

こういう「脅し」的な文章の書き方、話し方、訴え方もある。
それで当たり前の結論を導く。
あるいはガンバリズムの非論理的な世界に誘う。
これらは適当に読み流し、聞き流しておけばよろしい。

対して日経は、日本のポテンシャリティの高さを評価し、
「地球人口100億人時代」にも、
日本と日本人が充分に機能することを示す。

「国連は世界の総人口が50年までに、
91億人へと22億人増えると予想する」

「日本の総人口は約3200万人減り、9500万になると予想されるが、
世界的にみれば我が国の人口減少は誤差の範囲である」

その時、「爆発するグローバル戦略を打つことが大切である」
「企業活動に国境はない」
その通り、ジョン・レノンはImagineで歌う。

「国を開き、企業も個人もグローバルな視点に立つことで、
世界の成長を日本の成長にできる」

まるで坂本竜馬だが、
私も、こちら派だ。

男一匹、いざとなったら国を飛び出して、
どこでも生きることができる。
それが翻って母国に貢献することにもつながる。

今年9月、中国・上海を訪れた時、
あの「どや顔」の中国人たちに混じって、
私はここでも、十分以上に生きていける、やっていけると思った。

パリのシアルで、世界のジャーナリスト仲間と再会した時にも、
私は「彼らに絶対に負けない」と決意した40歳の時を思い出した。

グローバルな視点に立ちつつ、
ローカルな問題に対処する。
これが「グローカル」の考え方。

そして商人はすべからくポジティブ派でなければいけない。
うまくいく仕事や会社はみんなポジティブ派である。

さて、きのうの「あした、あした」の今日は、
阪食の最新戦略店舗巡り後篇。

千野和利社長は、生粋の阪急百貨店育ち。
1999年取締役、2001年に阪急オアシス代表取締役社長、
そして2006年9月より、阪食代表取締役社長。

今年10月のコーネル・ジャパン開講講座でも記念講演をお願いした。

「高質食品専門館」の1号店は昨2009年7月、
「阪急オアシス千里中央店」(大阪府豊中市)、
2号店も昨年8月の「阪急オアシス御影店」(神戸市東灘区)、
3号店は今年2月の「阪急ファミリーストア住吉店」(大阪市住吉区)、
そして4号店は、「阪急オアシス山科店」(京都市山科区)。

さらに今年7月「阪急オアシス南千里店」(大阪府吹田市)、
10月「阪急オアシス日生中央店」、
11月「阪急オアシス淡路店」(大阪市東淀川区)、
最後に12月、「阪急オアシス箕面店」。

全部で、8店の新戦略タイプ。
千野社長は、3つのキーワードを具現化した売場を作り続けた。
その3つとは「専門性」、「ライブ感」、「情報発信」。

「専門性」は加工度を上げた生鮮食品に力を入れるほか、
コーヒーやワイン、ナチュラルチーズ、さらにカレーなど、
様々なカテゴリーで幅広い品揃えをする。

「ライブ感」は、主に生鮮食品で対面売場を設け、
顧客とのコミュニケーションを重視する。

そして「情報発信」は、
顧客のニーズ・ウォンツが反映されたメニュー提案、
新たな食生活提案などを続ける。
キッチン・ステーション、ギフトステーション、
そしてキッチン・スタジオも設けられている。

午後は、今年7月リニューアルオープンした南千里店。
この店から阪食の「新戦略」第2段階が始まった。
日本最初の大規模ニュータウンとして、
1962年に開発された千里ニュータウンの南に位置するが、
住民の高齢化が進む商圏でもある。

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ショッピングセンターの1階が阪急オアシス南千里店。
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入口からすぐにクレートに山積みされた季節の野菜を、
お客は楽しみながら購入している。
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入口左手は野菜コーナー。
野菜も果物も市場スタイルで、クレート陳列。
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広島産不揃い大葉98円。
こういう訳あり商品の訴求は購買意欲をそそる。
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季節の野菜が並び、
その先の壁面にはフルーツバーが設けられている。
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阪急の木箱を使った市場感あふれる陳列。20101209135958.jpg

フルーツバーの先には、
お得意の量り売り・バラ売りコーナー。20101209140008.jpg

その先がシーフード・デリと鮮魚売場の対面コーナー。
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鮮魚売場のセルフコーナーは広いコンコースの真ん中で展開。
年配のお客もカートショッピングするのに十分な通路幅がある。
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鮮魚売場の先は精肉売場。
写真は逆から写したところ。
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精肉売場の先にあるキッチンコーナー。
試食・試飲をお客は楽しんでいる。
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ワイン&チーズの売場。
ワインとチーズを始めとする「つまみ」「前菜」を、
組み合わせて提案する。
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ワインクーラー室が奥に設けられている。
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ご奉仕品と冷凍食品のコーナー。
午後2時過ぎというわけでもなく、高齢者のお客が多い。
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惣菜売場は「DELICATESSEN」のロゴ。
手前からおでん、皿盛りおかずバイキング、手作りだし巻き玉子、
フライてんぷらバイキング、スナックコーナー、
ふんわりお好み焼きと見やすいサイン。20101209140130.jpg

サラダ、おにぎり、弁当のセルフ・コーナー。
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調味料売場の中のスパイスコーナーでは、
手作りドレッシングを提案。
ちょっとリッチに洋風、濃厚な中華風、さっぱり和風とくくり、
スパイス、塩、オイルだけでなく、
レシピ本、ボールなど雑貨を関連陳列する。
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阪食では高齢者でも見やすいように、
プライスカードの文字を大きくしている。
一時、電子タグも導入したが、お客視点でこの方法に変えた。
赤色の文字はお値打ち価格。
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卵コーナーでも「たまごワールド」と称し、
たまごキャラクターの調理器具を関連販売。
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「ガーデンレタスオアシス」は、
ショッピングセンター1階の広場に設けたレストルーム。
お客の憩いの場になっている。
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千里ニュータウンといいながら、
オールドタウン化しつつあるこの立地。
阪食の「新戦略店舗」はニューファミリーばかりを相手にするものではない。
むしろ高齢者、熟年の客層をしっかりとらえて、
そこに新メニューや掘り起こした食生活を提案するのだ。

最後の視察は、淡路店。
東淡路商店街の端に位置する700㎡の都市型小型店。
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インストアベーカリーの厨房がガラス張りで外から見える。
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都市型小型店の実験店の位置づけ。出入口は1カ所。
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入口を入ると季節の野菜がクレートで並ぶ。
小型店でも生鮮3品は強化している。
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青果売場の先に鮮魚売場が見える。
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小型店でもバラ売り、量り売りコーナーは欠かせない。
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青果部門の左壁面に日配売場。
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鮮魚売場は、寿司、刺身などのシーフードデリを対面販売、
切り身パックは平ケースで販売する。
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鮮魚売場から精肉売場に続くコンコース。
小型店でも通路幅は広い。
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精肉売場は壁面で展開。
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精肉売場で関連販売されるグッズ。
こうした食提案の試みが随所にある。
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精肉部門の奥には、ミートデリコーナー。
さらに惣菜部門へと続く。
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キッチンステージも小スペースながら設けている。
「毎日の食卓を美味しく、楽しく!」とサインが見える。
食は楽しむものというメッセージはすごくいい。
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店内奥主通路に置かれた販促商品。
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ミートデリから続く惣菜売場。
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そしてデリとインストアベーカリーの売場。
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自店製造のデリと食パンで作ったサンドイッチを訴求。
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インストアベーカリーの前にあるホールセールパンのコーナー。
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小型店といえども酒売場は欠かせない。
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エンドで展開されているクリスマス・パーティ用の菓子と飲料。
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レジから出口へ向かう一角には正月商材のプロモーション。
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ゴンドラ1本で展開する花卉コーナー。リースも並ぶ。
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レジは6台ながら、年商十七億円ベースで推移する。
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レジ横にはサービスカウンター。
もちろんラッピングサービスを行う。
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都市型小型店は阪食でも大きなテーマ資源。
それをしっかりととらえ始めた。

狙いは「アッパーミドル」層で、アッパーとミドルの中間をコアにする。
しかし大事なのは、このあたりをコアにしながら、
客層が広がりつつあることだ。

すなわち、新しい飯食のポジショニングが、
確立されつつあるわけだ。

2010年度はグループ年商が1000億円を超える。
千野社長は今年度を「第2の創業」と位置づけ、
この「新戦略店舗」の進化と既存店への「水平展開」を基本方針としている。

私がうれしいのは、そのうえで、
「お客さまからの信頼を得つつ、
従業員が働きがいと誇りの持てる企業」
を、
実践躬行しようとしている点。

そういえば、千野さんも松元努常務も、
国際派で、「グローカル」を信条とする。

この日のクリニックの翌日、
社長・常務を中心とする数人のチームは、
イタリアに向かった。

私も同行したいくらいだった。

<結城義晴>

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